韓国の外貨準備が前月比94.3億ドル減少しました。これはコロナ禍直後の2020年3月以来の大きな減少でもあります。とりわけ注目しておきたいのは、有価証券と現金預金の合計残高が前月比88.63億ドルも減少したという事実です。とくに韓国銀行は為替介入を行っているという事実を隠し立てもしなくなりました。同国の外貨準備の減少がまだ続くのかどうかには注目する価値がありそうです。
韓国の外貨準備が94.3億ドルの減少
韓国銀行が本日、2022年6月末時点の外貨準備高を公表しています。
2022年6月末の外国為替保有額
―――2022.07.05付 韓国銀行ウェブサイトより
韓国銀行によると、韓国が保有している外貨準備高は有価証券が3,952.7億ドル(前月比▲62.3億ドル)、現金預金が192.3億ドル(前月比▲26.4億ドル)で、外貨準備全体では94.3億ドルの減少でした。
また、これとは別に韓国銀行が公表した統計データをもとに、同国の外貨準備高をまとめておくと、図表1のとおりです。
図表1 韓国の外貨準備高(2022年6月末時点)
項目 | 2022年6月 | 前月比増減 |
---|---|---|
金 | 47.95億ドル | 0.00億ドル |
SDR | 145.67億ドル | -5.14億ドル |
IMFリザーブポジション | 44.24億ドル | -0.55億ドル |
現金預金+有価証券 | 4144.92億ドル | -88.63億ドル |
外貨準備合計 | 4382.78億ドル | -94.33億ドル |
(【出所】韓国銀行)
「現金預金+有価証券」の減少
なお、外貨準備統計を読むときには、「現金預金+有価証券」については、基本的にはセットで見る必要があります。アセット・アロケーションの都合で有価証券だけが減少し、現金預金が増加する、といったこともありますし、逆に現金預金が減少し、有価証券が増加する、ということもあるからです。
ただ、今月に関しては、現金預金も有価証券も同時に減少しており、前月比88.63億ドルの減少というのは、減少額としてはコロナ禍が本格化し始めた2020年3月(▲89.93億ドル)とほぼ並ぶ金額でもあります。
参考までに、2019年12月以降の韓国の外貨準備高のうち、「現金預金+有価証券」の部分の前年同月比を眺めておくと、図表2のとおり、2021年11月以降、明らかに減少基調に入っていることが確認できるでしょう。
図表2 韓国の外貨準備高のうち「現金預金+有価証券」の前月比
(【出所】韓国銀行)
自国通貨安防衛のための為替介入
こうしたなか、6月の外貨準備の増減要因れについて、韓国銀行は次のように説明しています。
- 2022年6月末韓国の外国為替保有額は4,382.8億ドルで前月末比94.3億ドル減少
- その他通貨外貨資産の米ドル換算額および金融機関の預金の減少、外国為替市場の変動性緩和措置などに起因
- 2022年5月末基準で韓国の外国為替保有額の規模は世界9位
…。
もはや、韓国銀行が為替介入を繰り返しているという事実を、隠し立てもしなくなりました。
「外為市場の変動制緩和措置」、つまり「ボラティリティの抑制」と呼んでいますが、事実上、通貨防衛により外貨準備を溶かしたようなものでしょう。
おりしも韓国では通貨・ウォンの対米ドル相場は先月、およそ13年ぶりの安値となる1ドル=1300ウォンの大台を突破しました(『韓国ウォン、13年ぶり場中1300ウォン/ドル突破』等参照。ただし、現時点では1ドル=1300ウォン台を割り込んでいます)。
先ほど、韓国の通貨・ウォンが1ドル=1300ウォンの大台を突破しました。ウォンは再び1ドル=1300ウォン水準を割り込んだのですが、その後は再び1300ウォンの大台を突破するという、非常に激しい値動きが見られています。韓国銀行あたりが必死の介入をしているのでしょうか?いずれにせよ、USDKRWが13年ぶりの安値水準を目指すなか、韓国メディアから日韓金融協力(とくに日韓通貨スワップ)への待望論が出てくるのかどうかには注目したいところです。辛うじて1300ウォンの大台を踏み越えなかったが…今朝の『韓国人教授「韓米は無条件... 韓国ウォン、13年ぶり場中1300ウォン/ドル突破 - 新宿会計士の政治経済評論 |
基本的に自国通貨安を防ぐためには、外国通貨(特に米ドル)を市場で売り、自国通貨(韓国ウォン)を買い入れるという為替介入を行う必要があります。その結果、市場からウォン資金が回収されるため、金融引締効果も同時に生じます。
また、自国通貨防衛の為替介入については、無制限に続けることはできません。当たり前の話ですが、外貨準備の残高が尽きたら、それで終了です。
韓国の外貨準備は換金可能なのか?
いちおう、現時点において「現金預金+有価証券」の残高は4145億ドルと、依然として4000億ドルの大台を上回ってはいるのですが、ピークだった2021年7月の4457億ドルと比べれば300億ドル以上の減少でもあります。
これに加えて韓国の場合、外貨準備で保有している資産には、外貨準備に本来組み込むべきではない不適格な資産が含まれているのではないか、とする指摘もあります。
先月の『「韓国は外貨準備高を倍増し危機に備えよ」=亜洲経済』でも取り上げた、韓国メディア『亜洲経済』(日本語版)の『[キム・デジョンのコラム] 尹錫悦政府、初の課題は「国際金融競争力」向上』という記事には、こんなことが記載されています。
「韓国銀行の外貨資産構成を見ると、国債36%、政府機関債21%、社債14%、資産流動化債券(MBS)13%、株式7.7%、現金5%だ」。
この記述が事実だとすれば、4000億ドル少々とされる「現金預金+有価証券」の全額がすぐに換金して使用可能なものなのかどうか、なんだかよくわかりません。
いずれにせよ、韓国の外貨準備の減少基調がまだ続くのかどうかは、今後の同国の為替相場とも密接にかかわる話でもあるのでしょう。今後の動向には要注目、といったところでしょうか。
View Comments (12)
韓国の為替操作を止めさせたければ、口で言っても無駄です。
為替操作の為の弾を亡くせばいいんです。
弾切れになれば、為替操作を止めるでしょう。
おそらく、米国はしれっとこの手を使ってるのかも。
「通貨スワップ」しろとうるさくなりそうですね。
昨日行われた日韓財界会議で、韓国側から日韓通貨スワの再開を望む声が出ていましたが、むべなるかなと感じました。
やはり韓国の財界のトップにいる人々は、一般の韓国国国民とは違って相当危機感を抱いているようです。このあたり、日本側からの参加者にはM銀行の関係者もいたそうですが,どのように受け止めていたのでしょうか。この必死とも思える要請を、ただ漫然と聞き流しているだけであったらならば、それは銀行マンとして落第なのではないかと思料致します。
まぁ日本側にはその危機感に付き合ってやる義理や道理など、1ミリたりとてありません,としか言えない事案ですね。
この日韓財界でも会議でも、いわゆる「金大中-小渕宣言」の話が出て来たみたいです。
https://www.kedglobal.com/jp/%E5%85%A8%E5%9B%BD%E7%B5%8C%E6%B8%88%E4%BA%BA%E9%80%A3%E5%90%88%E4%BC%9A-%E7%B5%8C%E5%9B%A3%E9%80%A3-%E9%9F%93%E6%97%A5%E8%B2%A1%E7%95%8C%E4%BC%9A%E8%AD%B0/newsView/ked202207040016
鈴置さんのご指摘通り、韓国側は官民一体となってこの「ゲリラ戦」を仕掛けている最中なのですね。
M銀行とはやはりあそこですが、日本の3大メガバンクは皆M銀行。 いわゆるナンバー3の銀行ですね。
福岡在住者様。
ワタシはも〜ちょっと具体的に言ってくれなくては理解できません。で、今日の前場終値はザックリですが、みずほ1500、三菱740、住友4000ですが、具体的にみず○と言ったら差し支えがあるようなので、ボカして株価が1500円のトコ……とか何とか、教えて欲しいです。
蛇足です。
○ずほデモ良いですし、み○ほデモ良いですよ。
福岡在住者 様
日本の3大メガバンクは皆M銀行 >
あっ!うっかりしてました。
先だっても不祥事、というかシステム障害やっちゃった銀行屋さんの方です。
> 日本側からの参加者にはM銀行の関係者もいたそうですが,どのように受け止めていたのでしょうか。
銀行関係者ではなく、経団連(軽団連?)の戸倉会長は、
「韓国側が反発している日本の輸出管理強化について十倉会長は、尹大統領との面会では議論はなかったと明らかにしたうえで、韓国の貿易管理体制が改善したとして、撤廃への期待感を示した。」
https://news.yahoo.co.jp/articles/f8c737d11b1974139e0a297247f1c6b628df00f1
という御認識だそうです。
3年間、政策対話を韓国側が拒否した事(他にも要因がありますが)で輸出管理適正化が行われ、その瞬間のみ政策対話に応じたものの、再び、韓国側が政策対話を拒否し続けているのに、「韓国の貿易管理体制が改善した」って、どこ見て言ってるでしょうかねぇ。
墺を見倣え 様
返信、有り難うございます。
大企業のトップともなると、自社或いは業界の売り上げと利益確保に汲々としてしまい、また株価維持とか株主総会ぐらいにしか関心が及ばなくなってしまうのかもしれませんね。
昔の経営者には、もっと崇高な国家観のような哲学を感じさせてくれる人物が、少なくとも今よりもいたようにも思えます。
>外貨準備に本来組み込むべきではない不適格な資産が含まれているのではないか、とする指摘もあります。
アジア通貨危機の時のこと考えると、不適格な資産=紙の上だけで何もないんじゃない?
換金できない北朝鮮の有価証券がかなり混在しているような気がするのですが。。
もしそうだとすると、誰も真実を話せないですよね。。
こちらでは現金預金と有価証券とを区別しない方針のようですが、有価証券は流動性が低いものがおおく、そう簡単には現金預金には振り替えられないと推測します。このところの金利上昇で債券の価格は下落していて、売却損になってしまいます。
現金預金だけでみると、後数ヶ月同じペースの介入で底がついてしまいます。後は損失覚悟で有価証券を切り売りするしかない。。。きついっすね
あっさり「1ドル1315ウォン超え」達成しちゃったようですね♪
おめでとうございます!
「自称先進国」の韓国さまですから、このウォン安を活かせれば輸出を伸ばす大チャンス!
貴国に騙されまくり「丁寧な無視」実施中の日本などに頼らず、自力で頑張りましょう!
「自称純国産」ヌリ号打上成功にちなみ「「2001」年宇宙の旅」に行っちゃてくださいませ♪