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    Categories: 外交

ロシア・韓国とのハイレベル防衛交流は2年連続ゼロ回

防衛省が公表した防衛白書を確認すると、日本の外交・安全保障の軸足が、明らかに「近隣国重視型」から決別し、「自由で開かれたインド太平洋(FOIP)」を重視する方向に変化していることが確認できます。そして、日本の近隣にある2つの無法国家――ロシアと韓国――との間のハイレベル防衛交流実績が、2年連続でゼロ回だったというのは、偶然の産物とも思えません。

防衛白書の公表

令和4年版の防衛白書が先ほど、防衛省のウェブサイトにて公表されていました。

令和4年版防衛白書

―――2022/07/22付 防衛省HPより

現時点で閲覧できるのはPDF版のみであり、しかもそれぞれ容量が大きいので、スマートフォンなどから閲覧するには不向きですので、原文を読むという方については、安定した通信環境のもと、PC、タブレットなどの大画面での閲覧を強くお勧めする次第です。

ハイレベル交流実績から見る日本の立ち位置

それはさておき、PDF版の本編一括についても514ページとかなり膨大ですが、今回の防衛白書は冒頭『わが国を取り巻く安全保障環境』のなかに『ロシアによるウクライナ侵略』の解説ページが設けられ、また、米国、中国、朝鮮半島、ロシアなど地域別の記載に加え、宇宙、サイバー空間への言及もあります。

こうしたなかで個人的にひとつ注目しておきたいのが、「ハイレベル交流実績」です。これは、「自由で開かれたインド太平洋(FOIP)」とのかかわりでも、非常に重要な図表です(※図表そのものは、のちほど紹介します)。

防衛白書(図表Ⅲ-3-1-2、P328)には、『ハイレベルの交流実績(2021年4月~2022年3月)』と題した図表が掲載されていますが、これは「防衛大臣・防衛副大臣・防衛大臣政務官・事務次官・防衛審議官・各幕僚長とそれぞれのカウンターパートとの二国間会談」のことです。

これによると、1年間で5回以上の「ハイレベル交流」が行われた相手国としては、日本とともに「クアッド」を構成する米国、豪州、インドの3ヵ国に加え、英国、フランス、ドイツ、カナダなどの欧米主要国、さらにはベトナム、フィリピンなども含まれています。

防衛省はこの図表の直後の『FOIPの維持・強化に向けて協働を進めていく国々』という節で、こう述べています。

同盟国である米国をはじめ、オーストラリア、インド、英国、フランス、ドイツなどの欧州諸国、カナダ及びニュージーランドは、わが国と基本的価値を共有するのみならず、インド太平洋地域に地理的・歴史的なつながりを有する国々である。これらの国々に対しては、インド太平洋地域へのさらなる関与を行うよう働きかけるとともに、FOIPの維持・強化に向けてわが国が(3)の地域への取組を行うに際し、パートナーとして協働することで、わが国単独の取組よりも効果的な協力を実施できるように防衛協力・交流を進めている」(※「(3)の地域」とは、図表で示されたような国々のこと)。

具体的にどう変化していったのか

ちょうど中国を取り囲むように、日本としても東南アジア諸国との防衛交流を強化している、というわけですが、それだけではありません。著者自身が確認した限り、この同じ図表は2017年以降、公表されているようなのですが、これを見比べていくと、興味深いことがいろいろと判明するのです(図表1~6)。

図表1 ハイレベル交流実績(2017年)

図表2 ハイレベル交流実績(2018年)

図表3 ハイレベル交流実績(2019年)

図表4 ハイレベル交流実績(2020年)

図表5 ハイレベル交流実績(2021年)

図表6 ハイレベル交流実績(2022年)

露韓とのハイレベル交流が2年連続してゼロ回

いかがでしょうか。

この6年間の動きは、まさに日本が「近隣国重視型」から「FOIP重視型」に明らかに舵を切ったものだといえるでしょう。

また、仮想敵国である中国との間ですら1回のハイレベル防衛交流を持っているなかで、韓国との防衛交流が2年連続してゼロ回だったというのは興味深い点です。

日本政府は口では「北朝鮮問題に対処するうえで、韓国との連携が重要だ」、などと述べていますが、その実情はお寒い限りです。現実には日韓間のハイレベル交流は2020年にたった1回になり、その後は2021年、22年と連続してゼロ回となりました。

このあたり、火器管制レーダーを照射してきたり、旭日旗を「戦犯旗」などと罵ったり、はたまた軍事情報保護に関する協定を破棄しようとしたりするような相手国と連携するのは、なかなかに困難でもあります。

また、ロシアとのハイレベル交流も滞っているのですが、今般のロシアによるウクライナ侵略の発生を受け、日露防衛交流は今後、滞らざるを得ないのかもしれません。

考えてみれば、国際法に違反してウクライナに侵略したロシアと、同じく国際法に違反して竹島を不法占拠し、日本の海自機に火器管制レーダーを照射した韓国は、程度の差こそあれ、「国際法を蹂躙する無法国家」という意味ではまったく同類です。

これらの無法国家とのハイレベル防衛交流実績が2年連続でゼロ回となったことも、(その是非はともかくとして)単なる偶然とも思えないのです。

いずれにせよ、外務省や防衛省が「自由で開かれたインド・太平洋」を強調するほど、日本としても、国際法を尊重し、基本的価値を共有する国との連携を強化・加速させる一方、そうでない国との交流は自然と減らさざるを得ないというのも、ある意味では当然のことと言えるでしょう。

新宿会計士:

View Comments (11)

  • 韓国の場合は、現職の大統領自身が、選挙戦の最中に「日本は仮想敵国」と発言しています。
    また、韓国軍の装備が、北朝鮮ではなく日本向けというのは、米国政府や在日米軍も認めるところです。
    日本も、親露、親中、親韓の外務省を抑えて、現実路線になったということでしょう。
    安部元首相の暗殺により、財務省、外務省が、親露、親中、親韓に戻らないか、注視したいと思います。

  • つまり・・・・

    日本にとってロシア及び韓国に二ヶ国は、2020年以降北朝鮮と同じレベル扱いで構わない国家と成り下がったということでいいのでしょうか?

    ミサイルを日本海に撃ち込んできたり、領空侵犯ギリギリの処まで爆撃機を近づけたり、いきなりFCレーダーを照射してくるなんて行為は,程度の差こそあれども、明らかな敵対行為ですし、似たような国家であることは間違いないんでしょうね。
     

  • 毎度、ばかばかしいお話しを。
    韓国:「日本が韓国とハイレベル防衛交流をしなかったことに関して、謝罪と賠償を要求する」
    この話は2022年7月22日時点では、笑い話である。

    • すみません。追加です。
      韓国は、岸田総理を騙せなくても、バイデン大統領は騙せる(?)と思っているので、日韓関係がどうであれ、気にしないのではないでしょうか。

  • それでもロシア軍とは、不測の事態を防ぐという意味でも、一定レベルの交流を保つべきだと思いますが、韓国軍とはなぁ。役に立たないだけならばまだともかく、いきなり後ろから撃ってきかねませんからねえ。お守りと躾はアメリカさんにお任せしましょう。
    それよりも気になるのは、はたして台湾軍との間で防衛交流が行われているのかどうかです。現状では、行われていたとしても公にはできないでしょうが、「台湾海峡有事は日本の有事」という認識が共有されているのであれば、水面下で防衛当局間の交流が行われていたとしても不思議ではないと思うのですが。

  • 新宿会計士さんに紹介いただいたデイリー新潮をクリックして、一連の日置さんの記事を読みました。一貫して、岸田首相、宏池会、外務省のことが深刻に取り上げられていましたが、いくら日置さんの記事と言えども、これ本当に信じていいの?というほどの深刻さです。本当にその通りだとしたら、日本はもう処置無しです。このような首相、政治家集団、役人しか生み出せない日本国民が問題であり、元凶なのです。日本人は上から下までロジックを持たない。それをやると、あるいは、やらないと結果としてどうなるか?全く考えず、その場の空気と好き嫌いだけでしか判断しない。安倍さんには正直、幻滅しました。韓国に対して強硬な姿勢(正論)を貫きながら、裏ではあんな朝鮮の反日拝金宗教の広告塔を平然と務めている。わけがわからない。まるでロジックに反する。というか国民を舐めていたのか?そういうロジックを感じるのは私だけなのか。普段は選挙にも行きそうにない人たちが、長蛇の献花台に並び、こういう時だけは慈悲深い善良な市民を演じるのか?まるで朝鮮の泣き女みたいです。日本の場合、それが強制でない分だけ重症です。日本人はすべてがこんな感じです。ロジックを持たないから、矛盾し失敗につながる行為、意味の無い行為、形だけの行為、虚礼じみた行為、自己満足だけの行為が、徳川時代から麗しい伝統として絶え間なく続いている。こんな国民を有する国が、豊かになれる道理が無い。憲法改正、従軍慰安婦、徴用工・・いったいいつまで引きずっているのか?その気になればさっさと解決できるきわめて容易なマターだと思いませんか?まあ、根底には国民に解決する気が、さらさらないんでしょうね。改憲意必要な2/3の議席が取れた?猫に小判でしょうね。きっと何も決まりません。そもそも全然決断ができない首相なんですから。でもまあ、そんな首相が選出される政治風土を支えているのは日本国民なんですから文句は言えませんよね。

  • 逆に韓国がどことハイレベル協議をしているのか調べていただけると参考になります!