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数字で見る「意外に小さい」日韓関係破綻のインパクト

「日韓関係が破綻したら日本経済にも深刻な打撃がある」――。こんな言説がこれから増えてくる可能性があると思うのですが、あらかじめ申し上げておくなら、日韓関係破綻、あるいは日韓断交、日本企業の資産没収といった極端なケースが生じたとしても、それは日本経済にとっては十分にコントロール可能です。なぜなら、日韓貿易を除くと、「ヒト・モノ・カネ」などの面から見た日韓間の経済的関係は、隣国同士という関係性を踏まえると、驚くほど希薄だからです。

2022/08/16 08:45追記

本文中に誤植がありました。図表1を修正しています。ご指摘いただいた転勤族様、大変ありがとうございました。

「日韓関係の破綻」?

よくわからない時事通信の記事

昨日の『政府関係者、徴用工現金化「祈るしかない」=時事通信』では、自称元徴用工問題を巡る資産売却命令がもしも19日までに確定した場合、「日韓の応酬に発展すれば、関係改善の空気が完全に冷え込む」、などとする寝ぼけた報道記事を紹介しました。

時事通信に本日、自称元徴用工問題を巡って理解困難な記事が掲載されていました。「日韓の応酬に発展すれば尹錫悦大統領就任で芽生えた関係改善の空気が急速に冷え込む可能性がある」、というのです。はて?日本側で「関係改善の空気」とやらは芽生えていたのでしょうか?それよりも、「捏造に基づいて違法な行為を行っている」という行動を取っている韓国との関係を整理し、基本的価値を共有する国との関係を強化することの方が優先事項ではないでしょうか?自称元徴用工:日本政府のスタンス自称元徴用工問題とは、「戦時中、日本に...
政府関係者、徴用工現金化「祈るしかない」=時事通信 - 新宿会計士の政治経済評論

この点、「関係破綻」という意味では、考え様によっては「すでに実現している」という言い方もできるかもしれません。度重なる韓国の約束破り、違法行為などの発生を受け、日本政府や多くの日本国民にとって、韓国側に対する信頼はゼロに近いからです。

【総論】韓国の日本に対する「二重の不法行為」と責任』などを含め、当ウェブサイトでもこれまでにさんざん議論してきたとおり、「日韓諸懸案」の本質とは、「韓国が日本に対し、一方的に不法行為を仕掛け続けてきた結果」と総評することができます。

世間では少し勘違いしている人が多いようですが、日韓諸懸案とは韓国の日本に対する「二重の不法行為」の問題です。解決する全責任は、韓国側にあります。そして、日本が議論しなければならないことは、「どうやって韓国に譲歩して折り合いをつけるか」、ではありません。「約束を守らない韓国を、どうやって罰するか」、です。本稿では「総論」として、これまでに当ウェブサイトで触れてきた「韓国の対日不法行為」の数々を、大ざっぱに振り返っておきます。韓国の対日不法行為、尹錫悦政権発足後に「風化」していないか?2022年5月1...
【総論】韓国の日本に対する「二重の不法行為」と責任 - 新宿会計士の政治経済評論

そして、日韓関係を破壊してきたのが韓国側であるという事実を踏まえるなら、それを「修復する」責任が全面的に韓国側にあるという点については、議論の流れとしては、ある意味では当然の話でもあるのです。

「関係破綻なら日本にも困った影響がある」

ただ、本当の意味の「関係破綻」という状態に至るまでは、まだ少しの猶予はあります。

日本政府の韓国に対する信頼は傷ついているのは事実ですが、ただ、日韓両国間の国交は現在でも続いていますし、また、2019年7月の日本の対韓輸出管理適正化措置にも関わらず、日韓貿易は現在でも続いているからです。

そして、いよいよ日韓関係が本格的に破綻するという事態が近づいたときに、おそらく出てくるであろう主張が、「日韓関係が壊れて困るのは日本も同じだ」、といったものではないでしょうか。

この表現は、「日韓関係が破綻したら、韓国だけでなく、日本経済にとってもそれなりの打撃が生じる」、という主張にもつながりますし、さらには、「だからこそ、日本としては日韓関係の破綻を何が何でも防止しなければならない」、といった主張にもつながり得るものです。

そして、日本側の一部のメディアも、こうした考え方を少しずつ前面に押し出し始めているフシもありますが、こうした主張自体、「韓日関係を修復する責任を韓国だけに押し付けるのは不当だ」、「日本もまた、関係改善に向けて努力をしなければならない」、といった韓国側の主張とも相通じるところがあります。

こうした考え方は、一見すると、大変に説得力があるものです。なぜなら、韓国は日本にとって、地理的には間違いなく「隣国」という関係にありますし、また、日本政府当局者もしばしば繰り返しているとおり、外交・安全保障上は「日韓協力」、「日米韓協力」の考え方を、日本政府としても重視しているからです。

そして、話はこれにとどまりません。

日韓間は経済的な関係も深く、とくに韓国との貿易高は、2021年は台湾に追い抜かれて4位に転落したにせよ、依然として日本にとっては無視できないほどの大きさを占めているほどです。当然、日韓関係がいますぐ破綻し、日韓の政治、経済などあらゆる面で交流が停止すれば、日本経済にも「打撃はある」のです。

こうした状況を踏まえ、「日韓関係の破綻は何が何でも避けなければならない」、といった具合に、ともすれば論壇が思考停止しているフシもあります。

思考停止していませんか?

こうしたなか、本稿における問題意識は、「日韓関係破綻は日本にも打撃がある」とする言説が、「数字で見て事実と言えるのかどうか」、という点です。

日韓関係を巡って最近頻繁に耳にする表現がひとつあるとしたら、それは「日韓関係が破綻したら、取り返しがつかないことになる」、といったものではないかと思いますが、ここで思考停止すること自体、科学的に適切な態度とは言えません。

そもそも「日韓関係の破綻」が何を意味するのかについて、きちんと議論することもなく、ただ漫然と「関係が破綻したら大変なことになる」、「だからこそ関係破綻は何が何でも避けなければならない」、などと決めつけるべきでもないのです。

たとえば、「日韓関係破綻」と呼ばれるものが、単純に日韓相互間で対抗措置の応酬が生じるくらいのことを述べているのか、それとも大使の引き上げ、大使館の撤収、さらには国交断絶状態にまで至ることを指しているのかによって、その深刻さは異なります。

また、国交を断絶したとしても、民間の貿易や投資が全面的にストップするとは限りません。日台間のように、正式の国交は存在していなくても、民間の貿易・投資活動は活発に行われているというケースもあるからです。

(※ちなみに余談ですが、日本は台湾との間での正式な国交はないものの、日本政府はここ数年、外交青書で台湾のことを「基本的価値を共有し、緊密な経済関係と人的往来を有する極めて重要なパートナーであり、大切な友人」と位置付けているなど、日台関係はむしろ日韓関係よりも良好と言えるかもしれません。)

したがって、日韓関係において、今後考えられるシナリオを考察するには、(1)現在の日韓関係が客観的に見ていかなる状況となっているかを把握したうえで、(2)発生し得るシナリオごとに、その政治、経済面などへの影響度を測定する、といった試みが有益でしょう。

「数字」で見る日韓関係

「ヒト、モノ、カネ」で眺めた日韓関係

こうしたなか、当ウェブサイトが好むアプローチは、基本的な統計から確認できる両国関係と世界に占めるシェア、そしてその傾向を把握することです。

具体的には、経済活動はおもに「ヒト、モノ、カネ」の移動を伴うのですが、これについて簡単に確認できる数値がいくつかあります。その事例がヒト(年間の両国の行き来、相手国に在住する日本人の数など)、モノ(両国の貿易額など)、カネ(直接投資、対外与信)でしょう。

ことに重要なのは、「日本経済から見た韓国の位置づけ」であり、本稿ではとりあえず、日本側の統計をいくつか選んでみたいと思います(ただ、コロナ禍のため、日韓両国の往来は激減している状況にありますので、本稿では便宜上、「ヒト」については外務省が公表する『海外在留邦人数調査統計』を使うこととします)。

その総括表が、次の図表1です。

図表1 数字で読む日韓関係
項目 数字 ランク&シェア
日本から見た輸出額(2022年上半期) 3.45兆円 3位(7.51%)
日本から見た輸入額(2022年上半期) 2.06兆円 7位(3.83%)
日本から見た貿易額(2022年上半期) 5.51兆円 5位(5.52%)
日本の対外与信(2022年3月末) 514.35億ドル 15位(1.02%)
日本の対外直接投資(2021年12月末) 400.96億ドル 11位(2.02%)
海外在留邦人数(2021年10月時点) 41238.00人 10位(3.07%)

(【出所】財務省税関、日銀、JETRO、外務省のデータより著者作成)

…。

この数値を、どう見るべきでしょうか。

日韓貿易自体は非常に重要だが…

これについては、日韓関係は「重要である側面もある」とも言えますし、「隣国同士」という位置関係を考慮すると「重要ではない」とも言えます。

重要だという側面は、日韓貿易でしょう。

たとえば、日韓貿易は2022年上半期(1~6月期)で日本から韓国への輸出が3兆4493億円で、これは全世界への輸出額45兆9241億円の約7.51%を占めていて、韓国が輸出相手国としては日本にとって3番目に重要な国であることを意味しています。

ただし、「貿易額」で並び変えてみると、韓国は豪州、台湾に続く5番手に転落します(図表2)。輸入高に至っては見たら2兆円少々に過ぎず、7番手、というわけです。

図表2 日本にとっての貿易相手国(上位10ヵ国、2022年1~6月累計)
相手国 貿易額 うち輸出額 うち輸入額
1位:中国 20.30兆円 8.91兆円 11.39兆円
2位:米国 13.57兆円 8.23兆円 5.34兆円
3位:豪州 5.77兆円 1.00兆円 4.77兆円
4位:台湾 5.64兆円 3.33兆円 2.32兆円
5位:韓国 5.51兆円 3.45兆円 2.06兆円
6位:タイ 3.68兆円 2.02兆円 1.66兆円
7位:UAE 2.99兆円 0.49兆円 2.50兆円
8位:サウジ 2.78兆円 0.28兆円 2.50兆円
9位:ベトナム 2.69兆円 1.13兆円 1.56兆円
10位:ドイツ 2.63兆円 1.20兆円 1.43兆円
その他 34.23兆円 15.88兆円 18.35兆円
合計 99.79兆円 45.92兆円 53.87兆円

(【出所】財務省税関・普通貿易統計より著者作成)

そして、この「韓国は日本にとって3番目に重要な輸出相手国」、というのは、統計的にはたしかにそうなのですが、最近、輸出相手国としての台湾の重要性が急浮上しており、日本にとっての「3番手」と「4番手」が激しく入れ替わっていることもまた事実です。

とくに、2022年6月の単月で見ると、台湾と韓国は完全に逆転しており、また、伸び率で見ても台湾向けの輸出が堅調に伸びていることが確認できます(このあたりについては『貿易統計で見る、日本にとっての「台湾・韓国の逆転」』でも詳しく議論しています)。

資源国との貿易赤字が露骨に拡大:急がれる原発再稼働資源高・ドル高の影響もあってか、中国、豪州、サウジ、UAEなどとの間での貿易赤字が急拡大しています。財務省税関が昨日公表した2022年6月までの貿易統計を眺めていると、さまざまな示唆が得られることは間違いありません。とくに、基本的価値を共有する友人である台湾との貿易額が、韓国との貿易額と再び逆転したことは、非常に興味深い変化のひとつと言えるに違いないでしょう。相手国別貿易額(2022年6月)財務省税関は28日、2022年6月における貿易額を公表しています。...
貿易統計で見る、日本にとっての「台湾・韓国の逆転」 - 新宿会計士の政治経済評論

金融面でのつながりは驚くほど薄い!

次に、日本にとって金融面で見ると、韓国とのつながりは驚くほど薄いことがわかります。

邦銀対外与信「5兆ドル」大台に』でも詳しく取り上げたとおり、日本の金融機関の対外与信は2022年3月末時点において5兆ドルという大台に乗っているわけですが(※最終リスクベース)、このうち韓国向けの与信は514億3500万ドルと1%少々に過ぎません(図表3)。

図表3 国際与信総額と上位20ヵ国(2022年3月末時点、最終リスクベース)
相手国 金額 前四半期比
合計 5兆0216億ドル(100.00%) +1151.61億ドル
1位:米国 2兆2190億ドル(44.19%) +1146.76億ドル
2位:ケイマン諸島 6456億ドル(12.86%) ▲295.59億ドル
3位:英国 2359億ドル(4.70%) +8.65億ドル
4位:フランス 2029億ドル(4.04%) +26.68億ドル
5位:豪州 1523億ドル(3.03%) +112.49億ドル
6位:ルクセンブルク 1318億ドル(2.62%) +8.36億ドル
7位:ドイツ 1199億ドル(2.39%) ▲76.55億ドル
8位:中国 1039億ドル(2.07%) ▲20.83億ドル
9位:カナダ 1023億ドル(2.04%) +53.39億ドル
10位:タイ 989億ドル(1.97%) +3.15億ドル
11位:シンガポール 848億ドル(1.69%) +37.95億ドル
12位:オランダ 755億ドル(1.50%) +14.37億ドル
13位:香港 676億ドル(1.35%) +51.88億ドル
14位:アイルランド 658億ドル(1.31%) +19.73億ドル
15位:韓国 514億ドル(1.02%) +0.38億ドル
16位:インドネシア 497億ドル(0.99%) +13.93億ドル
17位:イタリア 489億ドル(0.97%) ▲36.97億ドル
18位:スイス 473億ドル(0.94%) +102.90億ドル
19位:インド 433億ドル(0.86%) +17.40億ドル
20位:台湾 428億ドル(0.85%) +9.50億ドル

(【出所】日本銀行『BIS国際資金取引統計および国際与信統計の日本分集計結果』データ等を参考に著者作成)

韓国の日本の金融機関にとっての重要性ランクは15位にとどまりますし、しかも、日本の金融機関の対外与信に占める韓国の重要性は、年を追うごとに徐々に減って行っているのです(図表4)。

図表4 邦銀の韓国向け与信の推移

(【出所】日本銀行『BIS国際資金取引統計および国際与信統計の日本分集計結果』データ等を参考に著者作成)

対外直接投資の割合も低い!

また、同じく「カネの流れ」で見るならば、JETROが公表する日本の対外直接投資(FDI)の国別残高で見ると、2021年12月末時点で韓国向けの直接投資残高は400億9600万ドルで11位であり、これは日本全体の対外直接投資残高1兆9871億6900万ドルに対して2.02%です。

いちおう、これについても全体の位置づけを確認しておきましょう(図表5)。

図表5 日本から見た対外直接投資残高(2021年12月末時点)
相手国 金額 割合
1位:米国 6612億ドル 33.28%
2位:英国 1849億ドル 9.31%
3位:中国 1468億ドル 7.39%
4位:オランダ 1366億ドル 6.87%
5位:シンガポール 1103億ドル 5.55%
6位:オーストラリア 836億ドル 4.21%
7位:タイ 715億ドル 3.60%
8位:スイス 527億ドル 2.65%
9位:ドイツ 489億ドル 2.46%
10位:香港 409億ドル 2.06%
11位:韓国 401億ドル 2.02%
その他 4097億ドル 20.61%
合計 1兆9872億ドル 100.00%

(【出所】JETRO『直接投資統計』より著者作成)

つまり、日本企業の韓国に対する輸出額はそれなりに多いのですが、直接投資、対外与信といった「カネの流れ」については、案外多くない、ということがわかるのです。

日本企業にとっての韓国は「進出先」ではなく「取引先」

そういえば以前の『韓国の債券発行が2年連続ゼロ…サムライ債市場の現状』でも取り上げましたが、韓国の企業や銀行による本邦の債券市場における公募サムライ債の発行実績は、とくにコロナ禍以降、激減しているのが実情でもあります。

韓国の企業・銀行などによる日本の債券市場での「サムライ債」の発行実績が、2020年から21年にかけての2年間、ゼロでした。日韓関係の「悪化」が公募サムライ債市場にも及んできたのか、それともほかに理由があるのかはわかりませんが、公社債市場における韓国のプレゼンスは低下しつつあるのかもしれません。本稿では円建債券市場の現状と推移とともに、債券市場から見える日韓関係についても紹介したいと思います。円建てのオフショア債券の種類当ウェブサイトでは普段から指摘しているとおり、ある通貨が国際的に通用するかどうか...
韓国の債券発行が2年連続ゼロ…サムライ債市場の現状 - 新宿会計士の政治経済評論

ここから浮かび上がる仮説があるとしたら、日本企業は韓国に直接投資するのではなく、あくまでも韓国企業を「サプライチェーンにおける取引先」として付き合うにとどめている、といったものでしょう。つまり、日本にとっての韓国は「進出先」ではなく「取引先」、ということです。

実際、日本から韓国への輸出高で圧倒的シェアを占めているのは、半導体製造装置、半導体等電子部品などを筆頭とする、「モノを作るためのモノ」(韓国語でいう「素材・部品・装備」、あるいは「素部装」)です。

日韓貿易が止まれば、日本企業にとっては「販売先」が失われるという意味では打撃は大きいのですが、「モノを作るためのモノ」が入ってこなくなるという意味では、韓国が受ける打撃の方が、遥かに大きいのです。

さらには、もしも日韓関係が無秩序に崩壊し、日本の金融機関の対韓融資が焦げ付き、日本企業の対韓投資が回収不可能になったとしても、日本全体で見たときの金額は正直、大したことはありません。日本が決定的に困る、ということは考えられないのです。

隣国にしては少なすぎる在留者

さて、もうひとつ確認しておきたいのが、韓国に在留する日本人の人数です。これについては外務省が公表する『海外在留邦人数調査統計』をベースに集計しておくと、2021年10月1日時点において海外在留邦人は1,344,900人、このうち韓国の在住者は41,238人で3.07%を占め、ランクは9位です(図表6)。

図表6 海外在留邦人(2021年10月1日時点)
人数(人) 割合
1位:米国 429,889 31.96%
2位:中国 107,715 8.01%
3位:豪州 93,451 6.95%
4位:タイ 82,574 6.14%
5位:カナダ 70,892 5.27%
6位:英国 63,653 4.73%
7位:ブラジル 48,703 3.62%
8位:ドイツ 42,135 3.13%
9位:韓国 41,238 3.07%
10位:フランス 36,347 2.70%
その他 328,303 24.41%
合計 1,344,900 100.00%

(【出所】外務省『海外在留邦人数調査統計』より著者作成)

これを多いと見るか、少ないと見るかは微妙でしょう。

地理的に遠く離れた米国に40万人を超える邦人が在留しているというのも興味深いところですし、また、アジアでは中国と並んでタイにもそれなりの人数が在留していること、地理的に離れているはずの豪州や欧州が日本人の主な在留先であること、といった点は、統計で見てみると意外に感じる人も尾いでしょう。

そして、隣国であるはずの韓国に在留する日本人は41,238人で、これはドイツ(42,135人)よりも少ないのです(もちろん、朝鮮半島有事の際には、これらの在留邦人の安全をどうやって保護するかが大きな課題となり得ますが…)。

このように考えていくならば、もしも日韓間の国交に異常事態が生じた場合であっても、4万人少々の邦人が日本に引き揚げてくるのは、人数的にはさほどハードルが高い話ではなさそうです。400人乗りのジェット旅客機を100回少々飛ばせば良いからです。

あるいは、これらの邦人には、なんとか釜山まで来てもらえれば、海路で対馬ないし福岡あたりまでピストン輸送する、といった手段を取ることも可能かもしれませんが、このあたりについては日本政府には早急に避難経路を示していただきたいと思う次第です。

日韓関係破綻の具体論

さて、「日韓関係が破綻する」、などといわれても、いまひとつピンとこない、という方は多いと思います。身もふたもない言い方ですが、「日韓関係破綻」と一口に述べても、それはさまざまなことを意味するからです。

敢えて最も極端なシナリオを考えてみると、「日韓間が完全に断交状態となり、貿易、投資、与信なども完全にストップする」、「日本企業の対韓与信、対韓投資はすべて凍結される」、といったものが考えられなくはないのですが、その場合、投資にしろ与信にしろ、金額的な重要性はさほど高くありません。

そして、むしろ日本の対韓融資、対韓投資、対韓貿易が止まって困るのは、韓国の側であって、日本の側ではないのです。

また、日韓関係破綻は「日韓両政府が報復の応酬をすること」でもたらされる、といった考え方もあるようですが、これにしても、日韓断交にまで行き着くかどうかは微妙です。

むしろ日韓関係が破断の危機に陥る、といった事象は、「米韓同盟が消滅する」など、日韓関係とはまったく無関係な次元で発生し得るのではないでしょうか。

いずれにせよ、正体が良くわからない「日韓関係破綻論」に捕らわれるあまり、日本政府がまかり間違っても韓国に対し、国際法の原理・原則を逸脱した譲歩を行うことはあってはなりません。むしろ日韓関係破綻を恐れず、韓国に対しては国際法に従い、主張すべきは正々堂々と主張すべきでしょう。

(※なお、自称元徴用工による日本企業の資産売却が実現する可能性は、ゼロであるとは言わないにせよ、そこまで高いとも思えません。このあたりは正直、様子見で良いと思う次第です。)

新宿会計士:

View Comments (12)

  • おはようございます。
    図表1に「日本から見た輸入額」が二つあります。
    ひとつは「貿易額」の誤りと思います。

    • 転勤族 様

      おはようございます。
      また、貴重なご指摘に感謝申し上げます。

      >ひとつは「貿易額」の誤りと思います。

      ご指摘のとおりです。さっそくに修正します。
      引き続き当ウェブサイトのご愛読ならびにお気軽なコメントを賜りますよう、何卒よろしくお願い申し上げます。

  • 在韓邦人の内訳(滞在理由)にも興味が向くトコロであります
    風聞に拠りますと統一教会関係がかなりの割合を占めるとのこと、真偽や如何に?

    合同結婚式で渡韓している邦人ならば帰国を望まない可能性や韓国人家族を連れた帰国を希望する可能性も考慮する必要性が出てきそう…後者の場合一族郎党になると邦人一人に対しエライ人数の"帰国"希望になる可能性もあるし日本国内のアレヤコレヤな連中が「家族を引き裂くのか」キャンペーンを展開しそう…オソロシヤ

  • サハリン2でのお話しと比較すると、

    どうなる?サハリンプロジェクト プーチン大統領令の衝撃
    https://www3.nhk.or.jp/news/html/20220701/k10013698441000.html
    >JOGMECによりますと、日本が輸入する原油のうち、サハリン1の原油が占める割合は1.5%(2021年)、一方、輸入するLNGのうちサハリン2が占める割合は7.9%(2021年)だということです。

    日本から見た輸出額の7.51%はそれなりに大きい数字に思えますが、内訳からすると韓国以外で製造用素部装の需要が高まり、減少を受け止めれるから大丈夫って事ですね。

    日本側で困るとしたら…韓国産の安いビールやお菓子など食品をPBで売ってる小売業?

    脱・韓国での手間や面倒はありますが、必要不可欠が無いってのは韓国切り捨ての大事な部分ですね。

  • >日本企業は韓国に直接投資するのではなく、あくまでも韓国企業を「サプライチェーンにおける取引先」として付き合うにとどめている

    かつては合弁の形態でやってたけど約束を守らない(第三国み輸出をしない約束なのにいつの間にか)技術を盗むで多くの日本企業が撤退しました。
    今は戦犯企業リストがあり、うっかり進出はできない。

    • 外務省に海外進出企業拠点数というデータがある。
      アジアへの進出拠点数は53,431で世界全体77,551の69%を占めている。
      そのうち韓国の拠点数はたったの754、アジア全体の1.4%
      中国の31,047はともかくタイの5,856インドネシアの2,046と比べて大きく見劣りする。
      カンボジアですら434の拠点がある。

  • 外務省のコリアスクール(朝鮮が話せる人間の集団)の連中が 生活がかかっているため必死の抵抗 暗躍 陰謀が気がかり。全てをスムースに進めるには ここを先に手を付けなければ。

  • 巷であふれる、依存度の非対称を棚に上げての「どっちも論」はどうかと思ってしまうんですよね。

    貿易面での台韓逆転や与信額・率の漸減は、それとなくの”捨てるっす(ステルス)撤退”を示唆してるものなのかもですね。

  •  未だに未練がましく渡韓ブームがーだの若者が朝鮮語をーだのとやっている現状でも「意外と小さい」のに、ここからは小さくなっていく要素しか無いわけで。じきに「やっぱり小さい」→「驚くほど小さい」となっていくほどに、韓国と交渉・妥結する必要性も薄まっていくと。
     あらやだ詰んでる。

  • あなたの家の隣にコンビニがあったとして、もしコンビニが潰れたとしたら不便だけどなんとかなります。
    あなたの会社の取引先がもし潰れたとしても、やはりなんとかなります。
    人間は馬鹿ではありません。
    少しの間不便になりますが、時間が経てばなんとかなるんです。
    では、それをふまえて次の選択肢を考えて見ましょう。

    韓国から永遠にタカリ続けられる未来。
    韓国と縁を切って、ドライな関係。

    多少不便になっても、後者の未来のほうが圧倒的に明るく思えます。

    kアイドル?あれは、ダンピングで目立ってるだけで、なかったらなかったでなんとなくなります。

    そう考えると、韓国のいない未来というのも、そう怖がるもんじゃないですよね。

  • 私は、韓国との付き合いをお断りして、日本に清々しい日々が訪れる事を、心から願っています。
    多分現金化はしないと思いますが。
    日韓の腐れ縁切りは米韓同盟の行く末次第かも。

  • 在韓邦人は43000人なのですか。
    しかし周りには4000万人の韓国人。
    半島有事の際の邦人救出は 容易ではありません。
    国が救出すべきは 日本国籍者ですが 韓国は日本人を人質に韓国人の脱出を 画策するでしょう。
    駐在員など韓国と血縁のない方の選別は容易です。
    一方 韓国人と日本人の結婚世帯は日本国籍と韓国籍そして子供は韓国籍となるので日本人妻のみ救出とか 親類一同山ほど群がり日本人妻・日本政府の力で脱出しようとするものがでてきたりするでしょう。
    半島にいる在日韓国人の脱出も手助けするべきだ と マスコミはキャンペーンするでしょう。
    日本人1人に山ほど韓国人を乗せた 脱出船が対馬に上陸しようとしたとき 適正に選別できるか という 問題など 多数発生すると思います。
    事前シミレーションが 必要だとおもいます。

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