東京都副知事交代に川松都議「突然の人事に都庁騒然」

川松都議によると「突然の退任」だそうです。東京都副知事で財務担当でもある武市敬氏が3月で退任すると報じられています。また、東京都が発表した3月末の退職者名簿では、財務局長も退職すると記載があります。川松都議は先週のツイートで、東京都副知事の交代に「都庁内は騒然」、と述べています。ただ、現時点でColabo問題とこの人事を関連付けるには、まだ材料が不足しているように思えます。

東京都副知事が交代

東京都の武市敬・副知事が退任するようです。

東京都、中村政策企画局長を副知事に起用へ

―――2023/3/23 18:59付 産経ニュースより

武市氏の後任として起用されるのは現・政策企画局長の中村倫治氏ですが、この中村氏は2021年10月25日から22年7月1日まで福祉保健局長を務めていました。

東京都ウェブサイトの説明によると、東京都には副知事が4人おり、都知事の職務を代行する順序は次の通り定められているそうです(敬称略)。

  • 第一順位 副知事 武市 敬
  • 第二順位 副知事 黒沼 靖
  • 第三順位 副知事 潮田 勉
  • 第四順位 副知事 宮坂 学

武市氏は2016年7月1日付で財務局長に就任し、東京都議会の同意を経て20年6月に副知事に就任しました。また、武市氏の後任の財務局長は2020年7月13日付で潮田勉氏が就任していますが、その潮田氏は都議会の同意を経て21年10月にやはり副知事に就任しています。

川松都議「財務担当副知事の交代」「突然の人事」

この武市氏が財務局担当の副知事でもあったためでしょうか、武市氏の退任を巡っては、ツイッター上でこんな発信がありました。

自民党の川松真一朗・東京都議は、「財務担当の副知事」が交代するという「突然の人事」で「都庁内が騒然」としている、とツイートしているのです。このツイートからは、どうもただならぬ雰囲気が漂ってきます。

この「川松氏」といえば、『Colabo問題で地方自治法違反か=川松真一朗都議』でも取り上げたとおり、東京都福祉保健局が一般社団法人Colaboと締結した業務委託契約を巡り、財務局の前山琢也・契約調整担当部長から「福祉保健局から財務局への個別委任協議はなかった」との答弁を引き出した人物です。

川松都議の15日の都議会・財政委員会での質問手法は非常に秀逸で、徐々に外堀を埋める格好で、「1000万円超の随意契約」については、本来ならば都知事の承認や「見積経過調書」の作成が必要であるにもかかわらず、例のColaboとの契約ではこれらの手続がなされていなかった事実が明らかになりました。

場合によってはColaboなどの団体の問題ではなく、東京都や厚生労働省まで巻き込む壮大な法令違反の疑いも生じて来るのですが、新聞、テレビを中心とするオールドメディアは、なぜかこの問題をほとんど取り上げていません(これがいわゆる「報道しない自由」でしょうか?)。

東京都幹部人事と東京都若年女性支援事業の関連は?

もっとも、オールドメディアが報じなくても、最近だと、知的好奇心が旺盛な人たちが事実関係を調べ、ネット上で報告するという作業が行われるようになっているようです。

Colabo問題で「OSINT」も疑惑を追いつめる』でも取り上げたとおり、複数のツイッター・ユーザーが東京都幹部の人事異動を追いかけた結果、前財務局長が副知事に、前福祉保健局長が財務局長に、それぞれ異動している事実を発見し、報告しています。

東京都のウェブサイト『幹部人事異動』に開示されている局長級などの人事異動を調べると、2020年7月13日に財務局長に就任した潮田勉氏が翌・10月24日に「退職」して副知事に就任。保健福祉局長だった吉村憲彦氏が後任の財務局長に就任していることがわかります。

「保健福祉局長→財務局長」、「財務局長→副知事」、という人事異動を見ると、吉村憲彦財務局長(前保健福祉局長)、あるいは前財務局長である潮田勉・副知事が、「東京都若年被害女性等支援事業」の概要を知らないはずはないでhそう。

また、東京都が先日公表した今年3月31日付の退職者名簿を見ると、吉村財務局長も退職するようですが、この吉村氏の退職が単なる定年退職なのか、それともなにかほかに背景があるのかについては、関連する報道・情報が少ないため、よくわかりません。

ただ、吉村氏自身が保健福祉局長と財務局長を務めているという事実に関してはオープン・ソースからも明らかな事実ではあります。

たしかな情報はまだわからないが…気になるところ

いずれにせよ、問題となっている「東京都若年被害女性等支援事業」は、平成30年度(2018年度)から始まったもので、まさに武市氏が財務局長だった時代と重なっています。

例の「暇空茜」氏の住民監査請求で実施され、昨年12月28日付で提出された監査報告書(※実際の公表は今年1月)の10ページ目などにも記載のとおり、この若年女性支援事業自体は国の事業として始まったものです。

川松氏らの質疑でも見えてきたとおり、本件は東京都規則で必要とされる財務局との協議もなされておらず、見積経過調書の作成や情報公開などの必要な手続が漏れているなど、さまざまな点において地方自治法・同施行令・東京都規則などへの違反の疑いが濃厚な案件ではあります。

ただ、武市氏の退任が「Colabo問題」と何らかの関係があるのかどうかは気になるところですが、表に見えてくる人事を「Colabo問題と関係している」とまで断言するには、現時点では少し材料が不足しています。

実際、武市氏は1960年生まれの63歳ですので、今回の人事異動、単純に武市氏が年齢のため退任しただけのようにも見えます(実際、数名について調べてみたところ、東京都副知事はだいたい60代前半で退任しているケースが多いようです)。

また、「保健福祉局長経験者」である吉村憲彦氏が退職する一方、同じく「保健福祉局長経験者」である中村倫治氏が副知事に就任するわけですし、財務局長経験者である潮田副知事は退任しないため、一連の人事を単純にColabo問題と関連付けるには、少し視野が狭いようにも見えます。

以上より、現時点において、本件についてはもう少し様子を見るのが正解かもしれません。

本文は以上です。

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読者コメント一覧

  1. クロワッサン より:

    副都知事を退職して民間人になると、都議会での“証人喚問”のハードルは上がるんでしょうか?

    上がるのであれば、「年齢」を隠れ蓑にした…。

    ちなみに、東京新聞は3/8にこう報じていました。

    Colaboへのバッシング、離婚後の共同親権…女性の人権問題について男性議員に聞いた
    2023年3月8日 06時00分
    https://www.tokyo-np.co.jp/article/235232

    Colaboを擁護したい東京新聞のポジショントークならぬポジション報道に見受けられ。

    >都は3日、返還請求しないと結論づけた。

    都の判断には行政に求められる中立性の観点から疑念の声が出ているのですが、取材時点では出ていなかったのかどうか。

    >例えば、政治活動は国民の権利なのに、コラボ代表が過去に野党を支援したことを非難する人がいる。

    コラボ代表が被保護者を政治活動に“動員”している形になっている事は問題視しない、と。

    >彼女らが政府の有識者会議に参加したことを「国との癒着」「利益相反」と断じる人もいる。こうした人は、自民党と密接な関係を持ち、政策決定に影響力を持つ企業や団体のことは、なぜ問題視しないのだろうか。

    Colaboは公金で支援する対象を選ぶ立場と公金での支援を受ける立場の両方に立っていたと認識しているのですが、『自民党と密接な関係を持ち、政策決定に影響力を持つ企業や団体』で同様に両方の立場に立つ企業や団体は居るのですかね?

  2. 引きこもり中年 より:

    詳しい人がいれば教えてください。
    東京都庁の一般職員の間では、今回の副知事交代の原因が、何であると噂になってますか。(もちろん、これが正しいとは限りません)

  3. カズ より:

    「当事者・その他人事」の真意は、突然であるほどに、
    「困った事態の他人事(ヒトゴト)化」だったりするのです。

  4. 人工知能の中の人 より:

    川松都議がなぜ突然とtweetしたかと検索してみたら「本来であれば7月の(福祉保健局の)組織改正にあわせて人事を行うのが合理的」だそうです。実際にこの武市副知事も就任は2020年6月22日と年度末とは関係ない時期でした。

    以下は調べたら上記結論がすぐ出てきたので無駄になった書き込みをよもやま話として

    wikipdiaに東京都副知事一覧があって取り急ぎ三人ばかり手計算してみたら60歳で副知事として公務員を退官してますね。「副知事の任期は、四年とする。(地方自治法第163条)」とありますが一覧の就任期間は例外あってもだいたい2年が多く、一般的な65歳定年より前だったり任期途中だとしてもおかしくは無いでしょう。

    公務員上級職の早期退官は私の聞いた事例でも組織の長などはその少ない席次を多くの人員に回すべく定年前にやめるよう肩たたきがあるとの事。その役所でも以前は天下りなどでその穴埋めをしていたのですが、直前になって斡旋に規制がかかり年金受給開始まで期間があるため高級職ほど厳しいや、という話でした。(さすがに東京都副知事ですと後職は都の関連団体なので安泰ですね。)

  5. Mackey4444 より:

    都庁人事移動

    武市敬副知事は、退職 (定年退職かどうか不明)
    西山福祉保健局長は、水道局長に。
    奈良部瑞枝福祉保健局少子社会対策部長は、生活文化スポーツ局総務部長に。
    榎本光宏福祉保健局少子社会対策部育成支援課長は、福祉保健局少子社会対策部保育支援課長に。

    **************************
    都庁新体制
    副知事は、中村倫治(現政策企画局長) 元福祉保健局長
    福祉保健局長は、佐藤智秀(現福祉保健局健康危機管理担当局長)
    福祉保健局少子社会対策部長は、西尾寿一(現福祉保健局子供子育て施策推進担当部長)
    福祉保健局少子社会対策部育成支援課長は、岡本香織氏(現福祉保健局医療政策部医療人材課長)

    つまり、今まで若年被害者福祉事業とかと関係ない人達ばかりが移動してきた。児童相談所とか女性支援センターとかからの移動はなし。

    これは、恐らく今までのしがらみを全て断ち切るという小池百合子都知事の意思かと思われる。つまり、小池百合子都知事は、colabo等4団体との関係を断ち切る覚悟では無いか?(希望的観測

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