【総論】強欲NHK待つ「ハードランディング」の未来

NHKを待つのはハード・ランディング・シナリオではないか――。そう思わざるを得ないのが、NHKの乱脈経営ぶりと強欲ぶりです。NHKにとって受信料は何があっても絶対に守りたい利権なのだと思われる反面、受信料を確保するためになりふり構わず動き続けることは、却ってNHK自身に破壊的な反動をもたらします。本稿では「総論」として、NHK問題について改めてまとめておきたいと思います。

放送法改正

NHK割増受信料法案が成立!

総務省が今年2月4日に国会に提出した『電波法及び放送法の一部を改正する法律案』が、先日、参議院本会議で賛成多数で可決成立しました。

要綱、概要などについては総務省の『国会提出法案』のページにある『第208回国会(常会)提出法案』の表から確認することができますが、ここでは『電波法及び放送法の一部を改正する法律案の概要』と題したPDFファイルの概要を紹介しておきましょう。

電波法及び放送法の一部を改正する法律案の概要【※PDFファイル】

―――2022/02/04付 総務省HPより

このうちNHK改革を巡る記述は、箇条書きの5番目にあります。

5.NHKの受信料の適正かつ公平な負担を図るための制度の整備(放送法の一部改正)
  1. NHKは、毎事業年度の損益計算において生じた収支差額が零を上回るときは、当該上回る額の一定額を還元目的積立金として積み立てるとともに、積み立てた額は、次期の中期経営計画の期間における受信料の額の引下げの原資に充てなければならないこととする。
  2. 受信契約の条項の記載事項を法定化するとともに、受信契約の締結義務の履行を遅滞した者に対してNHKが徴収することができる当該義務の履行を遅滞した期間の割増金に関する事項を規定することとする。

…。

大変理解に苦しむ内容

なお、今回の放送法改「正」、ポイントはこの2つだけではありません。「中間持株会社への出資」を可能にするなど、わりと「とんでもない内容」も含まれているのですが、このあたりについては、本稿ではとりあえず割愛します(本当は論じたい点がいくつかありますので、可能なら別稿で再度取り上げます)。

それはともかくとして、この総務省の資料に書かれた内容についてどう見るかがポイントですが、このうち(1)については、大変に理解に苦しむ変更です。

そもそも論として、NHKが毎事業年度において、巨額の剰余金を生じていることは、当ウェブサイトでもかねてより議論してきたとおりですが、このような規定を設ければ、NHKが連結子会社、関連会社、協力会社などを駆使し、巧妙な剰余金隠しを行うであろうことは目に見えています。

また、(2)についてはもっと面妖です。受信契約の締結義務が遅れることで割増金を徴収する、というのですから、「契約自由の原則」に照らしても、非常に奇妙です。

ただ、この手の法改「正」をすることで、一般国民のNHKに対する理解が深まるとも思えません。

むしろ「まとめサイト」などの取り上げ方を見ていると、「割増金」の部分が強調され、NHKに対する一般人の反発が強まっているフシもあるからです。

なお、今回の放送法改「正」により、NHKが一般人からなかば強制的に受信料を取り立てている根拠条文である第64条第1項は、次のように変更されます。

改正後放送法第64条第1項

協会の放送を受信することのできる受信設備(次に掲げるものを除く。以下この項及び第三項第二号において「特定受信設備」という。)を設置した者は、同項の認可を受けた受信契約(協会の放送の受信についての契約をいう。以下この条及び第七十条第四項において同じ。)の条項(以下この項において「認可契約条項」という。)で定めるところにより、協会と受信契約を締結しなければならない。ただし、特定受信設備を住居(住居とみなされる場所として認可契約条項で定める場所を含む。)に設置した場合において当該住居に設置された他の特定受信設備について当該住居及び生計を共にする他の者がこの項本文の規定により受信契約を締結しているとき、その他この項本文の規定による受信契約の締結をする必要がない場合として認可契約条項で定める場合は、この限りでない。

①放送の受信を目的としない受信設備

②ラジオ放送(音声その他の音響を送る放送であつて、テレビジョン放送及び多重放送に該当しないものをいう。第百二十六条第一項において同じ。)又は多重放送に限り受信することのできる受信設備

第1号にある「放送の受信を目的としない受信設備」、第2号にある「ラジオ放送…」などの規定は、現在の放送法第64条但書に出て来る表現とまったく同じです。

改めてまとめるNHK問題

NHK自身が考える「公共放送」とは?

さて、当ウェブサイトではこれまでずいぶんとNHK問題について取り上げてきたつもりですが、最近だとNHKに関わる不祥事が出てきた際に、NHK問題のほんの一部をその都度議論する、という形式にならざるを得ません。

ただ、今月はおそらくNHKの財務諸表、連結財務諸表などの公表も予定されていることから、NHKの財務面での問題点については別途詳しく議論するとして、本稿ではあらためて「総論」的に、これまでに当ウェブサイトで指摘してきた「NHK問題」について、概要をざっと振り返っておきたいと思います。

最初に指摘しておきたいのが、NHKの「公共性」という論点です。

ご存じのとおり、NHKは「公共放送である」と自称している組織ですが、ここでいう「公共放送」、冷静に考えると意味がよくわかりません。そこで、NHKウェブサイトの『よくある質問集』というページに掲載されている、NHK自身が定義する「公共放送」について取り上げてみたいと思います。

公共放送とは何か

電波は国民の共有財産であるということからすると、広い意味では民放も公共性があるということになりますが、一般的には営利を目的として行う放送を民間放送、国家の強い管理下で行う放送を国営放送ということができます。これらに対して、公共放送とは営利を目的とせず、国家の統制からも自立して、公共の福祉のために行う放送といえるでしょう。

NHKは、政府から独立して 受信料によって運営され、公共の福祉と文化の向上に寄与することを目的に設立された公共放送事業体であり、今後とも公共放送としての責任と自覚を持って、その役割を果たしていきます。

―――NHKウェブサイト『よくある質問集』より

どうやら公共放送には3つの要件があるようだが…

ここに記載されている内容、「定義」というにしてはかなり雑ですが、敢えて整理・要約すると、NHK自身が考える「公共放送」とは次の3要件を満たす放送のことだといえます。

公共放送の3要件
  1. 営利を目的としていないこと
  2. 国家の統制から自立していること
  3. 公共の福祉のために行うこと

(【出所】NHKウェブサイト記載を参考に著者作成)

「公共放送」を「上記3要件を満たす放送」だと定義して良いのかどうかについては疑問点もあります。ただ、その点を脇に置いたとしても、現在のNHKに「公共放送」を騙る資格がないことは、この3要件から明らかです。

NHKに「営利性がない」?まさか!

最初の証拠が、「営利を目的としていない」、という要件です。

一般に会社法などにいう「営利性」とは、「対外的活動を通じて利益を得て、その利益を社員(=出資者)に分配すること」を指すとされますが(鈴木竹雄『新版会社法』等参照)、その事業により超過利潤を得ていれば、一般社会通念上は「営利性」要件を満たすと考えて良いでしょう。

その際の「超過利潤」についてはさまざまな測定尺度がありますが、わかりやすいのは1人あたりの人件費ないし給与でしょう。

昨年の『NHK「1人あたり人件費1573万円」の衝撃的事実』などを含め、当ウェブサイトではほぼ毎年取り上げているとおり、NHKの人件費(給与、賞与だけでなく、法定福利費、福利厚生費、退職給付費用などを含めた広義の人件費)は1人あたり1600万円近くに達しています。

また、人件費を狭い意味での「給与」(賞与を含む)に限定しても、1人あたり1000万円を優に超過しており、これは国税庁が調査する「民間平均給与」と比べて2.4倍にも達し、日本を代表する優良企業であるはずの任天堂株式会社やトヨタ自動車株式会社を上回っています(図表)。

図表 平均給与比較(2020年12月ないし2021年3月基準)
区分平均給与出所
任天堂株式会社9,710,405円有報ベース
トヨタ自動車株式会社8,583,267円有報ベース
NHK10,543,290円NHK決算書
民間平均給与4,331,278円国税庁

(【出所】著者作成)

民間企業を遥かに上回る人件費を計上している組織が「営利企業ではない」と言い張るには少々無理があります(いや、もちろん、霞が関や地方公共団体などが設立している無数の天下り法人を見ていると、一般社会通念に照らしてかなり巨額の人件費を計上しているケースはほかにもありますが…)。

国家の統制に依存しまくっているNHK

すなわち、視聴者から半強制的に徴収した受信料を、ここまで巨額の人件費に浪費している組織が「公共性」を騙るというのも奇妙な話です。非営利法人だと言い張るのであれば、その待遇も国家公務員に準じるのが筋ではないかと思いますが、この点については後述します。

それに、NHKの放送内容を見ると、それこそ「お笑い」あり、「ドラマ」あり、「アニメ」あり、「クイズ番組」あり、さらには年1回、ポップミュージックの歌手やその年の「話題の人」をかき集めて来て、豪奢なセットで歌わせる歌番組まで作っている始末。

さらに、NHKウェブサイト『番組の二次利用』のページによれば、NHKが受信料を使って過去に制作した番組コンテンツについては、NHKの関連団体を通じてDVD、ビデオ、出版物、キャラクターグッズ、イベント、上映、モバイル展開など、商業目的で二次利用されています。

当然、これらの使用料収入はNHK自身に還流し、あるいは関連会社等を通じてNHK職員などを肥え太らせるために浪費されているのではないかとの疑いを抱くのが当然でしょう。

次に、「国家の統制からの自立」云々に関しては、それが公共放送の要件にどうかかわるのかが疑問であるという点もさることながら、現在のNHKに関していえば、明らかにその要件を満たしていません。NHKの存続は、放送法第64条第1項本文の規定に依存しているからです。

もしもNHK自身が「我々は国家の統制から自立している!」と偉そうに言い張るのならば、まずは放送法第64条第1項の規定の廃止を主張してみてください。NHKが真に「公共放送」として一般国民に支持されているなら、そんな規定など存在しなくても、きっと人々はNHKと受信契約を結んでくれます。

逆に、NHKを管轄している総務省が、半強制的にNHKとの契約を義務付ける放送法第64条第1項の規定を(微修正を伴いながらも)後生大事に守り続けているという事実は、放送法第64条第1項の規定が存在しなければ、NHKと契約する人などいなくなってしまうことを誰よりも理解している証拠でしょう。

不誠実極まりないNHKという組織

最後の「公共の福祉」云々の要件については、当ウェブサイトでがなりたてる必要はさほどないのかもしれません。なぜなら、NHKの番組の不祥事、NHK(やNHK関連団体など)の職員の犯罪、不祥事などについては、頻繁に発生しているからです。

たとえば、『NEWSポストセブン』や『スポニチアネックス』などのサイトが6月2日付で報じた次の記事によれば、4月23日に発生した北海道知床半島の観光船の遭難事故に関する報道を巡って、NHKが兵庫県警記者クラブから「追放」されるという「事件」が発生したそうです。

NHKが知床観光船事故遺族取材で記者クラブ除名 事態を悪化させた不誠実な対応

―――2022/06/02 11:15付 Yahoo!ニュースより【※NEWSポストセブン配信】

NHK 兵庫県警記者クラブ除名処分に「ご遺族の気持ち配慮し対応」 知床遊覧船事故の同県遺族個別取材で

―――2022/06/02 18:40付 Yahoo!ニュースより【※スポニチAnnex配信】

これらの記事によると、事故の遺族から記者クラブ宛てに提供された資料を、5月5日にNHKの地方局に所属する記者が「独自」と銘打って「抜け駆け」的に放送し、これに記者クラブ側が激怒した、などとしています。

正直、この令和の時代に「記者クラブ」などという不透明な談合組織が残っていること自体、NHKのみならず、新聞、民放テレビなどを含めたオールドメディア業界すべてが古い利権にドップリ浸かっている証拠そのもの、という気がしますが、この点は脇に置きましょう。

とくに『NEWSポストセブン』の記事を読んでいると、この事件はNHKの記者の「うっかりミス」というよりはむしろ、記者クラブの信頼関係を損ねるかなり悪質な行動であったのではないかと疑わざるを得ません(※NEWSポストセブンの記事が正しければ、ですが)。

というのも、「遺族から報道各社に提供されたはずの資料をNHKが独占的に放送した」とする問題は、すでに5月12日の前田晃伸会長の会見でも議題に挙がっており、NHKはその際も「取材・制作の詳しい家庭についてはお答えを控える」などと不誠実な対応に終始していたからです。

この問題、たんなる「記者クラブ内の抜け駆け報道」に留まらず、メディア各社の「タガが外れ」、結果的にメディア関係者が被害者や遺族に対する節度を欠いた取材で被害を拡大してしまう、というのが『NEWSポストセブン』の指摘です。

(※ただし、報道被害の問題はNHK問題とはべつの、オールドメディア業界そのものの問題でもありますので、この点については機を見て別稿でも随時議論していくつもりです。)

情報開示が不十分:外国人職員は存在するのか?

いずれにせよ、NHKが「公共性」を持っている組織なのかといえば、大変に怪しいと結論付けざるを得ません。が、それだけではありません。NHKを巡っては、情報開示の不十分さ、経営内容の不透明さについても言及しておく必要はあります。

たとえば、NHKには外国人(とくに中国、韓国、北朝鮮国籍)の職員が在籍しているのではないかとする疑念を抱く人もいますが、これについてNHKはその公表を拒否しています。2014年3月12日付の『NHK情報公開・個人情報保護審議委員会の諮問第389号に対する意見』という資料がそれです。

これによると、次のように書かれています。

視聴者より、NHK職員の中で韓国・中国・北朝鮮国籍の職員の数及び同各国籍から日本国籍に変えた職員の数がわかる資料(割合も含めて)について開示の求めがあった。NHKは、文書が存在しないため開示することができないとした。これに対して、視聴者から再検討の求めがあった」。

これに対するNHKの見解は「開示の求めの文書は存在せず開示することができない」、とするもので、これに「審議委員会」も「開示の求めの文書は存在しないと認められ、不開示としたNHKの取り扱いは妥当である」と述べてお終い、という代物です。

「なければ作れ」、という話なのですが…。

また、NHK自身が作る番組が「公共性」要件を満たしているかどうかをどうやって担保しているのかについても不明です。

いちおう、「BPO」なる組織が、NHKや民放各社が放送した番組などを「事後的に」チェックすることはあるのですが、放送する前の時点でこれから放送しようとする内容が「公共放送基準(?)」のようなものに照らして問題がないかどうかを検証している、という話は聞きません。

いずれにせよ、少なくともNHK自身が主張する「公共放送の要件」に照らすならば、むしろ現在のNHK自身が公共放送に値する組織ではない、という点については間違いないでしょう。

ハード・ランディングへの道

公共メディア≠NHK

このあたり、著者自身は「公共放送」、あるいは「公共的なメディア」というものが存在しても良いと考えています。いや、「公共メディア自体が『存在すべきではない』という積極的な理由はない」、と申し上げた方が正確でしょうか。

あるいは、この複雑化する現代社会において、少なくとも政府が提出した法案をわかりやすく解説するのに加え、国会審議を中継するなど、情報を統合して私たちに伝達してくれる媒体というものに対しては、むしろ社会的な需要は増えているはずです。

しかし、「公共メディア」をどう定義するかという問題もさることながら、現在のNHKがこの「公共メディア」を担っているのかといえば、そこは大いに疑問です。というのも、NHKにその能力はないからです。

というよりも、これはNHKの問題というよりも、むしろ新聞、テレビを含めたオールドメディア業界全体の問題でもあります。オールドメディアが大した専門性もないくせにさまざまな社会問題を「上から目線」で取り上げ、社会をかえって混乱させるというのは、私たち一般人はコロナ禍でもずいぶんと体験したところでもあります。

営利企業?非営利組織?

この点、先ほどNHKは「非営利法人なのか営利法人なのかわからない」、という論点でも取り上げましたが、NHK自身は営利法人なみの高給を維持するなどの乱脈経営を続けている一方、法律の規定で存続が保証されているという意味では、非営利法人と似たような特権を得ています。

これに対し昨日の『朝日新聞社の売上総利益はこの10年間で半分に減った』でも論じたとおり、コンテンツが人々から支持されなくなったり、新聞・テレビよりも便利な情報入手手段(とくにインターネットなど)が普及したりすれば、新聞社、民放テレビ局であっても「倒産」は現実の脅威です。

新聞社や民間放送局であれば、曲がりなりにも民間企業だからです。

現在、新聞業界が猛烈に斜陽化し、かつての大新聞でさえ倒産の危機に瀕しているという事例もあるなかで、ひとりNHKだけが何の経営努力もなしに潤い、職員1人あたり少なく見積もって1600万円近くの人件費を計上する、ということが許されるというのは、まさに「理不尽」そのものです。

このように考えていくと、NHK問題を「ソフト・ランディング」させるためには、次の2つのいずれかが必要ではないでしょうか。

  • 営利法人であるならば、職員に高額の給与を支払おうが、つまらない番組を作ろうが、勝手にすれば良い。ただし、その場合は放送法第64条第1項の規定を廃止し、改めて民営化してスクランブル放送方式を義務付けるべきである。
  • 現行の放送法第64条第1項の規定を残すなら、公共性をNHK自身が積極的に証明させなければならない。たとえば職員に対する異常に高額な人件費水準は許されないし、職員の採用基準、番組の制作基準についても明確化し、すべて公表しなければならない。番組も公共性が高いものに限定すべきである。

また、上記のいずれであっても、過去から積み上げた巨額の資産(とくに時価評価したら数千億円から数兆円に達すると思われる不動産物件や、年金資産を含めて時価評価すると1.1兆円を超える金融資産など)については、NHKの経営には不要です。

これらの資産については一度国庫に強制返納させたうえで、あらためてNHKを民営化・スクランブル放送化するか、NHKの経営の適正化措置を実施するかのどちらかの措置が必要ではないかと思う次第です。

受信料利権の行き着く先

ただし、NHKや総務省の「強欲ぶり」からすれば、彼らが得てきた「受信料利権」については、彼らは絶対に手放さないでしょう。

すると、どうなるか。

とくに社会のインターネット化が進めば、NHKを含めたテレビ自体を見ない人も間違いなく増えて行くでしょうし、NHKがインターネット視聴にも受信料を徴収するなどの選択肢を取るならば、NHKに対する不満が国民の間で高圧ガスのように溜まり続けることになります。

それらのガスは、そこここで、さまざまな形で噴出するはずです。

すでに3年前、2019年7月の参院選で、「NHKから国民を守る党」が比例で2%を超える票を得て、1議席を獲得したという事例があります。この党、党首の立花孝志氏自身がNHK改革に本腰を入れていないという点では非常に残念な存在ではありますが、それでも「N国党」が議席を得たという事実は重要です。

実際、有権者はN国党には失望しているかもしれませんが、類似する主張を掲げる政党が雨後の筍のように出現していますし、『「青山繁晴参議院議員が自民党の党員獲得1位」の意義』などでも取り上げたとおり、もしかしたら自民党内にもNHK改革を唱える候補者が出現するかもしれません。

このように考えたら、普段から当ウェブサイトで申し上げている、「利権の3つの特徴」というものを、NHKや総務省の皆さんには噛み締めてほしいと思います。

利権の3つの特徴
  • ①利権は得てして理不尽なものである。
  • ②利権はいったん確立すると、外からそれを壊すのが難しいという特徴を持つ。
  • ③ただし、利権を持っている者の怠惰や強欲で利権が自壊することもある。

(【出所】著者作成)

最後はハード・ランディングへ?

最初の特徴。「NHKの番組を1秒たりとも見ていない人であっても、NHKと受信契約を結び、NHKに受信料を支払わなければならない」。これは、理不尽そのものです。

次の特徴。「放送法第64条第1項などの規定を廃止すると言い出す与党議員はいない」。個人的には与党議員の皆さんにこそ奮起してほしいと思う反面、やはりNHK改革について自民党内のコンセンサスを形成することは大変に困難なのでしょう。受信料利権についても、壊すのは本当に難しいのです。

ただし、3番目の特徴についても、間違いなくNHKに当てはまります。NHKという組織自体、「受信料利権を何としても守る」ことだけが自己目的化しつつあり、あまり聡明な組織とは言い難いからです(※同じことは霞が関の一部官庁にもそのまま当てはまりますが)。

いずれにせよ、NHK問題を巡っては、受信料利権に拘泥するあまり、NHK自身が「ソフト・ランディング」の機会をみすみす逃しているように思えてなりません。

こうしたなかで見えて来るのは、「今後の選挙で『NHK廃局』を唱える候補者が圧勝する」、「テレビを廃棄する人が続出し、民放ともどもNHKが業界自体を自滅に追いやる」、といったハード・ランディング・シナリオではないかと思うのですが、いかがでしょうか、前田さん?

本文は以上です。

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読者コメント一覧

  1. 無明 より:

    この問題、総論的には、NHKの番組を好き好んで視聴する人たちをどうするか、という問題でもあります。NHKの番組が好きだという人たちも賛成してくれるような、具体の改革案や解体案を作り上げていかないと、現状がずっと続いていくことになるのだろうと思います。

    1. sqsq より:

      ニュースと天気予報以外はスクランブルをかければいいと思う。

      見る人は視聴料払う、払わない人は見れない。

    2. ポトス より:

      NHK好きで受信料を払っている人は、不払い者の罰則強化を望むでしょうし、スクランブル化すれば料金増になるだろうから、なかなか有効な手段は難しいと思います。
      やはり、反対者の声を大きくしていくしかないように思います。
      NHK党が期待外れでしたね。

    3. 今回は匿名 より:

      スミマセン、NHKが好きという訳ではないのですが、ニュース、大河ドラマ、ブラタモリ、英雄たちの決断等の歴史探訪番組、教育テレビの子供向け番組は観ています。NHKにしか作れない番組もあるにはあると思ってはいます。だからと言ってNHKの傲慢を看過して良いとは思っていません。
      サブスクと考えても高額に過ぎなのに観ない自由も契約の自由も無いというのは憲法に違反してない?…という疑問を持っています。
      権利と義務は承知しているつもりですが受信料って「納税」ではないですよね?なのに義務化はどうなの?…と思います。

      私のように部分的にでも観る人間は仕方ない?…かもしれませんが、NHKは全く観ない人に対してもスマホやカーナビにまで観ることが可能だからと受信料の対象に範囲を広げる…って何の組織なの?…と思います。
      スマホ(PC)やカーナビでは観れないようにすればいいんじゃね?…と思います。

      「人権とは何ぞや?」「自由とは何ぞや?」と思います。

      スクランブル化もペイバイビュー化もするつもりはなく罰則規定まで設けて強制加入を目指すその姿は「独裁政権」の姿そのもののようにも感じます。

      AmazonやNetflixのような配信業者が日本にも誕生するか、既存の配信業者がNHKに代わる番組を制作してくれるようになってくれればドンキの「AndroidTV」が私のような人間にも選択できるようになるのですが…民放はTVerで観られるし
      でも、そんな事態になったら、きっと総務省が動くのでしょうね!
      国民が望むのとは逆の方向に!!

      いっそ完全国営化にしてくれ!…と思います。国に集まる税金の中で賄ってくれ!…と思います。

      JR四国や郵便局の例を見てると「民営化」が必ずしも正しいとも思えませんし!

  2. カズ より:

    *利益を追求しない
    公共組織を謳うのなら、報酬は国家公務員待遇に準ずるべき。
    剰余金を発生させないための”高額給与”は本末転倒なのかと。

    *国家の統制から自立
    公共組織を謳うのなら、節度と情報開示が肝要。自由には責任が伴うのかと。

    *公共の福祉のために行うこと
    公共組織を謳うのなら、採用にあたり”公務員の国籍条項”は援用しないと。

    公共組織なんだったら、「まっとうな営業努力とまっとうな組織運営に関するまっとうな情報開示」を果たしてほしいものです。

    NHKは、”NHK関係者”のための組織ではないのですから・・。

  3. クロワッサン より:

    NHKを見てると、旧ソ連国に対する地域覇権を維持・確保しようとして今の身の程が見えなくなっているロシアを連想します。

    NHKがハードランディングな未来を迎えたとしても、ロシアにとってのベラルーシの様な存在はきっと居るんでしょうね。

    なお、NHK職員の国籍問題については、居る事自体を問題視するよりは職員として守るべきガイドラインを守ってるかどうかで問題視するしかなさそうな気はしますが、NHKの開かれ具合を判断する上で、障害者雇用数を公開するのと同じ意味合いで在日外国人の(国籍別)雇用率を公開するのは必要なのではないかと考えます。

  4. 犬HK より:

    NHK受信料の政府の見解
    「NHK が公共の福祉のために、豊かで、かつ良い放送番組を放送するという公共放送の社会的使命を果たすために必要な財源を広く国民・視聴者全体に公平に負担してもらうための特殊な負担金である」と位置付けています。
    つまり、税金や視聴の対価ではない特別なモノ、というわけです。

    この仰々しいご高説、覚えがあるな…と思いましたが、放送法第15条そのものです。

    放送法第15条:協会は、公共の福祉のために、あまねく日本全国において受信できるように豊かで、かつ、良い放送番組による国内基幹放送を行うとともに、放送及びその受信の進歩発達に必要な業務を行い、あわせて国際放送及び協会国際衛星放送を行うことを目的とする。

    スクランブル化を望む声が大きいですが、この放送法第15条の根本的な考え方が変わらない限り、第64条第1項の廃止など不可能でしょうね。
    なにしろ政府は、スクランブル化は受信料に視聴の対価という性質を強め、NHK の公共放送としての基本的性格に影響を及ぼす、という見解なのですから。

    改革を進めるよう勧告し、受信料を下げさせているかのように見せかけているだけで、NHKを引き続き擁護していく立場はまったく変わっていないんですよ、残念ながら。

    1. 元ジェネラリスト より:

      同じく。
      ハードランディングの未来が見えないんです。残念ながら。

      1. HY より:

         現在の政府がNHKを擁護しているのは国会議員の多くが国会中継やニュースでの露出を有権者へのアピール手段と考えているからです。NHKに文句を言う議員は映されなくなり「居ない」事にされてしまいます。しかしネットを通して有権者にアピールしている議員はNHKに忖度せずに物を言っています。
         若者のテレビ離れは進んでおり、このままNHKが現状に固執して自己改革を怠れば、将来「NHKでの露出に依存しない」議員が多数派になってNHKの抜本的改革が進む可能性は高いです。その時NHKは誰にも擁護して貰えないでしょう。

  5. sqsq より:

    「公共性」というのは民放ラジオも言っている。
    災害時の放送のことらしい。

    1. バシラス・アンシラシスは土壌常在菌 より:

      ということは
      放送局は災害時だけ存在すれば良いのだから
      平時から金を取るのは禁止すべき
      むしろ、平時は放送する必要すらないのだから、平時は停波でお願いします

    2. 匿名 より:

      通常時スクランブルをかけて緊急時に解除すれば良いんです
      そもそも現在でも災害時はB-CASカード不要の運用にすると主張しているので
      スクランブルを解除する運用が出来ない理由と言い張ることは不可能です

  6. 猫足らず より:

    NHKでググっていたらこんな記事を見つけました。
    https://www.nishinippon.co.jp/item/n/765763/
    https://www.nishinippon.co.jp/item/n/789115/
    この記事の「放送法の改正案」の結果が今回の改革?なんですかね。

    「BS受動受信」問題、不勉強にして知りませんでした。
    「検討」のまま14年、今は15年でしょうか。検討結果は出たんでしょうか?

    1. わんわん より:

      基本的には
      “イラネッチケー – Wikipedia” https://ja.m.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A4%E3%83%A9%E3%83%8D%E3%83%83%E3%83%81%E3%82%B1%E3%83%BC
      “イラネッチケー裁判はなぜ高裁でNHKが逆転勝利? (2021年5月21日) – エキサイトニュース” https://www.excite.co.jp/news/article/Radiolife_47477/
      ドンキが発売「NHK受信料不要テレビ」 大手メーカーが参入しにくい事情(マネーポストWEB)
      https://approach.yahoo.co.jp/r/QUyHCH?src=https://news.yahoo.co.jp/articles/718f88be283edf6db2985e2831777fd2dddb5149&preview=auto
      と言うような流れです

      1. 墺を見倣え より:

        携帯電話やスマホからは、「NHKを受信する機能」が駆逐されつつあり、好ましい。

        残る大物はカーナビでしょうか。

        ドンキには頑張って「NHK受信料不要カーナビ」も出して欲しいものです。

  7. Naga より:

    こういう報道やこのブログのような内容を見聞きして思うのは、何故民主主義では議員を選ぶのかということです。
    理由はいろいろあるでしょうが、重要な理由の一つは国民の側に立って官僚(普通の公務員)に利権を作らせないことや利権があっても解体することがあると思います。
    これは与野党を問わないですが、現実は官僚と一緒になって利権を設けたり、養護したり、他党を攻撃するために都合に合わせて「利権」を批判したり利用したりばかりだと思います。
    これをやめさせるためには、ブログ主さんの言われるようにマシな人を選んだり、選挙区の議員に地道に意見を伝えたりするしかないでしょう。

    競馬等のギャンブルは、競馬(農水省)、競艇(国交通省)、競輪・オート(経産省)、スポーツ振興くじ(文部省)、宝くじ(総務省)、パチンコ等(警察関係) となっており自分たちで動かせるお金を確保したいためであることがはっきりわかると思います。
    競馬の儲けにかかる税金のことで、負けが必要経費かどうかで問題になることがありますが、収益を適正な必要経費を除いて全額国庫に入れれば税金を掛ける必要などないと思います。
    また民間のギャンブルが禁止されているのは、国民がギャンブル依存にならいようにということが建前になっていますが、公営や準公営ギャンブルを守るためというのが本音でしょう。
    最近のIRで日本人だけ入場料が設定されたり入場回数に制限があるのも国民のためではないと思います。
    もし国民のためなら民家近くにまで入り込んでいる準公営ギャンブルを即禁止にするはずです。

    更に穿った見方かも知れませんが、年金や失業保険も厚生労働省が自分たちで動かせるお金が欲しかったというのが元々の動機だと思います。

    1. Naga より:

      追伸:
      IRはそれ自体外国の出資企業との利権に気を付ける必要があるので、そういう意味で100%肯定するものではありません。

  8. 匿名 より:

    最近のNHKの、
    特に報道関係が、変だよねと、
    危ぶんでいる一人です。

    しかしながら、NHKには、
    教育関係のチャンネル(=Eテレ)がある故に、
    どうしたもんかな? と、考えがまとまりません。

    例えば、
      ろうあ者の番組  みんなの健康
        健康福祉に関わる番組
      NHK学園(高卒認定)  語学番組
        教育にかかわる番組
    などです。

    ブログ主 様、或いは、コメント主 様方 の
    NHKに対する、主張は、
    Eテレ を含んだ上でのものなのでしょうか?
       公共 対 非公共
       営利 対 非営利
    に対する、

    NHK改革 私案=試案 などがあれば、
     考えをお聞かせ願えれば、と思いまして
     コメントさせて頂きました。

    私見では
    Eテレ などの番組は、
     税金による国営化
    それ以外のNHKは、
     民営化
    かなと、思いますが、どう思われますか?

    因みに
     NHK放送技術研究所:特殊独立行政法人化
     NHK交響楽団:アイディアなし

    1. 攻撃型原潜#$%&〇X より:

      確かにNHKには民法には作れない良質の番組もあります。それは視聴率や広告料に左右されず予算も確保されている体制の元で作られるのが理由でしょう。
      従って巨大化しすぎたNHKを数社に解体して、Eテレは国営化、バラエティー番組などは民営化の案に賛成です。公共放送を謳うなら、本当に公共性の高いものに限り国営化して、残りはすべて民営化するか、事業を売り払って視聴料を今の数分の一に圧縮するのが妥当だと思います。

  9. 匿名2 より:

    この時世に受信料が月額2000円! あ・ほ・か?

    ・有料にしたいのならば、見たい人にだけ放送すればいい。
    ・国営放送の位置づけにしたいのなら、税金で運営すればいい。

    なぜこんな簡単なことができないのか。

    NHKのでたらめな理論がまかり通るような日本は、法治国家とは思えない。

  10. りょうちん より:

    しかし、謎なのは、なんで知床の事案で、兵庫県警記者クラブが激おこなの?
    全国で一斉に除名ならわかるんですがw。

  11. 攻撃型原潜#$%&〇X より:

    本論とはあまり関係ないですが、リンク先の
    >朝日新聞を筆頭に記者クラブの加盟社はNHKの単独行動に激怒。「クラブの品位が傷つけられた」と非難の声が上がった。

    との記事に噴き出しました。記者クラブの品位=利権 のことでしょ。遺族を守るとかきれいごとを口にしながら、実は「俺たちの利権を侵害しやがって」との醜い内輪揉めですね。

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