今回の参院選を「改憲派の勝利」とみるべきでない理由
今回の参院選、改憲勢力が3分の2を超えた、などと報じられているようですが、保守派ないし改憲派の方々にとっては、あまり楽観視すべきものではありません。そもそも公明党を「改憲勢力」とみるべきなのかという問題もさることながら、立憲は引き続き野党第1党でもあります。また、維新は立憲を比例では上回ったにせよ、思ったほど議席は増えませんでした(親ロシア派議員の言動のせいでしょうか?)。いずれにせよ、今回の選挙を「改憲派の勝利」と軽々しく結論付けるべきではありませんし、改憲に向けた道筋を楽観視すべきでもないのです。
参院選の結果、ほぼ判明
速報ベースですが、参院選の結果がほぼ判明したようです。今回の参院選の結果をまとめたものが、次の図表です。
図表 2022年7月・参議院議員通常選挙の結果
勢力 | 今回 | 非改選 | 合計(増減) |
---|---|---|---|
自民 | 63 | 56 | 119(+8) |
公明 | 13 | 14 | 27(▲1) |
与党合計 | 76 | 70 | 146(+7) |
維新 | 12 | 9 | 21(+6) |
国民 | 5 | 5 | 10(▲2) |
改憲勢力 | 93 | 84 | 176(+11) |
立憲 | 17 | 22 | 39(▲6) |
共産 | 4 | 7 | 11(▲2) |
れいわ | 3 | 2 | 5(+3) |
NHK | 1 | 1 | 2(+1) |
社民 | 1 | 0 | 1(±0) |
参政 | 1 | 0 | 1(+1) |
諸派 | 5 | 7 | 12(▲2) |
合計 | 125 | 123 | 248 |
(【出所】参議院ウェブサイトおよび各種報道をもとに著者作成)
自民・維新躍進、立憲が減少
自民党は選挙区で45議席、比例で18議席を制し、合計して63議席を獲得。改選124議席と補選1議席・あわせて125議席のうちの半数を占めました。また、公明党は13議席(うち選挙区7議席・比例6議席)でしたので、自公あわせて獲得議席は76議席に達しています。
また、非改選は自民党が56議席、公明党が14議席(合計70議席)であるため、自公合わせた与党合計では146議席と、過半数(125議席)を21議席も上回っています(※ただし、非改選をあわせると、自民党だけで単独過半数には達しません)。
さらに、自公両党に加え、日本維新の会、国民民主党の4党をいわゆる「改憲勢力」と定義づけた場合、その「改憲勢力」は改選後で11議席増えて176議席となり、参議院の3分の2(166議席)を10議席も上回っています。
このうち日本維新の会は12議席を獲得し、非改選の9議席と合わせれば公示前と比べ6議席増えて21議席に達していますが、国民民主党は5議席にとどまり、非改選5議席と合わせて10議席と、結果的に2議席減らしています。
これに対し立憲民主党は17議席と公示前と比べて6議席も減らす結果となったほか、日本共産党も4議席にとどまり、公示前と比べ2議席減っています。また、れいわ新選組は3議席、NHK党は1議席をそれぞれ新たに獲得したほか、参政党が初めて1議席を獲得しています。
なお、社民党は1議席を守り、政党要件についても維持しているようです。
「改憲に向け一歩進む」?そう単純ではない
これを、どう見るべきか。
一見すると、「保守派」「改憲派」にとっては非常に歓迎すべき結果です。
しかし、これを手放しに歓迎して良いのかと問われれば、そこは非常に疑問でもあります。なぜなら、立憲民主党は獲得議席を減らしたとはいえ、相変わらず自民党に次いで2番目に多くの議席を獲得し、参議院では最大野党としての地位を維持したからです。
これに加えて公明党を「改憲勢力」と呼ぶことに対しては、とても大きな疑問符が付きますし、日本維新の会や国民民主党が、いわゆる「保守派」と呼ばれている人たちにとっても望ましい改憲案に賛成するものかどうかについても、楽観視すべきではないでしょう。
また、個別政党で見ると、「日本維新の会が思ったほど躍進できなかった」、という印象を持つ人も多いのではないでしょうか。
事前の調査だと、「日本維新の会が立憲民主党を獲得議席でも上回るのではないか」、といった観測もありましたが、ふたを開けてみれば、たしかに比例代表では「維新>立憲」となりましたが、選挙区を含めれば立憲民主党が健闘し、合計獲得議席数では「立憲>維新」となりました。
やはり、日本維新の会をめぐっては、ロシアによるウクライナに対する違法な侵略戦争に関連し、ロシアの肩を持つかのような発言をした関係者らを、党として適切に処分できなかったという事実については、重く受け止めたほうが良いのかもしれません。
個別に見れば興味深い点も多々ある
もっとも、個別に選挙区、比例代表などの事情を眺めていくと、興味深いこともいくつか判明します。
まず、自民党は32の一人区のうち28区で勝利していることを踏まえると、今回の選挙は「自民党に風が吹いた」ものである、という言い方をしても良いのかもしれません。あるいは、「野党共闘」に対し、有権者が引き続き「ノー」を突き付けたものでもあります。
ただし、自民党はたしかに議席を積み増しているのですが、岸田派の候補者・水落敏栄(みずおち・としえい)氏、比例で落選したようです。これについては当ウェブサイトの『岸田首相にお灸据えたいなら自民でなく宏池会へどうぞ』などの影響があったと申し上げるつもりはありませんが、興味深い動向です。
こうしたなか、比例代表では2016年に比例でトップ当選した郵便局系の候補(今回は長谷川英晴氏)が漫画家の赤松健氏に抜かれたこと、青山繁晴氏や片山さつき氏らが引き続き多くの票を獲得して上位当選していることは印象的です。
その一方で、自衛官出身の現職・宇都隆史(うと・たかし)氏(茂木派)がどうも落選した可能性が濃厚であること、河村建夫・前衆院議員の長男である河村建一氏も当選圏内にまったく及ばなかったようであることが目に付きます。
こうしたなか、立憲民主党に関しては、結果的に京都で福山哲郎氏(前幹事長)、千葉で小西洋之氏、東京で謝蓮舫氏らの有力政治家が当選を果たしたほか、前回の衆院選で落選した辻元清美氏が、比例でトップ当選しています。
ただ、とくに謝蓮舫氏に関しては「トップ当選」ではなく、当選順位は自民党の朝日健太郎氏、公明党の竹谷とし子氏、日本共産党の山添拓氏らに次いで4番目であり、5番目の生稲晃子氏と票数ではあまり大きな差がないようです。
また、新潟では森裕子氏が落選したほか、比例代表では白真勲氏や有田芳生氏が落選するなどの「地殻変動」も生じています。大変に興味深いところです。
安倍総理の遺志は?
なお、今回の選挙で辻元清美氏が出馬したことを受け、社民党の福島瑞穂氏、そして社民党の政党要件がどうなるのかに関しては、結果的には政党要件維持・福島瑞穂氏の議席維持、という結果となったようです。
【速報】社民党が政党要件を維持 福島みずほ氏が当選
―――2022/7/11 5:55付 Yahoo!ニュースより【TBS NEWS DIG配信】
このように考えていくならば、今回の選挙で改憲を含めた積年の課題に一歩近づいたという言い方もできなくはないのですが、やはり、まだまだ日本という国を変えていくには道半ばと言わざるを得ません。
結局、選挙というプロセスは、「濁った池の上に少しずつきれいな水を注ぎこみ、池を浄化する」ような作業なのかもしれません。
いずれにせよ、今回当選された方々には、参議院議員として、日本をより良い国にするために、全力でご尽力いただきたいと思いますし、また、保守系議員の方々はとくに安倍総理の遺志を継ぎ、改憲の発議という大きな課題を成し遂げていただきたいと思う次第です。
本文は以上です。
日韓関係が特殊なのではなく、韓国が特殊なのだ―――。
— 新宿会計士 (@shinjukuacc) September 22, 2024
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自民党にとって今後、公明党や統一協会を斬るか斬らないかは大きな問題になって来るかも知れませんね。自分としては地元の清和会系の自民党候補と「自民党」に投票しました。
9条改憲はまだ難しそう。しかし対テロや対スパイは何とかして欲しい……
今まで評価が難しくて安定しなかった岸田首相が、影のボスだった“かも知れない”
安倍元首相が居なくなった今、真価を試されるでしょうね。
昨日、私は「老人の老人による~」という文を書きましたが、岡山の方が、自民でありながら公明を敵にして勝ったようです、これは悪しきシルバー民主主義打倒への第一歩かもしれません
>公明・山口代表「国民の理解なければ発議に及ばない」
国民投票があるのに発議にすら国民の理解を求める逃げの姿勢。
公明党は憲法改正反対勢力と見るべきでしょう。
改憲の発議については自民党内ですら一致団結できるか怪しいので
「改憲勢力」という括り自体が恣意的なものを感じています。
マスコミや特定野党にしてみれば、改憲を肯定的に語るだけで敵だと考えるのでしょうから
その意味で「改憲勢力」=「俺たちの敵」ということなのかと理解しています。
ガーシーが当選しましたが、どうなるんですかね?
未知数です。
スジから言うとN党は改憲勢力ですから憲法改正を目指すならば一議席でも擁護しなければなりますまい。もっとも自民党程度の党議拘束も出来るかどうか全く未知数ですし、レッキとした犯罪者である個人が不逮捕特権のために出馬して、選挙期間中一度も日本に滞在せずに逃亡中で、マンマと当選してあと6年の保身を得た、関係者に国庫から黙らせるための弁済や慰謝料相当が支払われるかと思うと暗澹とします。
御指摘の通り、変動には時間がかかるのだと思います。変化の先を見据えている(見えている)方たちにとってはもどかしいかもしれませんが、民主主義の下では必要なプロセスです。
政局運営上、公明党の発言力が弱まったことが、今回選挙の成果ではないでしょうか。一番注目していた岡山で、小野田さんがぶっちぎりの勝利を得たことがそれを象徴しています。
心配事項は、岸田さんが勘違いして、高市さんたち保守派に冷飯を食わすことですが、その度胸はなさそうに思います。「死せる孔明、生ける仲達を走らす」。
改憲は、自衛隊明記くらいでは、個人的には不満ですが、とにかく一度手を入れることが出来れば、一歩前進と我慢したいと思います。
元自衛官の方はアレの影響受けたんでしょうかねえ。
ヒゲの隊長が今回改選だったらバロメーターになったんでしょうけど。
>改憲勢力の勝利
マスゴミが勝手に決めつけてるだけじゃないんですか。
保守派は元々安易な楽観視はしてないと思いますが。
眺むるに生稲氏はR4氏に投げる層をジャッカルさせるための起用だったのでしょうか…
素朴な感想ですけど、選挙後の野党は、(別に改憲だけではありませんが)岸田政権の政策に反対する野党と、その政策以上に過激(?)なことを主張する野党に分かれるのではないでしょうか。
(後者の野党のことを、朝日新聞は「健全な野党ではない」と言い出すでしょう。もし野党の役割が与党をチェックすることなら、「それでは不十分である」と言ってもよいと、思うのですが)
今後3年間で脱創🦟を目指すべきですね。
維新は私の政治観に一番近かったのですが
まさしく例の親ロシア派議員がいたために自民に投票しました
親ロシアを譲らないという理由だけでは離党させることはできないのでしょう
おそらくは維新としても頭の痛い問題と思われます
今のところ”統一教会”をメデアが全力で守っているため大きな騒ぎにはなっていない。
これが日本侵略まで考えられるようになれば平和ぼけした国民もさすがに変わるかもしれない。
変えることに臆病な国民性は悪くは無いが変化の時代に有ってさすがに良くない。
ウクライナ事態は北海道だったかもしれない。
自称アイヌ民族と言われる方々にプーチンがロシア国籍を与える。
と言う話が去年より出ています。
ウクライナではロシア国民を守る!の命題で損略をしています。
別にロシアの専売特許では無く歴史的に使い古された手法ではありますがそこで目覚めても遅い。アメリカは核を持った相手には反撃しない。が今回明確になっています。
ウクライナは自国内での防衛だけしか出来ません。
今日本でこれを認めることが出来るのはいかほどでしょうか。
暗澹たる気持ちです。
先程テレビを見てた私の父と他家族の会話。
「改憲なんて言ったって安倍が何やるか言いもしないのに改憲改憲って言って賛同出来るわけない」
父は新聞を取ってて毎日見てるのにネットメディア以外一切見ない私でも知っている自民党の改憲案すら知らないようで愕然としました。
ちなみに取ってる新聞は何十年も毎日新聞一筋。