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    Categories: 金融

「5月の約束に従い韓米通貨協力体制構築を」=韓国紙

「韓米両国が5月に約束した『通貨協力体系構築』を巡って、もそろそろ具体的な何かを出さなければならない時期だ」。こんな主張が出てきました。韓国メディア『中央日報』(日本語版)には昨日、「韓米通貨スワップをはじめ、主要国との通貨スワップを強力に推進しなければならない」、という趣旨の記事が掲載されていたのですが、そのなかで出てきたのが、例の一文、というわけでしょう。もっとも、米国が韓国に対し、「通貨協力体系構築」で約束したという事実はありません。

米韓通貨スワップがあり得ない理由

「通貨スワップ」で口頭介入か?

韓国大統領室の崔相穆(さい・そうもく)経済首席が先週金曜日の記者会見で、「韓米首脳会談では韓米通貨スワップ」について議論される可能性があると述べた、とする話題を『韓国高官「韓米首脳会談で通貨スワップが議論される」』で取り上げました。

韓国メディアの報道によると、韓国政府高官が米国との間で「韓米通貨スワップが議論される」と明らかにしたそうです。それが為替スワップを意味しているのだとしたら、バイデン大統領にとっては管轄外のことを相談されても困ってしまうのではないかという気もします。ただ、足元で韓国のドル資金市場はジワリと逼迫しつつあるようです。「韓国が米国と通貨スワップを議論」=ロイターロイターによると、韓国『聯合ニュース』は「政府高官の発言」として、来週の国連総会に合わせて米国を訪問する尹錫悦(いん・しゃくえつ)韓国大統領...
韓国高官「韓米首脳会談で通貨スワップが議論される」 - 新宿会計士の政治経済評論

これについては報道で読む限り、崔相穆氏が自発的にそう発言したというよりは、単純に記者からの質問に答えただけ、という側面の方が強く、その意味では韓国政府に「何らかの意図」(たとえば為替への口先介入など)があったのかどうかについては、若干微妙ではあります。

ただ、「結果論」だけでいえば、この発言が一種の「口先介入」となった可能性があります。それを示唆するのが、韓国メディア『中央日報』(日本語版)に土曜日掲載された、『韓国経済新聞』(韓経)が配信したこんな記事です。

「韓米首脳会談で通貨スワップ議論の可能性」…3日ぶりウォン高ドル安に

―――2022.09.17 10:53付 中央日報日本語版より【韓国経済新聞配信】

韓経によると、2日連続の為替介入に加え、この崔相穆氏の発言を受けて、1ドル=1400ウォンの大台直前に迫っていた金曜日のソウル外為市場では1日ぶりのウォン高水準となる1ドル=1388ウォンで取引を終えたのだそうです。

「1400ウォン」を破られたら一気に「1500ウォン」に!?

つまり、韓経のこの記事が正しければ、韓国銀行による外貨売り・ウォン買いという「実弾」に加え、崔相穆氏の発言がウォン安の進行を防いだということであり、その意味では「通貨スワップ」という単語に反応するほど、現在の韓国の外為市場が不安定である、という間接的証拠でもあるのでしょう。

このあたり、2020年5月に資金流出に悩まされていたトルコで、「日本銀行が通貨スワップの締結に応じてくれるかもしれない」、といった飛ばし報道が流れただけで、外為市場が落ち着いたというエピソード(『「飛ばし報道」だけでトルコリラの暴落を防いだ日本円』等参照)などを思い出してしまいます。

昨日の『トルコとの100億ドルスワップ報道に「驚いた」日本』では、トルコ国内で「トルコ中央銀行が日銀と100億ドル規模の通貨スワップ締結で合意に至る直前である」などと報じられた、とする話題を紹介しました。いわば、一種の「寝耳に水」のような話ですね。わが国ではさほど話題になっている形跡はないのですが、現時点で判断するかぎりは「利下げに備えて通貨安を防衛するための一種の情報操作だった」とうい可能性が高い気がします。トルコメディアの飛ばし報道「100億ドルスワップ説」は信頼できるのか?昨日、当ウェブサイトで...
「飛ばし報道」だけでトルコリラの暴落を防いだ日本円 - 新宿会計士の政治経済評論

ちなみに韓経の見立てによると、通貨当局が2日連続で為替介入を行ったのは、20~21日に開かれる米連邦公開市場委員会(FOMC)を控え、ウォン安・ドル高に歯止めをかけるべきという判断が作用したからなのだそうです。

というのも、「心理的抵抗線」である1ドル=1400ウォンの大台を突破したら、「1ドル=1500ウォンまでオーバーシュートする可能性」(市場参加者)があるからなのだとか。

為替スワップはバイデン氏の「管轄外」

これについてどうとらえるべきか――。

先日も指摘したとおり、正直、米韓首脳会談の場で、もし尹錫悦(いん・しゃくえつ)韓国大統領がジョー・バイデン米大統領に対し、「韓米通貨スワップが必要だ」などと問題提起したとして、バイデン氏にはこれに対処することができないという可能性が濃厚です。

理由はとても簡単で、「管轄外」だからです。

米FRBのウェブサイト “Central bank liquidity swaps” などの説明に基づけば、そもそも、米国のスワップの建付けは、①常設型の為替スワップ、②臨時に創設される為替スワップ、③NAFA(北米枠組合意)に基づく通貨スワップ、の3種類です。

①常設型の為替スワップ

日本銀行、イングランド銀行、欧州中央銀行、スイス国民銀行、カナダ銀行の5中銀との間で設定されている、無期限・金額無制限の為替スワップ。米FRBがこれらの中銀を通じて市中金融機関に米ドルを供給するオペと、これらの中銀からFRBを通じて市中金融機関にそれぞれの通貨を供給するオペがある

②臨時に創設されるドル為替スワップ

グローバルな金融危機などに際し、一時的に締結される為替スワップ。たとえば2020年3月のコロナ禍の際には、豪州準備銀行、ブラジル中央銀行など9ヵ国・地域の中銀・通貨当局との間で、金額上限付きのスワップが提供された(これらはすべて2021年12月末で失効済み)

③NAFAに基づく通貨スワップ

北米枠組合意(the North America Framework Agreement, NAFA)に基づき創設された通貨スワップ。FRBがカナダ銀行(20億ドル)、メキシコ銀行(30億ドル)とそれぞれ締結しているほか、FRBとは別に米財務省がメキシコ銀行と90億ドルの通貨スワップ協定を締結している

「米韓為替スワップ復活」は3類型に照らしてあり得ない

このうち①の為替スワップについては、米国から見て、明らかに自国にもメリットがあるスワップです。

というのも、「外国為替スワップ」(Foreign Exchange Swap Agreement)の名の通り、これらのスワップは米国が相手国・地域の金融機関にドルを提供するだけでなく、相手国・地域の通貨が米国の市中金融機関に提供される、という性質の取引でもあるからです。

一方、②の為替スワップについては、どちらかといえば米国にとっては「何らかの特別な理由」がない限り、実行するメリットがない、というスワップです。実際、2020年3月のスワップも、コロナ禍の発生を受けてFRBが金融緩和プログラムを発動するなかで、その緩和プログラムの一環として特別に創設されたものです。

米FRBが2020年3月から2021年12月まで為替スワップを締結していた相手
  • 時限的・上限600億ドル…豪州準備銀行、ブラジル中央銀行、韓国銀行、メキシコ銀行、シンガポール通貨庁、スウェーデンリクスバンク
  • 時限的・上限300億ドル…デンマーク国立銀行、ノルウェー銀行、ニュージーランド準備銀行

(【出所】著者調べ)

さらに③のスワップは、米国が外国と締結する数少ない通貨スワップですが、NAFAという特別な枠組みに基づいて、カナダ、メキシコの2ヵ国のみに対して提供されているものです。逆に、米国が外国と保有している通貨スワップは、このNAFAに基づく2ヵ国・3本のスワップのみです。

もしも韓国が①の類型の為替スワップを米国に求めるのであれば、その前提として、韓国ウォンが日本円、ユーロ、英ポンドといったハード・カレンシー並みに高い通用力を持たなければなりませんし、そうなれば、オフショア外為市場の創設に加え、為替介入実績を詳細に公表するなどの政策運営の透明性も必要でしょう。

また、韓国が②の類型の為替スワップを求めているのだとしたら、それは無理というものです。FRBが現在、コロナ禍後に世界にばらまかれたキャッシュを回収しようとしているなかで、ニュー・マネーの供給につながりかねない米韓為替スワップの再開に米FRBが応じるとも思えません。

だいいち、①や②の類型の為替スワップについては、依頼先は行政府である米国政府ではなく、FRBです。バイデン氏はアメリカ合衆国大統領ではありますが、FRBの議長ではありません。米国では中央銀行は政府から独立しているのです。

結局、韓国が求めるとしたら、③の類型に似た通貨スワップですが、これもNAFAに似た特別な枠組み協定が米韓間で存在するわけではない以上、基本的にはかなり難しいのではないでしょうか。

また出た通貨スワップ待望論

中央日報「通貨スワップを強力に推進せよ」

ただ、こうした前提条件については、韓国メディアでは触れられることは、ほとんどありません。

それどころか、「米国大統領や米財務長官に通貨スワップ締結を要求しなければならない」、といった、かなり無茶な要求が繰り返される、というのが、韓国メディアではよく見られる現象なのです。

そして、中央日報に日曜日に掲載された、こんなコラム記事などは、その典型例でしょう。

【コラム】為替への無対応が能なのか…通貨スワップ強力推進しなくては=韓国(1)

―――2022.09.18 10:33付 中央日報日本語版より

【コラム】為替への無対応が能なのか…通貨スワップ強力推進しなくては=韓国(2)

―――2022.09.18 10:33付 中央日報日本語版より

このコラム記事、ドル高はかつて1997年に「韓国をはじめとしてアジアを通貨危機に追いやり、翌年にはロシアの金融危機も招く」という「残忍な教訓を残した」、などとしつつ、最近のドル高に危機感を示したうえで、通貨当局に対し、「通貨スワップを強力に推進せよ」、などと要求するものです。

「通貨スワップを強力に推進せよ」、などと主張するわりに、その実現に向けた具体的な道筋が示されているわけでもなければ、そもそも米韓通貨スワップないし米韓為替スワップが、米国にとってどのようなメリットをもたらすのかについて、コラムで触れられているわけでもありません。

ただ単に、「ドル高の恐怖」がつらつらと書きたてられたうえで、「通貨スワップを強力に推進せよ」、と結ばれているだけの記事、というわけです。

デフォルトドミノを起こすのは韓国かもしれない

ちなみにこのコラムでは、スリランカのデフォルト宣言と国際通貨基金(IMF)を通じた30億ドル規模の救済金融交渉に関する件や、「パキスタンとバングラデシュもIMFに救済金融を要請した状態」などを取り上げ、「ドル高と新興国のデフォルトドミノが合わされば韓国の金融市場も安心できない」、などとしています。

この「デフォルトドミノ」という表現、まさにアジア通貨危機や2008年のグローバル金融危機(日本語でいう「リーマン・ショック」)のときに発生した現象を思い起こします。外貨ポジションが脆弱な国は、しばしば、米FRBの金融引締め局面やグローバル金融危機局面で、連鎖的にデフォルトを発生させるからです。

もっといえば、この「デフォルトドミノ」を発生させるきっかけを作る国は、もしかしたら韓国かもしれません。

先日からしばしば指摘しているとおり、韓国はGDPで世界10位圏入りをうかがうほどの経済大国に発展したわりには、世界の金融システムに重要な影響を与える金融機関(いわゆるG-SIBs)はただの1行もありません。

というよりも、韓国の資金循環統計によると、そもそも「預金取扱機関」の国内預金総額は2022年3月末時点で3567兆ウォン程度であり、1円=9.67ウォンで換算すると、韓国の銀行の国内勘定における預金量は、せいぜい370兆円弱に過ぎません。

これに対し、日本の最大手の三菱UFJの預金量は2022年3月末時点で183兆円(※海外勘定を含む)ですので、ざっと三菱UFJは単独で韓国一国の半額に匹敵する預金量を持っている、という意味でもありますし、韓国の銀行の預金量は三菱UFJ銀行2行分に過ぎない、という意味でもあります。

GDPで世界第10位圏入りをうかがうほどの経済大国でありながら、金融インフラがこれだけ脆弱であり、民族系金融機関の育成に失敗しているという事実は、そのまま韓国という国の金融ポジションの弱さを意味しているともいえるでしょう。

「5月に約束した通貨協力体制構築を履行せよ」

ただ、それ以上にこの記事を読んでいて驚くのは、こんな趣旨の記述です。

5月21日の韓米首脳会談の際に発表した『通貨協力体系構築』もそろそろ具体的な何かを出さなければならない時期だ」。

…はて??

5月にバイデン大統領が韓国を訪れ、米韓共同声明を発したのは事実であり、米韓共同声明にも次のような記述が含まれていますが、これは「通貨協力体系構築」で合意した、という意味ではありません。

“To promote sustainable growth and financial stability, including orderly and well-functioning foreign exchange markets, the two Presidents recognize the need to consult closely on foreign exchange market developments. The two Presidents share common values and an essential interest in fair, market-based competition and commit to work together to address market distorting practices”.

著者自身の文責において意訳しておくと、こんな具合でしょう。

秩序ある、そして機能的な外国為替市場を含めた持続的な成長と金融の安定を促進するため、両大統領は外国為替市場の発展について、緊密に協議する必要性を認識した。2人の大統領は、公正な市場原理に基づく競争に共通の価値と本源的利益を共有しており、市場を歪める慣行に対処するため、協力することにコミットする」。

この文章にいう「市場を歪める慣行」とは、まさに韓国銀行による「スムージング・オペレーション」と称した為替介入にあります。

米財務省はもう何年も前から、韓国が合理的な理由もないのに為替介入を繰り返していることを問題視しているのですが(たとえば『米国財務省が「韓国は為替介入を行っている」と認める』などもご参照ください)、この共同声明の宣言は、韓国の為替介入に対する米国のいら立ちのあらわれと見るべきでしょう。

米財務省が先日公表した為替監視レポートを読んでいると、韓国が2020年下期にかなり多額の為替介入を行ったと読める記述があります。これは、当ウェブサイトでかなり以前から提唱してきた「韓国の資産バブルFRB主犯説」ともかなり整合している話題であり、また、韓国が公然と為替介入を行っている証拠でもあります(※もっとも、米国は韓国について「不透明」という表現は使っていませんが…)。韓国の資産バブル韓国の資産バブルFRB主犯説当ウェブサイトではかねてより、新型コロナウィルス感染症拡大に伴う米FRBなどの金融緩...
米国財務省が「韓国は為替介入を行っている」と認める - 新宿会計士の政治経済評論

それなのに、このコラムの執筆者に言わせれば、このくだりが「通貨協力体系の構築での合意」になってしまう、というのです。なかなかにおかしな話と言わざるを得ません。

イエレン氏訪韓時には「一方的発表」も

そういえば、こんな話題を見ていると、7月にジャネット・イエレン米財務長官が韓国を訪問した際も、「韓・米両国が必要流動性供給装置など多様な協力方案を実行する余力がある」と述べた、と韓国政府側が一方的に発表した、という事例がありました(『イエレン氏は本当にスワップに「含み」持たせたのか?』等参照)。

韓国といえば、「言った」「言わない」の議論になりがちな相手国です。こうしたなか、いくつかの韓国メディアは昨晩から今朝にかけ、「米国が通貨スワップ締結に含みを持たせた」、などと大いに報じているようですが、不思議なことに、米財務省のウェブサイトを見たところ、現時点でそれに相当する報道発表は見当たらないのです。そもそも本当にイエレン氏は通貨スワップないし為替スワップに「含み」を持たせたのでしょうか?通貨スワップに関しては「ほぼゼロ回答」だが…今朝の『韓国待望の米韓通貨スワップはほぼゼロ回答=財相会談...
イエレン氏は本当にスワップに「含み」持たせたのか? - 新宿会計士の政治経済評論

しかし実際には、米国財務省側の発表のどこを見ても、この韓国政府の「必要流動性供給装置」に相当する発言は見当たらず、したがって、イエレン氏が本当にそんなことを述べたのかどうか、米国政府側の発表からは確認を取ることができません。

それに冷静に考えたら、イエレン氏はFRB議長の経験者ではありますが、現在はあくまでも財務長官であって、FRB議長ではありません。韓国がしきりに「『通貨』スワップ」と繰り返す協定、すなわち「『為替』スワップ」を締結するのは、財務省ではなくFRBです。

したがって、もともとが「イエレン氏と通貨スワップを協議」とする話題自体に無理があった、というのが当ウェブサイトにおける見解なのですが、結論的にはこの見解が正しいのではないかと思う次第です。

気が付けば二国間通貨スワップの規模は1000億ドルを割り込む

一方でもうひとつ気になるのが、こんな記述です。

過去の事例を振り返れば少なくとも最悪の状況で安全弁の役割はできる場合があるので政府は主要国との通貨スワップ締結に積極的に出なければならない」。

主要国という意味では、すでに韓国はスイスとの間で100億フラン、豪州との間で120億豪ドル、そして中国との間で4000億元という巨額の通貨スワップを持っていますし、カナダとの間では(通貨スワップではありませんが)金額無制限の為替スワップ協定をも持っています。

ただし、最近のドル高のせいでしょうか、韓国が外国と保有している二国間通貨スワップ協定を米ドルに換算したら、その金額は1000億ドルを割り込んでしまうようです(図表1)。

図表1 韓国が外国と保有するスワップ一覧
相手国と失効日 相手通貨とドル換算額 韓国ウォンとドル換算額
マレーシア(2023/2/2) 150億リンギット ≒ 33.3億ドル 5兆ウォン≒36.3億ドル
オーストラリア(2023/2/22) 120億豪ドル ≒ 82.6億ドル 9.6兆ウォン≒69.8億ドル
インドネシア(2023/3/5) 115兆ルピア ≒ 77.4億ドル 10.7兆ウォン≒77.7億ドル
中国(2025/10/10) 4000億元 ≒ 577.4億ドル 70兆ウォン≒508.6億ドル
スイス(2026/3/31) 100億フラン ≒ 105億ドル 11.2兆ウォン≒81.4億ドル
トルコ(2024/8/11) 175億リラ ≒ 9.6億ドル 2.3兆ウォン≒16.7億ドル
UAE(2027/4/12) 200億ディルハム ≒ 54.5億ドル 6.1兆ウォン≒44.3億ドル
二国間通貨スワップ  小計…① 939.9億ドル 114.9兆ウォン≒834.9億ドル
多国間通貨スワップ(CMIM)…② 384.0億ドル
通貨スワップ合計(①+②) 1,323.9億ドル
カナダ(※常設、為替スワップ) 金額無制限

(【出所】各国中央銀行ウェブサイト等を参考に著者作成。為替レートは国際決済銀行の2022年9月12日時点のものを使用)

中国に頼めば?

ちなみに韓国が外国と保有する二国間通貨スワップの相手国通貨を米ドル換算した金額と全体に対する割合を円グラフ化してみると、図表2のとおり、中国とのスワップが圧倒的に多いようです。

図表2 韓国にとっての二国間通貨スワップの相手別構成

(【出所】各国中央銀行ウェブサイト等を参考に著者作成。為替レートは国際決済銀行の2022年9月12日時点のものを使用)

これで見てみると、わざわざ日本やユーロ圏、英国などが出張っていかなくても、すでに韓国は諸外国と1000億ドル近くに達する二国間通貨スワップラインを持っているわけですから、「危機の時にはそれらの国(とくに中国)に外貨融通をお願いしてはどうか」、と言いたくなる気持ちも自然なものでしょう。

ちなみに昨日の『韓国一方的発表に抗議、「正式会談」を見送りへ=産経』では、「七味」様というコメント主の方から、こんな趣旨の「酷いコメント」をいただきました。

  • 韓国の二股外交は現地語でたしか「安米経中」(安保は米国、経済は中国)だったはず
  • 「米国とのスワップ」などと要求するのは不自然
  • 経済なら中国に助けてもらえば良いのではないだろうか

…。

七味様、「なかなかに人が悪い」、と言わざるを得ません。

中国の通貨・人民元自体、国際通貨基金(IMF)の特別引出権(SDR)構成通貨に指定されているわりには、国際的な通用度は決して高くなく、600億ドル分の人民元を受け取っても、市場を通じてその規模の人民元を米ドルに両替するのは、極めて困難だからです。

ただ、「安米経中」という「米中等距離外交」に米国が気づいていないはずはないでしょうし、「米中二股外交」の生みの親でもある韓国観察者の鈴置高史氏にいわせれば、おそらくFRBの緊縮による通貨市場の混乱は、米国が韓国を「通貨でお仕置きする」にはちょうど良い機会である、とすらいえるかもしれません。

いずれにせよ、韓国が望む「韓米通貨スワップ」とやらが、米韓首脳会談の場で出てくるのかどうかを巡っては、それなりに注目すべき論点といえるかもしれません(といっても、結論はほぼ見えているのですが…)。

新宿会計士:

View Comments (28)

  • だからこそ、彼の国とは会ってはいけないのですね。
    どんな言いがかりをつけられるかわからない。

    しかしこんなやり方でもコロナ前なら通用してたんですよね。
    でも、もうみんな知ってしまったのですよ。
    彼の国がかぶっているのは、善人の「仮面」だってことに。

  • 素朴な疑問ですけど、もし米韓首脳会議で、尹大統領が米韓通貨スワップを結ぶことに失敗したなら、韓国メディアは尹大統領批判記事を書きまくるのでしょうか。(その場合、文(前)大統領は(トランプ前大統領に倣って)「俺が大統領なら、米韓通貨スワップは結ばれていた」と言い出すかもしれません)

    • すみません。追加です。
      もし米韓通貨スワップが結ばれることが前提になっているなら、その米韓通貨スワップが結ばれない場合、韓国ウォンは対米ドルで更に下落するのでしょうか。

      •  どちらにしても
        ドル高/ウォン安の流れは変わりませんよ。
         明日が明後日には米国政策金利が
        3.50% とか 3.25%だ。ドル独歩高は永遠です...と言いたくなりますね。

  • スワップには無関係ですが,引用元の中央日報の記事で面白かった点を2ケ所程。
    > 金融市場は言うまでもなく、原材料や中間財を輸入しなくてはならない企業の先物為替の問い合わせが増加している。
    「問い合わせが増加」が意味不明です。「買いが増加」なら納得できますが。それとも,買うべきか見送るべきか,決断できなくて相談する人ばかり,という意味でしょうか?
    > 冷徹な判断や事実を見る努力の代わりにひとまず他の人たちと同じ行動をしてこそ安心感を得られるためだ。
    韓国以外の国々にもこういう人達は多い気がしますが,投資の世界では「カモ」とも呼ばれます。他力本願,(悪い)責任他者転嫁は韓国だけでないので注意しましょう。こういう人達は貧乏になる確率が高いようです。

  • >民族系金融機関の育成に失敗しているという事実

    金融は信用創造の世界。
    ”条約・合意を守らない、嘘つき、コソ泥推奨” 国なんぞ最も遠い国であることの証左。

    >「5月21日の韓米首脳会談の際に発表した『通貨協力体系構築』・・

    信用以前、英語以前の機能的文盲民族には

    ”そんなこと言っていない” という指摘より 
    ”お前は言っていることが理解できていない、誤っている” = ○鹿 と

    会計士様の様に厳しく優しく丁寧に説明してやる必要がありそうです。

    • >七味様、「なかなかに人が悪い」、と言わざるを得ません。

      そ、そんなに酷いかな??
      (つд;*)クスン

      あたしは・・
      「経済は中国」って言ってたから・・・
      だ、だから、なんとかなるのかな?って思っただけなのです・・・
       。゚゚(*´□`*。)°゚。ウェーン

      • あっ・・・・
        レスの場所、間違ったのです♪

        農家の三男坊様、ごめんなさいなのですm(_ _)m

      • 七味様

        引き続き無慈悲なコメントのほど何卒よろしくお願い申し上げます。

  • 対中通貨スワップの実態は、 ”生殺与奪のスワップ” だと心しないとですね。
    人民元の市場売は容認されず、米ドルにカタチを変えての供給になるのかと。
    ただし、米ドルの貸付金利は青天井(中国の胸一つ)じゃないんだろうか・・?
    *****
    韓国:ウォンチュー(あなたが必要)
    米国:ノウ サンキュー(知ってる。ありがとう)
    韓国:ウォントゥーユー(ウォンをあげる)
    米国:ノーサンキュー(・・いらね。)

    ↑対米スワップ交渉での一コマ。

  • 嘘つきの代償を払う時期がまた来そうって事ですかね。約束していないことを約束と勘違いし、約束したことは守らないですしね。

  • スイスやカナダとスワップ結んだときに
    韓国は基軸通貨とスワップ結んだ結んだとあれだけ大喜びしてたじゃん
    あの喜びはどこに行ったの?

  • アメリカが、「為替介入するな」と言ったのに韓国は、「スワップ=為替介入の許可を得た」と真逆の意味になっていますね。

    これは半万年wもの長い時間、虐げられた環境にいたため、「相手の言葉から自分に都合の良い意味だけを取り出して、声高に主張して自分が得をするように行動する」という事が個人から社会まであまねく行きわたっているのだと思います。

    ですので、今回のお花畑な「スワップが結べる」という話もその延長線上の話で、韓国人にとっては別におかしな話ではないと思います。

    日本は、この戦法にからめとられないよう「大人の対応」などは絶対にしてはならないです。

    大人の対応は、国際社会では「百害あって一利なし」です。

  • 自国に都合の良い嘘をつきまくっていないと、情緒が安定しないのでしょう。
    朝鮮半島から一歩でも外に出てしまえば、嘘を100回言っても本当ということにはならないんですけどね。

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