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ツイッターのデマアカウントに海外勢関与か=産経報道

安倍総理の暗殺に関する陰謀論を広めているツイッター上の5つのアカウントが、過去にウクライナ戦争でロシアの側に立ったツイートをしたり、ワクチンを巡ってもおかしな陰謀論を提唱したりしていたことが、インターネットセキュリティ会社の分析で判明したのだそうです。ただ、この手の陰謀論を規制すべき、という話にはなりません。私たち一般人が、「ウソをウソと見抜ける能力」を持てば良い話だからです。

安倍総理と統一教会:MKSとまったく同じ構造

安倍総理の暗殺事件から、早いものでそろそろ1ヵ月が経過しそうです。

ただ、総理大臣経験者であり、かつ、史上最長の政権を率いた大物の暗殺という衝撃的な事件であるにも関わらず、メディアは安倍総理の功績をたたえようともせず、ひたすら、「統一教会との関係」だの、容疑者の犯罪動機だのといった、本質からかなり外れたものばかりに焦点を当てているフシがあります。

安倍総理に対しては、たとえば米上院がその功績をたたえる決議案を全会一致で採択(『米上院「安倍総理は繁栄と安全保障に忘れがたい足跡」』等参照)するなど、諸外国からは称賛されているわけですが、日本国内のメディアは「統一教会」一色であるかにも見えます。

追悼決議を全会一致で可決米上院が現地時間の20日付で、安倍晋三総理を「一流の政治家であり、かつ、世界の民主的価値のたゆみない擁護者」、「日本の政治、経済、社会、そして世界の繁栄と安全保障に忘れがたい足跡を残した」などとする追悼決議を採択しました。本稿ではその具体的な内容について、決議本文部分の全体を可能な限り意訳しておきたいと思います。世界が悼む安倍総理史上最長の政権を率いた安倍晋三総理は今月8日、選挙演説中に凶弾に倒れ、帰らぬ人となりました。これについて、当ウェブサイトではこれまで、「世界が...
米上院「安倍総理は繁栄と安全保障に忘れがたい足跡」 - 新宿会計士の政治経済評論

「日本社会のボトルネックのひとつは、新聞、テレビを含めたオールドメディアである」、というのは、当ウェブサイトを開設するときから、著者自身が一貫して保有している問題意識なのですが、本当に腹立たしい限りでもあります。

「自民党議員と統一教会との関連」云々についても、基本的には「怪しい」という話であり、たとえば「自民党が選挙で圧勝してきた要因が、統一教会の違法な世論工作によるものである」、といった確たる証拠が存在しているわけではありません。

このあたり、政治家の個別の発言を切り取り、「自民党が統一教会とズブズブノ関係にあった」かの印象を、確たる証拠もなしに植え付けようとするという意味では、まさに「もりかけ・さくら(MKS)」とまったく同じ構造にあると考えて良いでしょう。

産経「安倍氏事件のデマ発信アカ、海外勢力が関与か」

こうしたなか、「統一教会」とは直接の関係はないかもしれませんが、間接的に「デマ」を生むという意味では、産経ニュースに昨晩掲載されたこんな記事が参考になるかもしれません。

<独自>安倍氏事件のデマ発信アカ、過去に親露・コロナ陰謀論投稿 海外勢力が関与か

―――2022/8/3 20:49付 産経ニュースより

産経は「独自」と銘打ち、安倍総理の銃撃事件を巡り、日本のツイッター上で「事件はヤラセ」、「自作自演」といったデマを中心中秋となって発信していたアカウントの一部が、過去にロシアによるウクライナ侵攻やコロナウィルスのワクチンに関し、「陰謀論とみられる情報を積極的に発信していた」と報じました。

仙台市のインターネットセキュリティー会社「Sola.com」(ソラコム)が7月8日から11日にかけ、安倍総理銃撃事件に関する国内でのツイッター投稿を分析し、中枢となってデマを広めていた5つのアカウントを抽出。

安倍総理を巡るデマ投稿に対し、「リツイート」や「いいね」が5000件以上つくなど、「高い影響力があることがわかった」、などとしています。ちなみにこれらのアカウント、1日の投稿は平均約30回で、一部は銃撃事件発生直後からデマの拡散に関与していた一方、「事件前に安倍氏に言及する投稿はなかった」のだとか。

また、「Sola.com」社はこの該当する5つのアカウントの過去投稿についても検証したところ、ロシアによるウクライナ侵攻直後には「ウクライナに米国の生物兵器研究所がある」「ウクライナはネオナチ」といったロシア側の主張に立ったデマを発信。

さらにそれ以前は新型コロナウイルスのワクチンに関し「『人口削減計画の一環』と訴えたりする投稿が目立った」、などとしています。

我々が賢くなれば良い

こうした記事を読んで思い出すのは、「ワクチン陰謀論」、あるいはロシアによるウクライナ侵略を「デマ」だ、「自作自演だ」、などと決めつける投稿が、ツイッター上だけでなく、当ウェブサイトにも寄せられている、という事実でしょう。

当ウェブサイトの場合は読者のレベルが高いため、こうした低レベルな釣りコメントに引っかかることはないと考え、基本的にはこれらのコメントについては放置しています。ただ、なかには発信元を毎回変更しているケースもありますが、その一部は欧州のIPアドレスを示していたりします。

最近だと「オールド右翼」云々の書き込みをする匿名コメント主などがそうですが、当ウェブサイトのような社会的影響力が非常に低いサイトですら、こうした不審なコメントが打ち込まれるほどですから、それなりの「ネット工作員」は存在するのでしょう。

ちなみに産経ニュースは、安倍総理に関するデマを拡散している投稿については、「内容が日本になじみがないもの」だったり、「投稿時間がロシアのサンクトペテルブルクのビジネスアワーと一致」していたりするなど、「不審な点が複数見られた」とする同社の担当者の発言を取り上げています。

このあたり、愉快犯なのか、中国・北朝鮮・韓国・ロシアなどの政府の意を受けた工作員が書き込んでいるのかはわかりませんが、事実ではない内容、確たる証拠がない内容(たとえば「自民党と統一教会」云々)などを積極的に拡散しようとしている者がいることは間違いありません。

もっとも、こうしたフェイクニューズに関しては、個人的にはさほど心配していません。

ひと昔前、地上波テレビ局は「UFO=宇宙人の乗り物」、「心霊写真」といった、なかには明なか虚偽といえるようなコンテンツを平気で垂れ流していましたし、フェイクニューズ、デマの類いを好むのは人類の常なのかもしれません。

陰謀論だ、フェイクニューズだといったものに騙されないために、なにより大切なことは、科学的思考態度でしょう。

6年目を迎えたウェブ評論:安倍総理の遺志と自由言論』などでも指摘しましたが、私たち自由・民主主義国家に生きる者が最も重視しなければならないのは、情報の受け手がきちんと客観的事実と主観的意見を峻別して判断するだけの能力を持つことであって、情報発信そのものを規制することではないのです。

早いもので、当ウェブサイトも立ち上げてから6年が経過しました。正直、ここまで長続きするとは思っていませんでした。読者の皆様には深く感謝申し上げます。さて、当ウェブサイトにおいて最も重視しているのは、「読んでくださった方々の知的好奇心を刺激すること」であり、その際のポイントは、「客観的事実と主観的意見を分けること」、「読者コメントを受け付けること」だと考えています。また、安倍総理の遺産について考察するついでに、憲法に関する私見も提示しておきたいと思います。言論空間を作る「2種類の情報」早いもの...
6年目を迎えたウェブ評論:安倍総理の遺志と自由言論 - 新宿会計士の政治経済評論

このように考えていくならば、「ウソをウソと見抜ける能力」こそまさにインターネット時代に必須のスキルであり、むしろ私たち日本社会はそれを獲得するために進化していかねばならないといえるのです。

新宿会計士:

View Comments (11)

  • >なかには発信元を毎回変更しているケースもありますが

    Torですかね?

  • 「我々が賢く」は全くの同意ですが、この「賢い」というものが、どのようなことを指すのか、そこはもう少し掘り下げた説明が欲しいところです。
    これまでの記事で見掛けた説明には同意していますが。古い記事にはあるのかもですが、総括的なものは見掛けた覚えないので。

    ちなみに自分は「ファクトチェック、ロジックチェックが適切に行えること」だと考えています。
    ファクトチェックとロジックチェックは、概略として以下のような点を確認することだと考えています。

    『ファクトチェックについて』
    一次ソースに近いか?(政府発表か? それを元にした報道か? など)
    複数の情報発信源で同様の情報が確認出来るか?
    科学的根拠、法的根拠に基づいているか?
    提示された証拠に捏造が疑われる違和感は無いか?
    情報から、主観的判断を取り除いているか?

    『ロジックチェックについて』
    論点は何か?
    論点に沿った根拠を提示しているか?
    根拠は事実か?
    結論に相反した事実は存在していないか?
    循環論法や白黒思考のような論理構造的な欠陥は無いか?

    何にしても、まずは情報の確度の確認と、論点の確認こそがすべての基本だと考えています。
    また、情報発信者が人間である以上は、意図しなくても認知バイアスの影響を受けて、誤った情報を発信することは有り得ます。
    なので、どこが情報発信者だろうと、等しくチェックしなければいけないものと考えています。

    当たり前のことを言っているに過ぎない話ですが。改めて整理しないと意識しないものでもあると思うので。無意識のうちに「出来ているつもり」で終わったり。
    自分の備忘の意味も含めて書かせて貰いました。

  • 賢くなれと言っても、難しいような?
    人は容易い方に流れる生き物なのです。
    それよりも、発信人・集団・国はどうせいつもの
    人・集団・国なんだから、SNS側でこのSNSは
    怪しいトコロですって、インターネットの怪しいホームページを
    見る時や登録する時のように赤表示して、拡散させれば
    よいと思います。 現在は怪しいトコロも怪しくないトコロも
    一緒くたにするから、イケナイんです。

  • 「我々が賢くなれば良い」は、
    「我々が賢くなる以外に解はない」
    という、残念でしんどい現実を示す言葉だと思います。

    ネットのおかげで、オールドメディアが信頼のおける情報源ではないことが明らかになりましたが、信頼の置ける情報源というものがそもそも幻想であったことも示したと思います。
    情報とその情報源の信憑性を、常に自分の頭で考えなければならないんです。そこに思考停止という安住の地はないんですよね。

    だったら「賢くなればいいんだよ」と前向きに言ったほうが明るい気分になります。楽しんでやればいいんですよ。(笑)

    最近見かけた匿名さんのいくつかのコメントを読んで、このコメントを書きたくなりました。

  • 陰謀論を拡散する5つのアカウント公開すればいいのにね。どこかに公開されてるのかな?

  • 議会制民主主義の制度設計の課題として、有権者の資格は国籍と年齢以外に制限が無い為、情報リテラシーの低い人が無視できない割合となった場合、国益を毀損するような候補者であっても、そのような有権者が多数投票することで当選してしまう可能性があることです。
    そのような可能性を減らすためにも、広い意味での教育はとても大事だし、情報リテラシーの高い人が多数を占めるような社会であり続けることも大事です。

  • 「人々よ賢くあれ。」
    というのはどうも堅苦しさを感じますので、
    パオロ・マッツァリーノ氏の書籍タイトル
    「つっこみ力」くらいで良いのでは?

  • ブログ主様

    川口浩の探検隊の悪口はやめてください。

    あの頃は嘘とわかりつつ、ワザと騙される粋な視聴者が多かった、のか?
    そんなに大事にはならなかったおおらかさがあったような。

    スタッフで美味しく食べましたとか、ワザとだまされてますとか 野暮だと思うのは自分だけか。

    まぁ、子供の頃の自分はマジで騙されてましたが。

  • 賢くなるのは良いことですが、あふれ出る情報を1つ1つ裏を取り検証して、信じられるかどうかを確認するのは、結構しんどいし、なかなかそんなことできないし、時間も取れない人も多いんじゃないかと思います。
    私は、アメリカ「VOA」のような、政府メディアが1つ、日本にもあればいいなと思います。
    政府の主張と意図を淡々と放送するテレビ局が欲しいです。
    ちなみに、NHKには期待していません。

  • >「自民党議員と統一教会との関連」云々についても、基本的には「怪しい」という話であり、たとえば「自民党が選挙で圧勝してきた要因が、統一教会の違法な世論工作によるものである」、といった確たる証拠が存在しているわけではありません。

    立憲民主党が日本共産党との選挙での協力で「立憲共産党」と化しました。

    圧勝してきた要因が〜というのは「論点の極論化」であり詭弁だと考えます。

    選挙協力を受けるべきでは無い、反社会的カルト集団からの選挙協力を受けてきた過去を恥じて、今後は一切の関係を断つべきだってだけの事です。

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