「中国なし」前提にサプライチェーンの組み直しが必要

日本人に対する入国ビザ免除の再開を求める日本政府に対し、中国政府が「対等な措置」を改めて要求しているようです。ただ、現状、日本政府が中国人に対する無制限での入国ビザ免除制度を導入するわけにはいきません。むしろ日本政府や日本企業に求められるのは、人的往来が滞っている状態が長続きするとの前提を置いたうえでのサプライチェーンの組みなおしではないでしょうか。

4象限で見る外交

人間関係には4種類ある

実際のところ日本にとって、どの国が「必要な国」なのでしょうか。

これは、なかなかに悩ましい論点のひとつです。

当ウェブサイトで常々報告している通り、外交関係は人間関係と同じで、「利害関係」と「親近感」という2つの軸が存在しているからです。このうち利害関係は「その相手との関係が自分自身にとって必要かどうか」という視点、親近感は「その相手に親しみを感じているかどうか」という視点です。

国家も人間の集合体である以上、基本的にはこの2つの軸で、相手国との関係を判断する必要がありますが、これはごく当たり前の話です。

たとえば、本稿をお読みくださっているあなたご自身も、家族、夫婦、親戚などを別とすれば、たいていの場合は「その相手に親近感を抱いているかどうか」と、「その相手との関係が自分自身にとって必要かどうか」という2つの軸で人間関係を決めているはずです。これが人間関係の4象限です。

人間関係の4つの象限
  • ①その相手に親近感がある・その相手との関係は必要である
  • ②その相手に親近感がない・その相手との関係は必要である
  • ③その相手に親近感がある・その相手との関係は不要である
  • ④その相手に親近感がない・その相手との関係は不要である

(【出所】著者作成)

議論すべきは②の関係に尽くされる

①は「その相手に親近感を抱いており、その相手との関係が必要である」という事例ですが、これはたとえば親近感のある学校の先生、親近感のある職場の上司など、仕事や学業でも密接な関係があり、かつ、あなたが親しみを覚えているという、非常に幸運な事例でしょう。

また③は、「その相手との関係は自分自身にとって必要ではないものの、その相手に親近感を抱いている」という事例ですが、これにはたとえば、卒業した学校、昔在籍していた職場の知り合いで、現在でも旧交を温めている、といった関係が考えられます。

この①や③のような関係が多ければ多いほど人間は幸せになりますが、それと同時に正直、このような関係は滅多に生じるものではありません。

たいていの場合、「職場の嫌な上司・同僚・部下」、「学校の苦手な先生・学友」という相手がいるでしょう。これが象限②、つまり「その相手に親近感を抱いていないが、その相手との関係が自分自身にとって必要である」、という事例です。

(なお、④、つまり「とくに親近感を抱いているわけでもなく、その人との関係が必要なわけでもない」という関係は、相手がストーカーと化している場合などを除けば、放っておいてもまったく問題ありません。多くの場合、自然消滅するからです。)

実際、人間関係の悩みの約99%はこの②の象限に起因しますし、アマゾンなどで人間関係に関する自己啓発本を検索してみても、「職場の人間関係」、「嫁姑争い」など、その圧倒的多数は②に関して論じたものばかりです。これに対し、上記①③④について触れているものは、ほとんどありません。論じる必要がないからです。

外交も全く同じ

さて、外交の世界といえば、私たち素人にとっては一見すると難しいことを論じているようにも見えるのですが、じつは何のことはありません。人間関係の延長で論じれば済むのです。

人間関係だと「親近感」と「利害関係」という用語を使いましたが、外交の世界では「基本的価値」や「戦略的利益」などの表現を用いることが一般的です。一見難しい言葉ですが、意味合いは「親近感」と「利害関係」と同じです。

国家間の関係について4つの類型に分けておくと、こんな具合です。

外交関係の4つの象限
  • ①その相手国と基本的価値を共有している・戦略的利益のために付き合う必要がある
  • ②その相手国と基本的価値を異にしている・戦略的利益のために付き合う必要がある
  • ③その相手国と基本的価値を共有している・戦略的利益のために付き合う必要はない
  • ④その相手国と基本的価値を異にしている・戦略的利益のために付き合う必要はない

(【出所】著者作成)

①は私たちの国がその相手国と基本的な価値レベルで一致しており、かつ、その国と付き合うことが国益のために必要である、という相手国です。日本の場合でいえば、自由・民主主義国――とくに、米国、豪州、英国、台湾、カナダ、欧州主要国など――がこれに相当します。

その一方で③は、必ずしもその国とお付き合いすることが自国の国益に直接につながるわけではないにせよ、基本的な価値観レベルで一致しており、良好な関係を築くことができる相手国です。東欧や北欧の諸国などが、これに相当するかもしれません。

また、④については価値観も一致しておらず(たとえばウソばかりつく、約束を破る、など)、その国と付き合うことで国益の最大化につながるわけでもない、といった相手国であり、これには国際法違反、約束違反を繰り返している犯罪国家、日本人を拉致したまま返さない犯罪国家などが該当するでしょう。

やはり②の象限の国との関係がとても重要

ただ、問題は、やはり②です。

わが国と価値観が完全に一致しているわけではなく、ただ、軍事的な理由、経済的な理由などで、どうしてもお付き合いせざるを得ない相手国です。

たとえば、「製造立国」でもある日本は、世界各国の資源国とお付き合いせざるを得ませんが、これらのなかには日本人が重んじる「ウソをつかない」「約束を守る」などの価値観を尊重してくれる国もあるものの、中にはそうではない国もあります。

また、日本にとって中国とロシアは、地理的な距離も非常に近く、軍事的な暴発が生じると日本にも実害が生じることから、どちらも「完全に断交する」ということが難しい相手国です。よって、こちらとしてもある程度の抑止力を持ったうえで、決して警戒を緩めずに、少なくとも表面上はうまく付き合わねばなりません。

あるいは、批判を承知で申し上げるならば、日本にとってはインドも②の象限に属する国ではないでしょうか。

インドは菅義偉総理大臣、そして故・安倍晋三総理大臣の尽力もあり、日本、米国、豪州とともに「クアッド」を構成する国のひとつではありますが、それと同時にロシアによるウクライナ侵略に対しては、西側諸国による対ロシア制裁に、インドは加わっていません。

これは、「基本的価値を共有していないインドをクアッドに入れたことが間違っている」、と言いたいのではありません。インドをクアッドという形で自由民主主義陣営に引き入れたことは、中露両国を中心とする強権主義国家・全体主義国家にクサビを打ち込むという意味もあるからです。

そもそもインドは「民主主義国である」とはいわれているものの、ロシア、中国、ブラジル、南アフリカとともに「BRICS」を構成しており、また、ロシア、中国、イラン、パキスタン、中央アジア諸国などとともに「上海条約機構」(SCO)にも参加している国であることを忘れてはなりません。

いずれにせよ、日本外交も、この4象限に従って戦略を構築していくべきでしょう。

①の「基本的価値を共有し、かつ、戦略的利益を共有している国」――米国、豪州、英国、台湾、カナダ、欧州主要国など――との関係は、良好に保たなければなりません。また、③、すなわち今すぐわが国の国益に直結するわけではないにせよ、基本的価値を共有している国とは、良好な関係を維持・発展させたいものです。

しかし、やはり最も外交上力を注ぐべきは②の象限、つまり基本的価値は共有していないものの、戦略的利益のためにはお付き合いせざるを得ない中国、ロシア、インドなどの諸国なのでしょう。

(※余談ですが、間違っても象限④の国に深入りすべきではありません。しかし、日本の現首相が「外交のキシダ」という表現で自己陶酔しているフシがあるのは、本当に危なっかしいと言わざるを得ないのですが、この点についてはまた別稿でも触れていきたいと思う次第です。)

日中関係の現状

軍事と経済で見る相手国との関係

さて、その次の課題として、「その相手国との関係が戦略的に見て重要であるかどうか」については、いったいどう判断すべきなのか、という論点があります。これについてはおもに軍事面と経済面の2つの点から判断すべき、というのが著者自身の考えです。

わかりやすくいえばその相手国と付き合うことで、わが国が経済的に豊かになるかどうかという視点と、わが国の安全が脅かされることがないかどうかという視点です。

このうち後者に関しては、日本は特に軍事研究が遅れているという危機感が、著者自身にはあります。

たとえば2015年1月16日付の『東京大学における軍事研究の禁止について』と題したPDFファイルに記されている通り、東京大学は長らく軍事研究を「禁止」してきましたが、これなど平和ボケそのものであり、知的生産活動の放棄そのものでしょう。

当たり前の話ですが、「平和」を研究することは、「戦争」を研究することと表裏一体です。「平和」を「戦争が起こらない状態」と定義するならば、「戦争が起こらない」ためには、「どうすれば戦争が発生するか」を突き詰めなければならないからです。

口先で「ヘーワ」、「ヘーワ」と唱えていれば戦争が起こらず平和になると考えるのならば、それは知の放棄そのものであり、そのような者がアカデミズムを名乗る資格などありません(余談ですが、その意味では、日本学術会議も、少なくとも国費を投じるべき組織とは到底言えないでしょう)。

それはともかくとして、わが国が憲法で「平和国家」を謳っている以上、そのわが国に必要な視点は、「どうすれば戦争が起きないか」を突き詰めることであり、そのためには結局、中国、ロシアといった無法国家とは表面上仲良く付き合いつつ、テーブルの下では相手の足を蹴っ飛ばすようなしたたかさを持つことが必要です。

「天皇訪中」に始まる宏池会政権の失策

日本にとっての最大の強みは、世界最強の軍隊と世界最強の経済を持つ米国との強固な価値同盟が存在することであり、また日本自身が米国ほどではないにせよ、世界的に見て、非常に強い経済と自衛力を保有していることでしょう。

その強みを維持・強化しつつ、日本や米国とは価値を共有していない異形の大国である中国やロシアに対しては、交戦状態に陥らない程度には関係をマネージし、それと同時にその相手国に産業上の重要なサプライチェーンを委ねるような状態を作ることは、徹底して避けねばなりません。

このあたり、日本外交の大きな失敗のきっかけを作った男は、宮澤喜一だったというのが、著者自身の持論です。

天安門事件を起こし、世界中から経済制裁を喰らっていた中国に「天皇訪中」という助け舟を出し、ありもしない自称元慰安婦問題を当時の官房長官談話で認めさせ、自民党政権を終わらせた愚かな政治家こそが、宏池会のリーダー・宮澤喜一です。

現在の首相が同じ宏池会から輩出されているという点に大いなる不安を覚える人も多いかもしれませんが、そうした不安は正しいのかもしれません。

これに加え、日経新聞あたりが1990年代から2000年代にかけ、盛んに「中国進出」を煽ったことも、また罪深い行動だったはずです。当時の論調は、「中国は安くて優秀な労働力を抱え、14億人の市場を有する大国」、というものでした。

これについてちゃんとファクトチェックしておくことは必要でしょう、

数字で見たヒト・モノ・カネ

さて、ファクトチェックを行うためには、先日の『日本企業の中国撤退の背中を押す「訪中ビザの厳格化」』などでも触れたとおり、経済的関係を議論するうえでの「数字で見たヒト、モノ、カネのつながり」を考察する必要があります。

詳しくは同稿にて触れたとおりですが、ここではその「結論」のみを再掲しておきます(図表1)。

図表1 日中のヒト、モノ、カネの関係
比較項目具体的な数値割合
訪日中国人(2023年5月分、速報値)134,400人訪日外国人全体(1,898,900人)の7.08%
訪日中国人(2023年1~5月の累計)386,090人訪日外国人全体(8,638,543人)の4.47%
中国在住日本人(2022年10月1日時点)102,066人在外日本人全体(1,308,515人)の7.80%
日本在住中国人(2022年12月末時点)761,563人在留外国人全体(3,075,213人)の24.76%
対中輸出額(2023年5月分)1兆3413億円日本の輸出額全体(7兆2920億円)の18.39%
対中輸入額(2023年5月分)1兆8818億円日本の輸入額全体(8兆6739億円)の21.69%
対中貿易額(2023年5月分)3兆2230億円日本の貿易額全体(15兆9694億円)の20.18%
対中輸出額(2023年1~5月累計)6兆6228億円日本の輸出額全体(38兆6099億円)の17.15%
対中輸入額(2023年1~5月累計)9兆8252億円日本の輸入額全体(45兆6133億円)の21.54%
対中貿易額(2023年1~5月累計)16兆4480億円日本の貿易額全体(84兆1071億円)の19.56%
邦銀対中与信(最終リスクベース)(2023年3月末時点)825億ドル邦銀の対外与信総額(4兆7752億ドル)の1.73%
対中直接投資額(2022年12月末時点)1,426億ドル日本の対外直接投資全体(2兆0792億ドル)の6.86%
中国からの直接投資(2022年12月末時点)73億ドル日本の対内直接投資全体(3,494億ドル)の2.09%

(【出所】著者作成)

これで見ると明らかなとおり、貿易という意味では、たしかに日本にとって中国は大切な国ではあります。

ただ、それと同時に日中貿易は、日本の一方的な貿易赤字という構造が続いています。その理由は、中国で組み立てられた製品(PC、スマートフォン、PC周辺機器、衣類、雑貨など)を日本が大量に輸入しているからです。日本は中国に対し、恒常的に貿易赤字を計上しているのです。

(※あれ?日経新聞さんの言説が正しければ、「日本企業は14億人の市場で潤う」はずだったのですが…?)

日中関係の再構築に向けて

日本人に対するビザが下りない!

ただ、それと同時に「ヒト」、「カネ」という意味では、日中双方はさほど深いつながりを持っているとも言えません。

とくにコロナ禍以降、中国が日本人に対するビザの免除制度を取りやめたためでしょうか、あるいは中国が日本に対する団体旅行を解禁していないためでしょうか、日中の短期的な相互往来は、活発であるとは言い難い状況にあるようです。

このあたり、中国政府が最近、日本人を含めた外国人の入国者数を公表していないため、その正確な人数についてはよくわかりませんし、中国に渡航する日本国民の主要な渡航目的は「商用」なのか、「観光」なのか、などについても、正直よくわかりません。

ただ、中国に拠点を置く日系企業8300社あまりで構成する「中国日本商会」が先日、中国当局に対しビザ免除の復活を要望しているという事実を踏まえるならば、やはり日本人のビジネス目的での中国渡航需要はそれなりに高いと見るべきでしょう。

しかも、先日も触れたとおり、ジャーナリストの姫田小夏氏の指摘によると、現在、日本人にとって訪中ビザのハードルは極めて高いのが現状なのだそうです。

中国に行きたければ裸になれ!?厳しすぎる「ビザの壁」に悲鳴をあげる日本人が続出

―――2023/07/08 11:32付 Yahoo!ニュースより【DIAMOND online配信】

こうしたなかで、やはり出てきたのが、こんな話題でしょう。

中国、日本にビザ緩和要求

―――2023/07/13 17:20付 Yahoo!ニュースより【共同通信配信】

共同通信によると、中国政府が日本政府に対し、ビザ免除措置を再開するには「対等な措置が必要だ」と主張していることが「13日にわかった」のだそうです。

ここでいう「対等な措置」とは、おそらく、中国人に対する訪日ビザ免除措置のことを指すのでしょう。

日本の対中ビザはどうなっているのか

事実関係を確認しておきましょう。

外務省の2019年1月1日付の『中国団体観光・個人観光ビザ』というページの説明によれば、中国人に対するビザとしては複数のものがありますが、いずれも最初の訪日時に旅行会社を通じてビザを取得する必要があるようです(図表2)。

図表2 中国人向け観光ビザ
ビザの区分取得方法備考
団体観光旅行会社を通じて団体観光ビザを取得する添乗員なしの自由行動は不可
個人観光一次ビザ旅行会社を通じて取得。経済力や学力などの条件が必要添乗員なしの自由行動が可能
沖縄県数次ビザ
東北六県数次ビザ
1回目の訪日時に沖縄県や東北6県のいずれかに1泊以上滞在する。1回目は旅行会社を通じてビザを取得2回目以降の訪日の際は旅行会社を通じて旅行を手配する必要はない
十分な経済力を有する者向け数次ビザ
相当な高所得者向け数次ビザ
1回目の訪日時に旅行会社に旅行の手配を依頼する2回目以降の訪日の際は旅行会社を通じて旅行を手配する必要はない

(【出所】外務省『中国団体観光・個人観光ビザ』を要約。なお、正確な要件については外務省ウェブサイトを参照されたい)

これに対し、コロナ前の中国は、日本国籍者に対しては15日間までノービザでの中国滞在を認めていました。つまり、日中の相互ビザ発給要件は異なっており、対等とはいえなかったのです。

もしもこの「15日間までのノービザ滞在」が再び認められるのであれば、この「対等ではない状態」が復活することになります。中国当局が日本人に対するビザ免除を渋っているのは、まさにこの「対等ではない状態」を嫌気しているのではないでしょうか。

人的往来の不自由さは残るという前提でサプライチェーン再構築を

ただ、現実問題として日中双方に経済格差が存在していることを踏まえると、相互往来に不平等状態が出現するのはやむを得ない話でもあります。

現実問題、多くの発展途上国は先進国からの入国者に入国ビザを課していませんが、逆に、多くの先進国は発展途上国からの入国にビザ取得を義務付けています。

また、観光ビザで入国し、滞在期限が切れているにも関わらず国外退去せず、あろうことか難民申請を繰り返すことで滞在を長期化させる、といった事例は、最近の日本でも社会問題となりつつあります。

このように考えると、日本政府が所得要件を満たさない中国人に対し、入国ビザを完全に免除するのは、少々危うい話です。「中国人観光客を日本に呼び込む」という観点からは、「中国人に対し一律に短期滞在ビザを免除すべし」、といった主張を出してくる者が出現するかもしれませんが、それは本末転倒です。

むしろ現在のように、中国への日本人の入国に制限がかかっている状況が長期化するならば、日本としても中国との関係を見直し、「人的交流に制限がある」という前提で、サプライチェーンを組みなおすきっかけにすべきでしょう。

いずれにせよ、政治家に外交センスが欠如しているのだとすれば、それは困りものですが、それと同時に日本という国は案外したたかに、今後数年かけて、サプライチェーンの組みなおしを進めていくのではないかと期待したいところです。

本文は以上です。

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読者コメント一覧

  1. はにわファクトリー より:

    地味鉄庵というお仕事で中国語を話しているかたがいます。彼の最近の発言に以下のような趣旨のものがあります。
    社会の電子管理化により何ごとも見かけ便利になったが、その枠に沿わないで生活することは中国ではむしろ昔より不便になった。
    続く一文は利便を社会統制手段にすり替える思考様式を理解できないのは日本人だけでないようことを意味しているのが味わい深いです。

  2. ミナミ より:

    >米国の輸入、中国15年ぶり首位陥落 貿易構造一変 【日経】
    >米国のモノの輸入に占める割合で中国が2023年1〜6月に15年ぶりに首位から陥落する見通しとなった。1〜5月の輸入額は前年から25%減少し、メキシコとカナダに抜かれた。世界経済の4割を占める米中は政策主導で分断が進み、国際貿易の構造が変わりつつある。

    もとの輸入額が多過ぎるのもあるでしょうが、1年で25%減もすごい
    アメリカは本気になると集中力がある国だ。激変の時代ですね

  3. さより より:

    故安倍首相の価値観外交は、先見の明でした。世界の枠組を明瞭にしてくれました。しかしながら、一般国民でもその意味する所を理解しているのに、現政権がその価値観外交の成果を弱める方向に動いているのが不思議です。本質を何も理解せずに目先の動きをしているだけです。
    又、これは、経済学そのものが現実経済を理解しきれていないからですが、経済に強い政治家が世界的にいないですね。名宰相と言われたドイツのメルケルも、実態は経済の中露依存を強めただけです。ドイツは、ずいぶん経済で中露を助けました。そのせいで世界経済は中露依存になりました。
    アベノミクスは経済の核心を突いたものでしたが、3本の矢は一度に放つべきでした。財務省がそうさせてくれなかったのかもしれませんが。

    1. はにわファクトリー より:

      今の首相が B 級人材だから
      そのように仮定をおいて諸事精査すれば、結論は容易にでるはずです。

  4. カズ より:

    >「中国なし」前提にサプライチェーンの組み直しが必要

    対中貿易収支だけを注視すれば依存しきってるように見える関係も、香港を含めて考えればそうでもないように思います。

    しかも日本企業の製造プロセスだけを切り取って考えれば、

    ①原料を世界各国(含む中国)から輸入
    ②加工した素材・装備を在中子会社に輸出
    ③子会社から完成品を輸入

    の流れであり、①→②の過程で生じる付加価値のすべてと②→③の過程で生じる付加価値の49%は日本側のものです。

    ①の工程に不可欠な『原料(「モノをつくるモノ」をつくるモノ)』さえ確保できれば、中国抜きでも大体のプロセスは代替できるのではないでしょうか?

    1. 墺を見倣え より:

      > ①の工程に不可欠な『原料(「モノをつくるモノ」をつくるモノ)』さえ確保できれば、

      仰る通りではありますが、それが簡単ではない様な。

      例えば、レアアースの埋蔵量は、中国以外にも結構ありますが、中国が長年の安値輸出で、中国外の鉱山の多くを閉鎖に追い込んだ。鉱山だけでなく、精錬工場等も数多く倒産させた。急に精錬工場を再開しようと思っても、機械は死んでるし、技能者も居ない。技能者を新規養成しようにも、教える人すら居ない。
      米国最大のレアアース鉱山は、掘り出した鉱石を中国に送って精錬して貰っているとか。
      中国での精錬は、環境コスト=ゼロなので、価格的に競争するのは殆ど不可能。

      1. カズ より:

        そうですね。
        レアアースの含有が極僅少の超強力磁石など、革新技術と実用化が急がれますね。

    2. さより より:

      サプライチェーンを整理して頂き有難うございます。以下の考察が合っているか分かりませんが、書かせて頂きます。

      >>①→②の過程で生じる付加価値の全ては、日本に落ちます。
      その通りですね。日本国内で雇用も生じます。
      >>②→③の過程で生じる付加価値の49%は日本側のものです。
      これは、付加価値では無く利益の49%ではないでしょうか?
      付加価値に含まれる人件費などは、丸々中国に落ちます。その分、日本の雇用は失われています。付加価値の内の利益の49%だけが、貿易外収支として日本企業に齎されますが、それは、基本的に日本国民の財布から出ているのです。日本国民が購買しているのですから。
      要は、②→③の中間品から最終的製品の製造を何故中国でやる必要かあるのか?という事ですが、それは、中国の人件費が安いということだけが理由でしょう。
      調達から見たサプライチェーンの他に、付加価値から見たバリューチェーンという見方があります。
      現在の中国に製造拠点を置いたサプライチェーンは、企業の付加価値から見たバリューチェーンとほぼ合致しているかもしれません。
      が、このバリューチェーンを国家の付加価値から見れば、付加価値・利益の大方を中国に落としていることになります。

      国家のバリューチェーンから見た、サプライチェーンの構築という視点・観点をこれからの重要事として行かなければなりません。
      そうしなければ、国民の富が海外特にかの国に落ち続ける事になります。

      1. カズ より:

        国富の観点でみれば、仰る通りですね。

        私も早期の国内回帰を望んでいます。

        政界にはやみくもに「給与アップ」を叫ぶ声もあるようなのですが、設備投資・雇用の回復に伴うものでなければ、国内の景気は高揚しないからです。

        「所得主導成長」と銘打ち、最低賃金アップを押し付けて「企業の疲弊と国内雇用の破壊」を生じた韓国の事例を他山の石とすべきだと思っています。

  5. うれしんご より:

    その強みを維持・強化しつつ、日本や米国とは価値を共有していない異形の大国である中国やロシアに対しては、交戦状態に陥らない程度には関係をマネージし、それと同時にその相手国に産業上の重要なサプライチェーンを委ねるような状態を作ることは、徹底して避けねばなりません。

    ロシアはもう、強大国とこれから呼ばなくなるでしょうね。
    西側のコンセンサスになりそうです。

  6. 誤星紅旗 より:

    オピニオン日経が煽り10億の市場とやらを目指して大挙した結果、産み出されたのは強大なエイリアンの大帝国。敵に塩だけでなく、虎の子の技術や国富を溜め続けるシステムまで授けてしまう愚かな行為は今からでも改めていくべきでしょう。
    チャイナが豊かになり中産階級に厚みがでてきても、民主化や穏健な平和共存は望めないことが明らかになったとしか思えません。台湾有事で中共の野望が阻止され、中国共産党内の変革機運に至るか、権力の集中への党内批判の圧力を期待して、ポスト習近平まで日本や西側諸国は耐えるしかないのでしょうか。
    1970、80年代の日中の経済的な交流がほぼない時代、懐かしき人民公社のあった時代、日本はチャイナ無しでも経済的に困らなかった記憶がまだ残っています。すぐはのデカップリングは無理筋であっても個々人で対策できることもあろうかと思います。買い物の際の商品比較では、中国製を無意識になるべく買わないように行動している自分がいます。目先の利益のために子どもたちの未来を侵略者の毒牙に晒す訳にはいかないのです。

    1. はにわファクトリー より:

      日経は自分たちを言論機関と定義しています。そのような発言が値上げ声明の時に活字になっています。おやそうだったのかい、知らなかったな、てっきり経済新聞だと思っていた。そう感じた読者きっと多かったはずです。

  7. より:

    「対等な措置が必要だ」というのであれば、まず日本政府は中国国籍保持者による日本国内の不動産取得を禁じるべきでしょう。日本人が中国国内の不動産を取得できず、中国人は日本国内の不動産取得が可能というのは、明らかに均衡を欠いた状態です。むしろ、現在禁止してないほうが不思議でしょう。確かに、相互主義は外交の大原則ですからね。

    さて、サプライチェーンの話ですが、結局のところ、「中国からしか買えない」「中国にしか売れない」ものを極力なくしていくことが肝要であろうと思います。現状、「中国にしか売れない」ものはほとんどないかと思いますが、事実上「中国からしか買えない」モノは確かに存在しています。一時期話題になったレアアースの類は、埋蔵量などから考えても、いざとなれば中国以外からでも調達可能ですが(*)、ゲルマニウムなど、いくつかの鉱物に関しては、中国が埋蔵量も含め、世界市場の70%以上を握っているため、他国からの調達はあまり現実的ではありません。そこで、ゲルマニウムなどをあまり使わなくても済むような技術を開発するか、他の調達方法、例えば、海底に転がるマンガンクラストなどの鉱物資源を商業的に採取できるようにするなどを検討する必要があるでしょう(マンガンクラスト自体はゲルマニウムを含んでませんが)。
    すでに中国政府はゲルマニウムなどの輸出管理強化を宣言していますので、対策を急がねばなりません。

    (*) レアアース類は精製工程で環境に有害な物質を大量に出してしまうため、他国ではなかなか大規模な精製工場を作れません(環境対策に莫大な費用が掛かる)。でも、中国では何ら問題とはなりませんので、現状ではコスト面で中国産が圧倒的に優位にあるのです。

    1. わんわん より:

      余談ですが
      誉田哲也氏の〈ジウ〉サーガ ジウⅩ(10)がおもしろい
      相互法の成立をはかって経団連・学術協会・公明党等を脅す話です
       成立すれば
      (外国人の)土地取得の制限・留学生の制限・領空侵犯(追撃)・領海侵犯(撃沈)・企業の国内回帰・技術の武器転換許可等です 

      1. 誤星紅旗 より:

        大使館の用地取得についても、在外日本公館に土地建物の所有権を認めない国については、日本国内での外国大使館、領事館などの用地取得には相互主義から厳格な制限を設けるべきだと思います。

  8. ちょろんぼ より:

    中共を除いたサプライチェーン化は
    セカンドCOCOMになる訳なります。
    中共が自然破壊・環境対策を無視しての
    レアアース・レアメタル掘削問題をどうするのかを
    念頭に考慮する必要があります。
    (この問題でいわゆる環境団体が沈黙しているのが
    非常に面白いところです)
    レアアース・レアメタルの産出地域は偏在しており
    西側諸国でレアアース等の開発を中共の手の
    掛らない地域を探す事は困難ですし
    金額面でも非常に問題が大すぎます。
    (戦時等非常時なら経費を無へ視する事はできますが
    平時では困難です)

  9. 匿名 より:

    韓国は4つの象限のどれに当てはまるのか?
    なぜか記事に言及がない。

    1. 新宿会計士 より:

      あら、そうでしたっけ?ウフフ

    2. さより より:

      具体的な国名が挙げられていないので、おや!と思いますが、第4象限です。
      それよりも、インドを第2象限に入れなければならないのが残念です。象限分けするとすれば、本稿の説明の通りなのですが。
      インドは歴史的に反中で、それ故に地政学的には親露である必要があったのでしょう。
      安倍首相が中国包囲網を形成する為には、インドの取り込みが必要と判断してQUADの構想をインドのモディ首相に持ちかけました。モディ首相は、安倍首相の人間としての格を信頼して構想に参加することにしました。モディ首相の安倍首相への信頼は心からのものであると感じたのは、安倍首相の国葬の時にモディ首相が一番長く安倍首相の写真を何度も見つめながら祈っていた事から分かりました。
      今、岸田首相は、故安倍首相ほどの人間格を持って、各国首脳の信頼を得られるものでしょうか?

      1. 新宿会計士 より:

        >今、岸田首相は、故安倍首相ほどの人間格を持って、各国首脳の信頼を得られるものでしょうか?

        もう…分かってるくせに

        1. さより より:

          反語法です。

          1. 新宿会計士 より:

  10. 匿名隊員 より:

    この期に及んでもまだ「中国にどんどん投資するよ!」な大企業もあるので、そういうところがどういう道を辿るか大変に興味がありますね。
    目の前の利益より先のリスクの方が大きいと思うのですが、さて。

  11. HY より:

     最近思うに親中政権のほうが日中関係を悪くしている気がします。ご存じ2009年の民主党政権は親中ですが対中関係は過去最悪となり、安倍政権では一時期安定化し、親中の岸田政権になってまた不安定になっております。これはきっと親中の求める二国間のビジョンが1990年代のままで、発展した中国の求めるそれと大きくずれているのが原因ではないかと考察しているのですがどうでしょう?

    1. より:

      あくまでも聞いた話ですが、中国での小泉元総理の評価は決して悪くないそうです。要するに、中国は揉み手をしながらへこへことすり寄ってくるような輩は評価せず(ex. 隣国の前大統領)、毅然とした態度で臨んでくる相手はそれなりに評価するということのようです。
      幸い、これまでのところ、岸田総理も林外相も中国に対して過度に甘い顔をみせてはいませんが、今後ともそうあってほしいものですね。

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