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円安+技術流出リスクで中国からの撤退は加速するのか

富士フイルム子会社が中国製造拠点の閉鎖を決定

富士フイルムの子会社が中国の製造拠点を中国企業に売却するのを注視し、工場を閉鎖することを決定したようです。表向きの理由は「希望退職者が予想よりも増えたため」、ということですが、現実には円安による日本企業の製造拠点としてのコスト面での優位が高まる一方、中国が外資系企業の技術を自国に明け渡すように求めているという事情が、同社の経営判断に影響を与えた可能性もあります。

円安で製造拠点が日本に戻りつつある

先日の『アイリスオーヤマが一部の製造拠点を国内回帰へ=報道』などでも取り上げたとおり、一部の企業の間で、中国など外国の製造拠点を整理し、少しずつ日本国内に製造拠点を戻す動きに出ています。

円安のためでしょうか、アイリスオーヤマが一部の製品の製造拠点を中国から日本に戻すそうです。こうした流れが続くのかどうかには注目したいと思いますが、すでに日本企業の経常利益が上昇し始めているというデータも出て来ています。もちろん、円高や円安が日本経済に与える影響は単純なものではありませんが、アイリスオーヤマのケースに続く企業が出てくるのかどうかは興味深いところです。円高と円安の関係:2ドルの製品は日本でいくら?当ウェブサイトでもこれまでに何度となく取り上げてきましたが、変動相場制のもとで自国通...
アイリスオーヤマが一部の製造拠点を国内回帰へ=報道 - 新宿会計士の政治経済評論

これにはさまざまな要因が考えられますが、やはりもっとも大きなものは、円安の急速な進展でしょう。

先週は32年ぶりに1ドル=150円の大台を突破する円安となりましたが、これに対しては財務省が行き過ぎた円安に対しカウンターとしての為替介入を行っているらしく、再び1ドル=150円の大台を割り込むなどし、市場では膠着状態が続いているようです。

ただ、米国の中央銀行に相当する連邦準備制度理事会(FRB)が金融引締めを続ける一方、日銀は脱デフレを掲げ、イールドカーブ・コントロール政策やマイナス金利政策を継続しているため、ドルに対して円安が進むのは、当然すぎる話でもあります。

現在の日本にとって円安はメリットだらけ

改めて、日本から見た円高・円安のインパクトをまとめておきましょう(図表)。

図表 円高・円安のインパクト
区分 円高 円安
輸出競争力 ×輸出競争力は下がる 〇輸出競争力は上がる
輸入購買力 〇輸入購買力は上がる ×輸入購買力は下がる
国内製品 ×輸入品に押される 〇輸入代替効果が生じる
国内製造拠点 ×国内製造コストが上がる 〇国内製造コストが下がる
海外旅行 〇海外旅行に行きやすくなる ×海外旅行に行き辛くなる
訪日外国人観光客 ×外国人は来づらくなる 〇外国人が来やすくなる
外貨建ての対外債権 ×為替評価損が生じる 〇為替評価益が生じる
外貨建ての対外債務 〇為替評価益が生じる ×為替評価損が生じる

(【出所】著者作成)

1985年のプラザ合意以降、あるいは1990年のバブル崩壊前後以降、基本的には円は高く評価され、とくにドルに対しては円高が進んでいました。このため、日本は輸出競争力が低下するとともに輸入購買力が上昇し、製造拠点がどんどんと外国に流出していくという憂き目にも遭いました。

また、外国からおカネを借りている国の場合だと、自国通貨の価値が上昇すれば借金の返済負担が減るという効果も期待できるのですが、残念ながら日本の場合、対外純債権でもあるため、こうしたメリットはほとんど得られなかったのが実情でしょう。

しかし、円安になれば、これらと逆の現象が生じます。

最もわかりやすいのが「輸出競争力の上昇」ですが、それだけではありません。「輸入購買力の低下」にともない、輸入品物価が上昇しますので、その代替として国産品への需要が増えます(いわゆる「輸入代替効果」)し、

国内製造コストも下がります。

また、日本人が海外旅行に行くためのコストが上昇してしまいますが、その分、外国人が日本に来やすくなりますし、日本が保有する巨額の外貨準備や対外純債権については巨額の為替評価益も生じることになります。

現在の日本にとって、円安は良いことずくめです。

もちろん、欲を言えば電力の安定供給のために、まずは再生可能エネルギー制度の見直しや原発の再稼働を急いでほしいという気持ちもありますが(『経済対策で再生エネ賦課金徴収停止検討=自民・新藤氏』)、このあたりは今後の課題のひとつでしょう。

原発1基分の電力を太陽光パネルで生み出すためには、山手線の内側の面積の1.3倍に相当する敷地が必要であり、そのための投資額はざっと1.7兆円になる――。意外と知られていない、太陽光発電を巡る「不都合な事実」は多々あります。こうしたなか、自民党の新藤義孝政調会長代行は23日、出演したテレビ番組で、再生可能エネルギー賦課金の徴収停止などを柱とした経済対策を検討していることを明らかにしたのだそうです。FIT法の理念や良し、しかし…俗に「FIT法」と呼ばれている法律があります。これは菅直人政権下で成立した法律で...
経済対策で再生エネ賦課金徴収停止検討=自民・新藤氏 - 新宿会計士の政治経済評論

富士フイルム子会社が中国製造拠点を閉鎖へ

こうしたなか、海外製造拠点の撤収という動きは、まだ続いているようです。

富士フイルムホールディングス株式会社の子会社である富士フイルムビジネスイノベーション株式会社(富士フイルムBI)が24日、こんな報道発表をしました。

連結子会社の持分譲渡実行中止のお知らせ

―――2022/10/24付 富士フイルムビジネスイノベーションHPより

富士フイルムBIは中国に所在するおもに中低速の複合機・プリンターを生産する連結子会社の全出資持分を中国企業に譲渡する計画を中止し、同工場での生産活動についても23年5月末で終了し、24年半ばには工場自体を閉鎖することを決定したそうです。

ちなみに同社によると、もともとは子会社を中国企業に売却することを2022年7月20日付で発表していたのですが、その準備を進めるなかで、同工場従業員の早期退職希望者が想定以上の人数に達し、工場自体の今後の稼働見通しが不透明になってしまったことを、中止の理由としています。

つまり、今回の富士フイルムBIの決定は、単純に「円安になったから中国工場を閉鎖する」という話ではありません。表向きの理由は、あくまでも「希望退職者が増えすぎたため」、です。

中国への技術流出リスク

ただ、事情はそこまで単純ではありません。中国への技術流出リスクが指摘されているからです。

これに関しては日本経済新聞電子版に昨日、こんな記事も出ていました。

富士フイルム系、中国の複合機工場閉鎖へ 売却を撤回

―――2022年10月24日 2:00付 日本経済新聞電子版より

日経によると、中国政府は外資企業に対し、中核部品などの生産を中国で実施するように求めることを検討しており、経産省や日本の関連業界では、「中国への技術流出につながる」との懸念が高まっていたのだとか。

これについて日経はこう述べます。

中国では現地当局が4月、業界ごとに製品の技術などを定める『国家標準』を巡り、ハイテク製品を手掛ける外資企業に対して中国で設計や開発、生産をするように求める検討に入っていた。特に複合機やプリンターなどのオフィス機器が対象となっている」。

そのうえで日経は、同社は該当する工場で生産していた中低速複合機などについては、「足元で円安が進行するなか、部品の調達コストなどを考慮して移管先を検討する」との見方を示しています。ということは、場合によってはベトナム北部にある同社の複合機の製造拠点に移管するという話もあり得るのかもしれません。

ちなみに日経によると、複合機は「光学や化学、通信など高度な技術の擦り合わせが必要」で、「日本企業が得意としてきた領域」であるとともに、「技術力の高さが中国などの参入障壁となってきた」のだそうです。

日経はまた、中国がIT製品の国産化を急ぐなか、「外資企業は中核技術を事実上渡すか、中国市場から撤退するか選択を迫られる」と指摘。業界内でも「中国企業に技術が流出する可能性がある」として、「中国政府の要求への対応には業界全体で足並みをそろえる必要がある」との声も出ていたと指摘しています。

もちろん、今回の富士フイルムBIの件については、こうした技術流出リスクに対応して工場の売却中止を決めたのかどうかはよくわかりません。同社の発表だと、表向きの撤退理由は、あくまでも「希望退職者数が増えすぎて工場が稼働できなくなった」からです。

ただ、米中対立の進展や中国への技術流出リスクに加え、円安の進行により、コスト面から日本国内の製造拠点としての魅力が高まっていることが、同社の経営判断に影響を与えた可能性はありそうです。

似たような経営判断をする日本企業が増えてくるかどうかについても、引き続き注目する価値はあるのかもしれません。

新宿会計士:

View Comments (22)

  • 進出ラッシュの時は「バスに乗り遅れるな」今は「バスから降り遅れるな」

  • 素朴な疑問ですけど、日本企業のサラリーマン経営者に、中国撤退という損切り(?)という決断ができる人が、どれだけいるでしょうか。(経営陣の決断力を図るテスト(?)があれば、それを受けることが義務化しそうです。ついでに政治家にも)

    • なるほど。しかし、逆に、損切り中国撤退が世の流れになると、それに逆らえない経営者も数少ない、という意味でもあります。

  • >外資企業は中核技術を事実上渡すか、撤退するか

    沈む舟から逃げ出せ、そう言っています。

    ロシア製 Orlan ドローンに搭載された偵察カメラと言えば Canon EOS ですが、当方が目にした記事によればロシア軍関係者はわれわれの製造能力を舐めてはいけないと言い放ったのだそう。ところが入手難の Canon カメラは今まさにスエーデンで?窃盗に遭っているとの報道があり、さもありなん ...

  • 一部(だと思うけれども)メディアが殊更「円安危機!」を喧伝するのも中共の代行代弁に見えて仕方がないのは…

  • 製造業の国内回帰といううねりが本当になるかもしれないことを見越して、当方が夢想するのは、貸し工場ビジネスです。
    はにわの住んでいるのは流通倉庫や町工場が乱雑に存在している大都市外輪部です。自動車整備工場などもよく見かけます。普段移動に使っている産業道路の脇で目につく看板に貸し工場があることに以前から注目してきました。「工場長屋」のような建屋があって、外見はシャッター付きガレージだが中には製造装置が鎮座している。そして工場長屋にはそれなりの需要があります。「この機械があれば、オレは勝つる」技術者なら一国一城の主を一度は夢見るものです。
    製造業界は「安い労働力・安い地面」を目当てに地方進出して来ました。焼き畑農業精神の発露として海外進出もしてきました。そんな彼らに国内回帰を決心させるためにはどんなビジネスが考えられるでしょう。もし最先端式貸し工場がブームになれば、どうでしょうか。レーザー加工機や 3D プリンタを駆使しアイデアを利益に結び付ける新時代テクノロジー産業のリーンスタートアップを助け育て上げ得る、あるいは、立地を替え設備を一新して再成長を目指す既存企業にアピールし引っ越しを促すそんな貸し工場ビジネスが不動産業界の新たな投資先としてあってもよさそうなものです。

    • 「貸し工場ビジネス」、素晴らしい着眼点だと思います。
      「専門的製品開発・知的財産のノウハウ」と「製品製造のノウハウ・製造にに伴う莫大な生産設備投資」を切り離す事によって今まで単一の会社のコアコンピタンスや資源では出来なかった事が実現出来ると言う事です。
      半導体製造の業界でのTSMC等のファウンドリーの成功はそのスキームの可能性と妥当性を証明する事例です。

    • 人と製造装置を切り離すとは優れた要約です。親父馬さま、コメントありがとうございます。
      海外進出し現地で操業を成し遂げている企業さんたちの努力には本当に頭が下がるところながら、同じだけの熱意と投資があれば国内でできることはいくらもあると当方考えます。そもそも会社の経営資源とは従業員のことであって、立派な敷地と豪華な製造装置を重んじるあまりに利益と成長の原資であるはずのヒトを粗末に扱い続けて来たのではないかとの誹りは、率直に言って免れ得ないところでしょう。
      当方が夢見る貸し工場のビジネスのもっとも小さなスケールバリエーションはシャッターガレージです。実名を挙げて説明しますと、都市型ガレージを標榜するライゼホビー(画像検索プリーズ)のようなものです。当方の住む町にもふたつあります。最寄り駅へ向かう路線バスの窓から見えます。いったい借主はどんな人たちなのだろうと目を凝らしたところ、お洒落でハイソなホビイストではなくって、ひとり親方でがんばっている電気工事や水道工事などの個人事業主らしいのです。頼もしいではありません。この町ではありそうにないですが、あのシャッターの向こうにはひょっとしたらアストンマーチンやヤッターワン、サンダーバード2号が格納されているのかも知れません(出動♪)未来の hp や未来の Apple が誕生するのはきっとあのような場所に違いないのです。

  • フジフィルムのこの意思決定には、習近平政権の3期目継続決定も後押しになったでのはないでしょうか。

    私の感覚では台湾有事を想定し、その対策を打つ事のできない企業経営者は、どうしようもないぐらいに無能に思えてならないんですが。

  • ここ数か月円安が急速に進んでいることは事実ですし、それが撤退決断を後押しした可能性はあるでしょうが、製造拠点日本回帰の主たる要因が円安であるという見方にはかなり疑問があります。というのも、規模などにも依りますが、製造拠点の立ち上げには下手をすると年単位の時間を必要とします。そして、数年後も現在のような円安水準であるという保証はありません。一つ間違えば、むしろ円高が進み、新たな製造拠点が稼働する頃には、円安の恩恵など霧散している可能性も決して低くはありません。その程度のリスクすら織り込めない経営者はよほど無能でしょう。
    以上などから、製造拠点の中国撤退日本回帰が進むのだとすれば、円安以外に何か大きな理由があると考えた方が妥当だと思います。技術流出への警戒もそうですが、あまり表立っては言えないような理由があるのではないかと推測します。
    ただし、円安は「安直な口実」としては有効でしょうね。有象無象のチンピラ記者相手なら、「円安だから拠点を日本に戻す」と説明すれば、それ以上は突っ込まれないでしょうから。
    また、中国から撤退する製造拠点を、日本に戻すのではなくて、他国、例えばベトナムに移すというのは、また違った意味があるのだろうと思います。人件費やインフラ、物流コストなど、いくつもの要因が絡んでくるので、一概には言えないだろうと思いますが、この場合であっても、円安が主たる要因ということはおそらくないでしょう。

    その一方で、製造拠点だけではなく、研究開発拠点をも中国に進出させた企業は決して少なくないと思いますが、研究開発拠点の場合は、製造拠点とはまた全然異なる事情があるため、また別の議論が必要になります。
    業種にも依りますが、一般的には、研究開発拠点は製造拠点よりも身軽で、簡単に中国から移転させる、あるいは日本に回帰させることもできそうに思えますが、一概にそうとも言い切れない場合があります。例えば、ソフトウェア関連などの場合、中国に研究開発拠点を構えるのは、何も人件費が安いからというわけではありません。むしろ、中国(やインド)の人件費は高騰しており、必ずしも「安い!」とは言い切れなくなっています。そこには、そもそも日本のソフトウェア技術者の給料が、国際的に見てバカバカしいほどに安いという事情もありますが、だいぶ前から「安いから中国(やインド)を使う。拠点を置く」わけではなくなっています。一番の理由は、ソフトウェア技術者の数が日本では決定的に不足しており、必要数を確保できない or とても困難という点にあります(そのくせ給料を上げようとしないので、補充も先細りにしかならないというバカげた状況になってます)。
    このように、技術者の頭数確保(*)を要因として中国に研究開発拠点を置いていた場合、撤退するのはそう簡単ではありません。日本に回帰させても、技術者が確保できないからです。技術流出防止という観点から見れば、製造拠点よりもむしろ研究開発拠点を日本に回帰させるべきなのですが、そう簡単な話とは限らないのです。

    (*) 高度なアルゴリズム開発とか、先端的なソフトウェア開発ばかりではなく、「工業製品としてのソフトウェア」の開発のためには、主にテストや評価のために膨大な工数が必要になります。必ずしも高度なソフトウェアに関する技能を必要としないものの、とにかく頭数が必要になるケースがたくさんあるのです。「そんなん自動化すればいいじゃん」と言われる方もいるでしょうが、どうしても自動化できない部分もあります。それこそ、将来的にAIが極度に発達し、人手による作業を完全に代替できるようになれば話も変わってくるでしょうが。

    • 中国のコロナ対策が苛烈だったのは大きい気がします。
      コロナに限らず政府の意向一つで経済活動が簡単に止められる国ではサプライチェーンに入れる事はリスクが高い。中国内向けの生産工場なら許容できると思いますが。

  • 初めまして。

    >中国への技術流出につながる
    >特に複合機やプリンターなどのオフィス機器が対象となっている
    日本政府が本当にそうのように思っているのであれば、平和ボケ の一言です。
    このことに、政府が鈍感なのが気になります。情報戦としての発信であってほしいのですが。

    最近の複合機、プリンタはイントラネット(組織内ネット)接続は当たり前。複合機、プリンタのファームウェア(組み込みソフトウェア)にバックドアを仕掛けられたら、その組織の秘密情報は筒抜けになる。そこまででなくても、用紙、トナー、インク等の消費量、印字枚数を意図をもって継続的監視すれば、その組織の活動履歴を突き合わせ、組織の動向が推測できる。逆も真なりと、先方も考えているかと。
    ン十年前、私は全国区の産業用電子機器メーカの関東にある工場に勤務していました。そこでは、勤め先とは関係ない者が、日々の工場出勤者数、工場来客用昼食(弁当)委託食堂の工場への日々の納入弁当数、特定の建物(開発設計部門)の照明が消える時刻等を調べることを工場の外から行っていました。これらを継続的に調べ、その会社の公開された活動と突き合わせると、いろいろなことが分らしい。この頃は、株価に影響のある事象を探るのが主目的とか(勤労関係部署の知人談)。

    その2
    知的好奇心を刺激する。良い響きですね。2000年頃、私は地方製造子会社で設計職場の中間管理職をしていました。当時、電子機器技術変革の大きな曲がり角が見えてきたと感じ、設計技術者の守備範囲変革をしたいとの思いが大きくなっていました。そこで、分野を問わず専門書を中心に職場図書を充実するにしました。この図書購入稟議書の趣旨説明に、”若い設計技術者の知的好奇心を刺激する”との文言を記載しました。なので、”知的好奇心を刺激する”について、先使用権をします(笑)。ちなみに、最も頼りになった図書がマグロウヒル数学公式・数表ハンドブックだったのは意外で、若干の知的好奇心の刺激にもなりました。

    • すみません。訂正です。

      誤) 先使用権をします(笑)。
      正) 先使用権を主張します(笑)。

  • 知り合いの若者が転職して新しい職場で経験したという逸話を聞かせてもらっています。
    その会社は百年企業で、大きな工場を大都市外縁部に持ち、海外進出を成し遂げてアジア各地に事業所を持っています。その会社さんはR&Dをベトナムに持っている。製品が必要としているソフトウェアの開発は国内ではもうやっていないんですね。
    転職の彼は、相対的に年齢が若いせいもあって国外R&D部隊をオンライン指導する任務も仰せつかっていました。その彼はこう言ってました。ベトナム人技術者は教えたらその分だけどんどん成長して行く。しかに国内採用のワカモノたちは技術職採用のはずなのにそうでない。なぜなら若い身空で管理をやらされているからだ。マネージメントと言えば聞こえはいいが、チャレンジの機会を奪われハンズオン経験を積むことができない日本人社員たちは、きっと成長しないまま年を取るんだろう。その彼は自腹でディープラーニングE検定をパスしたりする勉強家なのですが、国外事業に精力を抜き取られた職場は先行きは暗たんでないか、彼の視点からはそう見えるのだそうです。

  • 中国から撤退するには,中国国内で建設した工場や中国国内にある資産を全部放棄しないといけないので,その損害を考えると「ゆっくり縮小」はあっても一気に撤退する企業は少ない気がします。「工場を1元で売った」という記事もありましたが,むしろ例外かと。アメリカ企業も同じ方針のほうに見えます。

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