今回のウクライナ戦争を巡り、「西側諸国はウソツキだ」、「真相を知るにはロシアのメディアを読むべきだ」、といった「お叱り」を戴くことがないわけではありません。ただ、ロシアのメディアを熟読していくと、むしろ「おもにウソをついているのはロシアの方ではないか」と思わざるを得ないこともまた間違いありません。その意味で、ロシアのメディアを読ませることは、ロシアの稚拙なウソを露呈させるという意味で、むしろ逆効果でしょう。
ウソツキはウソが上手とは限らない
あくまでも一般論ですが、常習的にウソをついている者は、自分が思っているほどウソを上手についているわけではありません。
隣の家に強盗に押し入ろうとして包丁を研いだり、電話線を切断したりしているウソツキ一家が、わざわざご近所さんに、「我が家はべつに隣の家に強盗に入る準備をしているわけじゃないんだ」、などと大声で宣言している姿を想像すれば、なんとなく理解できるかもしれません。
2月24日に始まった、ロシアによる違法なウクライナ侵略から、すでに3ヵ月以上が経過しました。
この戦争自体、ロシアという国、やっていることが100年前からまったく変わっていないという事実を全世界に知らしめたものでもあるとともに、日本国内においても、「ケンポーキュージョー教」のインチキぶりを、これ以上ないというほどにわかりやすく教えてくれた事件でもあったのではないかと思います。
ただ、ロシアによる「特殊軍事作戦」の開始直後、わが国でも、ごく一部には「ロシアが侵略したのではない、アメリカの『でーぷ・すてーと』(DS)の陰謀でロシアが侵略させられたのだ」、「ロシアによる残虐行為などの報道は、西側のプロパガンダだ」、などといった言説を主張する人がいました。
また、3月末にロシア軍がキーウ近郊からの撤収を余儀なくされた直後、キーウ近郊の街・ブチャで数多くの遺体が発見された「ブチャ事件」を巡っても、「残虐行為に関与したのはロシア軍ではなくウクライナのアゾフ大隊の関係者だ」、「残虐行為はウクライナの自作自演だ」、などとする主張もあったようです。
ありがたいことに、これらの主張をする方は、「ロシアのメディアには真実が書かれている」、「西側諸国のメディアだけでなく、ちゃんとロシアのメディアの報道も読んだ方が良いですよ」、などとアドバイスをしてくださいます。
じつは、「西側諸国のメディアだけでなく、ロシアのメディアの報道にも目を通しておいた方が良い」とする指摘、ある意味では非常に正しいものです。なぜなら、ロシアのメディアの記述を読んでいると、ときとして「真相」が、おぼろげながら見えて来ることもあるからです。
ロシアのメディアの「自己投影」
ただし、そこでいう「真相」というのは、陰謀論者の皆さまが期待するような「ロシアに正義がある」とするものではなく、たいていの場合は、「ロシアがウソをついている可能性が極めて濃厚である」、というものです。
こうした姿は、「自己投影」、すなわち「自分自身がやっていることを、相手もやっているに違いない」と決めつけるかのような発表などを読むことで、よりいっそう浮き彫りになるでしょう。ロシアのメディア『タス通信』(英語版)に掲載された次の記事などは、その典型例かもしれません。
US mass media demonizing Russian Armed Forces — Russian Embassy
―――2022/05/29 10:41付 タス通信英語版より
タス通信によると、駐米ロシア大使館は「米国のメディアはロシアがウクライナで大量虐殺に関わっていると非難している」としたうえで、「これらはロシアを悪者にするためのキャンペーンの一種である」とする声明を出したのだそうです。
そのうえで同大使館は、「真相はまったくの逆だ」、「ロシア軍の支配下にあるウクライナの地域では、人道的支援が積み上げられており、ロシア側は人道回廊についても保証している」、などと述べた、としています。
こうした記事が出て来ること自体、ロシアがメディアを使ってキャンペーンを垂れ流している国であるという証拠でしょう。自分たちがやっているのだから、西側諸国もまったく同じことをやっているに違いない、というロシア側の思考の一端が見えてきます。
通常、このような主張をするときには、捏造であっても良いから、少なくともちゃんとその証拠を示すものです。しかし、ロシア側の主張には、本当に驚くほど、証拠がほとんどないのです。
ロシアがウソをついている可能性の方が何万倍も高い
これとは逆に、このインターネット時代、ロシア軍がウクライナのそこここで行っている残虐行為、窃盗行為などの証拠については、一般人から日々大量に投稿されていますし、さまざまな報道もなされています。
真相は不明ですが、「ロシア軍がマリウポリで略奪したPS4で持ち主にパスワードを尋ねた事例があった」、とするツイートがありました。
残念ながら、このツイート自体については、当ウェブサイトとしてそれが事実かどうかをちゃんと確認できていません。
ただ、この手のツイートはそれこそ山ほどある投稿事例のひとつに過ぎません。そういえば、産経ニュースには昨日、こんな報道も出ていました。
露、金属2700トン略奪か マリウポリから海路輸送
―――2022/5/29 00:37付 産経ニュースより
まさに、「野盗国家」そのものですね。
もちろん、この産経の記事を含め、西側諸国、あるいはわが国のメディアが報じた内容自体が「完全な虚偽である」という可能性も、理屈の上ではゼロではありません(本件に関してはその可能性は限りなく低いと思いますが)。
しかし、それよりも「ロシアのメディア、ロシアの政府がウソをついている」という可能性の方が、その何万倍も高いのです。
その一方で、ロシアのメディアは、わざわざ意味深なことを報じることもあります。
同じくタス通信によると、ロシアのセルゲイ・ラブロフ外相が日曜日、フランスのTF1テレビのインタビューに対し、「ウラジミル・プーチン大統領の健康状態が悪化している」とする噂を巡っては「事実ではない」と否定したそうです。
Lavrov rejects rumors of Putin’s worsening health
―――2022/05/30 08:20付 タス通信英語版より
ラブロフ氏は「プーチン大統領は毎日のように、公に場に姿を見せている」、「テレビ画面で彼を見たり、彼のスピーチを読んだり聞いたりすることができる」などと主張。そのうえで、「まともな人なら、プーチン氏に病気や不調の兆候を疑うことはできないと思う」、などと述べたのだとか。
テレビ映像など、録画でいくらでも流せるじゃないか、といったツッコミが飛んできそうな気もしますが、そうしたツッコミどころも、彼らとしてはさしたる問題ではないのかもしれません。
戦況は一進一退
その一方で、ウクライナ戦争を巡る戦況は一進一退が続いています。
ロシアがキーウ近郊の制圧などに失敗知ったことは間違いないにせよ、最近だと南部・マリウポリをロシアが事実上陥落させるなど、ロシアが攻勢を強めていますし、また、ロシアが制圧したドンバスなどの東部諸州でも、ロシアがその実効支配を強めていることは間違いありません。
ただし、ロイターが今朝配信した次の記事によると、ウクライナ側は戦争の流れを変えるため、より射程が長い武器の提供を西側諸国に要請しているそうであり、また、米国側もそのような武器の提供に向けて前向きな姿勢を示しているのだとか。
Ukrainian defenders hold out in Donbas city under heavy fire
―――2022/05/30 9:24 GMT+9付 ロイターより
ロイターはまた、ロシア側は現在、ルハンスク州のセベロドネツクの攻略に手間取り、その他の戦線ではほとんど前進できていない、とも指摘しています。
いずれにせよ、戦闘の長期化に西側諸国の多くの市民が心を痛めていることは間違いなく、個人的にこの戦争が一刻も早く、ウソツキのドロボウ国家であるロシアの敗北で幕を引いてほしいものだと願う次第です。
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(誰のことだかわかりませんが・・・)
韓国政府と日韓メディアが垂れ流すプロパガンダを、日々丹念に検証して嘘を暴く記事が人気を博すこのブログに対して、「ロシアの報道を鵜呑みにするな」という人がいたら、「まず、記事を読め」と言いたくなります。w
その人は記事もコメントも読んでないんでしょう。
金融系の記事も人気を博していると思います。反応は薄いかもしれませんが、ちゃんと読んで勉強させていただいております。
ロシアは、最後に勝てば言ったことは真実になる、を地で行ってると思います。力の信奉者と言われる所以でしょう。「勝てば官軍」ですよ。
自分の言ったことがウソになるときは負けたときなので、負けたときは全て終わりだからウソだろうがなんだろうがどうでもいいんだと思います。
そういう人達との付き合い方は、言葉ではなく行動を見る、だと思います。
>常習的にウソをついている者は、
>自分が思っているほどウソを
>上手についているわけではありません。
あ! まさしく!
ロシア製兵器のポンコツぶりも
さることながら、むしろ
卑怯な謀略には長けている
と思ってたロシアの
プロパガンダの思いっきり
下手くそぶりにも驚いています。
大統領は謀略機関KGB上がりだし
独裁国家国内では通じてしまって
いたのでその下手くそぶりに
ロシアは気づいて居なかったのでは
ぐらいしか理由が思い当たりません。
発狂プーチンだけでなく
日本国民の感情逆撫で発言連発の
駐日ロシア大使閣下のご発言なども
日本でロシアの味方を減らしています。
鳩ポッポさんたちのような
日本で相手にされない
少数そんなこんなの人たちだけの
受けをとっても世論で追い込まれて
しまっているのにと感じます。
駐日ロシア大使館が
下手な嘘と日本への誹謗でロシアの国益を
日々損ねているのはとても不思議です。
ガルージン駐日ロシア大使閣下については
プーチンの侵略前は知日派人格者との
評価があったと聞きました。
しかし今ではその評価も霧散し
職を辞してプーチン非難をするまでは
単なる虐殺者の手先としての評価でしか
ないものです。
鳩ぽっぽさんと同列の
世界で日本で鼻つまみ者としての
位置づけでしかないのにとは
なんとも情けないことだと同情します。