X
    Categories: 外交

鳩山氏「日本が無限責任認め韓日問題解決を」=韓国紙

日韓諸懸案の正体は「日韓問題」ではなく「韓国問題」である――。これは、以前から当ウェブサイトでしばしば指摘してきた論点のひとつですが、その証拠がもうひとつ出てきました。いまやただの私人に過ぎない鳩山由紀夫・元首相による「韓日問題は日本が無限責任の姿勢を持つなら解決する」とする趣旨の発言を、韓国の大手紙が大々的に取り上げたのです。これ自体、韓国社会による現実逃避の姿勢のあらわれではないでしょうか。

本日の「燃料」(?)は鳩山元首相の発言

これも見方によっては本日の「燃料」となるのでしょうか、鳩山由紀夫元首相が訪問先の韓国で24日、日韓関係の回復に向けては「日本の態度が重要だ」と述べた、などとする記事が、韓国メディア『中央日報』(日本語版)に掲載されていました。

鳩山元首相「韓日問題、日本が無限責任の姿勢持つなら解決」

―――2022.09.25 09:07付 中央日報日本語版より

中央日報によると、鳩山氏は韓国で開かれた「世界平和と韓日文化経済協力交流特別講演」で、「日本が無限責任の姿勢を持つならば韓日問題が解決できる」としたうえで、次のように述べたのだそうです。

韓日関係を解決するためには何より日本の態度が重要だ。慰安婦と強制労働などの問題が解決されておらず現在韓日関係が良くない。(日本の)十分な謝罪がなされなければ解決は難しいだろう」。

この発言を読み、「近代国家では法的に決着がついた問題を蒸し返すことはあり得ないのではないか?」といった疑問や、「無限の不法行為責任を負うべきは、日本ではなくむしろ韓国の側ではないか?」などとする感想を抱く人もいるかもしれません。

元首相といっても政治的影響力は皆無

ただ、鳩山氏の発言のどこがどう間違いなのか、じっくり議論しても良いのですが、正直、そこまでまじめにツッコミを入れる価値があるとすら思えません。そもそも現在の鳩山氏自身、政治的影響力は皆無だからです。

まず、日本国内だと、基本的に元首相は元首相に過ぎません。

麻生太郎総理、菅義偉総理、あるいは自民党最大派閥・安倍派を率い、7月に暗殺された故・安倍晋三総理のように、与党内でそれなりの実力ないし影響力を持つ人物であれば話は別ですが、小泉純一郎元首相や福田康夫元首相のように、国会議員を引退していれば、政治的に影響力はほとんどありません。

また、菅直人元首相や野田佳彦元首相らのように、現時点でも国会議員を務めているにせよ、野党議員に過ぎない人たちも同様に、政治に対して影響力を与えることは難しいでしょう。

ましてや与党・自民党の所属でもなく国会議員ですらない鳩山氏に、政治への影響力は皆無です(※ついでに言えば、「鳩山氏の熱狂的な支持者らが鳩山氏の発言に影響を受ける」という可能性は皆無ではありませんが、そのような人たちが現在の日本国民の多数を占めるとも思えません。)

正直、現在はただの民間人でもある鳩山氏が、どのような認識をお持ちになるのも自由ですし、また、どこで何をどう話そうが、法に触れることがない限りにおいては、自由になされば良いと思います。

韓国社会で発言が独り歩きする可能性

ただ、こうした事情が韓国国内で理解されているかどうかは、また別問題でしょう。

とくにこの鳩山氏の発言自体が日韓関係、というよりも韓国に対し、どのような影響を与えるかについては、考察しておく価値はあるかもしれません。結論からいえば、この鳩山氏の発言、韓国社会に対し、非常に好ましくない影響を与えかねないからです。

中央日報自身がこうやって大きく取り上げたことからもわかるとおり、この鳩山氏の発言自体、韓国国内では非常に重要視される可能性があるからです。つまり、「日本の首相経験者」という「影響力のある人物」が「韓日問題は日本が無限責任の姿勢を持つなら解決する」と述べた、という事実が独り歩きする可能性です。

現在のところ、日本政府や岸田文雄・現首相は、基本的には菅義偉総理らが敷いた「日韓関係を健全なものにする責任は韓国側にある」とする路線で一貫した対応を取っています(安易な首脳会談に応じてしまうなど、危なっかしいところはありますが…)。

また、少なくとも日本国民の多数は、こうした現在の日本政府の対応をおおむね支持しているものと思われますし、なにより社会のインターネット化が進み、「タテ検証」「ヨコ検証」が容易になったという事情も手伝って、日韓諸懸案の本質が「二重の不法行為問題」である、という認識が広まっていることも間違いありません。

日韓諸懸案における「二重の不法行為」とは、「①韓国がウソ、捏造、歪曲に基づいて日本の名誉と尊厳を貶め」、「②法的に根拠がないこと(たとえば謝罪や賠償など)を要求している」、という共通構造が存在している、ということを意味しています(『【総論】韓国の日本に対する「二重の不法行為」と責任』等参照)。

日韓諸懸案を巡る韓国の「二重の不法行為」とは:
  • ①韓国側が主張する「被害」の多くは韓国側によるウソ、捏造のたぐいのものであり、最終的には「ウソの罪をでっち上げて日本を貶めている」のと同じである
  • ②韓国側が日本に対して要求している謝罪や賠償の多くは法的根拠がないか、何らかの国際法違反・条約違反・合意違反などを伴っている

(【出所】著者作成)

本質覆い隠す鳩山氏の発言と韓国社会の問題点

自称元徴用工にせよ、自称元慰安婦にせよ、竹島不法占拠にせよ、韓国側が事実関係を無視して「被害」を勝手に捏造し、法的にもまったく根拠がない「謝罪」「反省」「賠償」などの行為を日本に対して要求しているという意味では、まさに現在の日韓関係の特徴は、「韓国の日本に対する二重の不法行為」にあるのです。

こうした状況を踏まえるならば、これらの日韓諸懸案が「解決した」といえる状況に持っていくためには、日本政府にできることは、理論的には次の3つのどれかしかありません。

  • ①自称元徴用工などの日韓諸懸案を巡り、韓国に対し粘り強く国際法の順守を求める
  • ②国際法の原理原則にこだわらず、韓国側に譲歩できるところは譲歩する
  • ③無理に問題の解決を図らず、諸懸案をうまくマネージしつつ、韓国がなくても大丈夫な国づくりを急ぐ

鳩山氏が主張した内容は、おそらくは上記②をベースにしたものと思われますが、現実にはそれよりもはるかに踏み込んでいます。中央日報の記述によれば、鳩山氏は「三一運動」などに関連し、次のように述べて頭を下げたからです。

日本の植民治下から脱するための運動で、当時多くの命が犠牲になった。これに対し日本人として深く謝罪する」。

ちなみに鳩山氏は「ウクライナや中国・台湾問題も結局三一運動と同じ民族自決の問題で、最近世界的に強化されている動き」、「世界が今後こうした民族問題をうまく解決していったら良いだろう」、などとも述べたのだそうです。

ウクライナがロシアから一方的に侵略を受けているという問題が、「三一運動と同じ民族自決の問題」だ、というのも、なかなかに支離滅裂で強烈な発言です。

ちなみに鳩山氏は1597年の鳴梁(めいりょう)海戦で戦死した倭軍の慰霊祭が現在でも行われていることを取り上げたうえで、「多くの日本人がこれを知れば韓日関係がもう少し良くなるだろう」とも述べたのだそうですが、現在進行形での韓国の対日不法行為が多すぎるので、正直、焼け石に水でしょう。

いずれにせよ、くどいようですが、私たち日本国民にとって、政治に影響力がほとんどない民間人である鳩山氏の発言をいちいち気にする必要はありません。

むしろここで論点とすべきは、「韓国社会が自分たちにとって心地よい言葉にしか耳を傾けないこと」であり、「韓国が日本に対してれっきとした不法行為を行っている」という事実から目を逸らそうとしていることではないかと思う次第です。

新宿会計士:

View Comments (38)

    • 寺島実郎と言えばサンデーモーニングの常連コメンテーターですね。
      まあ、その時点でお察しですが…。

      • 寺島実郎が経団連で講演されたのを聞いたことがありますが、あのサンデーモーニングに出演されている人と同じ方か?と疑うぐらいまともな内容でした。岸井成格さんもサンデーモーニングに出演されていた頃に同じく経団連で講演されたのを聞きましたが、同じようにまともと思える内容でした。サンデーモーニングに出演されているときの発言は、「お商売左翼」的な発言じゃないかと思ったものです。まあ、経団連での講演のほうがお商売なのかもしれませんが。

  • 山本五十六大将が言っておられました。
    「やってみせて、...以下略」という事が大事だと思います。
    まずは、鳩山先生が先頭に立ち、無限の責任を果たしていただきたい。
    鳩山先生の全財産を韓国の人たちに分配していただき、
    北で苦しむ朝鮮人民のために、農作業なり炭鉱労働に朝鮮人民が満足するまで、
    従事して頂きたいと思います。(もちろん、無償です)
    お話は、それから。

    • 全く同じ感想です。多分、日本人に限らず世界中の誰もが思う極めて素朴な感想です。日本有数の資産家なのですから、そこまで信じておられるなら、先ず私財を「無限に」投げ打って、自らの信じられる所を実行されればいいのに。
      その内、かの国の方々もそれに気がついて、先ず先生が代位弁済していただくのがいいですね、と言われるかもしれません。その時は、「喜んで」そのようにしてあげてください。先生の信じる所を実行する又とないチャンスなのですから。これで、先生の長年の憂慮が晴れます。

  • 立派な学歴をお持ちで頭が良いはずの人が何故ここような言論をするのか、どのような頭の構造なのかは興味があるところです。
    一つにはお金を得ているのではと言うことがあります。
    また首相だった時、最低でも県外とか trust me と言ったことことからは、思わず格好が良いことを言うが実現する知恵も指導力もないのだろうということが分かります。

    • 恐らく社会人として経験を積んでいないからでしょう。
      だから浮世離れした発言ばかりしているのです。
      理想を追い求めることは間違ってはいませんが、現実を加味しなければいけないと思います。

  • 韓国人に勘違いをさせ
    巧みに崖っぷちに誘導している点では
    極めて有能なのかもしれません

    • まあ、普通に良識のある相手であれば、この戦術は使えますね。「そこまでの程のことでは有りません」「そこまで言って頂けるなら、そのお気持ちだけで充分です」と矛を納めることもあるでしょう。
      でもねぇ〜。

      • 匿名様

        それは違います。
        おそらく、韓国人が勘違いして 正しい道を進まないため 永遠の日韓断交になるのです。

        「やっぱり日本が悪いんだ」

        「だったら、資産売却しても無限に搾り取れる」

        「んだんだ」

  • さすが日本史上一二を争う最悪総理ですね。
    無限責任とか、法律学や概念の基本の基本も知らない亡国の首相であった証左でもあるでしょう。
    鳩山由紀夫氏によると、どれだけ条約・協定や合意で解決しても無意味であり、
    日本人・民族は国際法の範囲外にあると言うことでしょうね。
    法益を認めない、これが差別の本質です。
    さらに無限責任なら、未来永劫日本人の富のすべてを渡し続けろ、と言うことになるはずです。
    ある意味、民族滅亡しろと言うに等しい、日本人に対する究極のヘイト発言でしょう。
    なぜこのような発言が許されるのか、本当に疑問です。

  • 鳩山さん、無理して日本へ帰って来なくて良いですから
    (居心地がとても良い)現地に留まって日本を代表して許しを得るまで謝り続けてください。
    元総理の責任としてよろしくお願いします。日本人全員が期待しています。
    まずは鳩山から始めよ(そして鳩山で終われ)ですね。頑張ってくださいね。

  • 「韓国が無限責任認め日韓問題解決を」と李明博や朴槿恵を来日させ言わせるくらいのことを日本もやったらいい。やられたらやり返せ。

    • それはさすがに恥ずかしい。

      黙って崖の方へ追い込んで、崖下へ飛び込むのを黙って見るくらいで丁度いい。

  • 素朴な感想ですけど、鳩山由紀夫氏は、目の前に出された(目に見えない)ボードに、書かれたものを読んでいるだけではないでしょうか。もっとも、日本の著名人でも、そんな人は大勢いますが。
    それにしても、韓国では鳩山由紀夫氏は日本の政界の重要人物ということになっているのでしょう。(鳩山由紀夫氏も、日本政界の重要人物として扱ってくれる韓国が、好きなのでしょう)
    蛇足ですが、鳩山由紀夫氏は、学歴と経歴が、今の能力とは無関係であることを示す実例ではないでしょうか。

    • すみません。確認したいのですが。
      鳩山由紀夫氏は、日本にいれば何人もいる元総理の一人ですが、韓国にいれば韓国に常駐(?)している唯一の日本の元総理ということで、よろしいでしょうか。
      それにしても、日本に帰れない(?)元総理が、なんで日本の政界に影響力をもっている、と思うのでしょうか。(もちろん、数少ない例外、と言うのなら、それでも構いません)

      • 国際社会に対する広告塔として影響力はありそうです。
        韓国の捏造史を補完するという意味では韓国にとってはウエルカムでしょう。

  • 私は元日共党員でしたから、在籍当時、鳩山氏は私の認識では民主党政権の総理時代でも「元自民党」でした。統一協会と政治家の関係と言われる問題も、「やや非自民党にも浸透したのか?」とは思いますが、「自民党系議員や首長が自民党時代にコネつけた」という認識でした。維新松井氏なんかも「自民党の中の実力の無い連中が民主の風吹いた時に次は自民の看板では勝てないと橋下氏を神輿に担いだ脱走劣化自民党」という認識でした。
    ところで、鳩山氏だとか、議員を辞めた後の故野中広務氏などの言動は当時の私の理解を超える得体の知れない不思議な挙動でした。元総理大臣だとか元自民党要職経験者という肩書は外国に、大変高く売れるトロフィーなのでしょう。最近はそう考える様になりました。

    • 鳩山由紀夫氏は「元首相」という肩書にあこれがれていてそれを欲していたのだろうと当方が直感したのは、氏の在任期間中のあるタイミングでした。
      すなわちご本人の生涯に照らすと周囲はそのようなかたがたであり、またそのように育ってきたから、と考えれば「大変に高く売れるトロフィー」たる肩書に納得いくものが多い。
      ちょうど日中国交回復50周年という節目にあって、トロフィーを死ぬまで手放さないつもりの議員さんたちと彼ら彼女らのトリマキが眼前でうごめいているではありませんか。

    • ところでこの、「韓日問題、日本が無限責任の姿勢持つなら解決」という鳩山氏のご意見ですが、実に味わい深い。
      シナリオがあってそれを読んだというよりも鳩山氏なりに韓国側の意を汲んで、言わんとしている(鳩山氏に言って欲しい)気持ちを最大限に忖度して、その通りを表現してみせたのでしょう。でそれは「無限責任なら解決」と一見「解決案」の様にみせていますが、これって朴槿恵大統領が言った「千年経っても~」と何も変わりありませんよね。日本側は未来永劫責任を持つ、韓国側は未来永劫「日本に責任ガー」と言い続ければ解決なんてする必要がない。で、中央日報も嬉しいからそのまま掲載しました。鳩山氏も多分誤報という訂正申し入れはしていません。韓国側は無限に「日本に責任ガー」と言い続ける宣言であり、韓国国民はそういう意思を当然として受け止めていて、納得して報じて居る。「おいおい日本のハトヤマは気持ち悪い事を言うな、何にでも終わりはある、これじゃ無限に韓国は怒った格好じゃないか、やめようよこんなの」という声は絶対に聞こえてこない。そういう国民であり、そういうマスコミであり、そういう國體なのだと。

      • 仰る様に、こんなものを記事にして垂れ流す輩と、それに喝采する(であろう)輩らに”真面な頭”が付いて居るようには思えない。

        国連総会で米韓会談、日韓会談ができる、通貨スワップが合意できる、と勝手に思う頭の構造を見てみたい。異常に自己評価が高いというよりは、現状認識、評価というものを知らないのではないかとすら思える。単に夢想しているだけ。でも、それでここまで生きながらえるのだからその秘密を知りたい。

      • 当然ながら鳩山氏と面識なんぞないのであくまでも「おそらくは」ですけれども、きっと鳩山氏はとぉーっても「いい人」なんでしょう。とにかく目の前にいる人が喜ぶであろう言葉、望んでいるであろう言葉ばかりを紡ぐことに専念しており、前後の脈絡とか一貫性などは一切考えてないように見えます。相手からすれば、なにしろ鳩山氏は自分が聞きたいと思っている言葉を発してくれるのですから(おまけに元首相という肩書付きで)、そりゃあちやほやしてくれるでしょうし、ちやほやしてもらって鳩山氏も気分が良くなるという、局所的にはwin-winの関係になります。
        このように、誰に対しても良い顔する、相手の望む言葉を発するのですから、間違いなく「良い人」なんでしょう。でも、さすがに日本では完全に見透かされているので、今や彼をまともに相手する人はいません。それでも、元首相という肩書の効力は絶大で、日本での彼の扱いを呑み込んでない他国では、彼の発言をありがたがるという喜劇が発生するのでしょうね。

        もっとも、記憶している限りでは、以前鳩山氏はしばしば中国で中国に迎合した講演をかましていたように思いますが、最近はあまり聞きません。中国もさすがに鳩山氏の位置づけについて呑み込んできたのかもしれません。利用価値がないどころか、むしろ逆効果にしかならないことを理解したようにも見えます。
        でも、韓国ではまだまだ通用してしまうようです。まあ、肩書が絶対的な価値を持つ韓国ならではとも言えますし、韓国がおよそ日本のことを理解していない証拠であるとも言えます。鳩山氏の発言など、何の効果も影響力もないどころか、完全に逆効果にしかなりませんから。

        鳩山氏について一言いうとすれば、およそありとあらゆる職業の中で、政治家にだけはなってはいけなかった人が政治家になってしまったという不幸な実例ですかね。多分、個人的には「悪い人」ではないだろうとは思いますが。

1 2