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韓国紙「韓日関係の特殊性踏まえ韓国が先制的解決を」

日韓関係がうまくいかないのは「日韓関係の特殊性」ではなく「韓国の特殊性」が原因だ――。そう実感させる記事が韓国紙『中央日報』(日本語版)に出ていました。「国益論」「治癒論」などと小難しくて抽象的な概念を使っていますが、何のことはありません。いつもの「韓国が道徳的に日本に優位に立っている」とする勘違いに立脚したコラム記事です。

韓国の日本に対する「二重の不法行為」

先週の『【総論】韓国の日本に対する「二重の不法行為」と責任』でも取りまとめたとおり、日韓間に存在するさまざまな懸案については、基本的には「韓国の日本に対する一方的な『二重の不法行為』である」、と定義づけて良いでしょう。

世間では少し勘違いしている人が多いようですが、日韓諸懸案とは韓国の日本に対する「二重の不法行為」の問題です。解決する全責任は、韓国側にあります。そして、日本が議論しなければならないことは、「どうやって韓国に譲歩して折り合いをつけるか」、ではありません。「約束を守らない韓国を、どうやって罰するか」、です。本稿では「総論」として、これまでに当ウェブサイトで触れてきた「韓国の対日不法行為」の数々を、大ざっぱに振り返っておきます。韓国の対日不法行為、尹錫悦政権発足後に「風化」していないか?2022年5月1...
【総論】韓国の日本に対する「二重の不法行為」と責任 - 新宿会計士の政治経済評論

ここで当ウェブサイトが「二重の不法行為」と呼ぶ理由は、「①韓国が主張する内容がたいていの場合、ウソ、捏造、でっち上げのたぐいのものである」、「②韓国が日本に対して要求する内容が違法なもの(国際法違反、国際合意違反、国際条約違反など)である」、というふたつの特徴があるからです。

日韓諸懸案巡る韓国の「二重の不法行為」
  1. 韓国側が主張する「被害」の多くは、(おそらくは)韓国側によるウソ、捏造のたぐいのものであり、最終的には「ウソの罪をでっち上げて日本を貶めている」のと同じである
  2. 韓国側が日本に対して要求している「謝罪」「賠償」などには、多くの場合、法的根拠がなく、何らかの国際法違反・条約違反・約束違反を伴っている

(【出所】著者作成)

逆に言えば、日本政府が要求している、「日韓関係を健全な姿に戻すこと」は、韓国がこれらの不法行為をただちにやめることに加え、傷ついた日韓間の信頼関係を修復し、韓国が日本に与えた損害を回復させる措置を講じることが必要です。

「韓日どっちもどっち」論

それなのに、韓国側から聞こえて来るのは、「韓日双方が努力して」だの、「韓日がともに知恵を出し合って」だのといった、「韓日どっちもどっち」論ばかり。

尹錫悦(いん・しゃくえつ)政権が発足して以降、「韓日関係『改善』」論が韓国の「保守系」とされるメディアを中心に頻繁に出てくるようになったのですが、これらを眺めていても、「韓国の約束破り・国際法違反・条約破り」を正面から取り上げているものは、ほとんど見当たりません。

なかでも強烈なのは、韓国メディア『中央日報』(日本語版)に本日掲載された、こんな記事ではないでしょうか。

【コラム】危機の韓日、保守が進歩を包容して国益を広げていくべき(1)

―――2022.06.07 10:44付 中央日報日本語版より

【コラム】危機の韓日、保守が進歩を包容して国益を広げていくべき(2)

―――2022.06.07 10:44付 中央日報日本語版より

執筆されたのは高麗大学政治外交学科教授の方ですが、コラム記事の書き出しからして違和感があります。

どん底に陥っていた韓日関係の車輪が回り始めた。4月24日、韓日政策協議団の鄭鎭碩(チョン・ジンソク)団長が関係改善を希望する尹錫悦(ユン・ソクヨル)次期大統領の親書を持って訪日した。両国の懸案を迅速に解決しようという岸田首相の肯定的回答が先月10日に大統領就任式に出席した林外相を通じて伝えられた」。

果たして、そうでしょうか。

この手の「韓日関係の車輪が回り始めた」だの、「明かりが見え始めた」だのといった大仰な表現は、韓国メディアの常のようなものでしょう(※この点、岸田文雄首相、林芳正外相の対韓認識は、見ていて若干不安にならないではありませんが…)。

しかし、少なくとも表向き、日本政府の立場は「日韓関係を健全な姿に戻すうえでは国と国との約束が守られることが必要だ」とするもので一貫しており、必然的に、韓国が法と約束を守ることが前提にあるのです。

さらに、この記事では、「韓日関係を破局直前まで推し進めた文在寅(ムン・ジェイン)政府の実情を批判し…」、などといった表現も出てきますが、このあたりの認識にも、事実関係と比べて大きな乖離があることは間違いありません。

文在寅(ぶん・ざいいん)政権時代にさまざまな「二重の不法行為」がなされたことは間違いないのですが、それ以前の「保守政権」(?)だったはずの朴槿恵(ぼく・きんけい)、李明博(り・めいはく)の両政権でも、やはりさまざまな対日「二重の不法行為」が行われていた事実を忘れてはなりません。

「国益論」vs「治癒論」

なにより驚くべき点は、この文章を通じて、「韓国が国際法を破っている」という事実があまりにも軽視されている、ということではないかと思います。

著者の方は、日韓関係を見るうえで「2つの視点がある」、というのです。

韓日関係を見るには2種類のアプローチ法がある。一つは政治・経済アプローチ法で、外交と安保、経済を中心に韓日関係を見る。もう一つは人文・社会アプローチ法で、歴史問題や価値規範を含めて市民社会と文化交流の観点から接近する」。

この方がおっしゃるには、前者のアプローチは「国益論」であり、後者のアプローチは「治癒論」、なのだとか。

大した内容ではないのにやたら難しい言葉遣いをするのは韓国の論者にはありがちですが、この文章もわかりやすくいえば、「韓国には歴史問題や価値規範を含めて日韓関係を見るというアプローチが存在する」、という意味ではないかと思います。

「歴史問題」だ、「価値規範」だとわかり辛いことばを使っていますが、『韓国弁護士「過去の問題は法的手段では解決できない」』でも触れた、「日韓歴史問題は韓国が常に道徳的優位に立っている」とする韓国特有の勘違いを思い出してしまいます。

なぜ正論を指摘する論者が、たった1人もいないのか――。「韓日ビジョンフォーラム」には多くの論者が参加しているようですが、「韓日諸懸案は本来、すべて法的に解決済みであるのに、これを蒸し返すわが国の側に問題がある」と指摘する論者は見られません。それどころか、「韓日問題は法律で解決することができない」などと言ってのける弁護士の方もいらっしゃるようです。「台頭で未来志向の関係」否定しているのはどちらかとても当たり前の話ですが、外交関係においては、基本的に「対等で未来志向の関係」を目指さなければなりませ...
韓国弁護士「過去の問題は法的手段では解決できない」 - 新宿会計士の政治経済評論

そして、この論考では「国益論で治癒論を説得することは容易ではない」、と説きます。

韓国の国益論者は米国中心の国際秩序を前提として、韓米同盟を機軸に韓日米三角協力体制を構築することが韓国の国益に符合すると主張する。したがって歴史問題によって悪化した韓日関係の迅速な復元を試みる。しかし、このようなアプローチは被害者の治癒とは相当な距離がある」。

正直、そんなことを言われても、私たち日本人にとっては、知ったことではありません。

出た!「韓日関係の特殊性」

だいいち、日韓関係は「歴史問題によって悪化した」のではありません。「韓国がありもしない歴史問題を持ち出して日韓関係を破壊した」のです。この点をわきまえておかないと、こんな具合におかしな結論が出てきてしまいます。

相変らず韓日関係は国際政治と外交での一般論が適用されにくい特殊な側面が存在する」。

…。

この手の「日韓関係の特殊性」という主張、どこかで見覚えがある議論ですが、こうした主張を読むにつけて思い出すのが、以前の『鈴置論考、「日韓の」ではなく「韓国の」特殊性に言及』でも紹介した、「韓国の特殊性」という表現です。

平気で約束を破り、堂々と他人を裏切る韓国と首脳会談を開こうとする国はまず出てこない。何を取りきめようが、すぐに反故にされるからです。日本と韓国がうまくいかない原因は『日韓関係の特殊性』ではなく『韓国の特殊性』にあるのです」。

この文章、日本を代表する優れた韓国観察者である鈴置高史氏が『デイリー新潮』の『文在寅が菅首相をストーカーするのはなぜか 「北京五輪説」「米国圧力説」……やはり「監獄回避説」が有力』で提示したものなのですが、読めば読むほど、至言と言わざるを得ません。

文在寅氏「ブラックスワン・ストーカー」説、いつにもまして辛辣な小気味よさ巷間「日韓関係の特殊性」に関して議論する人はいますが、じつは特殊なのは「日韓関係」ではなく「韓国」だったと指摘されれば、思わず目からウロコが落ちるという思いをすることができます。日本を代表する鈴置高史氏が昨日、『デイリー新潮』に寄稿した最新論考では、文在寅氏が日韓首脳会談に拘る理由――「ブラックスワン・ストーカー説」――について、あらためて丁寧に説明されています。どうなった?「文在寅氏の訪日」論文在寅氏は日本にやって来るの?...
鈴置論考、「日韓の」ではなく「韓国の」特殊性に言及 - 新宿会計士の政治経済評論

「韓国が先制して強制徴用問題を解決しよう」

ちなみに今回の中央日報の記事のポイントは、ほかにもあります。

日韓関係が「改善」されない理由について、この著者の方は、次のように日本に対して「逆ギレ」します。

時間が経つにつれ、加害者が負うべき責任の性格、謝罪の誠意、補償の適切性に対する両国の認識の違いによって、むしろ傷がぶり返す逆説的現象が発生した。韓国が主張する治癒論に日本が呼応せず、かえって反発して逆攻勢することが起こった」。

このあたりは、韓国メディアのテンプレートのようなものでもあるのですが、それと同時に大変失礼ながら、これが大学教授の執筆した文章だとは思えません。

たとえば2015年12月の日韓慰安婦合意では自称元慰安婦問題を巡っては「最終的かつ不可逆的に解決した」ことが確認されました。韓国がいつまで経っても過去の問題を蒸し返し続けていること自体が、この国家合意に違反しているのです。

しかし、こうした認識の齟齬のうえに、この方は次のように述べます。

すでに韓日関係を改善する時点は熟した。核心事案は強制徴用問題だ。日本は韓国に解決法を提示しろと要請している。包容論的治癒論で武装して韓国が先制的措置を断行しよう」。

とりあえず韓国側が「強制徴用問題」(※自称元徴用工問題のこと)で「専制的な解決」を提案し、それによって「責任論的治癒論の成果を認め、その限界を説明し、包容論的治癒論に立って歴史和解を進展させると誠意を込めて(国民世論を)説得しなければならない」、というのです。

何が言いたいのかよくわかりませんが、文脈から判断して、自称元徴用工問題で韓国が先に解決策を提示し、そのうえで日本に対し道徳的優位に立とう、といった意味だとすれば、これはこれでとんでもないです。

そもそも国際法を守ることは日本に対する譲歩でも何でもなく、国際社会に生きる国家であれば当たり前の話でしょう。

いずれにせよ、韓国側から自称元徴用工問題、自称元慰安婦問題、竹島不法占拠問題などで解決提案が何ひとつとして出てきていないのは、結局のところ、この「道徳的優位性」などという「韓国の特殊性」によるものだといえるのかもしれません。

新宿会計士:

View Comments (10)

  • 嘘を吐くなと言っても、言われた方が 自分は本当の事しか言ってない と思っていたら改善できません。

    また、約束をまもれ条約をまもれと言っても、言われた方が そもそも約束をした時と状況が変わったのに 守れと言うのはオカシイ と思うものが 約束を守れる筈がありません。

    では、嘘つきと契約概念のない社会が成り立つのか?

    その為に、韓国では腕時計をみたり学歴や社会的地位、持ってる車など 総合的に判断しお互いにお互いの上下関係を判断し、上の言うことを一方的に下のものが聞くことで社会の安定を保つのです。

    その様な常識をもつ社会の人間に条約や正直、契約など無意味です。
    日本は一生懸命教えようとしたのですが、たった34年程度の期間では無理でした。

    その様な人間とは、関係を切るのが1番です。
    ものの貸し借りをしない。お金の関係などもってのほか。出来れば人の往来も最低限に。
    何かを教えても、すぐに自分の成果にするので 教えるのもやめましょう。

    ただひたすら関係の希薄化にむけて努力すべきです。

    • 仰る通りだと思います。

      韓国では人間関係には上下関係しか無く、格上の者が格下の者に対して絶対の支配権力を持ち、格下の者は格上の指示がどんなに無茶苦茶で理不尽であろうとも絶対服従を強いられます。

      だから韓国人の皆さんには同格の者同士の関係を司る、約束、法規、決まり事等の高等な概念が根本的なところで理解出来ていないのだと思います。

      大学教授サン達にしても例外ではありません。

      韓国の場合、約束、法規、決まり事等の概念が根本的なところで理解出来ていない事に加えて、集団として顕著な自己愛性パーソナリティー障害と診断されてしまうような思考行動回路をもっているような気がします。常に自己中心的で、相手の立場から物事を見られず、自己顕示・自己賞賛・自己美化・自己正当化・自己無謬と言う根拠の無い深い思い込みから抜け出られないから、自分達にとって都合の悪い事実を認識出来ないという、深刻な事実認定障害をもっているようです。

      例のレーダー照射事件の際、韓国政府のみならず、メディアや一般国民さえも、「韓国に都合の悪い事実を無視して、韓国に都合の良い真実を即席に捏造しそれを疑わずに信じ込み、既成事実として認定する」という流れをリアルタイムで観察して、韓国という国家と民族に対する理解が深まりました。

      • 道草様

        同意して頂きありがとうございます。

        日本人はずっと単一民族国家であり続けたために、話し合い信仰が深い様に思えます。
        同じ日本人同士なら、全然大丈夫ですが、一歩外へ出ると この考え方はカモネギになる恐れがあります。
        契約法治などの概念が存在しない古代国家には、それに対応したアプローチが必要だと思った次第です。

  • >韓国が主張する治癒論に日本が呼応せず、かえって反発して逆攻勢することが起こった

    韓国に対する正しい理解が進み、「良心的日本人も呼応し難い世論になった(匙を投げた)」とは考えないのでしょうね・・。

    泣きの一回として交わされた約束を、
    無きの一回にし続けた報いなのかと。

  • 相も変わらぬ”国民情緒論”で相手にする必要はありません。国際的なスタンダードは”合意内容や契約を守ったか否か”であり、このようなことは一顧だにされません。日韓関係が現状のままで、より困るのは韓国の方なのに、何を言っているんですかね。ユン・ソンニョル政権が、徴用工についての何らかの解決策を日本に提示するために、保守系のマスコミを使って、”国民教育”をしているのでしょうか。それにしては、方向が違う。①どのような理由・背景があろうと合意内容が全て②合意内容に違反すれば国際的支持は得られない③国内のもめごとなら、韓国流判断基準でも良いが、国際的紛争にそれを持ち込んではいけない、ということを、しっかり韓国民に教育してください。

  • 日本に約20年ぶりに経済成長率逆転を許しただけはあるよな
    伸びしろがない国

  • このような意見をマスコミの記者ではなく、いわゆる学識経験者までが表明していることを見て毎度感じるのはただただ諦観です。何言っても無駄。期待などもっての外。政治でも経済でも軍事でも民間でも離間(韓)することが唯一の関係正常化です。水と油。補完もないです。

  • ご指摘の通り あいも変わらず
    末期の総会屋さん状態の
    半島韓流メディアさんの
    ありようですなあ。

    それにしても
    次期駐日大使とやらも
    たいがいなものです。
    尹徳敏なる人物の最近の
    自称慰安婦問題についての発言は
    >>「責任のある日本側が、
    >>『カネですべての問題を解決した』
    >>というような発言をしたことから、
    >>世論が大きく悪化して状況が変わった」
    と、日韓関係悪化を日本のせいにしています。
    (出典ダイヤモンドオンライン6/6)

    それが、日本のメディアでは
    『知日派国際政治学者』(?)だとか
    『関係改善期待』(?)だとか
    韓流に染まった記事で
    配信されてますが、とんでもない、
    今の駐日大使や、あのゴリラ、
    いや韓国元国会議長と変わらない
    寛容な日本でなければ
    ペルソナノングラーダものの
    とんでも人物です。
    ・・・とはいっても、
    前韓国民主党政権の倒日姿勢も、
    新韓国保守派政権の用日姿勢も
    韓流反日では同じですから
    他国と違ってまともな大使が
    来るわけはもともとないのでしょう。

    ま、
    新宿歌舞伎町で例える
    と同じ組でも、
    路上でカツアゲ手法派と
    甘い言葉でボッタクリバー
    誘い込みポン引き手法派の
    違いのようなものでしか
    ないんだなあというのが
    私の感想です。

  • 韓国にしてみたら、日本が韓国の正しい歴史認識を受け入れなければ、韓国が建国以来続けてきた嘘歴史を嘘だと認めないといけないから必死ですよねw

    ほんと、真人間でありたいとすれば韓国人である事を辞めないと駄目だし、韓国人でありたいとすれば真人間である事を辞めないといけないという状況で。

    韓国人じゃなくてホント良かったです。

    因果応報とか輪廻転生とかがあるとするなら、どれ程の業を背負う事であんな運命に堕とされちゃうんですかねぇ。。。

  • 韓国人にわかりやすく言うなら、日本は被害者。韓国人の自尊心のために犠牲になっている。まず、すべて撤回して謝罪しなければならない。その上で韓国の理論によれば、加害者は被害者の言うことを永遠に聞かなければならない。