韓日議連の新会長に就任した鄭鎮碩(てい・ちんせき)国会副議長は26日、日韓共同宣言などにも触れつつも、「日本の議員と緊密にコミュニケーションを取り、韓日関係を過去最も良かった時代に戻す」などと宣言したそうです。この鄭鎮碩氏という人物、おそらく、自称元徴用工問題を筆頭とする日韓諸懸案の全責任が韓国の側にあるという事実が、すっぽりと頭から抜けているのではないでしょうか。
「二重の不法行為」「関係改善論」に慣れてしまう!?
ウェブ評論活動をしていたら、たいていのことにはあまり驚かなくなるものです。
たとえば日韓関係をめぐっては、現在、決して「友好的」とは言えない状況に陥っていますが、その原因は、基本的には韓国の日本に対する一方的な不法行為にあります(『【総論】韓国の日本に対する「二重の不法行為」と責任』等参照)。
世間では少し勘違いしている人が多いようですが、日韓諸懸案とは韓国の日本に対する「二重の不法行為」の問題です。解決する全責任は、韓国側にあります。そして、日本が議論しなければならないことは、「どうやって韓国に譲歩して折り合いをつけるか」、ではありません。「約束を守らない韓国を、どうやって罰するか」、です。本稿では「総論」として、これまでに当ウェブサイトで触れてきた「韓国の対日不法行為」の数々を、大ざっぱに振り返っておきます。韓国の対日不法行為、尹錫悦政権発足後に「風化」していないか?2022年5月1... 【総論】韓国の日本に対する「二重の不法行為」と責任 - 新宿会計士の政治経済評論 |
ただ、韓国側のメディアでは、自国の不法行為に関しては完全に棚に上げて、「韓日関係を『改善』しなければならない」、「そのためには日本の誠意ある対応が必要だ」、などといった要人発言や社説、コラム記事などが毎日のように展開されています。
このあたり、逐一きちんと反論していかねばならないことは間違いないのですが、やはり、こんなことを何年も続けているうちに、徐々に感覚がマヒし、「これが韓国メディアのノーマルなのか」、などと慣れてきてしまうようなのです。
おそらくこの「感覚がマヒする」という現象は、当ウェブサイトの愛読者の皆様にとっても同じでしょう。その意味では、やはり事実関係を定期的に掘り起こし、新鮮な感覚を保つ努力は必要なのです。
韓日議連新会長の、なかなかに強烈な発言
ただ、昨日は久しぶりに、「新鮮な驚き」を得るような記事が、韓国メディア『聯合ニュース』(日本語版)に掲載されていました。
韓日議連 新会長に鄭鎮碩氏を選出
―――2022.07.26 16:45付 聯合ニュース日本語版より
聯合ニュースによると、韓国の韓日議員連盟が26日に定期総会を開き、新しい会長に保守系の与党「国民の力」の鄭鎮碩(てい・ちんせき)国会副議長を選出したのだそうですが、その新会長である鄭鎮碩氏の発言が、じつに強烈なのです。
一文ずつ、ツッコミがてら紹介してみましょう。最初はこんな部分です。
「今年で創立50周年を迎える韓日議連は両国関係が苦境に陥るたびに潤滑油の役割を担ってきた」。
両国環境が「苦境に陥った」のは、たいていの場合、韓国側が原因を作っています。とくに2017年の文在寅(ぶん・ざいいん)政権発足以降は、火器管制レーダー照射事件などを含め、明らかに韓国側に100%の落ち度があることが国際社会にも認識されるほどの事件が相次ぎました。
彼らの言う「潤滑油」とは、韓日議連がそのカウンターパートである日本側の日韓議連をうまく「騙す」という意味だと解釈すると、スッキリとしますが…。
日韓共同宣言は韓国国会自身が破棄を求めているのだが…
次に、「見え透いた罠」が出てきます。
「両国関係を、関係が良好だった金大中(キム・デジュン)大統領・小渕宣言のころのように回復させ、冷え込んだ両国関係改善の活路を探るため最善を尽くす」。
韓国側が日韓関係を、1998年に小渕恵三首相と金大中(きん・だいちゅう)大統領(※どちらも肩書は当時。いずれも故人)が発した日韓共同声明のころに戻そうとしている点については、日本を代表する優れた韓国観察者である鈴置高史氏も、かねてより指摘している点です。
ただ、この日韓共同声明をめぐっては、2001年7月18日に、韓国国会が破棄を求める決議を全会一致で採択しているという事実を忘れてはなりません。
対日関係全面見直し決議、韓国国会が採択
―――2001/07/18付 ウェブ魚拓サイトより【※朝日新聞記事】
まさかとは思うのですが、「韓日議連」所属議員の皆さんは、自分たちの先輩がやったこの決議のことを、忘れてしまったのでしょうか?
さらには、日経電子版に昨日掲載された『韓日議連新会長に鄭鎮碩氏 「関係最善の時代に戻す」』という記事によると、鄭鎮碩氏は次のようにも述べたのだそうです。
「日本の議員と緊密にコミュニケーションを取り、韓日関係を過去最も良かった時代に戻す」。
日韓関係が「過去に最も良かった時代」が何を意味するかは知りません。しかし仮に、「韓国の難癖に日本が応じていた時代に戻れ」、などと述べているのだとしたら、これはこれでとんでもない話です。実際、日経によると、自称元徴用工問題を巡って、鄭鎮碩氏はこう述べたのだとか。
「韓日の政府が外交を通じ対話しなければならない問題だ。国際秩序の変化を前に、韓日両国が共通の利益をめざすべき時だ」。
端的に言ってお話になりません。この鄭鎮碩氏という人物、おそらく、自称元徴用工問題を筆頭とする日韓諸懸案の全責任が韓国の側にあるという事実が、すっぽりと頭から抜けているのではないでしょうか。
いずれにせよ、自称元徴用工問題は100%、韓国の日本に対する純然たる不法行為であって、日本の側に「折れる」必要性は皆無です。いや、日本自身が自由で開かれたインド太平洋を重視する立場として、むしろ国際法から逸脱するような対韓譲歩をしてはならないのです。
こんな組織が50年って…
ちなみに鄭鎮碩氏は総会後の記者会見で、9月27日に予定されている安倍晋三総理の国葬儀に収入列するため、韓悳洙(かん・とくしゅ)首相とともに日本を訪れるとの考えも明らかにしたのだそうです。
また、8月4日には東京で今秋の日韓議連との合同総会の事前準備のための合同幹事会議を開催し、日韓・韓日議連の創立50周年記念式に関する議論も予定しているのだそうです。
ただ、正直なところ、日韓議連関係者は過去にも韓国で議連合同総会が行われた際に、韓国が竹島での軍事演習を実施するなどの不法行為を行っているにも関わらず、「席を蹴って帰ってくる」などの行動を取ってこなかったなど、非常に問題がある組織でもあります。
むしろ「創立50周年」を機に、「こんな組織が50年も継続した」という点に焦点を当て、日韓議連自体が必要なのかどうか、国会議員の皆さんではじっくりと議論していただきたいと思うのはここだけの話です。
View Comments (25)
日韓関係を元に戻す動機は何?
何を企んでいる。
そんなの決まってるじゃありませんか.
昔のように,再び日本の生き血を好きなだけ啜って韓国が肥え太ることですよ.
>「韓日関係を最も良かった時代に戻す」
↑言葉足らず?ですね
「韓日関係を(彼らにとって)最も良かった時代に戻す」・・ですよね。
そうです。
韓国が望めば日本が頭を下げ賠償し、経済援助し技術供与し、後ろ盾になり推薦人になり保証人になる。
それが彼らの思う良かった時代、正常な常態です。
「韓日関係が最も良かった時代」とは韓国が日本にたかりたい放題たかっていた時代の話かい?
私はこれまで、ユンソンニョル政権は、本気で日韓関係改善に取り組むつもりはない、米国向けのポーズを繰り返しているだけかな、と思っていましたが、少し風向きが変わったかな、と感じております。
そのひとつは、韓国外相が7/25に「強制徴用問題に対する具体的な解決策提示が首脳会談の前提条件」と述べたこと(日本から見れば今頃気付いたか、ですけど)。
もうひとつは、韓国の市民団体「韓米日同盟支持国民連帯」なるものが、「①政府は日韓基本協定尊重の意志を国内外に明らかにせよ②徴用工判決を受けた債権者に対する代位返済を実行せよ③左派が反対するのは日韓基本協定を無力化させて韓国の独立と繁栄、自由統一の基礎を崩壊させようとする試みだ」とする声明を発表したことです。”国民情緒法”が支配する韓国で、国際的には常識的な(韓国人からみれば自分たちに不利な)解決策を模索するには、保守系マスコミを使った対策が必要と、主張してきた私には、やっと手を打ち始めたか、ではありますが。
とはいえ、無事韓国内の意見集約に成功し、日本への対案提示に至れるかは、まだまだ未知数です(というより困難ですかね)。
岸田政権のこれまでの粘り強い対韓外交を支持します。
韓国内左派右派問わず"経済もうヤバイ"と認識しただけでアプローチが違うだけでないかなあ、と眺めております
先の大統領選でも得票数は拮抗しているようですし、欲しいモノが手に入りさえすればまた掌クルーではないかと思います
韓国のイマ抱える課題のヒトツは、「交渉相手(の民主主義)国の(一部といえど少なからずといっても過言でない数の)国民に"掌クルー"というふるまいをする国だと認識されているコト」だと愚察いたします
仮に韓国が自己変革を遂げ日本と"基本的価値を共有する"国となり得たとしてもソノコトを日本に信用してもらえなければその先にある信頼は獲られないでしょう…なんてな
まー宏池会ダマクラカスくらいはヤルかも?
自業自得ですが、韓国を取り囲む状況って、相当に厳しいですね。
①③はいいですが、②は絶対に韓国側としては譲れない一線でしょう。
あわよくば(というかほぼ確実に)、次のステップとして代位弁済を日本から金を巻き上げる足がかりにしたいでしょうから。
しかし、代位弁済という時点で、日本に無用の責任を押し付ける論外の話です。実際に金を払えと要求するか否かは関係ありません。
仮に纏めたとして、韓国の頭では譲歩に譲歩を重ねて、ようやくこれを纏めたという話になるのかも知れませんが。
日本としては「お話にもならない」と一蹴するしかありません。
認めるとそれこそ、日韓基本協定の無力化と戦後秩序への挑戦に通じる話になってしまうので。
そのときに感じる、韓国側の絶望と憤りがどんなものになるかは分かりませんが。日本としては知ったこっちゃないですね。
ROKの自主性に期待しても無理だと思います(笑)。
①強制徴用問題に対する具体的な解決策
・その具体的な解決策が、日本からの謝罪と代位弁済基金に日本企業が入る、みたいな提案になる。
・国際法違反是正するには、立法府が三権分立を用いて、大法院の出した判決を無効にする法案を成立させるしかない=ROKにはそれができるだけの民主主義の土壌がない。
②同盟支持国民連帯
・日韓基本協定の尊重を内外に示す必要はありません、既に締結され国際社会に開示されているものなので。
・ROKによる代位弁済(詐欺被害者に国家が勝手に援助金を与えるのは好きにすれば良いが)を行うことは日韓基本協定の破棄したのと同じです。
そろそろ制裁を積み重ねていくときが来たのですが、今の自民党にそれができるかというと統一教会シンパの集まりらしいし・・。
そんなに関係改善したければ
”対日関係全面見直し決議撤回及び謝罪決議”をやってからお出で。
さすが会長様はよくわかってらっしゃる。潤滑油って、古くなって劣化すると「摩擦が増えて」「破損の原因になる」んですよねー。一旦全部捨てましょうねー。
日韓関係を 2001年のころに戻したければ、
少なくとも、そこから韓国政府がやらかしたことを清算しないといけないわけですが。
他国との関係も含め、できますかね?
応じる日本側の議員がいるから成立してるんですよね。止めたら、と短絡的に考えたりするわけですが、といって、議連をなくすと密室に潜るので、却ってややこしくなりそうです。
交渉を全公開してガラス張りにできれば、存在意義はあると思います。
ちなみに、韓国側が何を言っても、それは先方の自由であり、日本側にそれを止める権利はありません。(正確に言えば、そんなこと構っていられない。)我々が監視すべきは日本側議員の発言や行動であり、それが国益にそぐわない場合は、その議員にはお辞めいただくように選挙を通じて活動したいと思います。
うちの選挙区の議員さんもこの議連に入っているので、注視するようにしています。
まあ、かつて
末期の総会屋さんが
『ワイら総会屋と企業の関係を最も良かった時代に戻す』(?)
と頑張って小細工してきたのとおんなじようなものでしょう。
最終的かつ不可逆的な約束をあっさり反故にし、それをほとんどの日本人が目撃し、とてもイヤな思いをしました。そして、そういう事が1度だけでなく何度もあり、現在も継続中。日韓関係は韓国のせいで、まさに不可逆的ですね。