“岸田さん、いままでいったい何をしていたんです?”
「みなさんにお願いがあります。節電に協力してください。協力してくださったら毎月数十円を差し上げます」。こんな発言を聞くと、多くの「毎月電力を260kw/h使用するモデル世帯」の皆さんはイラっと来るのではないでしょうか。FITで毎月1000円近い料金を徴収されているというなかで、「節電をしたら数十円差し上げます」。本当にいみがわかりません。それに、夏場の電力不足は早い段階でわかっていたことです。岸田首相はいったい何をなさって来たのでしょうか?
電力不足回避にまったく役立っていないFIT
電力の供給不安が話題となっています。
夏場や冬場の電力需要が伸びる時期に電力不足が予想されるとして、政府はこのほど各家庭や事業所に節電を呼び掛けているようですが、なんとも意味がわかりません。
民主党政権時代の2012年7月1日にスタートしたのが「再生可能エネルギー固定価格買取制度」(FIT)と呼ばれる制度ですが、私たち一般国民はこのFITにより、決して少なくない金額を掠め取られているからです。
参考:再エネ賦課金のイメージ
(【出所】経済産業省『固定価格買取制度』)
資源エネルギー庁のウェブサイトによると、一般家庭から徴収される「再生可能エネルギー発電促進賦課金」はキロワット時あたり3.45円ですので(2022年5月分以降の1年間の適用分)、月260キロワット時のモデル世帯でいえば月額897円、年換算して10,764円を取られている計算です。
それなのに、電力不足が顕在化してしまいました。ここまで巨額の負担を国民に強いておきながら、「電力の安定供給ができません」、ではお話になりません。
ポイント還元で「毎月数十円差し上げます」
ただ、エネルギー供給を巡る政府の政策のなかで理解に苦しむのは、これだけではありません。
岸田文雄首相が昨日の『物価・賃金・生活総合対策本部』で、今年度予算で確保した5.5兆円の予備費を活用しつつ、「節電ポイント」制度の創設を表明した、とする話題については、今朝の『政府は節電ではなく電力安定供給にこそ全力で取り組め』でも触れました。
今度は「節電ポイント」だそうです。報道によると岸田首相は昨日の「物価・賃金・生活総合対策本部」の初会合で、今年の予算で確保した予備費5.5兆円を原資に「節電を実施した家庭にポイントを付与する新制度」を創設するなどの方針を示したのだそうです。何を甘ったれたことを言っているのでしょうか。政府がいま全身全霊でなすべきは、「節電のお願い」ではありません。「電力の安定供給」です。岸田政権はステルス安倍政権?円安が進むなか、日本経済が必要としているのは原発の再稼働と電力の安定供給である、という点については、... 政府は節電ではなく電力安定供給にこそ全力で取り組め - 新宿会計士の政治経済評論 |
これに、こんな「続報」があったようです。
節電ポイントで料金割引、政府支援 電力各社の制度拡大
―――2022年6月22日 5:27付 日本経済新聞電子版より
なんだか、ここまで強烈な話題は、久しぶりに目にしたような気がします。
今朝の日経電子版の記事によれば、東京電力ホールディングスと中部電力は7月以降、「電力不足が予想される場合に前もって協力を要請し、家庭の節電量に応じてポイントをつける」という制度を開始するのだそうです。
具体的には1キロワット時を節電した場合、東電は5円相当を、中部電は10円相当を付与するとしており、「月260キロワット時を使うモデル世帯に当てはめると、月数十円ほどの還元になる」、などとしています。
「開いた口が塞がらない」、という経験は滅多にできるものではありません。
正直、月額数十円の還元で「よし!それじゃ節電に協力しよう!」などと考える人が、世の中にどのくらいいらっしゃるのかは存じ上げません。というよりも、FITで毎月1000円近い金額(※モデル世帯の場合)を負担させておきながら、「節電に協力したら数十円あげます」、というのも、ちょっと国民を愚弄しすぎでしょう。
岸田さん、今までいったい何をしていたのです?
せっかくの円安なのに、ここまで電力供給が不安定な状態だと、企業が製造拠点を日本に戻すという動きも停滞してしまいそうになります。
もちろん、電力需要が大幅に伸びる夏場を間近に控え、ただちに電力を増強することが時間的に難しいという事情は仕方がないものです。しかし、それと同時に、2月24日にロシアがウクライナに軍事侵攻して以降、すでに4ヵ月が経過しようとしています。
ロシアからのエネルギー輸入をいかに減らすかが課題となるであろうという点については、4ヵ月前からわかっていたことですし、電力不足も当時から生じていたのですから(たとえば『経産相が節電呼びかけ:玉木氏は「発電の議論」に言及』等参照)、この間、岸田首相は何をやっていたのかと首をかしげざるを得ません。
電力需給が逼迫しています。萩生田光一経産相は緊急会見で、ブラックアウトを避けるために広範囲な停電が必要となるかもしれないとしつつ、追加でさらに節電が必要とする認識を示しましたが、そもそも東日本大震災以来、電力の安定供給は常に課題だったはず。こうしたなかで、国民民主党の玉木雄一郎氏が、なかなか興味深い発言をしたようです。萩生田経産相が節電呼びかけ先日の地震による火力発電所停止に加え、関東地方を襲った季節外れの寒波の影響などもあり、本日、東日本では電力需給が逼迫しているらしく、萩生田光一経産相自... 経産相が節電呼びかけ:玉木氏は「発電の議論」に言及 - 新宿会計士の政治経済評論 |
というよりも、岸田政権の対応は、いかにも場当たり的ですし、どうも全体像がまったく見えてきません。
たとえば「安全基準を満たした原発から順次再開する」などのロードマップを示し、数値目標を立てたうえで、「それでもどうしても7月と8月には電力供給量が●●電力管内において●●メガワット足りません」、「ついては昨年と比べて3%、電力供給の削減にご協力ください」、と依頼するなら、まだ話はわかります。
しかし、こうした全体像もなしに「節電に協力してくれたら毎月数十円差し上げます」、などと唐突にいわれても、なんとも困ってしまいます。
自民党側もそんな岸田政権に対し、予算はもっと適切に使うように、また、エネルギーの安定供給に向けた対策はもっとスピード感を持って取り組むように、是非とも圧力をかけていただきたいと思う次第です。
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自民党の打ち合わせは、エアコンなし、うちわと扇子を配布して電気を使わずにやってもらいましょう。それくらい覚悟してもらわないと。
江戸時代から我が国には倹約を美徳とする精神が根強い。贅沢を戒め、一汁一菜。質実剛健に質素に暮らす。肌着は木綿一択です。
令和の電力綱紀粛正を身をもって体験することは自民党議員にとっても悪くない体験になるでしょう。
服装は正装のクールビズ(小池都知事考案)
エアコンは28度設定にする。耐えられないものは軟弱者とする。(これも28度も百合子氏が2005年から発案したものだ)
これにセクシー大臣が考えたエコバッグを所持すれば正真正銘の環境に優しいナイスガイの誕生となります。
ついでに将軍が民にお願いばかりしては権威もへったくれもなくなり、やがて政情が不安定になるでしょう。岸田さんや議員も国民に陳情ばかりしていないで脳に汗を流して良い法律を作る努力をしてもらいたい。
なんのインセンティブもありませんね。
素朴な疑問ですが節電した事をどのように
証明するのでしょうか?
私は節電に協力しません。
暑ければエアコンを使いますし、仕事で普通にパソコンも使います。
そもそも賦課金取って電力足りませんとか、なめてるとしか言いようがない。
「政策が間違えてました」と間違いを認めて謝罪をし、政策変更することを宣言すれば、節電考えなくもないです。
まず政府は国民にお願いをする前に、やるべきことを全部やったのかどうかを、胸に手を当ててよく考えて欲しいです。
最後に、数十円のポイントつけるくらいなら、賦課金廃止しろ、と付け加えときます。
マスオさま。
ワタシも節電しません。
昨夏はエアコン代はきつかったですが、節電して死んでしまったら、アホ丸出しですし、現役時代に火力発電に親しんだので、火力発電は大好きです。堺港火力PSの1,5,8号機は大好きですし、東電五井火力も好きですよ。
タナカ珈琲。さま、いいと思います。
特にお年を召した方ほど、律義にお国の言う事を聞きそうで心配です。
暑ければ我慢せずに冷房をつける!どうぞご自愛ください。
ちなみに発電所の事はわかりませんwスミマセン
熱中症になって入院して、医療資源を使ったら、経済的にもエネルギー的にも節エネなんてぶっ飛ぶんですけどね。
熱中症なんて予防策は100%わかっているのに、かかる人がいなくならない業病w。
村役場の考えることよりレベルが低い。参院選では政党名には自民党と書かずに 安倍派の比例の個人名でも書いて 岸田派を弱体化させようと決心した。
生活環境変わるヒトはどーすんでしょーね?
家族が増えるとか一人暮らし始めるとか状況変われば対前年比なんて出せまーが?
ソーサイ選のトキから実現化へのロードマップの無い中身無い施策やらアホやんと思っちゃったが…
そりゃ御輿は軽い方が担ぐの楽か知らんけえど中身の無い御輿にしゃべらしちゃあアカンよ氏子までバカにされるわ
私の認識が間違っていたらごめんなさい。
現状のFIT(主に太陽光発電)は投資家がお金を出し事業主体は誰かがやる。
そして稼働し始めたらお金が投資家に入り、保険会社がリスクを見る。
つまり投資家には必ずお金が入り、リスクは保険会社が見る。
これは定期預金と何が違うのか分らないです。
最終的にはリスクも含め我々が税金も含めて支払う。
20年間が過ぎたら残された設備はどうなる。
切り開かれた山は海はどうなる。
海外投資家はそこまで面倒を見るのか?
それこそ投げ出されたら税金が投入されるのは目に見えている。
反対運動が盛り上がるのはよく分る。私でも危険性が見える
そして今回の節電要請。
馬鹿にするな
2022.7以降、事業用PVのうち設置後10年経過分については実際に廃棄されるまでの間、廃棄処分費目的で相当額?が売電額から天引きされるみたいですね。それでも設備の廃棄までにとどまるんでしょうけどね。
予備費が5.5兆円も使えるのなら、大規模水素電池の普及による太陽光エネルギーのベース電力化とか、次に活きる政策に使って欲しいと思っています。
今回のエネルギー政策は、"景気拡大はおざなりに歳出だけを絞りたがる"どこかの省庁を見てるかのようですね・・。
日本がすべき電力政策は
・まず安全が確認された原発の順次再稼働
・次に経年劣化で休止する火力発電所に代わり新型ガスコンバインド発電所設立
・最後に少し先だが次世代新型原発「SMR」の活用
日本では電源構成に火力と原発は絶対に欠かせない。
国によって再生エネがうまく機能する国もあるが現状の日本では不可能。
この先再生エネに革命的な技術革新が起こるまでこの2つは残す必要がある。
EUは原発を「クリーン」と認めた。
ドイツは石炭火力への回帰を宣言した。
日本も何も遠慮する必要はない。
それにしても電力ポイント還元など一体どこの誰が考えたのか?
ハト派、お公家集団の宏池会か?
他派閥が参院選前に岸田を苦境にさせようと仕組んだのか?
まさか岸田本人がノリノリで考えたのか?
こんな政策案を持ってきた時点で立案者を叱り飛ばし廃案にするのが首相の役目だ。
それをせず受け入れてのうのうと発表する岸田はどうかしている。
やはり岸田自身は首相の器ではない、ただ傀儡のお人形さんに過ぎない。
既出だったらすみません。燃料高騰とは少し違う話ですが。
3月の電力危機の資源エネ庁の分析資料がありました。
■第50回 総合資源エネルギー調査会 電力・ガス事業分科会 電力・ガス基本政策小委員会
資料4-1 2022年3月の東日本における電力需給ひっ迫に係る検証について
https://www.meti.go.jp/shingikai/enecho/denryoku_gas/denryoku_gas/pdf/050_04_01.pdf
P.6
▼要因:
・福島地震による大型火力の停止
・需給ミスマッチ(寒さによる想定外の需要)
・他の火力の補修点検入りによる発電能力の低下
・悪天候による太陽高出力大幅減
▼構造的課題:
・再エネの導入拡大に伴う稼働率の低下等により、火力発電所の休廃止が増加供給力に余裕がなくなる中で、需要の大きい夏冬を最大限避けて、ギリギリの補修点検を実施
・再エネの中で、当面、導入量が最も増えるのは太陽光(2020年度7.9%→ 2030太陽光の発電状況が、電力需給全体に大きな影響を与える傾向がより顕著に
だそうです。
地震などの特殊要因もあるものの、FIT偏重のために、電力需給が不安定になっているということです。原発が稼働していればもう少し余裕を持った計画ができたと思われます。
経産省自身が策定している「エネルギー基本計画」がFIT倍増・火力半減の方向性なので、経産省自身が構造的課題を作ることに加担してると思うんですが。
荻生田経産相は「エネルギー基本計画は去年10月に策定したばかりだから」と、よくわからないことを言っていました。
※第6次エネルギー基本計画が閣議決定されました
https://www.meti.go.jp/press/2021/10/20211022005/20211022005.html
原発再稼働は独立性の高い原子力規制委員会(環境省外局)マターで今の制度の枠内で任務に忠実に仕事をこなしているんでしょう。(委員会のパフォーマンスを検証するしくみはないんでしょうかね)
ただ、その制度を作る側(政権や国会)には、原発の再稼働が遅々として進まない現状を放置してよい理由はありません。
脱炭素化の煽りで欧州のエネルギー不足は昨年のうちから顕在化していました。そこへ来ての2月のウクライナ侵攻。
この国難の時期に、原発規制のあり方についても、エネルギー基本計画のあり方についても、全くメッセージが無いというのはどうなんでしょうね。
ポイント制度なんか鳴り物入りでアピールするもんじゃ無いですよ。
リンクでこれが抜けてました。
第50回 総合資源エネルギー調査会 電力・ガス事業分科会 電力・ガス基本政策小委員会
https://www.meti.go.jp/shingikai/enecho/denryoku_gas/denryoku_gas/050.html
勝手な想像ですが、このポイントに税金で倍率ドン(10倍か100倍か)するんではないかと危惧しております。
税金投入するために、何とかアプリのような使えないアプリを数十億円かけて開発し、中抜きバラマキで我々庶民に小銭を配ることになるのではないかと。
普段から節電している家庭にはメリットがほぼなく、普段から浪電している家庭がより多く税金をかすめ取るという、第二のアベノマスクともいえる愚策となることでしょう。
せめて大口の産業の節電協力に、補償金を制度化するくらいが政治の仕事じゃないですかね。
GoTo って確か国土交通省の予算で(間違っていたらご指摘ください)都道府県が執行するものです。これがたちまちのうちにどこかの県知事の利権と化したらしいのです。
すなわち掛かるコロナ危機において GoTo 予算は使いようのない宙ぶらりん予算と化した。これを、県下の経済産業振興に貢献しうる、これこそわが知事治世の方針だとばかりに去る4月年度替わりにかこつけてどこかが強引に執行しようとしたのです。
コロナ対応で報道界挙げて毎日大炎上している 2021 年 4 月にあって、何が GoTo だ、時期の読めない政治感覚はいい加減にしろと全国から袋叩きに遭って,あえなく取り下げになったという椿事がありました。そして GoTo 事業を担当している業者の側の手落ちという言い訳が出てきたのです。
「本当にやっていいんですか、再開しますよ、いいんですね」
業者さんは県に再三念を押しての執行だったのですが、失敗は自分たちのせいにされても「行政にいいように使われても、ウチラはそんなもんですよ」とけろっとしてました。
こんどの「節電ポイント制」も「仕事やったふり、知恵出したふり」のくだらない予算執行だと当方は確信しています。