外貨不足のスリランカに対する国際通貨基金(IMF)の支援決定が遅れています。これについて日経は、IMFの担当者の「同国が救済措置の資格を得るための前提条件を満たせば理事会は早急に開かれる」とする発言を紹介していますが、裏を返せば現在のスリランカが「支援の前提条件を満たしていない」、ということでもありそうです。さらに、スリランカの債務再編問題は、日中が掲げる理念が正面からぶつかる可能性もあるかもしれません。
スリランカの外貨準備は危機的状況
スリランカといえば、今年、対外債務のデフォルト状態に入った国でもあるとともに、現在、急激な外貨流出などに伴う外貨準備の枯渇に悩まされている国でもあります。
国際通貨基金(IMF)が公表する『IRFCL』(正式名称は ” International Reserves and Foreign Currency Liquidity” )というデータベースでは、すべての国ではないにせよ、主だった国の外貨準備高について知ることができます。
これについてスリランカの外貨準備の推移を眺めてみると、(データとしては2015年10月分以降しかありませんが、)たしかに同国の外貨準備が急速に枯渇していることがわかります(図表)。
図表 スリランカの外貨準備高の推移
(【出所】 International Monetary Fund, “International Reserves and Foreign Currency Liquidity” より著者作成)
まさに綱渡り状態であり、危機的状況です。
人民元スワップの発動拒絶
ただ、スリランカといえば、個人的にもうひとつ気になるのは、同国が中国に通貨スワップの発動を要求し、拒絶された(と現地メディアに報じられた)という話題です(『スリランカからの通貨スワップ発動要請を拒否した中国』等参照)。
中国との「人民元スワップ」はイザというときに役に立つものなのか――。これについて、ちょっと考えさせられる事例が出てきました。先月「事前調整型デフォルト」に陥ったスリランカです。一部メディアの報道によると、スリランカは中国に対し、通貨スワップの発動を要求したものの、中国側が「輸入3ヵ月分をカバーするだけの外貨準備がなければスワップ発動に応じない」として、これを拒否していたようなのです。中国のスワップ外交中国が外国と締結している通貨スワップ・為替スワップの一覧昨年の『中国が保有する人民元通貨スワッ... スリランカからの通貨スワップ発動要請を拒否した中国 - 新宿会計士の政治経済評論 |
『【総論】中国・人民元スワップ一覧(22年8月時点)』でも取り上げたとおり、スリランカは2021年3月19日時点で、中国との間で総額100億元(14億ドル)/3000億ルピー(8億ドル)を上限とする通貨スワップを締結しています。
実態がよくわからないとされる中国人民銀行の通貨スワップ・為替スワップについて、網羅的に調査し、一覧表にしてみました。これによると2017年7月以降の5年あまりで中国が外国と締結したスワップは、少なくとも33本、金額にして4兆1045億元(5809億ドル)に達します。本稿ではこれを資料集として公開したいと思います。通貨スワップと為替スワップの基本本稿は、一種の「資料集」です。当ウェブサイトでかなり以前から高い関心を持って取り組んでいるテーマのひとつが、中国の通貨・人民元の「国際化」であり、最近だとたとえばSW... 【総論】中国・人民元スワップ一覧(22年8月時点) - 新宿会計士の政治経済評論 |
しかし、現地メディアによれば、中国側はスリランカに対し、「輸入3ヵ月分をカバーするだけの外貨準備がなければスワップ発動に応じない」と述べ、スワップ協定に基づく資金の引き出しを拒絶したというのです。
もしこうした報道が事実なら、人民元自体が国際的に通用する通貨ではないという点もさることながら、肝心なときにスワップの発動を拒絶されることがあり得るという意味において、人民元建てのスワップは使い物にならない(可能性が高い)、ということでしょう。
日経電子版「IMF融資が頼みの綱」
ところで、このスリランカの外貨不足に関しては、一般紙でも取り上げられていました。日経電子版に金曜日に掲載された次の記事によれば、「頼みの綱」であるはずの国際通貨基金(IMF)融資についても、IMF理事会の承認が下りていない、などとするものです。
外貨不足のスリランカ、IMF融資が頼みの綱/9月に合意も承認下りず
―――2022年12月2日 2:00付 日本経済新聞電子版より
ただ、この記事の中で注目したい記述は、そこではありません。
日経はスリランカの外貨準備高について、次のように述べているのです。
「現在の外貨準備高は17億ドルだが、そのうち14億ドルは中国人民銀行からの通貨スワップでの資金だ。利用には一定以上の外貨準備の保持などの制約があり、実質は3億ドルだ。輸入に必要な外貨はわずかな輸出収入や出稼ぎ労働者からの送金、観光収入で賄っている」。
たしかにIRFCLのデータによれば、スリランカには外貨準備が2022年8月末時点で約17億ドル(同9月末時点で約18億ドル)分計上されていますが、日経の記述によると、ここにどうやら100億元(約14億ドル)の人民元建てスワップが計上されてしまっているようなのです。
しかも、現地メディアの報道にもあった通り、あるいはこの日経の記事にも書かれているとおり、この人民元スワップの利用には制約があるため、本来ならばこれを外貨準備高に計上すべきではありません。スリランカの外貨準備はほぼ枯渇状態にあると見ておいて間違いないでしょう。
同国は前提条件を満たしていない:一帯一路とFOIPの激突も!
ちなみに日経は、IMFのスリランカ担当者が次のように述べたと伝えています。
「同国が救済措置の資格を得るための前提条件を満たせば理事会は早急に開かれるだろう」。
裏を返せば、スリランカが現在、「救済措置の資格を得るための前提条件」を満たしていないと判断されている、という意味でもあります。
日経の記事ではその詳細には触れられていませんが、一般にIMFは公的部門の財政健全化のために、増税や緊縮財政に加え、必要に応じて為替相場の管理制度や金融セクターへの資本注入措置などを要求することが多いのが実情でしょう。
想像するに、スリランカは財政再建に向けた道筋を示していないのではないでしょうか。
また、スリランカの債務再編を巡っては、債権国である中国、日本、インドなどの同意を取り付けることも必要になるかもしれず、とくに中国との調整が難航する可能性はありそうです。
というよりも、スリランカ自体、中国の「一帯一路」金融の犠牲者のようなもの(著者私見)であり、日本など国際社会から信頼されている国が債務再編の調整に入ってくることを、中国も嫌うのではないでしょうか?債務再編プロセスが透明化されてしまうからです。
その意味では、スリランカの債務再建は、「一帯一路」と「自由で開かれたインド太平洋(FOIP)」が激突する最初の場となるのではないでしょうか。
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スリランカは2009年まで内戦を続けていて,戦費支出でも経済を痛めつけました。農業国ですが,有機農法推奨して化学肥料の禁止をしたことがあったり,政治もでたらめだったと思います。農業以外まともな産業もない(輸出品は紅茶,衣類,魚介類等)ようです。金融センターを目指して,港湾開発で中国から借金をし破綻したのは当然だったでしょう。国民1人当たりのGDPは4,000ドル程度。インフラが悪すぎて外資が入ってこない。まず,政情が安定することが大切でしょう。
IMFとしても「内情は明かせないが、助けて欲しい!」では、なんともはやなんですよね。
発展途上国は全部、中国と合併したらいい。世界中に中国の軍港や基地を作ればいい。途上国の面倒は全部中国が見ればいい。膨大な中国領を監視カメラで監視して、スマホを全部盗聴して、反抗的な国民は全員収容所に送って18時間労働させればいい。
1年持つかな?その後、中国共産党(及びロシア)の無い、国際法が遵守される真の平和な国際社会が生まれる。