敗北の腹いせ?ロシアが民間施設攻撃との報道も
壊走の腹いせでしょうか。ウクライナでロシア軍が水道や火力発電所などのインフラ施設に攻撃を加えている、などとする報道がありました。また、BBCによるとロシア国防省はウクライナのハルキウ州・イジウムから「再編成のために」撤退したと述べたのだそうですが、事実上の壊走を「転進」と呼んだかつての大本営発表を生で見ている気分になるのは気のせいでしょうか。
『ウクライナの積極攻勢で「数千人のロシア兵」が孤立か』で取り上げた「ウクライナ軍の反転攻勢」に関する話題に関連し、さっそく、いくつかの続報も出ているようですが、それらのなかで最も衝撃的なものがあるとしたら、やはりこれではないかと思います。
Ukraine accuses Russia of attacking power grid in revenge for offensive
―――2022/09/12 11:07 GMT+9付 ロイターより
ロイターによると、ウクライナ軍はハルキウ州を中心に、週末の攻勢を通じて3000平方キロメートルの領土を奪還したとしつつも、ロシア軍がその報復として、火力発電所や水道施設などの民間のインフラに対する攻撃を実施していると述べたのだそうです。
実際、火力発電所などが炎上し、ウクライナでは広範囲に停電が引き起こされたのだそうですが、これについてウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領も、日曜日の深夜、ツイッターに「(攻撃対象に)軍事施設はなく、(攻撃の目的は)人々の光と熱を奪うことにある」と書き込んだのだそうです。
ロイターはまた、今回のロシアの撤退では「数千人のロシア兵が弾薬や装備を残したまま」、兵站拠点としていたイジウムから「逃走した」格好であるとしつつ、「ロシア軍にとって3月に首都・キーウ近郊から撃退されて以来、最悪の敗北」と評しています。
そのうえで、今回のロシアの敗走を巡って、BBCにはこんな記事も掲載されています。
ウクライナ、東部で反攻強める ロシア軍は「再編成のため」要衝から撤退
―――2022年9月11日付 BBC NEWS JAPANより
BBCの記事でも、ロシア軍が10日、「ウクライナの急速な反攻を受けて東部の要衝から撤退した」と報じています。そのうえで、ウクライナ当局者も10日、ウクライナの部隊がロシア軍にとっての重要な補給拠点となっていたハルキウ州クプヤンシク(クピャンスク)に入ったことを明らかにした、などとしています。
また、ロシア国防省もその後、自軍が「再編成」するために「クプヤンシク近郊のハルキウ州イジュームから撤退した」と発表した、としています。まるで「大本営発表」でも見ている気分になる、という方も多いでしょう。撤退を「転進」と呼ぶのは、見苦しいことこの上ありません。
もちろん、ウクライナ政府の公式発表や英国メディアなどの報道を無批判に「事実だ」と見てしまうことが適切なのかどうか、といった点には留保は必要ですが、ただ、今回の件に関しては、ロシア側の発表があまりにも「わかりやすい」こともまた事実でしょう。
ちなみにBBCによれば、ロシアはこれまでイジウムを主要な軍事拠点としていたため、ロシアの部隊が「撤退した」とするロシア側の発表は「重要な意味を持つ」としています。
いずれにせよ、2月24日に始まったウクライナ戦争では、物量でウクライナを圧倒しているはずのロシアが壊走を続けているのは、非常に興味深いところです。
とくに3月末のキーウ近郊からの撤退、4月の「モスクワ撃沈」に続き、今回のロシアの壊走劇(失礼、ロシア側によると「再編」、でしたっけ?)は、世界の人々に対し、「無法国家は敗れる」との希望を抱かせるものでもあります。
それに、世界にはまだまだロシア製の兵器を購入している国が多いとされるようですが、そのロシア自身が「意外と戦争には弱い国である」という点が世界で常識となっていけば、また世界の勢力図は変わっていくかもしれません。
また、ロシアが西側諸国から金融制裁を受け、これにより中国がロシアを「人民元経済圏」に組み込むことを目論んでいるフシがありますが、ロシアが人民元経済圏に組み込まれる前にウラジミル・プーチン政権が倒れたら、中国の目論見も頓挫するかもしれません。
その意味では、ウクライナ戦争に関しては関連論点からも目が離せない展開が続きそうです。
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ロシアメディアモニターを名乗る Julia Davis 氏は Twitter に以下を投稿しています。
TV ショーからの転載動画=英語字幕付きです。登壇者たちの表情にご注目あれ。
https://twitter.com/JuliaDavisNews/status/1569070513909022720
素朴な感想ですが、問題はロシア軍の転進を日本の我々がどう見るかではなく、一般のロシア人が、どう感じるかではないでしょうか。
(^Д^)プラウダ、メデューサも書いてます
【プラウダ】10.09.2022
『ロシア連邦国防省:バラクレヤとイズムからの軍隊の撤退』
https://military.pravda.ru/news/1746370-minoborony_pro_balakleju/
【メデューサ】11.09.2022
『ロシアは、ハリコフ地域でのウクライナとの戦争で最大の敗北を喫しました。おそらくこれはウクライナ軍の攻撃の終わりではありません。ウクライナ軍はロシア軍からバラクレヤを奪還した。現在、1万人以上のロシア軍人が 包囲の脅威にさらされています』
https://meduza.io/feature/2022/09/10/rossiya-poterpela-v-harkovskoy-oblasti-samoe-krupnoe-porazhenie-v-voyne-s-ukrainoy-no-vozmozhno-eto-esche-ne-konets-nastupleniya-vsu
南部反攻 Southern Counter Offensive については何か月も前からウクライナがことあるごとに発言していました。デンマーク海軍出身の軍事評論家 Anders Puck Nielsen 氏よれば、それは地勢面でウクライナ優位にある地域にロシア軍をおびき寄せ、そこで可能な限りロシア兵を殲滅することが目的の息の長い策略であってきた、とのこと。今は静かな南部戦線からの戦況報告が出てくるとなお事態は一層転換するのではと当方は予測しています。
(参考)
"Conflict & War" Youtube チャネル
https://www.youtube.com/c/AndersPuckNielsen/videos
駐ロアメリカ大使館前でデモ。
アメリカのウクライなへの武器供与を止めろ。ロシア人を殺すな。
これってロシアのやらせ? ですよねえ
ロシアにも自由に意見を言えます。ウクライナ侵攻はロシア人も支持してますよ~
的なことかな。
でもこれだけ世界的(西側、自由民主主義国)に反撃をもらっては終わりでしょ
プーチンはやり過ぎました。でも良いこともあります。
日本国内では
・専制国家は独裁者一人で理屈抜きに好きなことが出来る。と理解したこと
・経済安全保障が重要なこと。農林水産省が食糧確保に乗り出しました。
・安全保障(武器、法制度)への取り組みが現実的なってきた
沖縄知事選は残念です。「簡体字、ハングル」ののぼりデモは増えそうです。
四年間は辛抱ですね。必ずボロを出しますから次に期待します
ロシア軍は思いのほかポンコツだったのですね。
気が早いかも知れませんが、そろそろプーチン後のロシア対策も検討しておいたほうがよさそうな気がします。
エリザベス女王の葬儀に岸田首相も参列されるそうですので、ついでにトラス新首相から最新のロシア情報を教えてもらえればよいのですが。
今後の対ロシア政策は、アメリカとはもちろんですが、イギリスとも擦り合わせておかないといけないと思います。
真偽は不明ながら、逃げ遅れた方面司令官(中将相当)が、生きたまま捕獲されたとかなんとか。事実なら兵站も情報も指揮系統も全く機能してないようです。
伝え聞く大戦末期の大日本帝国をみているようです。
>>>ロシア自身が「意外と戦争には弱い国である」
戦争に強い国は、歴史上そんなに無いのではないかと思いますが、そもそも戦いにおいて常勝であるには、それなりの核になる根本思想があるようです。
塩野七生の「ローマ人の物語」の中には、ローマ軍の強さに関することが詳しく書かれています。当時そこまで徹底して軍備を整えた国は無いでしょう。ローマを悩ませたカルタゴのハンニバルは、戦争の天才だったのかもしれません。ナポレオンも軍事の天才と言われています。そして、天才は天才的な作戦の基に戦います。中世のモンゴルの強さは、徹底した殺戮と略奪です。
司馬遼太郎の「坂の上の雲」に書かれている、ロシアの戦い方は、物量に頼っているように見えます。現地最高司令官のクロパトキンは、兎に角、あまり綿密な作戦を考えずに兵隊を投入していたような記述のされ方です。
それでも、翌日には、シベリア鉄道で次々と兵士が補充されていました。
日露戦争は、クロパトキンの戦争の下手さと、米国の仲介、ロシア革命のお陰で、日本は勝った体裁を与えられたようなものです。
バルチック艦隊も何故そんなに遠路行くものか、と思います。
日露戦争に於ける日本海海戦の日本側の圧倒的な勝利は、バルチック艦隊の疲労もありますが、日本側の徹底して練られた作戦の成果でしょう。
ロシア側の考えは、バルチック艦隊の物量があれば勝てる、旅順港に入れると思っていた節があり、作戦をしっかりと考えた形跡はないようです。
この戦争に於ける旅順攻略に於ける日本側の陸軍の戦い方も感心できるものではありません。(これらは、「坂の上の雲」に書かれていることを読み取ったものです)
ロシアは、戦争にどれだけ強いか?を見てみると、と言いますか、そもそも、戦争は、弱い相手に対して行うものですから、弱い相手に対して行えば、大概は勝つ訳です。
そして、ロシアは歴史を見ると、弱い相手に対してやる戦争は当然勝っているようです。そもそも、弱い相手に対してしか仕掛けていない。そして、その戦い方は、物量を頼る傾向があるかもしれません。
今回のウクライナ侵攻にも、その傾向が見受けられないでしょうか?
ウクライナは弱いから、直ぐに降伏すると思っていたのかもしれません。軍事作戦としては、実に「大らか」で楽観的なものです。
昔アフガニスタンに侵攻したときも、予想以上の抵抗に会って早々に撤退したように思います。
このように作戦をしっかりと立てずに大らかな作戦で戦争を始める国は、戦況が上手く行かなくなると、現地でいろいろと手当たり次第に破壊活動をやり出す短絡的な所があるのではないでしょうか?
日露戦争は、あのまま継続していれば、物量に勝るロシアの勝ちになっていたかもしれません。
戦争に於いて物量は大変に重要です。昔のロシア帝国、ソ連、の物量は侮れなかったと思います。しかし、今のロシア、GDPでアメリカの10分の1以下のロシアにそれ程の物量があるものでしょうか?
たしかにロシアが弱いというよりウクライナが強過ぎですよね。
また西側の結束もロシアが弱く見える、ロシアが実力を出せない一因でしょう。
今回ロシアが戦下手に見えるのも情報戦の敗北が大きいでしょうが、電子戦で負けてはドローンも飛ばせない。
西側の制裁で(金はあっても)精密電子機器の調達は滞る。
元から少ない精密誘導兵器の生産にあっては言わずもがな。
西側の足並みそろえた対ロ制裁も確実にロシアを弱く「させて」いるのでしょう。
そして日本もその一角にいることは「自負」していいと思う
(ロシア側の印象も「自覚」すべきだが)。
あと、日露戦争で観戦武官や記者が「映える」ことを報じて日露の作戦行動に影響を与えていたことが、今のSNSに通じておもしろい。
というか日本のほうが「ぶれなかった」かな。
総理もぶれないでいてほしい。
撤退という言葉、雰囲気は敗北を感じますし、実際に敗北を予感してから行うケースが多いのですが、実は撤退には敗北という意味までは含んでいません。命令によって秩序に則り後退する(余裕がまだある)のが撤退です。命令を放棄して散り散りに逃げると敗走・潰走ですね。ま転進となるとそのまま別方面へ攻勢を向けるはずなので、撤退を転進としてしまうと粉飾と言えるでしょう。「再編成のため」というのもほぼ説明をしていないに等しいですね。増援を組み入れるのも壊滅部隊を手当するのも「再編成」なので。
余談ですがよく誤解されるのが「全滅」です。全の字から戦力の100%が消え去るイメージですが、時代や環境にもよりますが、2,3割の戦力低下でも全滅と言うケースがあります。抗戦はできても、本来の戦略目標に沿った組織行動が不可能になるからです。
現地報道はどちらの立場かと目的によって言葉を厳選しているでしょうね。そして日本の報道では翻訳のマズさも手伝ってか、駆逐艦を戦艦と言ったり、装甲車や自走砲を戦車と言ったりと定義がメタクソなので、戦局報道自体があまり無いですが、たまに見かけたらだいぶ意訳が必要になります。
怖いのは、この後ABC兵器を使わないかなんだけど、
赤い国の人たちはやりそうで怖い。