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    Categories: 外交

タス通信、大規模な戦闘の事実をうっかり報じてしまう

ウクライナはヘルソン州などロシアが占領する同国南部への大々的な反攻を開始したと伝えられていますが、これに関し、ロシアのメディア『タス通信』(英語版)には大変興味深い記事が掲載されていました。「ロシア軍がウクライナ各所で、効果的な作戦を通じてウクライナに大打撃を与えた」というのです。裏を返せば、ウクライナの占領地域の各所において大規模な戦闘が生じているという事実を、ついうっかり認めてしまった格好です。

昨日の『ゼレンスキー大統領「ロシア軍は家に帰れ」と呼び掛け』でも取り上げたとおり、ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領はテレビ演説を通じて、ヘルソン州を含め、ロシアが支配する同国南部における大々的な反攻を宣言しました。

ゼレンスキー大統領がロシア軍に「家に帰れ」と呼び掛けました。ロイターによると、ウクライナ側はロシア占領下にある南部の都市・ヘルソンへの攻勢を強めており、同市へのロシア軍による輸送手段である船舶を集中的に攻撃しているのだそうです。こうした情報を信じて良いかどうかは少し留保は必要ですが、いずれにせよ、ウクライナ戦争はロシアにとって泥沼化していることは間違いないでしょう。当てが外れたロシア軍早いもので、今月24日時点でロシアによるウクライナ侵攻の開始から半年が経過しています。一部の「軍事評論家」らに...
ゼレンスキー大統領「ロシア軍は家に帰れ」と呼び掛け - 新宿会計士の政治経済評論

このあたり、ウクライナとロシアが実質的に戦争中にあることを踏まえるならば、片方の交戦当事国であるウクライナ側の発表だけを妄信すべきではありません。このことは、昨日も含め、当ウェブサイトではいつも申し上げているとおりです。

ただ、ロシアのメディアも面白いもので、放っておけば、勝手に自国の内情をバラしてくれます。

こうしたなか、『タス通信』(英語版)に掲載されたこんな記事が、なかなかに興味深いものです。

Ukraine’s military suffers over 1,200 casualties in failed offensive — Russian top brass

―――2022/08/30 21:27付 タス通信英語版より

タス通信によると、ロシア軍のイーゴリ・コナシェンコフ中将は「過去24時間において、ロシア軍は効果的な作戦を通じ、戦車48両、歩兵戦闘車46両、その他の戦闘装甲車37両、大口径機関銃を搭載したワゴン車8両、ウクライナ軍兵士1200人以上を排除した」と述べたのだそうです。

華々しい戦果、というわけでしょう。

ただ、タス通信自身がこういう記事を配信したという事実は、ウクライナ南部で大規模な戦闘が生じていることを、ロシア自身が認めた、という意味でもあります。

そういえば、ロシア側の公式の言い分は、「ウクライナの非ナチ化のために、ドンバスにおいて限定的な特殊軍事作戦を行っている」というものだったはずですが、そのドンバス地域から遠く離れているはずのヘルソン州でウクライナ軍とロシア軍の間で戦闘が生じているという事実自体、ロシアの報道が歪曲されている証拠でしょう。

タス通信さんも、その「ロシアが行っているのは特殊軍事作戦であり、戦争ではない」とする「設定」を忘れるとは、ずいぶんと「ウッカリさん」ですね(特殊軍事作戦が半年以上も長引いているという時点で、ロシア国民も薄々気付いているとは思いますが…)。

ただ、タス通信の報道を読んでいて気づくのは、そこだけではありません。

記事に出てくる地域は、ヘルソン州に隣接するドニプロペトロウシク州であったり、ミコライフ州であったり、あるいは(自称)「ドネツク共和国」であったり、と、戦闘が広範囲に及んでいることが伺えます。

こうした矛盾を隠し切れないあたり、しょせんは旧共産圏なのかもしれない、などと思う次第です。

新宿会計士:

View Comments (4)

  • 嘘をつきすぎて何を言ったか分からなくなるのは共産主義の特徴ですね。
    どっかの国とか、自称「提案」を掲げる(掲げてた)党とかと同じで。

    • 村民Bさま

      >嘘をつきすぎて何を言ったか分からなくなるのは共産主義の特徴

      嘉門達夫のお上品でない楽曲で鼻から牛乳というのがあります。ロシアによるかずかず発言はそれを連想します。
      昨今のロシアによるウクライナ侵攻に関係して、ロシア国内各所で不可解な事件が多発しています。自分たちに不利な事実真相が人に知られるのをごまかすために作り話を次々しているのではないかとの疑いを当方は募らせてます。
      ソ連時代を思い出してください。ゴルバチョフ大統領が亡くなりましたが、グラスノチが始まったり、厳しく立ち入りが禁止されていた西側取材陣の立ち入りが許されるようになって、「秘密のベールに包まれた秘境wを探検する取材隊」が編成されて送り込まれました。彼らが取材で発見した「不都合を隠したくしてしょうがないロシア人たちの行動」は、TV視聴者出版物読者の知識欲をたいそうくすぐるものだったと、30年以上昔の回顧をします。

    • 村人B 様
      「提案」というよりも「イ・チャモン」なんですけれどね。
      だけれどあの党はあれを提案だとドヤっているみたいです。