吉川議員の離党にともない衆院第5派に転落した岸田派
自民党は派閥政治だといわれています。吉川赳・衆議院議員が先日、自民党を離党したことに伴い、岸田派は衆議院では第5派閥に転落してしまいました。ただ、吉川議員は過去に4回も細野豪志氏に選挙区で敗北したといういわくつきの人物でもあります。吉川氏の離党は岸田派にとって悲喜こもごも、といったところですが、少なくとも首相の足元の地盤は心もとない状況が続きそうです。
数字で読む自民党の派閥・続き
先日の『【数字で読む自民党の派閥】衆院比例議員の派閥別割合』などでも報告したとおり、著者自身は現在、参院選に向け、自民党の衆参両院議員に関して派閥ごとの集計作業を行っており、さまざまな観点から分析を実施しようと試みています。
派閥の強さは所属議員の絶対数が大事であり、これに加えて同じくらいの規模の派閥だと、議員の当選回数、衆議院議員ならば小選挙区で当選しているかどうか、参議院議員ならば比例区で何票を獲得しているか、といった要素が重要なのでしょう(著者私見)。
さて、週末には週刊誌に不祥事が報じられた吉川赳衆院議員(岸田派:比例復活)が自民党を離党しているのですが、とりあえず吉川議員が離党する前のベースで各派閥の勢力を暫定的に集計した数値を紹介しておくと、次のとおり、安倍派が頭一つ抜けていることがわかります。
- 安倍派…94名(衆60名、参34名)
- 茂木派…54名(衆33名、参21名)
- 麻生派…50名(衆38名、参12名)
- 岸田派…45名(衆33名、参12名)
- 二階派…43名(衆35名、参8名)
- 「菅」派…26名(衆15名、参11名)
比例復活議員が最も多いのは安倍派だが…
これについて、少しずつデータが揃いつつあるのですが、本日はこんなものを紹介したいと思います(図表)。
図表 派閥別「比例復活議員」
派閥 | 所属衆議院議員 | うち比例復活議員 |
---|---|---|
安倍派 | 60名 | 15名(25.00%) |
茂木派 | 33名 | 7名(21.21%) |
麻生派 | 38名 | 5名(13.16%) |
岸田派 | 33名 | 8名(24.24%) |
二階派 | 35名 | 8名(22.86%) |
「菅派」 | 15名 | 7名(46.67%) |
(【出所】著者作成)
ここでいう「比例復活議員」とは、著者自身が調査した議員一覧をもとに、比例区で当選した議員の一覧を作成し、そこから比例単独候補を除外して求めたものです。
ちなみに比例復活(あるいは「比例ゾンビ」)議員をカウントしたら、自民党全体で56名いるようですが、このうち15名が安倍派で所属衆議院議員(60名)のうちちょうど25%に達して最多であり、これに岸田派(8名・24.24%)、二階派(8名・22.86%)が続く、という計算です。
一方、所属衆議院議員が38名の麻生派の場合、比例復活議員は5名に過ぎず、比率でいえば13.16%です。また、「菅派」(ガネーシャの会)は15名のうち7名が比例復活議員である、という実態も見えてきます。
つまり、現状で「ガネーシャの会」を母体として「菅派」が結成されたとしても、所属している衆議院議員は15人(ほかに参議院議員が11人で合計26人)と、勢力としては非常に小さく、また衆議院議員の約半数が比例復活組ということもあり、政治勢力としては弱小派とならざるを得ないようです。
その一方、所属衆議院議員数だけで比較すると、頭一つ抜けている安倍派を別とすれば、見た目だけでは茂木派、麻生派、岸田派、二階派の4派閥がほぼ拮抗している格好ですが、やはり岸田派の比例復活率は若干高めでもあります。
世耕参議院議員、吉川議員の辞職を要求
こうしたなか、岸田派といえば、こんな話題が報じられています。
自民幹部、吉川衆院議員の辞職要求 18歳と飲酒疑惑
―――2022年06月13日13時16分付 時事通信より
時事通信によると、世耕弘成参院幹事長は13日、離党した吉川議員を巡って「さっさと党は出て行ってもらったが、比例復活の議員なので自民党の議席だ」としたうえで、「議員辞職すべき」との考えを表明したのだそうです。
岸田派にとっては「比例復活率」が下がるという意味では歓迎すべきなのでしょうか、それとも岸田派の所属議員が減るという意味では困った話なのでしょうか。
ちなみに時事通信によると、世耕氏は通常国会の会期末が迫り、その後に参院選が控えているという状況のなかで「こういう気の緩んだことをしている議員がいるということは本当に残念だ」、などと述べたのだそうですが、「自民党一強」という状況で「気が緩んだ議員」が出てくるのは仕方がない話なのかもしれません。
というよりも、この吉川議員、調べてみればじつに選挙に弱い議員であるようです。
吉川氏自身は1982年生まれの40歳で、父親の吉川雄二氏が元静岡県議会議員であり、宮沢洋一・元衆議院議員(現・参議院議員、岸田派。元首相・宮澤喜一の甥、岸田文雄首相の従兄)などの秘書を務めたのちに2012年12月の衆院選で静岡5区から立候補。
ところが、当時の民主党の政調会長でもあった細野豪志氏に小選挙区で敗れ、比例東海ブロックで復活当選。その後は2014年、2017年の選挙でいずれも細野氏に敗れてきたという人物でもあります(2014年と17年は復活当選すらできず、2019年に繰り上げ当選しています)。
ちなみに昨年10月の衆院選でも細野氏に小選挙区で大敗し、復活当選しているのですが、自民党が政権に復帰するときの「上げ潮」だった2012年の総選挙を含めて4回も小選挙区で敗北し、うち2回は比例復活すらできなかったほど選挙に弱い政治家、というわけでしょう。
世耕氏が「自民の議席だから議席を返せ!」と怒りを示すのも、ある意味では当然のことです。実際、昨年の衆院選では自民党が東海ブロックで9議席を獲得しており、吉川議員が辞職すれば、自民党で繰り上げ当選者が出て来るからです。
衆院議員数では第5位に転落した岸田派
なお、著者自身が調査した、岸田派の「比例復活議員」は次の8名です(敬称略)。
- 平井卓也(比例・四国)
- 石原宏高(比例・東京)
- 盛山正仁(比例・近畿)
- 岩田和親(比例・九州)
- 國場幸之助(比例・九州)
- 小島敏文(比例・中国)
- 武井俊輔(比例・九州)
- 吉川赳(比例・東海)
吉川議員の離党により岸田派は所属議員が44名に減少し、うち衆議院は32名となったため、比例復活率は若干低下したものの、衆議院議員だけで見れば第5派閥に転落しました。あと2人減れば、衆参双方で「第5派閥」が確定です。
このように考えると、高い支持率を誇る岸田文雄首相も足元は心もとない状況が続きそうです。
本文は以上です。
日韓関係が特殊なのではなく、韓国が特殊なのだ―――。
— 新宿会計士 (@shinjukuacc) September 22, 2024
そんな日韓関係論を巡って、素晴らしい書籍が出てきた。鈴置高史氏著『韓国消滅』(https://t.co/PKOiMb9a7T)。
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ガースーの会は前面に出てどうこうよりはキャスティングボードグリップして意中の政策目標を実はクリアしていく…的な勝手なイメージ
世耕さんえらい怒ってるなw
まぁ当たり前だけど。
あの前川先生も、ひどくお怒りです!
前川喜平(右傾化を深く憂慮する一市民)
@brahmslover
https://twitter.com/brahmslover/status/1535801680377573376
国民の玉木氏も吠えるべき。
「比例区選出者は職を辞してから移籍しろ!」・・と。
最初、未成年と知らずに酒のんだ?
のかと思いましたが、
その後の周辺報道からはどうもこれは
完全アウトの事例かと感じます。
世耕さんがお怒りなのは
もっともなのですが、
これ幸いと騒ぎ立てる人たちに
あの前川喜助兵さんが紛れているのは
お笑いです。
また、初鹿・高井までの
やらかしなされた政党
立憲民主党支持者さんにも
あれあれです。
さすがに、
政界から去られたはずなのに
なぜかいつのまにか
国会議員なされている(笑)
ハッピーさんは
いつもの鼻息と違って
大人しくなされている
ようではありますが。
岸田は周りの派閥に配慮して思うことができない。
これを脱する構想が大宏池会。
要するに岸田派に麻生派を加えて自民の最大派閥となる。
これで岸田、林が好きに振舞えるというもの。
だがこの構想はとても実現しそうにない。
世耕は吉川相手にはやたら威勢がいいようだ。
ならばなぜ世耕は細田には同じことが言えないのか?となる。
このあたりにも自民の派閥の力学がうかがえる。
私、迂闊なことに
さっき知ったのですが
あの ミスター民主党御大将
鳩ぽっぽさんが来たる参議院選挙で
政界復帰されるという驚愕のニュースが
あったんですね!
しかも、
党名ロンダリングを重ねたとは言え
嫡流の韓流政党立憲民主党からではないことに
相当のドラマがあったと推察されます。
もちろんLoopyな鳩ポッポさんですから
党消滅の危機にさっそうと救世主としての
復帰を思って見えたのでしょうが
これまで鳩ポッポファンドに
媚を売ってた鳩のhun
(hunは米俗語で特に親しいの意味)
の人たちも、票を失い落選恐れ
手のひら返しで復帰拒絶されただろうことから
『共和党』?なる鳩ぽっぽさんお怒りの
党名になったのでは?と推察します。
そんな唐突な
『きょうわとう』?なる党名は
世間一般の人が聞いたなら
『えっ? 鳩ぽっぽが 新党 虚-話党 立ち上げだって?』
という受け止め方をされてしまうのが
普通なのかなと思います。
宏池会てのを、マスコミ報道を通じ「まともなエリート集団」と勘違いしているのか?と感じています。 少し前の会長は、あの古賀誠ですよ!(エリート? 大爆笑) 弱みを握られて乗っ取られたのでしょうね。引退したジジイですが、自らの政治信条を貫き通したいのら社民党に行った方が普通の人物と思うのですが・・・(笑)
宏池会は戦後政治のカビを洗い落としたら、それなりになるのでしょうが難しいでしょうね。 茂木さんがいる内に「平成研究会」に合流し、この派閥を変えれば・・・ あっ! 無理だ! 大人の事情が許さない。
https://news.yahoo.co.jp/articles/f34e450fc7bb75759bd60a885e4144e5f4969927
>【写真54枚】吉川議員が18歳の女子大生と高級ホテルに向かう様子
どんだけ写真載せたいんだよw。
Web時代ですねえ。