台湾型と北朝鮮型=断交の2類型

ツイッターで昨日、「完全断交」というトレンドが発生していました。さて、ここでいう「完全断交」とは、いったい何でしょうか。国交断絶のことを意味しているのだとしたら、その「断交」には少なくとも「台湾型」と「北朝鮮型」の2つの類型が存在するからです。この点、経済的に密接な関係にある国と、今すぐ「北朝鮮型の断交」ができるわけではありません。しかし、今からその「準備をする」ことは可能でしょう。

「完全断交」とは?

「イーロン・マスク改革」(?)以降のツイッターでは、それ以前ではなかなか考えられなかったような「トレンド」が発生するようになっているように思えてなりません。

実際、昨日はツイッターを眺めていたところ、「完全断交」というトレンドが発生していました。

きっかけはよくわかりませんが、ツイートにリンクされている「まとめサイト」等から判断する限り、どこかの国の日本に対する行動に嫌気がさした一般のツイッター・ユーザーの多くが自然発生的に「完全断交」とツイートしたものが、トレンドに上がった、というのが実情に近いようです。

ここでいう「完全断交」が、何を意味するのかについてはよくわかりません。もし「断交」が「国交断絶」のことを意味しているのだとしても、その「断交」には、さまざまな形態があるからです。

日台断交の実情

たとえば、日本は現時点において台湾(中華民国)とは「断交」していますが、経済的な関係は密接であり、2022年においては貿易相手国として韓国を抜いて4位に浮上したほどです(『データで見る「20兆円貿易赤字」の削減は意外と簡単』等参照。なお、1位中国、2位米国、3位豪州)。

また、日本政府は台湾を「基本的価値を共有し」、「経済関係と人的往来を有する極めて重要なパートナー」、「大切な友人」と絶賛しています。

台湾は、日本にとって、自由、民主主義、基本的人権、法の支配といった基本的価値を共有し、緊密な経済関係と人的往来を有する極めて重要なパートナーであり、大切な友人である」(令和4年版外交青書・P43)。

たしかに、日本の周囲には中国、ロシア、北朝鮮など少なくとも4つの無法国家が存在するため、台湾のような成熟した民主主義「国」が日本の近所に存在していることは、大変に心強いことでもあるのでしょう。

いずれにせよ、日台関係のように、「国同士の正式な外交関係は存在していないが、経済的には密接な関係があり、政府間にも信頼関係が醸成されつつある」という状態であっても、「断交」と呼ぶことがあるのです。

日朝断交は本当の意味での「交流断絶」

これに対し、北朝鮮に関しては、「国同士の正式な外交関係が存在していない」という意味では台湾とまったく同じですが、経済関係でも、ほぼ断交状態にあります。

日本人拉致事件、核・ミサイル開発などの相次ぐ不法行為を受け、日本は北朝鮮に対し経済制裁の一環として輸出入規制を科していることもあってか、現在の日朝貿易高はほぼゼロに等しく、また、日本の金融機関の北朝鮮向け与信もほぼゼロです。

これに加え、日朝間の人的往来も決して多くありません。

少なくとも北朝鮮国籍保持者の訪日は、よほどの事情がない限り許可されませんし、北朝鮮籍の船舶の乗組員は日本に上陸することすらできません(外務省・2016年2月10日付『我が国独自の対北朝鮮措置について』等参照)。

また、東洋経済オンラインの2019年9月4日付の『年間20万人が訪れる「北朝鮮観光」のリアル』という記事によると、2018年を通じて北朝鮮を訪れた日本人は360人だったそうですが、これは同年の出国日本人総数(1895万人)の0.0019%(!)に過ぎません。

今すぐ「北朝鮮型」は難しいが…

つまり、「断交」にも「台湾型」と「北朝鮮型」があるのです。

  • 台湾型断交…政府間の公式な関係は存在していないが、経済的な関係は続くような断交
  • 北朝鮮型断交…政府間の関係だけでなく、ヒト、モノ、カネの往来もほとんどなくなるような断交

ツイッターのトレンド欄で発生した「完全断交」がどちらの断交を意味しているのかについてはよくわかりませんが、もし「台湾型断交」であれば、「完全断交」したとしても、経済関係は今後も続くことになります。

その一方で、冷静に考えてみると、北朝鮮型の国交断絶というのは、なかなかに難しそうです。

現に経済的な関係が密接であり、相互の人的往来も多く、お互いの国に国民が多数居住しているような状況で、いきなり「入国禁止」、「輸出禁止」、「輸入禁止」といった措置を講じることになれば、社会的にも経済的にも産業的にも、大変に大きな混乱が生じるでしょう。

ただ、ここで考え方を少し変えて、「その相手国とこれ以上関わるのが嫌だから、あまり関わらないようにしたい」という意味であれば、べつに「断交」という形式にこだわる必要はありません。極端な話、日本企業や日本国民が意識を変えれば、国交を維持したままでもその相手国との関係を減らしていくことはできるからです。

まず入国ビザから始めては?

たとえば、手始めに入国ビザの扱いの変更が考えられます。

外国人観光客、人数に加え「1人当り消費額」を目標に』でも指摘したとおり、インバウンド観光客の誘致目標に「1人あたり消費額」という測定尺度が重視されるようになれば、「人数ありき」の観光行政にも変化が生じるかもしれません。

もう少しハッキリ申し上げるなら、現在、日本がその相手国に適用している「ビザ免除」措置に変更を加えても良いと思います。

たとえば、現在、ある国の国民に対しては、ノービザで90日までの滞在を認めていますが、観光庁『訪日外国人の消費動向』(※PDFファイル)によれば、その国の平均宿泊日数は1週間に満たないのだそうです。

ということは、滞在可能日数を90日から15日にまで短縮するというのは、ひとつの賢い選択しでしょう。というのも、どうせその国の観光客の滞在日数は平均1週間未満なのですから、ノービザでの滞在可能日数が減らされたところで、その国からの観光客が減ることはないはずだからです。

諸懸案を敢えて放置するのも手だ

あるいは、その国との間で積みあがるさまざまな懸案についても、解決させずにあえてそのまま放置し続ければ、その国と積極的に関わろうとする日本企業の数は減るでしょう。

もちろん、日本企業にもさまざまな会社がありますし、日本国民にもさまざまな人たちがいますから、なかにはその国が好きでたまらないという人もいるでしょうし、その国と積極的に関わろうとする企業がいても不思議ではありません。

が、それはそれで自由にすればよい話であり、大部分の日本企業、日本国民がその国と距離を置くという状況が生じれば、結果的に「現在と比べてその国との経済的関係が縮小する」ことを通じ、「北朝鮮型の断交」に近づけることもできるかもしれません。

いずれにせよ、普段から当ウェブサイトで申し上げている通り、外交の世界では敵対国は少なければ少ないほど良く、友好国は多ければ多いほど良いことは間違いありませんが、それと同時に、「友好国のふりをした敵対国」ほどたちの悪い存在はありません。

わが国がある国と仲良くするかどうかを判断する際には、その国がわが国にとって「戦略的に重要」かどうかという軸と、その国がわが国と「基本的価値」を共有するかどうか、という軸が必要です。

その国がいくら「戦略的に重要」だったとしても、「基本的価値」を共有しないのであれば、そのような相手国とは心の底から共感し合う関係になることはできませんし、あまり関係を深め過ぎれば、却ってわが国の利益を損ねます。

いずれにせよ、著者自身がとある国との「完全断交」が今すぐ実現可能だとは思いませんが、その相手国が日本と基本的価値を共有せず、ウソをついてありもしない罪を捏造し、法的な根拠のないことを要求してきているのだとすれば、むしろ長い目で見て、その国との関係は清算していかねばならないと考えています。

このように考えると、その相手国と諸懸案が積みあがっているという状況は、逆にその国と「断交」に近い状況になるための準備段階なのかもしれない、などと思う次第です。

※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※

なお、批判を覚悟でこう申し上げておきましょう。

「台湾に行きたいわん!」と。

本文は以上です。

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読者コメント一覧

  1. オタク歴40年の会社員です、よろしくお願いいたします より:

    中国、ロシア、北朝鮮など
    少なくとも四つの無法国家が存在するため~、

    中国「韓国がはみごにされた様だな」

    ロシア「ククク…奴は無法国家四天王最弱」

    北朝鮮「無法国家四天王の面汚しよ…」

  2. 七味 より:

    青字のとこ・・・・・・

    審議中なのです♪
    (*´・д・)(・д・`*)ヒソヒソ

    1. 元ジェネラリスト より:

      >青字のとこ・・・・・・

      (-“-)
      ↑眉間にシワ

  3. sqsq より:

    19世紀の英国首相パーマストンの言葉「英国は永遠の友人も持たないし、永遠の敵も持たない。英国が持つのは永遠の国益である」

  4. より:

    そもそも日本国は朝鮮民主主義人民共和国を自称する朝鮮半島北部を不法に占拠している組織のことを国家として承認したことはありません。従って、「断交」もへったくれもないわけです。記憶している限りでは、明治以降、日本が断交したのは、中華民国を除けば、第二次大戦の折りに、米英などの連合国に対してだけだったと思います。つまり、平時にわざわざ断交を通告するような真似を日本はほぼしたことがありません。

    その一方で、南北朝鮮双方をそれぞれ国家承認し、外交関係を維持している国々はたくさんあります。南北双方がそれぞれ憲法で「朝鮮半島唯一の合法政府」と規定していますが、各国がその矛盾をどう処理しているのかはよくわかりません。ただ、事実として、双方と国交を結んでいる国が少なくないということだけです。
    現状、日本国(およびアメリカ合衆国)は北朝鮮を国家承認していませんが、ここで各国に倣い、北朝鮮を国家承認したらどうなるでしょう? 間違いなく韓国は激怒します。上手くしたら、韓国側から断交を通告してくれるかもしれません。対韓断交を主張する人たちにとっては、一考の余地があるアイディアかもしれませんね。

    もっとも、日本だけでなく、アメリカも同時に北朝鮮を国家承認したら、韓国は激怒はするものの、ずるずると腰砕けになるような気もします。なにしろ、中国様が南北双方を国家承認していますので。

  5. めがねのおやじ より:

    北朝鮮とは断交状態ですが、日本には在日北朝鮮人が大勢生息しています。それも十数万人単位で(現在は帰化や韓国籍に変えたりして減少激しいですが)。断交状態なのに教育の機会均等とか生活保護費とか選挙権寄越せとか国立大学入学認めろとか、ヌカシてます。

    なお、私立大学のほぼ全数、公立大学の多くは入学許可してます。信教の自由とか学問の自由とか言って、解放している学校法人は多いですね、私には訳分かりませんが。日本の生活サービス、保健、医療を享受しながら、日本に悪態をつく。若者でもこの北朝鮮派の連中は、組織活動に熱心です。早よ帰ってくれ!

    韓国とは歴とした日韓基本条約に基づき、友邦関係に結ばれてますが、実態は日本が一方的に被害を被っています。気分的には北朝鮮と同じ断交状態です(私見)。両方とも迷惑しか感じません。離断で結構です。

    ちなみに、私の住む神戸市はこの度、民間機の国際線が認められました。大阪万博迄に施設は拡充されます。未来のイラストには航路があり、台北、ハワイ、グアム、フィリピン、シンガポール、香港、豪州、マレーシア、インドネシア、タイは載ってますが、中国、韓国はありません。どういう意味か、気になります。ほんとなら、嬉しい。

  6. 雪だんご より:

    「友好のゆの字も信頼のしの字もないが、一応経済的関係だけはある」
    これぐらいが今後の日韓関係の落ち着く所になりそうですね。

    文化交流?やりたい人達が勝手にやれば良い。政府や世論は変わりません。
    「我々は韓国と仲良くしたい!すなわち我々が正しい、我々に従え!」
    これはもう通りません。

  7. まんさく より:

    台湾型=友好、北朝鮮型=敵対、韓国型=たかりって考えれば簡単かと。建前は友好、本音は敵対、実体はたかりってのが韓国の本質なので、丁寧な無視で日本の損失を最小化すると言うのが最も有効です。

  8. 7shi より:

    >北朝鮮型断交…政府間の関係だけでなく、ヒト、モノ、カネの往来もほとんどなくなるような断交

    これも第2次安倍政権が制裁の抜け穴を塞いだから、そうなったんですよね。それまでは抜け穴だらけで、テレビのニュースでも 「じつはこの食材も北朝鮮産」 という、報道なのか宣伝なのか判らない特集をやってました。今も 「隙あらば国交樹立」 という勢力がいますし。

    なお、平壌支局を持っている共同通信は、未だにYouTubeの自社チャンネルに北朝鮮の取材映像をUPしています。平壌支局に日本人記者は常駐しておらず、現地スタッフが撮影したモノだそうですが、共同通信社は現地スタッフの給料や支局の維持費を北朝鮮に払っているわけですね。

    北朝鮮 – KYODO NEWS – YouTube
    https://www.youtube.com/playlist?list=PLZu70tymuL9RFnHzPeH-yn45sSpuVidpo

  9. 匿名 より:

    いまタグ覗いてきたら、解り合えるだの韓国は重要だの、本気なのか工作なのか判らないツイートが結構あって、こうやってお人好しの日本人はつけこまれてるのかと実例を目の当たりにした。

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