腐敗トライアングルは批判を嫌う
他人を舌鋒鋭く批判する人ほど、批判には弱いという特徴があります。新聞、テレビを中心とするオールドメディア勢がその典型例ですが、特定野党も負けてはいません。こうしたなかで、日本共産党の志位和夫委員長が「第8回中央委員会総会」の幹部会報告で、「在任期間が長すぎる」との批判を日本共産党に対する「攻撃」と位置付けたようです。志位委員長によるこうした認識自体、日本共産党という組織がこの自由・民主主義社会において、いかに異質な存在であるかを象徴しています。
目次
言論は自由だが、批判も自由
「自分たちは他人を批判する権利を持っているが、他人は自分たちを批判する権利を持っていない」――。
そんな態度を取る人たちがいたとしたら、おそらく普通の人ならば呆れ返ります。
自由・民主主義社会においては、言論の自由が保障されていますが、「言論の自由」は「基本的には何を主張しても良い」という意味であるだけでなく、「自分が主張した内容を批判する自由」を他人が持っている、という意味でもあるからです。
これは、ごく当たり前のことでしょう。
たとえば「日本は財政再建のために、増税をしなければならない」、などと主張することは自由ですが、「資金循環バランスに照らして、日本は財政再建をしなければならない状況ではない」、「増税すれば経済の活力が削がれ、結果的に財政状態はより悪化する」、といった反論を受けることも覚悟しなければなりません。
また、「安倍(晋三総理大臣)は独裁者だ」、などと主張することもまた自由ですが、これに対して「自民党は正当に実施された選挙を通じて国会で多数を得たのだから、安倍総理や菅義偉総理、岸田文雄・現首相らが独裁者であるとの指摘は当たらない」、という反論も出て来るはずです。
つまり、よっぽど反社会的な内容でない限り、日本のような自由・民主主義国家ではどんなことを主張しても自由ですが、それと同時に自由・民主主義が健全に機能していれば、おかしな主張に対しては容赦ない反論が飛んでくるのです。
社会のネット化で「手紙リレー」が爆速化:報道が批判される時代に!
こうした状況を加速させているのが、インターネットです。
とりわけ、昨今はインターネット環境の急速な普及と発展により、私たちのような一般人であっても、不特定多数の人々に向け、気軽に意見を発信することができるようになりました。わかりやすいのがツイッターなどのSNSですが、これらのSNSではアカウントを作るのも簡単ですし、操作も簡単です。
ひと昔前だと、自分自身の意見を世に広めるためには、新聞の読者投稿欄を利用するか、それとも手間暇かけて「手紙リレー」(『ツイッターで「手紙リレー」による新聞社批判が爆速化』等参照)でもするくらいしか、方法はありませんでした。
著者自身が今から数十年前に体験した、「新聞記事を切り抜いてコピーし、ワープロで作成した意見とともに封書で友人に送る」。「受け取った人はその内容を読み、共感したらそれをさらにほかの人にも転送する」。手間もカネも時間もかかる方法であり、こんな方法で自分の想いを社会に問いかけることなどできません。ところが、現代社会だと手間もカネも時間もかけず、PCないしスマホの操作で、とっても簡単に、瞬間的にこれを行うことができます。社会の急速なIT化早いもので、あと19時間後に、今年が終わります。私たち現代人の多... ツイッターで「手紙リレー」による新聞社批判が爆速化 - 新宿会計士の政治経済評論 |
しかし、かつては多大なコストと時間を要していた「手紙リレー」は、ツイッターや『Yahoo!ニュース』の読者コメント欄などを活用すれば、ほぼコストゼロかつ一瞬で実施できます。ツイッターを含めたSNSなどの発展は急速であり、機能の拡充も目を見張るものがあります。
つまり、社会のインターネット化は、結果として、私たち一般人にとっては言論の自由の場が飛躍的に拡充されたことを意味するのです。
腐敗トライアングル側は「気に入らない」
ただ、そのことが気に食わない人たちもいます。
当ウェブサイトで「腐敗のトライアングル」と呼ぶ、官僚機構、オールドメディア、特定野党による支配構造がそれです。
これまで、官僚機構は記者クラブ制度などの仕組みを使ってオールドメディア(とくに新聞、テレビ、通信社など)を支配し、オールドメディアは報道を通じて特定野党を陰に陽に支援し、特定野党はスキャンダル追及などのくだらない国会質疑を通じて政権与党の足を引っ張る、といったことが横行していたのです。
その極地が「もりかけ問題」、つまり「安倍晋三(氏)が内閣総理大臣としての地位を悪用し、個人的友人が経営する学校法人に対し、何らかの違法な便宜を供与していた疑い」でしょう。
とくに「森友学園問題」は、財務省(近畿財務局)による学校法人への土地の払い下げ手続に大きな問題があったことはほぼ間違いないのですが、それをメディアが「安倍総理の問題」に捻じ曲げて報道し、野党もこの問題でしつこく安倍政権を追及しました。
「加計学園『問題』」に至っては、問題でも何でもなく、文部科学省が法律の規定を捻じ曲げ、獣医学部の設立を不当に認可しなかったことに諸悪の根源があり、また、政府による加計学園に対する獣医学部設立認可プロセスに何ひとつとして瑕疵はなかったのです。
つまり、この「もりかけ問題」は、官僚機構が発生させた問題を、オールドメディアがまるで「自民党・安倍政権が発生させた問題」であるかのごとく捻じ曲げ、特定野党がそれを不当に追及したという意味で、まさに「腐敗トライアングル」の象徴のような事件だったのです。
ただ、かつてのように新聞、テレビが国民世論を支配していた時代ならともかく、現代社会にはインターネットが存在します。
2017年7月時点で実施された内閣世論調査で見ても、とくに当時実施されていた『ニコニコ動画』によるネット世論調査では、安倍政権に対する支持率は50%を超えており、ネット環境に慣れている人からすれば、「もりかけ問題」の怪しさには多くの人が気付いていたのかもしれません。
ジャーナリストらは批判されるのを嫌う
さて、こうしたなかで、この「腐敗トライアングル」に身を置いている人たちは、自分たちは相手を舌鋒鋭く批判するくせに、相手から批判されるのを極端に嫌うという傾向でもあるのかもしれません。
たとえばフランスに本部を置く「国境なき記者団(Reporters sans frontières, RSF)」が毎年公表している「報道の自由度」と呼ばれる調査では、日本は2023年版において、ランキングは68位と、「G7で最低水準」に留まりました。
その原因はいくつか指摘されているのですが、RSFのレポートの原文から日本に関する記述の一部を抜粋し、日本語訳しておくと、こんな具合です。
日本のジャーナリストの勤務環境は比較的安全だが、「中傷的」とされるツイートをリツイートしただけで政治家に訴えられたジャーナリストもいる。政府批判、福島原発事故により生じた健康被害など、「非愛国的」とみなされる問題を取り扱うジャーナリストらに対しては、SNSではナショナリストらのグループから定期的に嫌がらせが行われている。2022年12月には、日本外国特派員協会は爆破予告に加え、2人のジャーナリストらに対する殺害予告の電話を複数回受けている。
「ナショナリストのグループ」、などと書かれていますが、何のことはありません。ごく普通の一般市民です。
これに関連してひとつだけ事例を挙げるなら、以前の『首相記者会見で「逃げるんですか」発言記者に批判殺到』でも取り上げた、G7広島サミットの議長国会見で、とある記者の方が岸田文雄首相に対して「逃げるんですか」と発言してネット上で「炎上」した、などとする話題があります。
すでに予定を10分超過していた会見の場で、当初の予定通り4社からの質問に対する回答を終えて演台を去ろうとした岸田文雄首相に対し、とある記者が「逃げるんですか」と畳みかけ、岸田首相が演台に戻って3分ほど質問に答えた、という「珍事」が生じました。広島サミットという貴重な機会で重要な会議がおしている首相の時間を奪うほどの価値がある質問だったのかという点もさることながら、国民の代表者たる首相に対し、「逃げるな」とは、いったいなにさまのつもりなのでしょうか。マスコミ業界の苦境いわゆる「マスコミ」業界の未... 首相記者会見で「逃げるんですか」発言記者に批判殺到 - 新宿会計士の政治経済評論 |
この事例は記者の質問の仕方自体に大きな問題があったというものですが、いずれにせよ、個人的に注目したいのは、オールドメディア業界では「一般人からのネットでの批判」を「攻撃」と受け止める傾向がみられる、という点でしょう。
在任期間が「長すぎる」批判は「共産党への攻撃」
そして、このことは特定野党界隈でも同じかもしれません。というのも、こんな話題が出て来たからです。
第8回中央委員会総会 志位委員長の幹部会報告
―――2023/06/24付 日本共産党HPより
リンク先記事、文字数をカウントすると3万文字を超える長文ですが、正直、極めて空虚であるだけでなく、支離滅裂という代物です。もし時間に余裕がある方がいらっしゃれば、原文をじっくり読んでいただいても良いかもしれませんが、「時間を無駄にした」と後悔する可能性がありますのでご注意ください。
それよりも、本稿で注目しておきたいのが、「日本共産党に対する攻撃」という表現です。
「指導部のあり方にかかわって、『委員長の在任期間が長すぎるのが問題だ』という批判・攻撃があります。たしかに他党に比べれば長いのは事実です。しかし、批判者たちは、『長い』ことのどこが『問題』と言っているのでしょうか。結局、批判の中身は、『選挙で後退した』『党勢が後退した』というもので、私個人が政治的に重大な誤りを犯したとか、品性の上で重大な問題点があるという批判ではありません。つまりこの攻撃の本質は、日本共産党そのものに対する攻撃ではないでしょうか」。
志位和夫氏は、よっぽど焦っているのかもしれません。志位氏は2000年11月24日から日本共産党委員長の地位にあることは事実だからです。
その間、日本共産党の獲得議席数は増えたり減ったりを繰り返していますが、少なくとも衆参それぞれ直近6回分の選挙結果を眺めてみると、そのうちの直近3回分では、議席を徐々に減らしているという傾向がうかがえます。
衆議院議員総選挙(過去6回分)
- 2005年…*9議席(選挙区0議席、比例*9議席)
- 2009年…*9議席(選挙区0議席、比例*9議席)
- 2012年…*8議席(選挙区0議席、比例*8議席)
- 2014年…21議席(選挙区1議席、比例20議席)
- 2017年…12議席(選挙区1議席、比例11議席)
- 2021年…10議席(選挙区1議席、比例*9議席)
参議院議員通常選挙(過去6回分)
- 2007年…3議席(選挙区0議席、比例3議席)
- 2010年…3議席(選挙区0議席、比例3議席)
- 2013年…8議席(選挙区3議席、比例5議席)
- 2016年…6議席(選挙区1議席、比例5議席)
- 2019年…7議席(選挙区3議席、比例4議席)
- 2022年…4議席(選挙区1議席、比例3議席)
この点、獲得議席数は他党との選挙協力の有無にも依存するため、単純比較は困難ですし、議席は増減を繰り返しているのも事実でしょう(※とくに2014年衆院選に関しては、その直前・12年の衆院選と比べ、日本共産党は議席を大きく伸ばしています)。
しかし、一般にこの状況を「選挙で前進した」とは言い難いでしょうし、とくに衆議院議員総選挙における直近3回分に関しては、志位和夫委員長の下で日本共産党が獲得議席を減らしていることは間違いありません。
また、他党と比べて在任期間が「長すぎる」というのも事実の指摘であり、これを「批判」だ、「攻撃」だととらえるのはいただけません。自由・民主主義社会においては、日本共産党が何を主張するのも自由ですが、それと同時に日本共産党は批判も甘んじて受けなければならないからです。
志位氏は安倍総理を「独裁」と批判した
ちなみに志位委員長自身、2015年7月に安倍総理を「独裁」と舌鋒鋭く批判していました。
徹底審議と国民運動で戦争法案を必ず廃案に/民主主義守れ、独裁政治許すな、安倍政権打倒を 志位委員長が会見
―――2015/07/24付 しんぶん赤旗より
しかし、その日本共産党は、党首公選制を主張した党員を除名処分にしただけでなく、志位委員長自身が直接選挙を「非民主的」と批判するなど、非常に支離滅裂な言動を取っています(『直接選挙が「非民主的」?共産党の志位委員長の謎主張』等参照)。
志位和夫氏が20日、BSテレ東の番組の収録で、「直接選挙で党首を選ぶと党首に相当権限が集中する」ため「必ずしも民主的だと思っていない」と述べたのだそうです。なかなかに強烈な認識です。しかも、自身が党委員長として20年以上君臨するなか、その党運営を巡っては「ベストと考えられる人事を集団で検討して提案し、民主的に選出する手続を選んできた」とも述べたのだとか。「アベは~辞めろ~!」著者自身は故・安倍晋三総理大臣が在職していたころ、新宿などの繁華街で、「アベは~辞めろ~」などと叫ぶデモを頻繁に見かけた記... 直接選挙が「非民主的」?共産党の志位委員長の謎主張 - 新宿会計士の政治経済評論 |
「独裁」とは、民主的な手続によらずに党トップに20年以上居座り、異論を認めないどころか反対者を排除するという、志位和夫氏の行動そのものを指すのに適切な用語だからです。
いずれにせよ、自身の在任期間が「長すぎる」との批判を自党に対する「攻撃」とみなしている時点で、日本共産党がこの自由・民主主義社会において異質な存在であると自ら認めているのと同じであるというのは興味深い限りです。
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素朴な疑問ですけど、日本のオールドメディアで、共産党の志位党首の在任期間を(ただの数字ではなく)年月として意識している人が,どれだけいるでしょうか。
蛇足ですが、20年あれば、確実に当人は20歳、歳をとります。その結果、(もちろん、最初が何歳かにもよりますが)判断力などが前よりも鈍ってきます。しかし、当人は、自分だけは、もとのままだと思い込みたいのではないでしょうか。(これは、党首でけでなく、メディア経営陣も含めた人の性なのかもしれません)
メディアや政治家は露出するので国民に監視されるが、官僚は露出しないので、おかしなことをしても批判されにくい。
民主主義をよりよく運営するには、ディスクロージャーの範囲を広げることが不可欠。
>私個人が政治的に重大な誤りを犯したとか、品性の上で重大な問題点があるという批判ではありません。
いやいや、この2つの問題点は大前提と言えるでしょw
こういう政治家以前に人として問題だらけの人物が20年以上にも渡ってトップとして君臨し続けていることが最大の問題点でしょうに。
>結局、批判の中身は、『選挙で後退した』『党勢が後退した』というもので、私個人が政治的に重大な誤りを犯したとか、品性の上で重大な問題点があるという批判ではありません。
普通に考えれば、党首の示した路線に重大な誤りがあったから、選挙で得票数が落ち、議員数が減ったというのが、常識ある理解というものでしょう。
まぁ、アンチ共産党である私にとっては、C委員長は共産党を長期低迷に導いてくれた功労者ですが。
まぁ誰がトップであろうと党の質は不変でしょうね。
可能な限り早い時期に党ごと消え失せてくれることを願うのみです。
でもね、害虫や病原菌ほど、研究対象としては魅力的なものはないといいます。政界の大勢に影響のない範囲で、研究対象としての共産党は残ってもいいと思います。
私に対する非難は党への非難だ‼️、
欧米人に差別されたニダ、これはアジア人に対する差別ニダ‼️、
…あ、
やはり似てる。
共産党の一連の流れで、党員に遺産の党への寄進を呼びかけているそうで、既にお歴々が遺族と問題にならないように公正証書を作成しているそうです。
私有財産は持っちゃいけない…
税金はしゃぶらなくてはいけない…
この思想が新興宗教に該当しないのが不思議です。
共産党員の家に産まれたり婚姻で家族になってしまった方々…党員二世問題にならないのでしょうか?
スターリン総書記にあやかった有田ヨシフとかいう例がありますよ
なるほど、シベリア送りだ
後継者を育てられず、例え院政であっても代替わりできない組織はその代で滅びます。大変結構なことなので死ぬまで続けてほしいものです。
わかってる人には釈迦に説法ですが、
「20年間ずっと変わらず」
が問題なのではありません。
20年間ずーっと読者人気ランキング1位を維持してきたならば、それは偉大な王様です。
そうではなくて20年間ずーっと選択淘汰を経ていないのに1位を維持してきたことが問題なのですね。
なのに公選制度を提案した人を除名するとか、なんだかなー。
「志位のまま滅べばよろしい」
という意見には賛同です。
改良改善をアドバイスしてあげる義理なんてありませんからね。
威圧目的に訴訟を乱発する政治家は、小西しか知りません……
>福島原発事故により生じた健康被害など、「非愛国的」とみなされる問題を~
こんなの、きちんと証明できる記事をあげたらむしろ愛国的で喝采もので感謝までされるでしょうに。大抵は一方的な感想妄想を針小棒大に報じたりして嘲笑われているだけで。そしてそれは愛国云々と無関係で、困った人を商売のダシにして鞭打つ行為でしかなく、絶対に許せない。
帯化したキク科の花を見て「放射能だあああああ」なんて騒ぎ立てる程度の連中。
足かけ23年もトップに居たら、どんな組織でもマンネリ化と斬新な発想は出ません。他人に言うように独裁者になりますヨ。培ってきたモノを失いながら、タケノコの皮を剥くように細くより細くなるようなもんです。
今頃まで日本共産党がお天道さまのもとを歩けるのは、日本人の良識が共産党を破壊するほどの組織では無いと、大目に見ているからです。選挙、投票行為は自由だが、「ヒトとしては間違っている考えの方」と言う事です。
党勢改善に対する提言を”批判”だと受け止めるあたり、ジリ貧の元凶たる自覚はあるのでしょう。
党中枢の新陳代謝を止めたもんだから、老化の進行で”機能不全”に陥りつつあるだけのことです。
志位氏もそれなりのお歳なのだから後継者問題は避けて通れないでしょうに、
一向にそんな話は出てきませんねえ。
やはり「自分が死んだ後の共産党なんか知らん、滅んでもいい」とお考えなのか?
ここで存続の為の改革を成功させられるカリスマが出てこないと、共産党の滅亡は
時間の問題ですね(別の誰かが共産主義を掲げて別の政党を作るかも知れないけど)。