韓国で今夏、日本旅行ブームも…殴られた側は忘れない

今夏、韓国人の日本旅行需要が急増するようだ、とする記事が、韓国メディアに出ています。ウォンに対する円安などの事情もあるのかもしれませんが、それにしても数年前の苛烈なノージャパン運動は、いったいどこに行ってしまったのでしょうか?「被害者は千年経っても忘れない」などと言い放った人物がいましたが、少なくとも殴られた側は忘れないでしょう。

日本に経済的打撃をもたらさなかったノージャパン運動

2019年7月といえば、日本が安全保障上の理由で、韓国に対する輸出管理を厳格化・適正化したことを、韓国側が「不当な輸出規制だ」などと反発するなど、日韓の緊張関係が極端に高まった時期でもあります。

そして、韓国の日本に対する反発は、政府レベルだけでなく、民間レベルでも生じていました。

その典型例が、「ノージャパン」でしょう。

この「ノージャパン」は、ビールだの、自動車だのといった日本製品の不買に加え、日本への旅行の拒絶というかたちであらわれました。

現実に、日本政府観光局(JNTO)が公表している『訪日外客統計』に基づけば、2018年に754万人だった訪日韓国人は、翌・2019年には558万人に激減。もともと韓国人観光客が多かった対馬などの地域では、韓国人がいっせいに姿を消してしまったほどです。

ただし、それで日本経済が具体的な打撃を受けたのかといえば、話は別です。

もともと日韓貿易において、日本から韓国への輸出品目は、韓国語で「素材、部品、装備」と呼ばれる、「モノを作るためのモノ」が中心であり、ビールだ、自動車だといった最終消費財の割合は非常に低かったからです。

また、韓国人旅行客は1人あたりの支出単価が低いことでも知られており、韓国人の旅行需要で潤いっていた地域は限られていたなどの事情もあるため、対馬などの一部地域を除けば、基本的に地域経済に与えた影響はほとんど確認できていません。

というよりも、「観光業に深刻な打撃が生じた」という意味では、2019年8月以降に本格化した韓国による「ノージャパン」よりも、2020年3月以降に本格化したコロナ禍の方がはるかに大きく、「ノージャパン」そのものが日本社会に与えた経済的影響は、ほとんどなかったと判断して良さそうです。

韓国で日本旅行需要が急増=中央日報

こうしたなかで、韓国メディア『中央日報』(日本語版)に20日付で掲載されたこんな記事を見せつけられて、愉快だと感じる日本人がどれだけいるのかが不思議です。

円安と航空料の下落に…韓国人の日本旅行需要が急増

―――2023.06.20 11:13付 中央日報日本語版より

中央日報によると、韓国では今夏の日本行きの旅行パッケージ商品の予約が増加しており、「今夏、韓国人の日本旅行需要が急増する見通し」だというのです。

具体的には、「今月12~18日における日本旅行の予約率が前週比29.1%増加し、北海道や大阪を中心に新規予約が増えている」、「今月19日までに日本パッケージ旅行を予約した人数が10,102人で2018年の4,452人より2倍以上に膨らんだ」、などとする事例が取り上げられています。

これについて中央日報は、こう伝えています。

旅行業界関係者は『最近韓日関係が改善され、航空路線が回復傾向に入り日本旅行客が増えている』として『歴代級に落ちた円安も日本旅行の人気の一要因となっているようだ』と話した

…。

はて?

ウォンに対する円安が進んでいるなどの事情もあるのかもしれませんが、あの「ノージャパン」はどこに行ったのでしょうか?日韓関係が「改善」された、とありますが、韓国が解決すべき日韓諸懸案のうち、いったい何がどれだけ解決されたというのでしょうか?

どこかの国の頭の悪い首相が率いる政権が、最近、「輸出管理を元に戻します」だの、「FCレーダー照射を不問に付します」だの、「通貨スワップを再開します」だのとする動きを見せていますが、それは日韓関係「改善」ではありません。単なる日本の一方的な譲歩ですが…。

現実に急増している訪日韓国人

ただ、それ以上に驚くのは、現実のデータでしょう。

図表1は、2011年4月以降、日本に入国した韓国人の人数をグラフ化したものです。

図表1 日本に入国した韓国人

(【出所】JNTO『訪日外客統計』データをもとに著者作成)

訪日韓国人は、とくに安倍政権時代の2014年ごろから強く増え始め、ピーク時の2018年1月には瞬間的にたった1ヵ月で80万人という大台を突破したほどであり、韓国人の訪日需要が力強く続いていました。

ただ、先ほども述べたとおり、2019年8月以降、訪日韓国人は急減し始め(たとえば2019年8月の入国者数は31万人)、その後はコロナ禍に伴う入国制限措置に伴い、韓国人が訪日することがほとんど不可能になってしまったのです。

しかし、昨年10月に入国制限が条件付きで解除されると、訪日韓国人が急増し、昨年12月は46万人、今年1月と2月はそれぞれ57万人、3月と4月はそれぞれ47万人が日本を訪れました。ピーク時の2018年などと比べると少ないものの、それでも「ノージャパン」がウソのようにどこかに行ってしまった格好です。

なんとも不思議です。

訪韓日本人は増えているものの…日韓往来の人数はまったく異なる

さて、2023年5月の訪日外国人に関するJNTOによる最新統計(速報値)は明日16時15分に公表されるそうですが、それに先立って、本稿ではもうひとつ、興味深い情報を取り上げておきます。

韓国政府法務部が19日、5月における韓国に入国した外国人の国籍別・男女別内訳を公表しているのですが(韓国法務部『2023年5月出入国外国人政策統計月報』参照※韓国語)、これによると韓国に入国した日本人は185,770人で、今年3月に次いで高い数値を記録しました。

このあたり、コロナ前と比べるとまだ低調ですが、中東呼吸器症候群(MERS)が流行していた朴槿恵(ぼく・きんけい)政権時代の2015年頃と比べると、かなり力強く回復しているという言い方はできるでしょう(図表2)。

図表2 韓国に入国した日本人

(【出所】2023年4月分までは韓国観光公社データ、5月分は韓国法務部データをもとに著者作成)

しかし、入国者の「絶対数」で比べると、依然として韓国人の方が多いという状況です。

たとえば韓国に入国した日本人は3月時点で192,318人でしたが、日本に入国した韓国人は466,800人と2.4倍であり、それ以外の月はこの倍率がさらに拡大します。

また、5月に韓国に入国した日本人185,770人の内訳は、男性66,433人に対し女性が119,337人で、相変わらず女性の方が圧倒的に多いようです(果たして、韓国旅行は男性よりも女性の間で圧倒的な人気となっている、という事情でもあるのでしょうか?)。

このあたりの動向も、興味深いところだといえるでしょう。

殴られた側は忘れない

ただ、それ以上に興味深いのは、「数字に出てこない分野」です。

当ウェブサイトは「数字に出て来る部分」を議論するのは得意ですが、「数字に出てこない分野」、具体的には「国民感情」という点についても、今後追いかけていくテーマがあるテーマだと考えています。

韓国の「ノージャパン」は、間違いなく日本国民の対韓感情に、大きな傷跡を残しました。韓国が政府、メディア、国民一体となり、日本政府による措置を「『強制徴用問題』への対抗措置としての輸出『規制』だ」、などとありもしないウソを世界中に喧伝したからです。

韓国のこうした行動が、少なくとも一般の日本国民、とりわけメディアなどが「ネトウヨ」などと蔑む、しかし間違いなく社会のマジョリティを占めているであろう層の気分を害したことは間違いなく、それに対する後始末はいっさいつけられていません。

そういえば、どこかの国の大統領が昔、「被害者と加害者の関係は千年経っても変わらない」と言い放ちました。

日本にはどこかの国と違って、自分たちが受けてもいない被害を捏造して他国を批判するというカルチャーはありません。

ただ、それでも古今東西、人類に共通する鉄則がひとつあるとすれば、それは、「殴られた側は絶対に忘れない」、ではないでしょうか。もちろん、「殴られた側」は日本であり、「殴った側」は韓国です。

韓国人が今から4年前のノージャパン運動を「なかったこと」にして、日本にノコノコとやって来ること自体、中・長期的に見て、日本国民の対韓感情にいかなる影響を与えるかは、興味深いところです(それは無意味な対韓譲歩を繰り返す無能な政権に対しても、同様かもしれませんが…)。

本文は以上です。

読者コメント欄はこのあとに続きます。当ウェブサイトは読者コメントも読みごたえがありますので、ぜひ、ご一読ください。なお、現在、「ランキング」に参加しています。「知的好奇心を刺激される記事だ」と思った方はランキングバナーをクリックしてください。

にほんブログ村 政治ブログ 政治・社会問題へ

このエントリーをはてなブックマークに追加    

読者コメント一覧

  1. 匿名 より:

    日本国内の媚韓派に要注意ですね

    1. 駝鳥金融 より:

      それにしても媚韓の政治家や金融機関に限って、日本の美称である瑞穂(みずほ)を名乗るのは何故だろうか。 → 福島みずほ銀行

  2. マイナンバー より:

    『福島汚染水』で朝鮮半島周辺海域ですら『汚染されるー』と大騒ぎしているのだから、どうか日本には来ないでね。

  3. ジロウ より:

    口を開けば李在明、仕事っぷりは文在寅そっくりの自民党の口先隊長、佐藤正久議員はいつまで韓国への対抗措置を検討するWTを放置するつもりなんだろうか?

  4. 農民 より:

     全く日本に打撃が無かったのを知って赤面しながら無かったことにしているのか、本当に単純にもう忘れただけなのか、はたまたあれは大勝利でもう許してやるかという自己暗示の境地に到達したのか、現地情報が知りたいですね。

     ……どれであってもハズカシイなぁ。

  5. 無病息災の男 より:

    韓国からの訪日観光客と、その他の外国からの訪日観光客を同一レベルの価値判断で議論すべきではありません。
    なぜなら、「ZAKZAK by夕刊フジ」 にある室谷克実さんの記事によりますと、あまりに哀れな韓国人若者の日本旅行の実態。金のない旅行客!

    それは、…
    ①韓国では「海外旅行の経験なし」は「恥ずかしい」こと。そこで、安くて手軽な手法が「日本行き」。
    ②ほとんどは1泊2日の日程で、宿泊先は民泊やカプセルホテルや、24時間営業のサウナ風呂宿泊もあり。
    ③食事は安価な居酒屋、回転寿司、格安ファストフード、コンビニ弁当…。

    https://www.zakzak.co.jp/article/20230420-QM5B2MSFNNIJVLBE5X4SAH4K6I/

  6. 一之介 より:

    あえて言います。
    鬱陶しいから来るな‼️

  7. サムライアベンジャー(「匿名」というHNは、在日コリアンの通名と同じ恥ずべき行為) より:

     一部のものが韓流に引っ掛かり、大部分の日本人からは特に好かれていない、という事実を直視できないんでしょうかね。

     「ノージャパン」運動も、相手の気分を害した=悪いことをしたという認識もないんでしょうな。文化の違いとは恐ろしい。

  8. はるちゃん より:

    朝鮮人を相手にしている段階で阿保確定です。
    モグラ叩きと同じくキリがありません。
    相手にしているうちにこちらも頭の構造が同じレベルになって行きます。
    支離滅裂な人を相手に理性的な対応するのは、地獄に落ちる前の人に与えられた煉獄の世界のようなものです。
    韓国に囚われて抜け出せない人は地獄に堕ちる一歩手前なのかも知れませんね。
    現世を有意義に生きたいと思っている人はもっと前向きな課題に取り組まないと短い人生終わってしまいますよ。
    岸田首相の対韓宥和政策がストレスの震源になっていると思いますが。
    岸田首相には早く終わって頂きたいですが、日本の政治が次のステージに進めるのはあと数年かかると思っています。

  9. すみません、匿名です より:

    反日教育で育って、なぜ日本に???

    寺社連続油被害事件、靖国神社内爆破事件、寺社仏閣盗難事件、神社放火事件

    観光だけならいいのですが。。。

  10. はにわファクトリー より:

    本日韓国から飛んでくる関空到着便を調べました。
    第一便が 9:00 到着で最終は 22:50 到着予定だそうです。
    合計で 37 便あります(げっぷ)

  11. レッドバロン より:

    ここに集う皆さんからすれば、「嫌いな国になんで?来んなよ」だし、私も同感ではありますが、「そういう関係」って世界的には決して珍しくない、例がないということでもないのでは?

    例えば欧州人のアメリカに対する態度がまさしくそれかと・・。欧州人って何かとアメリカの
    悪口いいますし、対抗意識も強く、EUなんてアメリカへの対抗意識で成り立っているような組織ですが、一方でアメリカへの移民も多く、文化的影響も日本以上に強烈に受けています(なぜか野球は流行りませんが)。かのビートルズも初期は明らかにアメリカのロックンロールの影響が見え見えな曲が多かったし、アメリカンポップスのカバーも多かった。
    「好きの反対は嫌いではなく無関心」を地でいくような関係。

    私が個人的に知っているキリスト教の牧師さんも、日本のキリスト教会によくいる典型的な
    左巻きの人で何かといえば「アメリカ悪い」「米軍基地反対」な人ですが、そのくせ、スマホやパソコンはアップル、アメリカンドラマ、ハリウッド映画大好きで邦画や日本ドラマはクソ・・みたいな人でした。ややこしいなぁ、めんどくさいなぁですw。

    適切な喩えになっているのか?趣旨が上手く伝わったかはわかりませんが、韓国の観光客の多さと「反日」という矛盾した現象も何となくですがわかるというかみえる気もします。

※【重要】ご注意:他サイトの文章の転載は可能な限りお控えください。

やむを得ず他サイトの文章を引用する場合、引用率(引用する文字数の元サイトの文字数に対する比率)は10%以下にしてください。著作権侵害コメントにつきましては、発見次第、削除します。

※現在、ロシア語、中国語、韓国語などによる、ウィルスサイト・ポルノサイトなどへの誘導目的のスパムコメントが激増しており、その関係で、通常の読者コメントも誤って「スパム」に判定される事例が増えています。そのようなコメントは後刻、極力手作業で修正しています。コメントを入力後、反映されない場合でも、少し待ち頂けると幸いです。

※【重要】ご注意:人格攻撃等に関するコメントは禁止です。

当ウェブサイトのポリシーのページなどに再三示していますが、基本的に第三者の人格等を攻撃するようなコメントについては書き込まないでください。今後は警告なしに削除します。なお、コメントにつきましては、これらの注意点を踏まえたうえで、ご自由になさってください。また、コメントにあたって、メールアドレス、URLの入力は必要ありません(メールアドレスは開示されません)。ブログ、ツイッターアカウントなどをお持ちの方は、該当するURLを記載するなど、宣伝にもご活用ください。なお、原則として頂いたコメントには個別に返信いたしませんが、必ず目を通しておりますし、本文で取り上げることもございます。是非、お気軽なコメントを賜りますと幸いです。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

【おしらせ】人生で10冊目の出版をしました

自称元徴用工問題、自称元慰安婦問題、火器管制レーダー照射、天皇陛下侮辱、旭日旗侮辱…。韓国によるわが国に対する不法行為は留まるところを知りませんが、こうしたなか、「韓国の不法行為に基づく責任を、法的・経済的・政治的に追及する手段」を真面目に考察してみました。類書のない議論をお楽しみください。

【おしらせ】人生で9冊目の出版をしました

日本経済の姿について、客観的な数字で読んでみました。結論からいえば、日本は財政危機の状況にはありません。むしろ日本が必要としているのは大幅な減税と財政出動、そして国債の大幅な増発です。日本経済復活を考えるうえでの議論のたたき台として、ぜひとも本書をご活用賜りますと幸いです。
関連記事・スポンサーリンク・広告