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韓国紙に「韓米・韓日通貨スワップ待望論」が久々登場

韓国紙『中央日報』(日本語版)に、久しぶりに「通貨スワップ待望論」が掲載されていました。しかもご丁寧なことに、今回は米韓通貨スワップ、日韓通貨スワップともに登場しています。背景にはおそらく、米国が今週、利上げに踏み切ったことに加え、韓国ウォンが1ドル=1280ウォンを超え、大きく売られていることがあるのだと思います。

韓国ウォンのレートと通貨スワップ論の関係

少し前に気づいたのですが、韓国の通貨・ウォンの対米ドル相場(USDKRW)が1ドル=1280~1290ウォン程度になると、韓国メディアで「通貨スワップ」という話題を見かけることが増えるようなのです。

たとえば、先月はジョー・バイデン米大統領が、まずは韓国、ついで日本を訪問しました。

偶然ですが、その約1週間前の5月12日には、一時1ドル=1291.50ウォンと約2年2ヵ月ぶりの最安値を記録しており、その際には韓国メディアでそれこそ毎日のように「米韓通貨スワップ」だ、「日韓通貨スワップ」だといった主張を見かけたほどです(『韓国紙、米国に「永久通貨スワップ」「核の傘」を要求』等参照)。

韓国の『ソウル経済』から、米国に対し「永久通貨スワップ」「核の傘の保証」「韓日関係改善のための役割」などの要求が出てきたようです。なかなかに強烈な主張ですね。これらに関し、米国にいったいどれだけのメリットがあるのかは知りませんが。ここ数日、韓国メディアからは、やたらと「日韓通貨スワップ」、「米韓通貨スワップ」に関する話題が出てきています。とりわけ、今朝の『「首脳会談で韓米通貨スワップを締結せよ」=韓国社説』でも紹介した『東亜日報』の社説は、なかなかに強烈でした。「米韓通貨スワップを締結すれば...
韓国紙、米国に「永久通貨スワップ」「核の傘」を要求 - 新宿会計士の政治経済評論

こうしたなか、5月中旬以降は韓国ウォンの相場もある程度落ち着き、一時、5月31日には終値ベースで1ドル=1237.2ウォン程度にまでウォンが上昇する展開となりました。すると不思議なことに、韓国の主要メディアでは通貨スワップに関する報道が潮を引くようにピタッとなくなったのです。

ただ、米FRBの利上げなどの影響もあったためでしょうか、今週、再び韓国ウォンが1ドル=1280ウォン台を挟んで売られる展開となっており、WSJのマーケットランで確認すると、昨日は「夜間セッション」ではあるにせよ、瞬間的に1ドル=1295ウォンを超えて売られたようです。

中央日報「韓米・韓日通貨スワップが必要」

そうなってくると、やっぱりこんな記事が出てきました。

米国利上げが韓国経済の危機につながるか…韓米、韓日通貨スワップなど解決法も提示

―――2022.06.17 12:03付 中央日報日本語版より

韓国メディア『中央日報』(日本語版)で「スワップ」という単語を、しかも「米韓」、「日韓」そろって目撃するのは、なんだか大変に久しぶりです(おそらく今後はしばらくこの手の記事が出てくるかもしれません)。

内容としては、米FRBが現地時間15日、FF金利の誘導レンジを75ベーシス・ポイント(=0.75%)分引き上げるという、28年ぶりの「ジャイアントステップ」を踏んだことを受け、「韓米間の金利逆転で韓国から資本が流出する可能性がある」、などと警告するものです。

これを受けて、中央日報は次のように述べます。

一部では金利上げ速度調節論とともに韓米間通貨スワップ締結の必要性が提起される」。

つまり、昨年末で終了した、上限600億ドル分の「韓米通貨スワップ」(※原文ママ)を復活させなければならない、という主張です。しかも、「規模は大きくなくてもスワップ締結自体が市場の不安を解消するという象徴性が大きい」とするコメントつきです。

この点、米国が韓国と通貨スワップを結んでいたという事実はありませんが(米国が締結していたのは為替スワップ)、たしかに「ドル紙幣を印刷する能力を持つ国」とのスワップがあれば、それが「通貨」であれ「為替」であれ、韓国にとっては安心材料なのかもしれません。

(「ドル紙幣を印刷する能力がある国」という意味では、スワップを締結する相手国は米国ではなく、北朝鮮やカリオストロ公国でも良いという気がしますが…。)

ただ、それ以上に驚くのは、世宗(せそう)大学経営学部の教授による、こんな趣旨の発言です。

  • 2008年の金融危機当時は韓米通貨スワップだけでなく700億ドル規模の韓日通貨スワップもあった
  • 日本のドル準備高は1.3兆ドル以上だ
  • 新政府に入って韓日関係を再確立するきっかけが作られただけに、二重の安全装置として韓日通貨スワップを推進しなければならない

(※余談ですが、この教授の発言には、事実関係の誤りも含まれています。「700億ドルスワップ」は2008年のリーマン・ショック後に麻生太郎総理が推進したものではありません。2011年に、当時の野田佳彦首相が推進したものです。)

日韓通貨スワップを結ぶ環境は永遠に整わない

この点、2008年当時は日韓通貨スワップが存在していたことが事実だろうが、日本の外貨準備が1.3兆ドルあろうが、韓国で新政権が発足しようが、いずれも日本が日韓通貨スワップの締結に応じるかどうかとは、まったく関係ありません。

というよりも、少なくとも日米両国が韓国とスワップを結ぶ可能性は、現状、皆無に近いでしょう。

米韓通貨スワップに関していえば、『完全な勘違いに立脚した米韓通貨スワップ待望論=韓国』でも報告したとおり、米国自身が外国とスワップを結んでいる事例としては、①なにか特別な地域協定が存在するか、②米国にメリットがあるか、それとも③金融危機などの特殊な経済環境にあるか、のいずれかに限られます。

米韓首脳共同宣言を受け、一部の韓国メディアが再び「通貨スワップ待望論」に火を付けました。ただ、韓国政府はこの「通貨スワップ待望論」を巡って、何とか水面下に押しやろうとしているフシがあります。米国が韓国と通貨スワップ(あるいは為替スワップ)を締結する可能性は、極めて低いからです。したがって、そろそろ「韓米通貨スワップ待望論」が「韓日通貨スワップ待望論」に化ける可能性への備えをしておいても良いのかもしれません。「韓米通貨スワップ待望論」の実際中央日報「韓米共同宣言は常設通貨スワップ構築の土台か」...
完全な勘違いに立脚した米韓通貨スワップ待望論=韓国 - 新宿会計士の政治経済評論

また、日韓通貨スワップに関していえば、2015年12月に日韓が取り交わした「慰安婦合意」を韓国が履行せず、約束を破ったなどの事情もあるため、日本政府がこれを再開する可能性は非常に低いでしょうし、日本国民からの理解も得られません。

某ウェブサイトには先日、「まずは日韓通貨スワップの再開で信頼関係を醸成せよ」、などとする主張が掲載されたようですが(『【インチキ論説】関係修復の第一歩は日韓スワップから』参照)、少なくとも現在の日韓間に、スワップを結ぶ環境は整っていません。

そろそろ、日本のどこかの新聞社が「日韓協力のあかしとして、金融分野で日韓通貨スワップを推進すべきだ」、などと書き立てたりしないかと思うようになりました。昨日は再び、1ドル=1290ウォンの大台を突破するウォン安水準となったからです。そこで本稿では久しぶりに、日韓通貨スワップの日本側のメリット(※インチキ)を通じて日韓通貨スワップ待望論(※インチキ)を掲載してみます。(なお、本インチキ論説は転載自由ですが、もし転載なさるなら必ず出所は明記してくださいね、新聞社さん!)またしても、ウォン安だ。外為市場...
【インチキ論説】関係修復の第一歩は日韓スワップから - 新宿会計士の政治経済評論

いや、「日韓通貨スワップを締結する環境」が整う時期というものは、おそらくは永遠に到来しないでしょう。

新宿会計士:

View Comments (17)

  • 韓国の外貨準備は日本の4割で、日本と韓国の経済規模からみて十分と思うが、韓国の外貨準備高の中身は謎が多い。韓国当局でも中身について知っている人は限られているのではないだろうか。限られた人しか知らないという点では「コカ・コーラのフォーミュラ」に似ていないこともない。韓国銀行総裁はパククネ時代から同じ人がやっているというのも、更迭して、この重大秘密をバラされたら大変なことになるからか。
    そのような状況で韓国メディアから執拗にスワップの必要性を説く報道がなされるのはなぜなのだろう。当局から言ってくれという指示のようなものが出ているのだろうか。

    • > 韓国の外貨準備は日本の4割

      おそらくその数字の実効性を誰一人、当の韓国人たちですら信じていないためではありますまいか。1987年の前例を鑑みれば、ある意味正しい姿勢ではあるでしょう。

  • り地域は国家間の信用を蔑ろにするくせに自分が困った時は他人が助けてくれて当たり前、と思っているんだろうか。
    考えが甘い。砂糖が10杯入ったコーヒーより甘い。デフォルトにでも何でもなればいい。
    一度位こっ酷く痛い目に遭わないと奴等には分からないと思う。

    • さながらルノアールのココアの如く甘い、ですね♪

      • 三多摩野人様。

        私はルノアールのココアは飲んだ事はありませんが、昆布茶は大好きです。ボリュームがも〜少し有ったら、もっと嬉しいですが…

        • 米国東海岸居住者です。
          ここ数年間に巷に 「kombucha」なる飲み物が流行して近所のスーパーマーケットでも色々な種類が買えるようになってきました。
          但し、この中国発祥・ロシア由来の 「kombucha」は日本の「昆布茶」とは全く別物であり、普通のお茶に砂糖を入れ、それを酵母で発酵させた甘くないサイダーのような飲み物です。
          因みにネット上では、名前の由来として朝鮮の Kombu医師 がこの飲料を中国から日本の允恭天皇に伝えたと言うまことしやかな説が散見されます。

          • 世界には、日本人の知らない(AIで作れそうな)日本の歴史がたくさんありそうですね。
            歴史好きには大変な時代だ・・・

    • コッピドクイタイメミテモ理解デキナイト思ワレマス
      彼等は既に李氏朝消滅も朝鮮戦争もIMF介入も経験済みでアリマス
      まあ統治機構の崩壊やら分断国家同士討やら国家財政破綻やらが痛い目ではないという基準設定であればハナシは違ってきますれど…

  • 間違いないのはどっちのスワップも例え締結されてもウォン安には全く効かないということです。

    まずアメリカですが、どんな形式のスワップを締結しようが介入を認めないのは明らかですから、そのスワップの存在がウォン相場に何ら影響を及ぼすことはない。

    日本とのスワップ。これも意味がない。そもそも日本はアメリカなどと無制限のスワップを締結しているのに円安の進行を止められない。まあこれだけでもスワップが通貨安定に関係ない証明ではありますが。
    韓国には日本の外貨準備がまばゆく見えるのかも知れない。確かに日本の外貨準備高を仮に韓国が持ってたなら盤石かも知れない。
    ただ、日本からしてみれば日本の外貨準備をもし介入に使ったとして足りる量ではない。数日ももたないでしょうね。そもそもヘッジファンドはいくらであろうと金額が決まってる限りなんにも怖くない。お金借りれば無尽蔵。

    そもそも日本が韓国のために外貨準備を分けてあげる余裕はない。円安の方が更にひどいんだよ。

    実際のところ、アメリカはそもそも韓国のいうことを理解出来ないから聞き流すだけ。日本はもしスワップの協議に入ろうとも、韓国にスワップ資金を介入に流用しないよう監視体制、指導体制を要求して韓国がまた「輸出規制強化」みたいに逆切れして終わり。
    介入に使わないよう指導ってのはアメリカからも強く要求されるからね。韓国に指導する役目も日本に負わされる泣

    • >そもそも日本が韓国のために外貨準備を分けてあげる余裕はない。

      余裕があろうがなかろうが,仮想敵国を助けるなどお人好しを通り越して単なる馬鹿ですよ.

      ええ,日本は第二次安倍政権になるまで単なる馬鹿,それも人類史上最悪レベルの大馬鹿者だったのです.何しろ日本という国を敵視し国民の多くが日本人を抹殺したいと願い日本に核ミサイルを撃ち込んで日本人を殺す絵を小学生が嬉々として書きそれを駅に展示する国を身を削って助けに助けていたのですから.これを大馬鹿者と呼ばずして何と呼べば良いのやら.

      安倍総理のお蔭で日本は大馬鹿者を脱却して漸く普通に外交を行える国際人に僅か一歩か二歩ですが近づけたのです.まだまだかなり甘いので小馬鹿者ぐらいのレベルですけれどね.安倍総理自身,平和的な交渉で北方領土の一部=二島だけでも返還して貰えると本気で交渉していたのですから.(因みに,私は前から書いているように北方領土の領有権を日本が主張する余地はサンフランシスコ条約に照らして皆無だと思ってますし,だから逆にロシアによる北方「領土」の不法占拠(ロシアが継承したソ連はSF条約締結国でないのだから明らかに不法だがその不法性を問えるのはSF条約締結に参加した連合国側)を盾にロシアを一方的に批難して経済協力を断固拒否する口実にすべきだと考えている)

  • https://money1.jp/archives/82501

    恒例の米国財務省による4月の証券データ。

    韓国は米国債を15億ドル売却している。
    預金も66億ドル減少しているので為替介入に使ったのは間違いない。

    5月、6月も同様のはずでこの先も外貨準備は減少していく。

    日本の保有額は世界トップで1218億ドル。
    さぞ韓国にはまぶしく見えていることだろう。

    注目は中国で3~4月と残高を大きく減らしている。
    14年以降のロシアみたいに意図的に米国債の依存度を引き下げていると思われる。
    それは台湾有事の際に米国資産が凍結されることが確実だから。

    今後、中国の外貨準備の構成がどうなるのかも興味深い。

  • つい数ヶ月前には、韓国全経連の誰かがウォンも基軸通貨になれるとか豪語してましたよね、たしか。(笑)

    だったらスワップが何たらとか泣き言云ってないで、じゃんじゃんウォンを刷ればいいだけなのに,と思ったりするわけです。(笑)

    • カリオストロ公国においては ウォン札まで刷っているのですから きっと国際通貨なのでしょう。(笑)

  • 以前は、日韓関係の重要性や、アジア発の通貨危機を防ぐためにウォンの不安定性を日本が補うべきだ、などという理由を付けて、日韓通貨スワップの必要性を説く学者や評論家などが居たが、流石にもう無理がある。

    そこで、恐らく次に出てくる“日韓通貨スワップ必要論”では、その理由に「日本経済にもうかつての強さはない。韓国にも追い抜かれた。そこで“弱者連合”として韓国と協力し、自国通貨の安定性を高めるべきだ」というような理論を用いるだろう。

    通貨スワップに関してではないが、このように「日本はもう大国ではない」と日本を貶め、韓国との協力や譲歩を訴える代表的な学者が、神戸大の木村幹教授などである。

  • アチラの国々は正直ですね。
    通貨防衛に不安が生じるとスワップスワップと鳴き出す。
    もうね、季節の風物詩です。
    この鳴き声が聞こえると、日韓疎遠化の春が来たなと微笑んでしまいます。
    日本が韓国とスワップを結ぶ理由は、ずっとずーと無かったんです。
    それなのに、恩を仇で返す行動をし続けたお陰で、何も知らない日本人にも韓国の特殊性が知れ渡った後でスワップを欲しがるなんて、後先考えない韓国の行動はホントウニオモシロイ。

    • 「米韓通貨スワップ・日韓通貨スワップが必要だ」
      さて、誰にとって必要なのでしょう? アメリカはもちろん、日本も韓国との通貨スワップなんぞ必要としていません。つまり、ただ韓国だけが必要としているのであり、ならば韓国がスワップ協定を締結してもらえるような環境を作り出さねばなりません。
      また、通貨スワップ締結においては、必ずしも経済的損得ではなく、地政学的な要因もありえます。日米韓で言うと、韓国が経済崩壊した際に、日本とアメリカにとってどれほどの痛手か、そして一番重要なのは、二国間の信頼関係にあります。しかし、尹錫悦政権が修復を試みているとはいえ、依然として米韓同盟の信頼関係は相当毀損されたままです。韓国的反日も悪化していないというだけで、「改善」の見通しはありません。つまり「環境」は何も整ってはいないのです。

      韓国メディアも「通貨スワップが必要だ」と喚く前に、そのような「環境」を整えるために韓国が何をしなければならないかを論じるべきですね。単に「必要だ、必要だ」と叫んでも、日米両国からは「ふ~ん」以上の反応は得られません。「顔を洗って出直してこい」と言われるのが関の山です。
      まあ、根本的な思考様式や世界観が300年前と変わらず、現状世界認識も30年前から一歩も進歩していない韓国メディアに、その程度の理解力を求める方に無理がありますが。

  • 17日の綜合ニュースによると、
    『韓国の海外直接投資254億ドル
     前年比2倍超=1~3月』
    だそうです。
    ウォン崩壊崖っぷちなのに
    何やってるんでしょう。(笑)
    家計でいうと、
    サラ金返済危ないのに
    ロレックス買いまくってる
    ようなもの。
    直ちに企業に売却させて、
    国に資金を供出させて
    ウォン防衛すべきであり、
    日本騙してスワップで
    ウッシッシとは
    とんんでもない了見です。