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韓国紙「韓日歴史問題は被害者中心主義で解決すべき」

韓国紙、「一括妥結論」を「被害者置き去り」と批判するが…

尹錫悦(いん・しゃくえつ)韓国大統領が掲げる日韓諸懸案の解決策は「グランドバーゲン」、つまり「一括妥結論」です。これはこれでいかにも乱暴で乱雑な議論ですが、韓国メディア『中央日報』に昨日、「被害者中心主義ではない」などとする視点から、この「グランドバーゲン」論を批判する記事が出ていました。その批判のポイントもまた噴飯物です。

二重の不法行為

現在の日韓関係を巡って、最近、韓国メディアを中心に頻繁に見かける表現が、「韓日関係の改善」です。

ただ、当ウェブサイトとしては、日韓関係の「改善」、という表現自体、非常に大きなバイアスがかかっていると考えています。というのも、「日韓(韓日)関係『改善』」という表現を使うと、現在の日韓諸懸案の責任の所在が日韓のどちらに存在するのかがあいまいになってしまいかねないからです。

【総論】韓国の日本に対する「二重の不法行為」と責任』などを含め、これまでに繰り返し指摘してきたとおり、日韓諸懸案の本質は、基本的に、「韓国の日本に対する一方的な加害行為」です。

世間では少し勘違いしている人が多いようですが、日韓諸懸案とは韓国の日本に対する「二重の不法行為」の問題です。解決する全責任は、韓国側にあります。そして、日本が議論しなければならないことは、「どうやって韓国に譲歩して折り合いをつけるか」、ではありません。「約束を守らない韓国を、どうやって罰するか」、です。本稿では「総論」として、これまでに当ウェブサイトで触れてきた「韓国の対日不法行為」の数々を、大ざっぱに振り返っておきます。韓国の対日不法行為、尹錫悦政権発足後に「風化」していないか?2022年5月1...
【総論】韓国の日本に対する「二重の不法行為」と責任 - 新宿会計士の政治経済評論

当ウェブサイトにおいて「二重の不法行為」と呼ぶ理由は、「①韓国が主張する内容がたいていの場合、ウソ、捏造、でっち上げのたぐいのものである」、「②韓国が日本に対して要求する内容が違法なもの(国際法違反、国際合意違反、国際条約違反など)である」、というふたつの特徴にあります。

【参考】日韓諸懸案巡る韓国の「二重の不法行為」とは?
  • ①韓国側が主張する「被害」の多くは、(おそらくは)韓国側によるウソ、捏造のたぐいのものであり、最終的には「ウソの罪をでっち上げて日本を貶めている」のと同じである
  • ②韓国側が日本に対して要求している「謝罪」「賠償」などには、多くの場合、法的根拠がなく、何らかの国際法違反・条約違反・約束違反を伴っている

(【出所】著者作成)

韓国が日本に対して仕掛けている不法行為は、たいていの場合、この①、②の少なくとも片方の特徴が含まれていますし、自称元徴用工問題のように、両方の特徴が含まれている懸案も数多くあります。

解決責任が韓国にある理由

一般家庭の事例:J家とK家の場合

これについては一般家庭の事例にたとえてみればよくわかります。

たとえば、隣り合うJ家とK家があったとしましょう。

K家はよくJ家の人間に対し、路上で言いがかりをつけたり、殴りつけてきたり、ある日突然J家のものを取り上げたり、と、狼藉の限りを尽くしています。

K家に言わせれば、「おじいちゃんの時代にK家はJ家から酷いことをされた」、「J家はいまだにそのことを謝罪していないし、賠償も不十分だ」、ということです。

ただ、当たり前の話ですが、もし「おじいちゃんの時代にJ家がK家に酷いことをした」からといって、K家がJ家から勝手に物を盗んだりしてはなりませんし、K家の人間がJ家の人間に殴りかかったり、謝罪を強要したりしてはなりません。

しかも、K家がいう「おじいちゃんの時代にJ家が酷いことをした」という言い分自体も、冷静に歴史的事実に照らしてみれば、物証もほとんど残っておらず、酷い場合にはK家で勝手に事実関係を捏造し、「J家が悪いことをやった」ことにしている、という事例すらある、というのです。

「韓国が国際法を守ってくれる」ことは期待できない

この場合、J家とK家が「仲良くする」にはどうすれば良いでしょうか。

答えはひとつしかありません。K家がちゃんと法と秩序を守り、J家のものを盗んだり、J家の名誉と尊厳を貶めたり、J家に殴りかかったりすることをやめ、これまでに与えた損害について賠償したうえで、きちんと謝罪するより方法はありません。

しかし、非常に残念なことですが、この「K家がちゃんと法と秩序を守ること」については、期待できません。

日韓ともに「相手に譲歩してはならない」が多数=調査』でも紹介しましたが、日韓メディアの共同世論調査の結果では、韓国側の世論は8割が「歴史問題で日本に譲歩してはならない」と考えているからです。

日韓メディアが実施した共同世論調査が、なかなか興味深い結果を示しています。日韓ともに「歴史問題」で「相手国に譲歩してはならない」とする回答が多数を占めたというのです。この点、日韓関係の破綻を防ぐためには①韓国が約束を守るか、②日本が韓国に譲歩するか、そのいずれかしかあり得ないのですが、そのどちらの選択肢についても世論調査上は否定された格好です。日韓世論調査韓国メディア『韓国経済新聞』(韓経)に昨日、ちょっと興味深い記事が掲載されていました。韓日歴史問題… 韓国国民81%・日本国民58%「譲歩してはい...
日韓ともに「相手に譲歩してはならない」が多数=調査 - 新宿会計士の政治経済評論

そもそも日本が解決を求めているのは、「歴史問題」ではなく、「韓国による国際法破りの問題」なのですが…。

このあたり、韓国における長年に及ぶ反日教育の力が大きいからなのか、それともなにかほかに理由があるのかはよくわかりませんが、いずれにせよ世論調査の結果を信頼する限りにおいては、「韓国が国際法をきちんと守る」という方向で日韓関係が是正される可能性は極めて低いと結論付けざるを得ません。

したがって、日韓関係を巡っては遅かれ早かれ、次の3つの落としどころのうち、基本的には3番目のシナリオが実現せざるを得ない、というのが、当ウェブサイトなりにこの6年間、コリア・ウォッチングを続けてきた結論なのです。

日韓諸懸案を巡る「3つの落としどころ」
  • ①韓国が国際法や国際約束を誠実かつ完全に履行することで、日韓関係の破綻を回避する
  • ②日本が原理原則を捻じ曲げ、韓国に対して譲歩することによって、日韓関係の破綻を回避する
  • ③韓国が国際法や国際約束を守らず、日本も韓国に譲歩しない結果、日韓関係が破綻する

(【出所】著者作成)

本気で日韓関係破綻を回避したいならば…

というよりも、自然に考えて、法も秩序も守らないウソツキと仲良くできると考える方がおかしなはなしでしょう。

もちろん、日韓関係が今すぐ破綻すると日本にとっても何かと困りますし、(いちおう表向きは)「日米韓3ヵ国連携」も大事です。したがって、日本政府が日韓関係「改善」(?)に向けてポーズをとること自体は、それなりに意義があることだとは思います。

しかし、まかり間違っても日本が何らかの形で譲歩するような決着を目指してはなりません。

自称元徴用工問題でいえば、最低でも2018年10月と11月に韓国大法院が下した違法判決を韓国が国家の責任において完全に無効化し、日本企業に違法な賠償責任を負わせた措置を取り消さなければなりません(どうやってそれを実現するかは韓国が考える話です)。

また、自称元慰安婦問題でいえば、最低でも2015年12月28日に日本政府と取り交わした「日韓慰安婦合意」をしっかりと守らなければなりません。自称元慰安婦問題はこの日をもって「最終的かつ不可逆的に解決した」からです。

さらに、竹島不法占拠問題に関しては、李承晩ラインの違法性を認めてこれを取り消し、あわせて竹島の不法占拠を解除して日本に引き渡したうえ、過去に遡って拘束した日本の漁民などに対する謝罪や賠償などの措置を講じなければなりません。

これら3つの問題に関しては、ここに示したものが「最低ライン」ですし、しかも、日韓間の諸懸案はこの3つに限られません。

2018年の旭日旗騒動や火器管制レーダー照射事件、2019年の日韓GSOMIA破棄騒動などのように、韓国が生み出した、日韓の軍事的な協力を停滞させるような後ろ向きな動きについても、きちんと始末をつける必要があります。

また、2019年の日本政府による対韓輸出管理適正化措置を発動する原因となった「韓国の輸出管理を巡る不適切な事案」についても、韓国政府は日本に対し、きちんと事情を説明したうえで謝罪しなければなりませんし、WTO提訴措置についても直ちに撤回しなければなりません。

以上のとおり、日韓諸懸案のほんの一部を列挙しただけでも、これだけ多くの問題があるわけです。

そして、これらのボールは基本的にすべて韓国側にあります。

とくに自称元徴用工問題の場合、2019年に日本政府が日韓請求権協定に基づき、韓国に対して外交的協議、国際仲裁、第三国仲裁という友好的かつ紳士的かつ平和的な解決を模索したにも関わらず、それらの日本政府の申入れを韓国政府がことごとく無視したという事実を忘れてはなりません。

いずれにせよ、日韓関係「改善」(?)のためにできることは、日本にはもう何も残っていないのです。

「首脳会談さえできれば信頼が醸成される」というのは間違い

ただ、非常に不思議な現象がひとつあるとしたら、ちょうど1ヵ月前に尹錫悦(いん・しゃくえつ)政権が発足したことなどを受け、最近、韓国側で「韓日関係『改善』」に関する議論が急に盛り上がっているのです。

こうした「韓日関係『改善』」論、たいていの場合は「韓日が信頼を醸成すべきだ」、といった主張を伴っています。酷い場合、この「信頼醸成」は、「韓日の首脳や外相がひざを突き合わせて誠心誠意会談を行うべきだ」という主張にも転用されます(『「首脳会談さえやれば信頼関係醸成」という考えは甘い』等参照)。

「首脳会談で韓日の信頼関係を醸成しよう」。そんな発言が、韓国政府から聞こえてきました。今月下旬にスペイン・マドリードで開かれるNATOサミットに日韓首脳がゲスト国として参加する可能性が高まり、その際に日韓首脳会談が開かれることへの期待感が韓国政府側から出てきた格好ですが、そもそも首脳会談をすれば「わかりました、あなたのことを信頼しましょう」、となるほど現在の日韓関係は甘いものではないのです。おじいさんの不法行為日韓関係がギクシャクしていること、その原因を韓国側が作ったことについては、『【総論...
「首脳会談さえやれば信頼関係醸成」という考えは甘い - 新宿会計士の政治経済評論

それにしても、おかしな言い分です。

日本の韓国に対する信頼を失わしめたのは韓国の「二重の不法行為」なのですから、1回や2回、首脳会談を実施したところで「信頼醸成」などできるはずがありませんし、どうしても「信頼醸成したい」というのであれば、首脳会談以前にやることはいくらでもあるでしょう。

そもそも論として、国と国との信頼関係は「ウソをつかないこと」、「約束をきちんと守ること」といった基本的な日常動作の積み重ねによって醸成されるものであり、首脳同士が会談したくらいで「はいわかりました、あなたの国を信頼しましょう」、とはなりません。

ましてや岸田文雄首相自身、安倍晋三総理の下で外相を務めていた2015年には、韓国に2回も騙された人物です(『佐藤正久氏、韓国に「2度も3度も騙されてたまるか」』等参照)。

今こそ国会議員の皆さんに読んでほしい優れた鈴置論考「岸田首相が韓国に2度も3度も騙されてたまるか」。これは、佐藤正久外交部会長が昨日発信したツイートに含まれていた表現です。「岸田首相が韓国に2度騙された」という表現、韓国観察者・鈴置高史氏が昨年10月18日付で公表した論考を思い出します。もしかして佐藤氏は鈴置論考をお読みになっているのでしょうか?そして岸田首相は今度こそ本当に騙されないのでしょうか?2022/05/12 14:30追記本文中の誤植等について修正したところ、読者コメントが消えてしまいました。現在、...
佐藤正久氏、韓国に「2度も3度も騙されてたまるか」 - 新宿会計士の政治経済評論

自然に考えて、岸田首相がまともな感性をお持ちなら、日韓首脳会談要請には慎重に対応するはずです(※あくまでも岸田首相がまともな感性をお持ちなら、ですが…)。

しかも、問題はそれだけではありません。尹錫悦氏が政権の座に就いて以来の1ヵ月間で、日韓諸懸案を巡っても、具体的な解決提案は、おどろくほどまったく何も出てきていないのです。

おそらく韓国側としては、「韓日双方が知恵を出し合って」云々という、いつものあれを持ち出すつもりなのだと思います(※ちなみに韓国から「知恵を出す」という表現が飛び出すときには、たいていの場合、「譲歩してほしい」という要求を意味していますので、注意が必要です)。

中央日報が一括妥結を批判するが…

中央日報、日韓首脳会談を勝手に既定路線化

この、「尹錫悦政権から問題解決の具体的提案がなにひとつとしてない」なかで「最初から日本の譲歩を当然の前提としている」とする議論の典型例例が、韓国メディア『中央日報』(日本語版)に昨日も出ていました。

韓日「信頼回復」速度論に…「被害者」が抜けた「グランド・バーゲニング」懸念

―――2022.06.10 15:58付 中央日報日本語版より

当ウェブサイトなりに要約すれば、「被害者中心主義でこそ、韓日の信頼関係は回復する」、といったところでしょうか。この中央日報の記事も、なかなかに強烈です。記事の出だしからして、こんな具合だからです。

韓国の尹錫悦(ユン・ソクヨル)政権発足後、韓日首脳が共感を形成した関係改善基調が最高位級の疎通につながる雰囲気だ」。

中央日報が「韓日再高位級の疎通」と表現しているのは、朴振(ぼく・しん)外交部長官が「今月末に訪日して林芳正外相と会談を行う」ことと、スペイン・マドリードで開かれるNATO首脳会合で尹錫悦氏が岸田文雄首相と会談をすることの2点を意味しているものと思われます。

とくに中央日報の記事では、日韓首脳会談について次のように述べています。

岸田文雄首相も『日韓関係の改善待ったなし』(4月26日の記者会見)という立場なので、NATO首脳会議への出席が確定する場合、首脳会談開催の呼びかけに応じるものと予想される」。

このあたり、個人的に日韓外相会談や日韓首脳会談が行われる可能性が「まったくない」とは思いませんが、この中央日報の記事が公表されている時点では、まだ日本政府の側からは何も反応がありません(とくに首脳会談については松野博一官房長官が金曜日の会見で、「未定である」と説明しています)

これについて中央日報は「外交消息筋」のこんな話を述べます。

日本側は尹錫悦政府の韓日関係改善意志に信頼を示し、両国の友好的雰囲気が高まる局面。外相会談や首脳会談など連鎖的な最高位級の対面接触が実現すれば、相互不信を解消して懸案解決の土台を整える契機になるだろう」。

つまり、まだ決まってもいない会談を当て込んでいるということに加え、「首脳・外相会談さえやれば日韓諸懸案についての解決策が出て来る」、などと単純な想定を置いて記事を執筆していること自体、議論が大変に飛躍していると言わざるを得ません。

ツッコミどころが満載過ぎる

ただ、中央日報の記事のぶっ飛んでいるところは、そこだけではありません。こんな記述も、ちょっと我々日本人の感覚からは、理解に苦しむところです。

特に歴史問題の場合、韓日間の外交事案であると同時に裁判所判決の影響を受ける司法的イシューだ」。

また、両国の国内政治的環境や国民世論も無視することができない要素だ。韓日が懸案で異見を解消することができない場合、首脳会談等を通してなんとか回復しつつあった両国の信頼が水泡に帰すことになりかねないという懸念が出ている理由だ」。

そもそもその自称元徴用工判決自体が国際法違反であるという点について、どうして言及しないのでしょうか。

また、「首脳会談等を通してなんとか回復しつつあった両国の信頼が水泡に帰す」のくだりも、なかなかに意味不明です。まだ行われてもいない首脳会談を当て込み、勝手に「これで信頼関係が回復する」という前提を置いていること自体、議論があまりにも現実から遊離し過ぎています。

そのうえ、中央日報は、尹錫悦政権が文在寅(ぶん・ざいいん)政権時代に深まった「韓日葛藤」を「踏襲しない」としつつも、歴史問題に対する「被害者中心主義」を継承する姿を見せている、などとしたうえで、次のように主張します。

歴史問題葛藤の真の解決のためには慰安婦・強制徴用被害者の尊厳と名誉を回復させなければならないという趣旨だ」。

その「被害者」とやらが本当に「被害者」なのか、彼らが主張する「被害」とやらが歴史的事実に基づくものなのか、百歩譲ってそうだったとしても、1945年8月15日以前の日韓間のすべての請求権の問題は1965年の日韓請求権協定で解決済みではないか――。

即座にこんなツッコミが出て来そうな記述ですね。

グランド・バーゲニングはたしかに乱雑だが…

こうしたなか、この中央日報の記事を読む際に気を付けなければならないのは、記事のタイトルにもなっている「」グランド・バーゲニング」です。

この「グランド・バーゲン」とは、「一括妥結」という意味だそうです。

この記事では尹錫悦氏が昨年6月の大統領選挙出馬時点で、「韓日間の安保協力と経済・貿易、このような懸案をすべてひとつのテーブルの上にのせてグランド・バーゲンをする方式で接近しなければならない」と述べた、などとしています。

そのうえで、現在の韓国政府が「首脳間の出会いを通じて問題を一括で妥結させようとするグランド・バーゲニング」を「トップダウン方式」で追求していることが「被害者中心主義」とかけ離れている、などと批判しているのですが、そもそもその批判のポイントがズレています。

中央日報の指摘は、こうした「トップダウン方式でのグランド・バーゲニングは被害者を無視している」、などとしているのですが、その「被害者」は実在するのでしょうか?疑問でなりません。

なお、一応このグランドバーゲン云々についてもツッコミを入れておきましょう。

この「韓日間の安保協力と経済・貿易などの諸懸案」を「交渉によりすべて同時に解決する」という「グランド・バーゲン」方式、大変に乱暴で乱雑な方法です。先ほども述べたとおり、日韓諸懸案についてはひとつひとつ、韓国側が丁寧に不法行為状態を解消していかねば解決しないからです。

この点、巷間では「岸田首相や林外相は『楕円の外交』なるものを掲げ、参院選後には韓国に対し甘い顔を見せているのではないか」、などと指摘する人もいるのですが、もしその懸念が正しかったとしても、さすがにこの「グランド・バーゲン」方式の妥結に応じることは不可能でしょう。

岸田政権に対し、自民党の安倍派、茂木派、麻生派が事実上、大きな影響力を行使している(『骨太方針に見る安倍総理「院政」』等参照)現状にかんがみれば、岸田政権が「グランド・バーゲン」方式に応じるようだと政権が持たないでしょう。

岸田首相が掲げる「新しい資本主義」とやらはどこに行ったのか。政府が昨日閣議決定した「骨太の方針2022」を読むと、「アベノミクスの3本矢」の記述がみられるなど、安倍政権が復活したかにも見えます。とりあえず岸田首相としても、安倍派、茂木派、麻生派などに配慮せざるを得ないようであることだけは間違いありません。細かい文字がびっしり!骨太方針2022いかにも「自民党らしい」と思える事例がありました。昨日、政府は「骨太の方針2022」を閣議決定しました。経済財政運営と改革の基本方針2022―――2022/06/07付 内閣府HPよ...
骨太方針に見る安倍総理「院政」 - 新宿会計士の政治経済評論

日韓諸懸案≠歴史問題

さて、今回の中央日報の記事でも出てくるのが、日韓諸懸案を「歴史問題」と呼び変える詭弁です。それが、こんな記述でしょう。

もう一つの問題は韓国の積極的な疎通努力がややもすると歴史問題に対する譲歩意志と解釈されかねないという点だ」。

そもそも自称元徴用工問題、自称元慰安婦問題、竹島不法占拠問題を筆頭とする日韓諸懸案は、「歴史問題」ではありません。「二重の不法行為」、すなわち「韓国がウソ・捏造に基づき日本に違法な請求をしている問題」なのです。

したがって、これを解決するためには、どちらかが片方に「歩み寄る」のではなく、文明国であれば当然に求められる、「ウソをつかない」「約束を守る」というごく当たり前の態度を韓国が取るかどうか、という話に尽きます。「歩み寄る」も何もありません。

この点を韓国政府側が理解していないがために、こんなトンチンカンな記述が出てくるのでしょう。

日本はこれまで歴史問題に関連して『韓国政府が先に解決策を提示するべき』という立場を守ってきた。<中略>政府関係者は『歴史問題のすべてのボールが韓国の中にあるという日本の態度は受け入れがたく、異見を解消するためには両国双方の努力が必要だ』<中略>と述べた」。

当たり前ですが、諸懸案を解決するために努力しなければならないのは韓国側です。たとえば火器管制レーダー照射問題や自称元徴用工問題などでも、日本はすでに懸案を解決するための努力を尽くしました。日本にできることはもう何もありません。

というよりも、この手の記述を読んでいて、常に痛感するのは、韓国側の「ゼロ対100理論」でしょう。これは、自分たちの側に100%の過失がある場合でも、屁理屈を駆使して「相手も悪い」などと主張し、過失割合を50対50、あるいは極端な話、100対ゼロに持ち込む詭弁です。

※ゼロ対100理論とは?

自分たちの側に100%の過失がある場合でも、屁理屈を駆使し、過失割合を「50対50」、あるいは「ゼロ対100」だと言い募るなど、まるで相手側にも落ち度があるかのように持っていく態度のこと。

(【出所】著者作成)

正直、韓国の側に100%の過失があるわけですから、日韓諸懸案のすべてのボールが韓国にあるというのは、公正に見て日本だけでなく、まともな文明国であればすべて認めるところでしょう。韓国の味方になってくれる国があるとすれば、中国、北朝鮮、ロシアくらいでしょうか。

結局は日韓テーパリング

いずれにせよ、少なくとも現時点における日韓諸懸案に関し、私たちの国・日本には基本的には落ち度がありません(日本の落ち度が「皆無」というわけではありませんが、少なくとも私たちが問題解決の責任の一端を負わねばならないほどに大きな落ち度ではありません)。

日韓関係を巡って日本は、表向きは韓国に対し、「日韓関係は重要だ」、「だからこそ国と国との約束を守ってほしいしウソをつかないでほしい」とだけ言い放っておいて、裏では少しずつ、関係の清算に向けて動き出す(=日韓関係テーパリング論)という考え方こそが、正しい態度と言わざるを得ないのです。

新宿会計士:

View Comments (32)

  • 隣国のマスコミや自称有識者たちがいろいろ寝言を言ってますが、放置し続けて経済破綻するのを待ちましょう。唯一のリスクは、岸田・林や二階が変なことしないことかと思います。ウォンもいい感じで売られてきました。来週が楽しみで、いろいろ食べ過ぎて太りそうです。被害者として私がもういいと言うまで謝罪と賠償を要求したいところです。

  • おかしな屁理屈をこねて話を出発点に戻そうとするのは、それ以外できることがないから、堂々巡りで相手を困らせてやるつもり満点だから、と判断します。本質的にやくざの因縁付けと違いない。やってる側は自分の言っていることが支離滅裂と分かっているかどうかは彼らの場合大いに疑問です。

    • はにわファクトリー様

      >堂々巡りで相手を困らせてやるつもり満点だから

      果たして、そんな計算なんてはたらいてるんでしょうかね?

      ひとりぼっちの世界で妄想に耽っているだけの(自家発電? マ…?)
      ような気もしますが(笑)

      情況と関係なく脳内にできあがった神経サーキットが
      止まることなく猛烈に回転し始めたら
      待っているのは、て・ん・か・ん・ほっ・さ

      • 伊江太様。

        ワタシは怖くて発言は出来ませんが、伊江太様は大胆です。
        『ま…?』

        蛇足です。
        ま…ぁ、そゆう事です。

  • 歴史問題?韓国の国内問題なので日本は無関係です
    出稼ぎ労務者に対する賠償とやらも同様

  • (彼らのボールの投げ所)
    ①特別立法に基づき、違法判決を取消・無効化する(原理原則通りの対処)
    ②韓国政府が代位弁済し、求償権を完全に放棄する(国内問題として対処)
    ③現金化を強行し、カントリーリスクを具現化する(彼らの正義での対処)

    *一見、韓国側の被害者中心主義・司法判断尊重及び日本側の国際法順守を包括したかのような②を選択肢しようとも、彼らには ”その場しのぎ” でしかないんでしょうけどね。  約束は反故するときのために交すものなのですから・・。

  • 日本政府が側の「自称被害者」と直接にやり取りしない事を主張したのは「自称被害者」を含めた韓国国民が作った憲法・法律体系と、「自称被害者」を含めた韓国国民選んだ代表ですよね?

    そうして韓国政府によって公式に締結された日本政府との合意が今になって気に食わないと言う「自称被害者」さん達はお気の毒ですが、モンクなら、その気に入らない合意をした韓国政府に言って下さいよ。

    日本政府には韓国国内での不和を調整する義務も義理も興味も好意もありません。

  • >包括的解決

    なんでもグジャグジャにマジェマジェしてしっちゃかめっちゃかにして解決もクソもないっつーの。

    事態収束能力がない国だとそれにしても思わざるおえない。

    尤も事態を収拾する必要なんてない。日本にとっちゃ日韓断交で困らないからな。

  • 中央日報の記事の最大の問題はタイトルにある『「被害者」の抜けた』でしょう。

    韓国は被害者じゃない。

    これが全て。彼らが被害者面して、日本は加害者の癖に、というのが全ての諸悪の根源です。

    我々は加害したことはありません。現代の日本人は当然のこと過去の日本人についても同様。

    で、言われもない加害者の汚名を着せられても彼らと交流しなければならない義務も必要性もありません。

    日本は加害者じゃない。韓国は被害者じゃない。

    明確に総理が発言して欲しい。それで日韓問題は完全解決です。後続の作業は総理の発言に沿えば自動的に進みます。

  •  彼らの言うところのグランドバーゲニングて要するに、「全部テーブルに出して個別に全部見よう」ではなく「経済にしろ安保にしろ韓国が無ければ困るでしょ?なら歴史問題と均して一括妥協してよ。」ということかと解釈しましたが。
     漁業権や円安でギャアギャア騒いだり、共同訓練を拒否しまくったりレーダー照射したり等々々々々々、どの要素を拾っても韓国に価値が無いというか負債だらけ。全部テーブルに載せたら韓国はもっと不利になる気がします。そも韓国に価値があってですらご都合主義ですが。

     自己評価が高すぎるんよ……

  • 今回のウクライナ危機は、(日韓とは限りませんが)2つの国の歴史観を一致させるには、戦争しかない、ということを示しているのではないでしょうか。(ということは、韓国は歴史観の違いを理由に、日本に軍事行動することもあり得るのでしょう)

  • >まだ行われてもいない首脳会談を当て込み、勝手に「これで信頼関係が回復する」という前提を置いていること自体、

    日韓関係は改善のサイクルに入った(と思ってる)ので、条件闘争に入った(つもり)なんでしょう。ハードルを上げ、ゴールを動かし始めてる。元々どこがゴールだったかもわかりませんが。キムチ汁を飲み始めたのでしょう。
    中央日報の記事に動機があるとすればこれかなと。(単なるテンプレ穴埋めボット記事かもしれませんが)

    最近のアノマリーでは、用日メディア・要人が言い出したことは実現しているんですよ。首相と(協議できない)政策協議団の面会が実現しました。

    最終的には中央日報の「ぬか喜び」に終わる話と思います。思います。思います。多分。
    ・・・不安要素が無いわけではありません。

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