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古びた受信料制度はNHKの強欲と怠惰により自滅する

週末、インターネット上で話題となっていたのが、読売新聞が土曜日に配信した、NHKの稲葉延雄会長に対するインタビュー記事です。このなかで稲葉氏は、テレビを持っているだけでNHKに受信料を支払わなければならないという現在の制度について、「随分古い規定ではあるけれども、今日的に意義を失ったものではない」と述べたのだそうですが、こうした稲葉氏の発言、ネットで一般人の怒りの火に油を注いだようです。

ヌエのようなNHK

矛盾だらけのNHK:なにが「公共放送」だ

カネ持ちNHK、1人あたり人件費は1550万円以上』なども含め、当ウェブサイトではこれまでずいぶんと議論してきたとおり、NHK問題とは、究極的には「民間企業と公的企業の『良いところどり』をしている」、という点に尽きるのではないかと思います。

NHKが保有する金融資産の額は1.3兆円を突破。相変わらず、職員1人あたりの人件費水準は1550万円を超過。これがNHKの現状です。果たしてこんな組織、日本に必要なのか――。NHKの経営実態については、なぜか新聞、テレビはほとんど報じませんが、NHKが公表した財務諸表、連結財務諸表などをじっくり読みこんでいけば、いろいろとツッコミどころだらけでもあります。NHKの金融資産の額は1.3兆円を突破NHKは28日までに、『経営に関する情報』のページで、2023年3月期の連結財務諸表・単体財務諸表などを公表しました。...
カネ持ちNHK、1人あたり人件費は1550万円以上 - 新宿会計士の政治経済評論

NHKのウェブサイトに掲載されている『公共放送とは何か』などを参考にすると、公共放送とは「①営利を目的とせず、②国家の統制からも自立して、③公共の福祉のために行う」放送である、と定義されているのですが、この時点で矛盾だらけです。

そもそもNHKは①あきらかに営利を追求しており、②国家の統制から自立しておらず、③その放送内容は公共の福祉に反している事例が数多くあるからです。

まず①営利性に関していえば、明らかにNHKは利益を追及している集団です。巨額の利益を得たうえで、国家公務員の水準を大きく逸脱する巨額の人件費を計上し、また、明らかに不必要と思われる巨額の資産を抱え込んでいるからです。

そもそもNHKが制作している番組には営利性を追求しているのではないかと疑わしいもの(たとえば紅白歌合戦など)も散見されますし、NHKが過去に制作したドラマ、アニメなどに関し、そのコンテンツの二次利用権をNHKのグループ会社が使用するなどしている事例も見られます。

NHK自身、視聴者から受け取った受信料で番組を作っている以上、本来であれば、NHKが制作したそれらの番組から生じるであろう二次利用権は、受信料を支払った視聴者に帰属していなければおかしいはず(つまり、受信料の引き下げ原資に使われるべき)なのですが…。

NHKの乱脈経営の問題点は「高額人件費」と「不当な蓄財」

この「①営利を目的とせず」の問題、それだけではありません。「余りある受信料収入」が、NHKの乱脈経営に悪用されているのです。

その典型例が、「高額な人件費」と「不当な蓄財」です。

NHKは2022年度において1万人を超す職員を雇い、単純計算で1人あたり1550万円を超える人件費(給与、賞与、諸手当、福利厚生費、退職給付費用など)を計上しており、抱え込む資産は金融資産だけに限定しても、連結集団内で1.3兆円を超えています(※年金資産を含む)。

これを「営利性」といわずしてどう言えば良いのでしょうか。

もしNHKが「営利を追求していない」のであれば、これらの巨額の余剰資産は視聴者ないし国庫に返金し、民放各局と比べても異常に多い職員の数を削減し、職員人件費を国家公務員並みに引き下げるくらいのことをやっても良いはずです。

そして、この乱脈経営の問題とも密接に関わっているのが、先ほど挙げた3要件のうちの2番目、すなわち「②国家の統制からの自立」という論点です。

現在のNHKに関していえば、明らかにこの要件を満たしていません。そもそもNHKが民間企業顔負けの巨額の人件費を負担できる理由は、NHKが「法律によって」、なかば強制的に受信料を取り立てる権利が保障されているからです。

放送法第64条第1項には、NHKの放送を受信することができる設備(たとえばチューナー付きのテレビ)を設置した場合は、NHKと「受信契約を締結しなければならない」と明記されており、その契約を締結した場合は、受信契約に従って受信料をNHKに支払わなければならなくなります。

つまり、NHKに「受信料」という年間7000億円近い莫大な「富」をもたらしているのは、「放送法第64条第1項」という、れっきとした「国家の統制」に基づくものです。決して、NHKが作る番組が民放各局やVODサービス各社と比べて面白いからではありません。

NHKは公共福祉に背いている

そのうえで、「③公共の福祉」という観点からは、NHKの番組は明らかに逸脱しています。たとえば、NHK自身が制作している番組のなかには、たとえば法律違反を肯定的に取り扱うようなドラマも含まれているからです(『違法行為に手を染めるNHKを冷ややかに見る一般国民』等参照)。

NHK問題の本質は、「不視聴運動を行ったとしても、NHKを倒産させることができない」という点に尽きます。NHK自身、放送法で受信料収入を事実上、保障されているからです。こうしたなか、例の「不法滞在を美談にする」というドラマの放送が行われたそうです。こうしたドラマを放送すること自体、違法性の疑いが極めて濃厚です。しかし、それと同時に、明らかに問題がある番組が放送されようとしていても、国民がその差し止めを求めることすらできないということ自体も、極めて大きな問題です。経済学で見た日本経済学の大原則...
違法行為に手を染めるNHKを冷ややかに見る一般国民 - 新宿会計士の政治経済評論

それだけではありません。NHKは番組撮影中にも問題を起こすことでも知られています。

最近の事例だと、ドラマの撮影中に国の重要文化財である寺院の本堂の縁側で10人がダンスするシーンのリハーサル中に床を踏み抜くなどして貴重な文化遺産を破壊した(『NHKがまた文化財を破壊し、薄っぺらい謝罪文を公表』等参照)という事件もありました。

NHKがぶっ壊す熊野古道に続き、今度は国の重要文化財の破壊です。NHKは25日、築373年の百済寺本堂という貴重な文化財でもある建物で「10人がダンスをするシーン」のリハーサルを行った際に、濡れ縁を破壊したそうです。しかも、NHKはトップページにその事実を掲載しておらず、目立たないところにA4用紙1枚分という薄っぺらいPDFファイルで謝罪文を出してお終い、にしているようです。極めて不誠実です。さすが受信料利権で不当利得を得ている組織のことだけはあります。NHK、今度は築373年の百済寺本堂を破壊文化財...
NHKがまた文化財を破壊し、薄っぺらい謝罪文を公表 - 新宿会計士の政治経済評論

まさに、「NHKがぶっ壊す」、といったところです。

公共放送必要論とNHK必要論は分けて考えるべし

このあたり、ときどき勘違いしている人が、「それでも公共放送は必要だ」、「したがってNHKを敵視すべきではない」、などとする主張を、まことしやかに展開することもあるのですが、これについては注意が必要です。

そもそも論として、当ウェブサイトでは「公共放送は不要だ」と主張しているつもりはありません。

個人的に、「営利を追求しない、公共の福祉のための放送」というものが、「世の中には必要だ」、とする主張は、あっても良いとは思います(※もちろん、それと同時に、「そんなもの、別になくても良い」という主張もあって良いと思いますが)。

また、NHKが過去に制作したコンテンツのなかには、それなりに文化的価値が高いものが含まれているものもあるかもしれません(※というか、巨額の受信料を湯水のごとく注ぎ込んできたわけですから、そうしたコンテンツがあっても不思議ではありません)。

しかし、結局のところ、すべてはコスト・パフォーマンスの問題です。

巨額の受信料を湯水のように注ぎ込んでさまざまな番組を作っていれば、なかには「公共の福祉」に適したものや、文化的価値が高いものが出て来るのは当然のことであり、それ以上にNHKが現状、明らかに反社会的なコンテンツ(たとえば「不法滞在を正当化するドラマ」など)も多数生み出していることを忘れてはなりません。

つまり、「この世に公共放送というものが必要かどうか」という論点と、「その公共放送を担う主体としてNHKが適切かどうか」という論点は、まったくの別物です。

民間と公的の良いところどりをする「ヌエ」

このように考えていくと、NHK問題はつまるところ、「民間企業なのか、公的企業なのかがよくわからない」、という点に尽きます。

この点、職員1人あたり高額の人件費を計上していたところで、それが民間企業なのであれば、まったく問題ありません。人件費水準が高かったとしても、自由経済競争の結果、それを負担しても十分に割に合うだけの利益を得ているのであれば、それはその企業の経営努力のたまものだからです。

あるいは逆に、利益水準が十分でないのに人件費水準が高いという場合には、その人件費水準を引き下げなかった場合、その企業には最悪の場合、「倒産」というペナルティが待っていますが、これもあくまでも自己責任の世界の話であって、民間企業が自らの判断で行っている以上は問題になる話ではありません。

しかし、NHKの場合は「放送法第64条第1項」という「国家の統制」に従って受信料収入が保証されている利権団体であり、しかも放送内容については完全に好き勝手に決めていて、放送内容に公共性があるかどうかを担保する仕組みもありません。

つまり、「この世からテレビを設置する人がいなくならない限りは絶対に倒産しない」という意味では公的企業のような存在であり、「職員に対する人件費水準が破格である」という意味では民間企業(とくに放漫経営の企業)とソックリな存在なのです。

こうしたヌエのような存在、本当に困りものです。

稲葉会長の珍回答と一般人の反応

読売新聞に掲載された稲葉会長のインタビュー

ところで、最近、NHKの予算を巡って、「BS番組のネット同時配信」という、本来はNHKの業務とは認められていない事業に関連する費用9憶円を今年度予算案に盛り込み、国会で承認されてしまう問題なども発生しています。

また、先週はNHKの決算が公表されたこともあってか、やはりNHKの存在に対して関心を持つ人が増えていることは間違いありません。

こうしたなか、その「予算問題」や受信料制度そのものを巡って、読売新聞がNHKの稲葉延雄会長に対するインタビューを実施。土曜日に配信されています。

テレビがあれば契約義務の受信料制度…NHK稲葉会長「随分古い規定だが、今日的に意義を失っていない」

―――2023/07/01 07:02付 Yahoo!ニュースより【※読売新聞オンライン配信】

インタビューで稲葉氏は読売新聞に対し、受信料制度についてこう述べたのだそうです。

放送法に掲げられているNHKの社会的使命を全ての業務の面で実施していく。単に番組を流すということだけでなく、広くNHKとして公的な仕事をしていく。その全体のコストを賄うために、受信料っていう制度で資金を皆様から頂くというのは合理的とされている。それについて私は、随分古い規定ではあるけれども、今日的に意義を失ったものではないと考えている」。

稲葉氏のいう「番組を流すことだけではない、広くNHKとして公的な仕事」に関し、読売新聞は「放送技術の研究など民放も享受できる知見などが考えられる」などとしていますが、これはじつに苦しい解釈でしょう。すでに日本国内では地上波のテレビ放送を受信することが難しい集落などはほとんどないからです。

その一方で、読売新聞は「(娯楽番組などについては)見たい人だけが料金を支払う仕組みにしてほしいとの声がある」と稲葉氏に尋ねたところ、稲葉氏はこう答えたそうです。

NHKは、(報道番組とともに)豊かなエンターテインメントを提供することによって、人々の生活をより豊かにし、それらの効用をあまねく、日本全体の国民の皆様に提供する。その上で、民主主義の増進に貢献する。こういう目的があるので、娯楽番組だからという理由で、NHKは対応をやめるわけにはいかない

…。

稲葉会長の発言に批判コメントが殺到

あれでしょうか?

この稲葉会長という人物が主張する「豊かなエンターテインメント」とは、日本共産党の支持者と思しき者が執筆した小説を原作として、不法滞在を肯定的に描くドラマなどのことを述べているのでしょうか?

正直、この稲葉氏という人物の発言、理念ばかりで具体例がまったくなく、説得力は皆無です。

実際、読売新聞は記事の中で、6月に開催された株式会社テレビ東京ホールディングスの株主総会で、「NHKに受信料を払うことでテレビ離れが進み、民放の収益が悪化している問題」に関する質問が出た、などと記載されているのですが、この点についてはたしかに不思議です。

NHK(と総務省)が受信料制度の維持に拘泥し続けることで、テレビ業界全体を「NHKがぶっ壊す」(『チューナーレステレビ爆発的普及のカギを握る中国企業』等参照)ことにもつながりかねないわけですから、本来ならば民放こそNHK問題に斬り込むべきなのです。

もし国内首位の中国資本がチューナーレスTV発売したら?これが本当の「(テレビ業界を)NHKがぶっ壊す」、でしょう。もしもNHKの受信料利権がチューナー「あり」テレビを市場から駆逐し、チューナーレステレビの普及を促進することにつながるのであれば、いわば、NHKの受信料利権が民放を道連れに地上波テレビ業界をぶっ壊すことになるのです。こうしたなか、重要な動きがありました。東洋経済によると2022年における国内の薄型テレビ市場のシェアトップを、中国のハイセンス・グループが奪ったのだそうです。テレビ業界と...
チューナーレステレビ爆発的普及のカギを握る中国企業 - 新宿会計士の政治経済評論

ただ、それ以上に興味深いのが、『Yahoo!記事』についたコメントの質と量です。

記事が公表されたのは土曜日の朝ですが、日曜日の夜9時時点でこの記事には2,381件の読者コメントが寄せられており、コメント高評価数で上位のものを確認すると、NHKの存在に対して否定的なものが多く確認できます。

とりわけ興味深いのは、たとえば、「見たい番組ごとにコンテンツを選択できるようにすれば、納得して視聴することになるわけだから、却って未払は減るのではないか」、といった指摘です。「NHK」といえば「解体」と条件反射的に叫ぶどこかの怪しい自称会計士と異なり、これはこれで冷静で参考になる意見でしょう。

ただ、読者コメントの批判の多くは、この稲葉会長の「豊かなエンターテインメントの提供により人々の生活をより豊かにする」という点に向けられているようです。

とりわけ、「現在のNHKは『豊かなエンターテインメント』とやらを提供できていないじゃないか」、といった指摘に加え、「テレビが娯楽の中心だった時代のままでアップデートできていない証拠だ」、といった辛辣な批判も散見されます。

利権の3法則からNHKも無縁でいられない

そして、やはり目に付くのは、「古い規定をなぜ変えないのか」、という疑問です。

これについては結局のところ、「変えたくない」のでしょう。「利権」だからです。

この点、利権というものは、得てして理不尽なものであり、それと同時に「それを外から壊すのが難しい」という特徴があります。これが、当ウェブサイトの定義でいうところの、「利権の第1法則」、「利権の第2法則」です。

  • 利権の第1法則…利権とは、得てして理不尽なものである。
  • 利権の第2法則…利権とは、外から壊すのが難しいものである。

NHKに関していえば、少なくともこの2つの法則は当てはまっているでしょう。これだけ多くの人々が「おかしいじゃないか」、「理不尽じゃないか」と感じているにも関わらず、その仕組みを変えるのが、本当に難しいからです。

とりわけ、先ほどの読売記事にもあった稲葉会長の発言にもみられるとおり、肝心のNHK自身がこれに関する議論から逃げ回っているのに加え、選挙報道で報復されるのを恐れているからなのか、多くの国会議員ですらNHK問題に踏み込むことを嫌がっています。

ただ、ここで絶望する必要はありません。

当ウェブサイトを以前からご愛読いただいている方ならご存じの通り、「利権」には、次の「第3法則」があるからです。

  • 利権の第3法則…利権は保有者の怠惰や強欲で自壊する。

この3法則、NHKといえども無縁ではいられないのです。なぜなら、人間とは、じつに欲深い生き物ですあるとともに、嫉妬深い生き物でもあるからです。

稲葉会長の発言は火に油を注ぐもの

そもそも論として、利権を持っている側にとっては、自分が持っている利権については何が何でも死守しようと頑張りますし、これはある意味で人間としては当然の行動ではあります。

ただ、利権を持っている者は得てして、自分たちが持っている利権が他者からどのように見えるかについて、意識が及ばなくなるという傾向があります。そして、利権を「持っていない者」からすれば、その利権に対し、強い不満、あるいは怒りを覚えるものなのです。

だからこそ、利権を持っている者が自らの利権を死守し、あわよくばその利権を拡大しようとすれば、利権を持っていない者からの嫉妬や反発、怒りを買い、それらがうねりとなり、やがては利権そのものを破壊する原動力となっていくのです。

そして、現代社会におけるもうひとつの特徴は、社会のインターネット化にあります。先ほどのヤフコメでもわかるとおり、NHK問題を巡っても、「一般人が」考えている内容が、ほかの「一般人」からも「見える化」しつつあるのです。

稲葉会長が自分たちの利権を守るべく、「ずいぶん古い規定だが、今日的に意義を失っていない」、などと発言すれば、それに対し、ヤフコメやツイッターなどは一般国民の怒りのコメントで溢れ返ってしまうのです。その意味で、彼のコメントはまさに「一般人の怒りの火に油を注ぐようなもの」なのです。

新聞に対する怒りの声が溢れていたころとソックリ

こうした怒りのコメントを、「ごく一部のネット右翼の声だ」、などと馬鹿にすべきではありません。過去10年余りの間に新聞業界で起こったことが、テレビ業界でも間違いなく発生するからです。

著者自身、当初は「ブログ」などのかたちで、2010年ごろからウェブ評論活動を行ってきたのですが、その2010年頃はネット上で、新聞の偏向報道に対する怒りの声が溢れていたのを、昨日のことのように思い出します。

ただ、当時、新聞の側からは、「ネット上の新聞に対する批判の声は、ごく一部の『ネトウヨ』のものだ」、「圧倒的多数の国民は我々新聞を支持している」、とでもいわんばかりの声も聞こえて来ていました。

しかし、現実に『新聞朝刊の寿命は13.98年?』や『新聞夕刊は7.68年以内消滅か』などでも議論しているとおり、現在、新聞業界は瀕死です。あと5年以内に主要紙の夕刊が、10年以内には朝刊ですら、廃刊になる事例が急増するでしょう。

現在のNHKに対する批判も、当時の新聞に対する批判と似たような雰囲気があります。

新聞の場合、いうまでもなく、2010年以降のスマートフォンの爆発的普及により、「紙媒体」そのものがビジネスモデルとして陳腐化したことに加え、新聞業界自体が長年の独占競争体質に染まり、腐敗し切っていたことで、自己変革に失敗して滅亡しつつあるのです。

自滅するNHK

チューナーレスTVの普及は?

先ほど、「テレビを設置する人が世の中からほとんどいなくなる、などの事象でもない限り、NHKは存続できる」、といった趣旨のことを指摘しましたが、その「テレビを設置する人が世の中からほとんどいなくなる」という事象が、本当に発生する可能性が高まっています。

いうまでもなく、スマートテレビの登場と普及です。

これらのスマートTV、大手メーカーのものは、現時点ではチューナーが搭載されてしまっているため、これらを購入すればNHKとの受信契約義務が生じることは間違いありません。

しかし、最近だと(徐々にではありますが)スマートTVのなかでも「チューナーレスTV」と呼ばれるものが増えてきています。

現時点ではチューナーレスのスマートTVは中小メーカーなどのモノが多く、一般消費者向けに販売されている高級モデルはほとんどありませんが、それでもそのような製品が出現するのは時間の問題です。なぜなら、世の中には需要があれば、それが違法なものでない限り、いずれ必ず供給が出現するからです。

薄型テレビの出荷台数、今年は09年以降で最低ペース』でも取り上げたとおり、一般社団法人電子情報技術産業協会(JEITA)の統計によると、薄型テレビの出荷台数自体、近年、少しずつ減少しつつあります。

薄型テレビの出荷台数(その年の4月まで)
  • ~2009年4月…345.5万台
  • ~2010年4月…610.8万台
  • ~2011年4月…693.3万台
  • ~2012年4月…248.9万台
  • ~2013年4月…168.7万台
  • ~2014年4月…181.2万台
  • ~2015年4月…180.3万台
  • ~2016年4月…157.3万台
  • ~2017年4月…150.2万台
  • ~2018年4月…144.1万台
  • ~2019年4月…147.5万台
  • ~2020年4月…147.5万台
  • ~2021年4月…185.2万台
  • ~2022年4月…166.4万台
  • ~2023年4月…142.3万台

(【出所】一般社団法人電子情報技術産業協会(JEITA)『統計資料』をもとに著者作成)

先ほどの『テレビを改造してもNHKとの受信料義務は消滅しない』の補足です。一般社団法人電子情報技術産業協会(JEITA)の統計によると、薄型テレビの出荷台数に関しては少しずつ減ってきており、とくに1月から4月までの出荷台数に関していえば、今年は142.3万台で、この10年あまりで最低値を更新しました。この統計にいわゆる「チューナーレステレビ」が含まれるのかどうかはよくわかりませんが、いずれにせよ、テレビメーカーの皆さんも「消費者が求めているもの」を提供する努力が必要かもしれません。先ほどの『テレビを...
薄型テレビの出荷台数、今年は09年以降で最低ペース - 新宿会計士の政治経済評論

「私はテレビを捨てました」

とりわけ、テレビの寿命はおおむね10年といわれているなかで、地上デジタル放送開始時に大量に販売された薄型テレビについても、そろそろ更新時期が到来しているはずなのですが、現時点において薄型テレビの販売が急増している様子は見られません。

先ほど紹介した記事のヤフコメでは、「NHKに受信料を払いたくないので、テレビが壊れたのを機にチューナーレスタイプに買い替え、NHKを解約した」、などとする趣旨のコメントもいくつかあるようですし、似たような読者コメントは、当ウェブサイトの過去記事に対しても、複数寄せられています。

考えてみれば、ネット環境さえあれば、民放の番組なら(すべてとはいわないにせよ)「Tver」である程度は視聴可能ですし、「民放の番組すら見る必要がない」という人にとっては、なおさらチューナー付きテレビを買う必要性は乏しいでしょう。

ちなみにどこかの怪しい自称会計士の場合、業務用のPCを複数台所有しているのだそうですが、この者はそれらのうちの1台を高価格帯のものにして、快適な動画ライフを送っているようです(※ちなみにこれらのPC、いずれもTVチューナーは付いていません)。

そういう極端な事例はさておき、世の中のすべての人がいきなりテレビを一斉に捨てるとは思いませんが、少なくとも「NHKに受信料を払いたくないし、NHKを視聴していない」という人であれば、「チューナーありテレビ」がなくなったところで、あまり実害がないことは事実でしょう。

人々がこれに気付き始めれば、案外、あと10年もすれば、NHKの契約数は「自然減」し、NHKは現在の地上波テレビ2チャンネル、ラジオ3チャンネル、衛星4チャンネルの合計9チャンネルを有するという体制を維持することはできなくなるかもしれません。

結局のところ、NHKと総務省が放送法第64条第1項の維持に拘り続けていることは、世の中にチューナーレスTVの普及を促進させ、やがてはNHK自身の首を絞める方向に働いているのです。皮肉なものですね。

いずれにせよ、NHK受信料も「利権の第3法則」からは逃れられないと思うのですが、いかがでしょうか。

新宿会計士:

View Comments (28)

  • USB-C 形端子と HDMI 端子2系統の 4K ディスプレイを購入しました。
    安くなかったのですが、いい買いものでした。
    ・Amazon Fire Stick 4K を HDIMI に繋げて「ネット TV 化」してみた= すぐ飽きて外した
    ・ゲーム機も家庭用ビデオ装置類も一切所有していないので当方の場合 HDMI はあまり役に立たない
    ・USB-C 端子、これの使い道がすばらしかったです。本来は DisplayPort 信号を送るためにあるのだけれど、そのほかに
    1.給電してくれる
    2.4K ディスプレィ背面の USB3 Type-A 端子が使える
    超薄型最新型ノート PC との組み合わせにぴったりの製品と買ってから気が付きました。
    Picture-in-Picture 機能があり、BBC なり Aljazeera なり CNN なり FOX なりを画面隅(位置は選べる)に縮小表示させておき、気になる報道が見えたらそれに切り替えるという使い方もできます。
    今すぐ TV を捨ててスマートライフに。

  • 放送法の“解釈改憲”はNHKの会長に委ねられているのでしょうか?

    違うのであれば、会長は独自の“解釈改憲”で物事を進めちゃあ駄目ですね。

    ちゃんと“根回し”をしないと。

  • >営利を目的とせず、

    受信料の低減(利益還元)によらず、経費の水増し(高額人件費)によって利益を抑制してるのだから”本末転倒”なんですよね。

    NHKが放漫経営の ”そしり” を免れたいのであれば、最低限の公共性を担保するべきですね。
    具体的には①給与体系を国家公務員に準ずること②公務員の国籍条項を準用すること。ですね。
    ・・・・・

    「真実を オブラートに詰め 発信じゃ ”包装局”だよ NHK」
    「受信料 エンタメ制作 のど自慢。 誰がために 鐘は鳴る(カネは成る)」

  • NHK がかつての Twitter Japan の某チームように職場規律が弛緩してやりたい放題の暴走組織になっている可能性は大です。状況証拠からそう見えます。なぜ政府・報道機関ははそれを問題にしないのだろうか、本当に不思議だ。
    カネを余らせていてやりたい放題やっているところに必ず不正あり。会計士どのの腕がなるということですね、分かります。

  •  何故NHKの存在が国会で疑問視されることがないのか。それが一番の謎であり闇であると思う。
     NHKが民主主義を超越した独裁的ななにかだとしたらどう戦えばいいのか。

    • 疑問視した国会議員はいましたが、その後どうなったのかは知りません。報復をおそれずに、こういう主張は継続してほしいものです。

      H25.4.12 衆議院予算委員会第二分科会 
      鬼木誠(自由民主党) NHKに対し、公共放送としての認識を質す
      https://www.youtube.com/watch?v=qLCIojo8eMU

      自民議員、NHKを激しく罵る 
      https://www.j-cast.com/2015/04/17233371.html?p=all

      放送法改正の機運が高まらないとなれば、国民が「兵糧攻め」にするしかないのでしょう。どっかのホテルチェーンが不動産会社が「新規物件にTVチュナーはつけません」と表明したらおもしろいのに。

      • 弱体化しつつあるとはいえ旧メディアに睨まれても面倒なので、静かに既存TVを撤去し、貸出サービスの一つとして、毛布・電気スタンド・ズボンプレッサーの次にTVチューナーを並べるのではと思います。

      • Amazon Fire Stick の購入者コメントには、それを出張に持ち出して館内アナウンス広報装置になっている部屋備え付けの TV の HDMI 入力に差して、自分のネットアカウントで普段から視聴しているネット番組を出張先でも楽しんでいるというものがあります。賢明なやりかたです。海外出張でも地域次第ですが活用できそう。トラベルポーチなどもちゃんと商品になっています。

  • NHKは相変わらず強欲ぶりですね。
    以前の選挙でNHK党に投票しましたが、
    所詮パフォーマンス党で失望しましたので、
    利権第三の法則が発動してもらいたいものです。

    今のところチューナーレスTV(スマホやPCのモニターもでしたか?)
    は受信料を支払わなくていいことになってますが、
    放送法の解釈変更などで対策を講じてもおかしくないですよね?

  •  少なくとも、会長がこんな発言をしなければならなくなっている時点で、少なくない国民がNHKから受けるとされる公益の価値に納得していないということは明白です。であればNHKがやるべきは、それは誤解だなどと責任転嫁を喚くことではなく、実際の価値を上げるか大人しく撤退するかのはず。そしてそれらはどちらも兆候すらなく、望まれているのは後者です。
     認識が2周ほど遅れていますね。認識していて誤魔化しているのならもはや悪です。

    • 農民さま
      >会長がこんな発言をしなければならなくなっている時点で、少なくない国民がNHKから受けるとされる公益の価値に納得していないということは明白です。
      NHK常識によれば、NHK会長が言う前に、日本国民からこんな主張が出てこなけれならない、ということでしょうか。

      •  NHKの常識とやらを私が知るすべはありませんし、因果関係というか順序が逆になります。
         リンク読売記事中にも「(娯楽番組部分の)スクランブル化を望む」声や「NHK忌避のためにTVを持たない」風潮が挙げられています。国民からの主張どころか既に現象になっており、関係者も傍観者も把握していて、取材記事自体が主題のBS予算化に加え上記を受けてのものという面が強いでしょう。
         すでに主張もされ現象も起きはっきりと指摘までされて、なお開き直っているから問題なのです。

  • 稲葉会長は全然世俗の意識、風潮を理解して無い。そもそも、テレビは見ない、有っても付けないモノに成り果てている。お茶の間で家族が揃って見るなんて事は無いの。

    不法な料金を強制徴集するやり方、中身のペラッペラな番組、反社を助長するドラマ。NHKに「豊かなエンターテインメントを提供する」ことなんぞ求めていない。平均1,550万円という法外な年収を半額程度に減額し、余剰金と含み資産は国庫返上。見たく無い人から金を徴集するのは辞めなさい!

  • 「NHK村のなかでは、NHK既得権は絶対である。(NHKも含む)テレビ業界村のなかでは、村の中なかでの空気が絶対である。(テレビ業界村も含む)日本マスゴミ村のなかでは、村のなかでの人間関係が絶対である」ということでしょうか。

    • hahahahahaha!!

      上手いわあ~!アハハ。

      いらねえ⇒いらヌエってか~。

    • とある東京都民 さま

      ダジャレはサイト主どのおよびコメント投稿者たちの電灯芸もとい伝統芸です。

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