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日本人がブチャ事件を信じるのは「平和ボケ」のせい?

日本では南京大虐殺に疑問を持つ人が多いわりに、ブチャ事件については盲目的に「ロシアの戦争犯罪」だと信じてしまう人が多い――。こんな趣旨の論考が、ウェブ評論サイト『ダイヤモンドオンライン』に掲載されていました。タイトルには「日本人の平和ボケ」といった文言も踊ります。ただ、ブチャ事件を、明らかに非科学的・非合理な与太話と同列に並べてしまったとして、それで多くの読者を納得させることはできるものでしょうか。

「ブチャ事件」で国際的に高まるロシアへの批判

ロシア軍によるウクライナ侵攻は、現在進行形で、さまざまな悲劇をもたらしていると報じられています。

そのなかでもとりわけ衝撃的だったのは、キーウ近郊のブチャなどの街で、大変多くの民間人犠牲者が出てきたことでしょう。

これについては『「ブチャ事件」で明らかに変わった「国際社会の潮目」』などでも紹介したとおり、ロシア側は関与を強く否定していますが、現実に衝撃的な映像、写真などが現地から多数報告されているなか、国際社会の非難の目がロシアに向いていることもまた間違いありません。

ロシアは「ブチャの惨劇」について、しらを切りとおすつもりなのかもしれません。『タス通信「ブチャの事件はウクライナ側の虚偽の宣伝」』ではメドベージェフ前大統領のSNS投稿を紹介しましたが、これに加えてクレムリンの報道官も、「ブチャ事件」については「西側がロシアの説明を聞かない点に問題がある」などと述べているのだそうです。ただ、「カチンの森事件」当時と異なり、現代はインターネットが存在します。真相をいつまでも隠蔽できるというものでもないでしょう。ウクライナ戦争はすでに40日が経過2月24日に始まった...
「ブチャ事件」で明らかに変わった「国際社会の潮目」 - 新宿会計士の政治経済評論

その一方、それと同時に、今回の惨劇を巡っては、「果たして本当にロシア軍が関与したのか」、「ウクライナの自作自演ではないか」、といった疑問を持つ人も、少数ながら存在していることは間違いありません。

世の中の圧倒的に多くの人々がロシア軍の関与を信じて疑わないなか、こうした情報が「はたして真実なのか」と疑問を持つこと自体は、非常に重要な着眼点でもありますし、「情報を鵜呑みには信じない」という態度は、むしろときとして重要だとは考えています。

DOL「平和ボケ日本人が見落としている戦争プロパガンダの現実」

こうしたなかで、ウェブ評論サイト『ダイヤモンドオンライン』に昨日、こんな論考が掲載されていました。

ロシアの“虐殺”に見える戦争プロパガンダ、平和ボケ日本人が見落としている現実

―――2022.4.7 4:30付 ダイヤモンドオンラインより

これは、「ノンフィクションライター」の方が執筆した論考ですが、こんな問題意識で始まります。

今回の虐殺について、ロシアは『西側諸国のフェイク』だと反論をしているが、そのような主張をされる方が日本国内でも、もうちょっといるかなと思っていた」。

つまり、報じられる「ロシアの残虐行為」に関し、日本国内ではそれに疑問を持たない人が「意外と多い」というのが、この方の問題意識、というわけでしょう。

念のために申し上げておくと、この著者の方は、「ブチャの虐殺がフェイクだなどと主張をしたいわけではない」、と述べています。

ただ、それと同時にこの方は、次のようにも述べるのです。

『マスゴミ』という言葉があるように、メディアの大本営発表を懐疑的に見ている方が世の中にはたくさんいらっしゃる。ワクチンにまつわる国際的陰謀論を信じている方もいる。欧州が中心となっている世界的な脱炭素キャンペーンを「インチキ」だと攻撃している人も少なくない」。

そのように疑り深い人たちが多い日本において、今回の惨劇の話題に関しても、「本当のところはどうなのかな」くらいの反応があるかと思った、というのがこの方の問題意識の出発点、というわけです。

着眼点は良いが、南京大屠殺と同列に置くのはどうか

着眼点としては、大変に良いと思います。

当ウェブサイトにもごく少数ですが、「コロナワクチンの接種はやめた方が良い」、「日韓関係は悪化していない」、「ロシアはウクライナに侵攻していない」などと主張する方がいらっしゃいますし、当ウェブサイトとしては、そのような意見を持つ方にも、コメント欄を開放しているつもりです。

ただ、このダイヤモンドオンラインの記事を読んでいて、強烈に感じた疑問もあります。

それは、今回のブチャの事件を、1937年に発生したとされる南京大屠殺(記事では「南京大虐殺」)と絡めて議論している点です。

著者の方は、「欧米諸国の『日本による虐殺』認定をここまで全否定して、懐疑的に見ている人たちが山ほどいるというのに、今回のウクライナ戦争に関しては、人が変わったように、欧米諸国の主張や報道を鵜呑みにしている」という点に違和感を覚えたのだとか。

このあたり、「懐疑論」には「懐疑論」なりの合理的な論拠がある、という点を、この著者の方があまりにも軽視し過ぎているように思えてなりません。

南京大屠殺の場合も、個人的には「何らかの戦闘」があったことは間違いないと思う一方、中国が主張する「30万人の犠牲者」という話が、当時の人口が約20万人に過ぎなかった南京市で、どうやったら発生するのかという自然な疑問点については否定できないと思います。

しかも、東京裁判でも「南京大屠殺」は取り上げられていませんし、少なくとも1937年時点で中国側が「30万人の犠牲」で日本を非難した事実はなかったことなども踏まえるならば、さすがに「30万人虐殺」は事実に反するのではないか、と思えてなりません。

「アポロは月面着陸していない」「日本が低空威嚇飛行をした」

その一方、ブチャ事件に関しては、SNSがここまで発展しているなかで発生したものであり、ロシア軍撤退とウクライナによる奪還以降、ほぼリアルタイムで、報道機関だけでなく、現地の人々からも投稿が相次いだことで発覚したものです。

なにより、ロシアの残虐行為には、旧ソ連時代におけるシベリア抑留しかり、カチンの森事件しかり、「実績」があまりにも多すぎます。

不特定多数の一般市民が直接に報告した無数の投稿、『ブチャ事件と火器管制レーダー照射事件の共通点とは?』などでも取り上げた、ロシアの日ごろの「行い」などの事実と照らし合わせるならば、さすがに「ウクライナの自作自演」説を信じる人が極端に少なくても不思議ではありません。

「ブチャの惨劇はウクライナの自作自演だ」。こんな主張を真に受ける人を見ていて、ふと思い出すのが、今から3年前の火器管制レーダー照射事件です。この事件、韓国側はあくまでも「低空威嚇飛行事件だ」と言い張っているのですが、韓国政府、韓国メディアの主張を丹念に追いかけていくと、むしろ韓国側に矛盾がボロボロと出て来る、という代物です。ロシアの主張も、当時の韓国の主張とパターンがまるで同じなのです。「日本が低空威嚇飛行を仕掛けてきた!」「2018年12月20日、東海(日本名『日本海』)の海上で、北朝鮮漁船に対す...
ブチャ事件と火器管制レーダー照射事件の共通点とは? - 新宿会計士の政治経済評論

これを「日本人の平和ボケ」のひとことで片づけてしまうのは、議論としてはかなり粗いように思えてなりません。

もちろん、当ウェブサイトとしても、ブチャ事件が「ウクライナ側による自作自演だ」とする見解を「絶対に間違っている」と決めつけるつもりはありませんし、「アゾフ大隊が関与した」などとする説についても、頭ごなしに否定するつもりはありません。

ただ、確率論で見て、それらの説が正しい確率は、「アポロが月面に着陸していなかった」、あるいは「韓国海軍は日本の哨戒機に火器管制レーダーを当てていなかった」、などとする言説が正しい確率と、あまり変わらないのではないでしょうか。

いずれにせよ、客観的・科学的に見て、明らかにおかしい事例を今回のブチャの事例を同列に置く論考だと、さすがに多くの読者に違和感を抱かせるのが関の山ではないかと思う次第です。

新宿会計士:

View Comments (48)

  •  世の中いろんな人がいらっしゃいますね。
    アポロが月に行ってない?ではなぜリトロリフレクターが
    置いてあるのでしょうか。不思議です。

    • アポロの月着陸は無かったという人を、説得しようと思ったこともないもので考えたこともありませんでしたが、リトロリフレクターの話はいいですね。
      地球と月の距離をどうやって測っているのか。

      読み物で十分でしょう。
      https://gendai.ismedia.jp/articles/-/75075?page=2

      日本のJAXAの「かぐや」も月に行ってないと思っているのか聞いてみたいもんです。
      「アポロは月面着陸していない」という人が、「中国の嫦娥は月面着陸した」と言ってたりして。

    • 有人飛行はしてないが無人飛行ならしているという説もあるのでは?

  •  「どれが事実か」などというのは、究極的には事実を自分の目で見てこないと100.000....%の信用などしようがありません。それですら、先回りしたエージェント()が演劇をして騙そうとしているかもしれません。お気持ち70%ほどから事実であろうと仮定して議論する、90%までは見極める、などとさじ加減を決めるよりありません。
     裁判や刑事事件の証拠だって言ってみれば「見做し」になるのですし。犯行に使われた包丁が、容疑者が事件発生直前に購入していて製造通し番号が一致してDNAが付着してマジックで名前が書いてあっても。ひょっとしたら容疑者は無実で、たまたま脱走したオウムが飛来して持ち出して風が吹いて桶屋が儲かって被害者に運悪く突き刺さったかもしれません。目撃者がいる?目の錯覚だったのでしょう、あるいはイリュージョン。でもそんなの誰も考慮しないでしょう。
     そして、それで「他に犯人が居るのだ」と主張するのであれば、70%の説に対しては71%の反論を、90%に対しては91%の物証が必要です。
     ご紹介の記事のように「いつも30%を疑っておいて今回は20%で信じるのか」あるいは「残9%を疑うべきだ」という主張はわかりますが。だからといって新説仮説の説得力が上回らないことにはどうしようも。情報発信者の信頼性と情報自体の確度は、傾向としては読めても必ず一致するものではありませんし。朝日新聞だって日付くらいは確かで……え、日付すら間違えた?

     さて、アメリカが、第二次世界大戦かよというレンドリース法(武器等貸与)を通したと伝え聞きました。陰謀論者からすれば「それ見たことか、ロシアはこのためにハメられたんだ!」というところでしょうか。
     しかしどう解釈したところで、重要なのは…というか言える事実は「ロシアが評判を落として世論的には劣勢に向かった」という点です。ロシアの蛮行だとしたらとんだやらかしだし、西側の工作だというのならそれが成功したというだけのこと。

  • 日本がしたのは 戦 争 で
    ロシアかウクライナに行っているのは 絶 滅
    なんですがね
    南京で大量虐殺があったとすれば、それ理由に軍で昇進や降格があったはずなんだけど

    • 当時の日本も中国へは戦争をしていた認識がなく、自衛権の発動によって軍事行動を行っていたつもりでした。満洲事変、北支事変、支那事変のように、「戦争」「戦役」ではなく「事変」と呼んだのはそのためです。その辺は今のロシアと似たようなものです。
      その軍事行動が際限なく拡大し、事実上の戦争となっていた事から、戦後は「日中戦争」と呼ぶようになりました。

  • 会計士さんが指摘されているダイアモンドーのライターのような方々の記事のおかしな点は、大衆がマスコミの記事で踊らされているのではなく、海外含めた個人のSNSを含めたWEB情報にマスコミが踊らされている内容を、ライターがマスコミから逆輸入して今回のような記事を書いていることですかね。

    2次ではなく3次情報を、1次情報の持ち主に遅れて偏向報道している?なにか奇妙な感じを受けます。

  • 敦化事件
    葛根廟事件

    哈達河開拓団
    佐渡開拓団跡事件
    小八浪・中川村開拓団
    小古洞・蓼科開拓団
    五家站・来民開拓団
    大青森郷開拓団
    瑞穂村開拓団
    亜州白山郷開拓団
    哈達湾開拓団
    鳳凰開拓団
    東京荏原開拓団
    仁義仏立講開拓団

    確たる実績のソビエトロシア軍

  • 私は疑っているほうですが・・・

    誰の発言か、というのも信用されるかどうかの基準になると思います。
    ちなみに、世界幸福度ランキングではウクライナは123位@2020年国連
    https://graphics.reuters.com/LIFE-CAREER-LJA/0100B0CQ0S3/index.html
    世界の腐敗度指数では142位
    http://top10.sakura.ne.jp/TI-Corruption.html

    そして、ゼ大統領は、そんな汚職等になれたウクライナにおいて、
    ロシアの進行前の支持率実に驚きの17%!
    (演説では自分で20%無い、と言っていたと思いますが)

    侵攻時に逃げなかったので90%を超えていますが、それまでの政治姿勢に対する支持率は地の底です。
    ついでに、米国に数十億ドルの資産を持っているという話なのにその資産を国のために使うというニュースは聞こえてきません。

    逃げなかったことについても、アメリカの特殊部隊をあらかじめ用意してあったからというのもあるかと思いますが、さすがに準備が良すぎるように思います。
    https://www.excite.co.jp/news/article/TokyoSports_4056419/

    眉に唾を付ける理由には十分ではないでしょうか。

    逆に、ロシア兵ならやりそう、というのも十分うなづける点ではあります。

  • 感想です。

    件の論考が主張する「プロパガンダに踊らされるな」は、もっともなことです。

    しかし、新宿会計士さまがご指摘されるように、ウクライナの事件を1937年に発生したとされる南京大屠殺(記事では「南京大虐殺」)と絡めて議論するのには、私も大変違和感を覚えます。

    窪田氏は触れていませんが、中国が宣伝する「南京大虐殺」には凄惨な通州事件が伏線としてあります。このようなプロパガンダが明らかな南京大虐殺と、全世界の目、宇宙からの目が見ている今日のウクライナ民間人殺害を同列に語ることはできないと思います。あえて語るならば、個々の問題点を明らかにして分析・考察すべきなのではないでしょうか。

  • ウクライナ軍が捕虜のロシア兵を処刑か、テレグラムに映像掲載
    https://twitter.com/cnn_co_jp/status/1512237181502468124?s=20&t=M58BdMdmwnaZgi2z6miEsQ

    ウクライナ軍による戦争犯罪の可能性を示唆する、西側CNNの報道です。
    この報道の信憑性についても、情報の受け手が判断するしかありません。
    どちらが一方的に正しいなどということはなく、入ってくる情報の信憑性を丹念に見極めるに尽きると思います。
    要は、「自分の頭で」考える。

    話はズレますけど、他人に自分の結論を伝えて理解して欲しいと思うなら、その根拠(そう思った理由)も添えなければ、伝えられた人はそれが正しいか、「自分の頭で」判断できませんよね。

    論理の世界の入り口というか、基本の「き」というか。

  • ロシアの蛮行を疑わないのなら、南京事件も疑うな、とでも言いたいのではないでしょうか。

    この方は。

    • そうだと思います。
      彼等は自分の正しさを、なんにでもこじつけて証明しようとしてるのだと思います。

      • ご返信、ありがとうございます。

        下でどんぐり太郎さんが窪田氏の最近の投稿をチェックされていますがが、やはり主題は南京だったようですね。

        わざわざ現在進行形の戦争犯罪を無理くりくっつけて「南京事件はあったんだ、それを疑う奴はなんでウクライナ報道を疑わない?疑うべきだろ?疑えないのなら南京も疑うな!疑う奴はウクライナ報道も疑え!でなければ『平和ボケ』だ!」と何とも支離滅裂な主張をしたいようです。

        私達の父祖への冒涜のみならず、今ウクライナで犠牲となっている人々を出汁にして己の主張を通そうとする卑怯卑劣なやり方に、憤りすら感じます。

  • 日本社会はとかく判官贔屓で、弱い方の肩を心情的に持ちたがるもので、国際世論もまた同じ傾向のようです。こうした心理につけ込むのが戦争広告代理店でありボスニア・ヘルツェゴビナ内戦やイラクのクェート侵攻で暗躍して絶大な効果を上げたことで知られています。
    今日では誰もがSNSで見たことを発信できるので、それは真実だと思い込みがちですがSNS発信者こそどちらかの立場の主観が強い筈であり言うことが100%真実かは、どうなんでしょう。

    日本のマスコミは2次、3次情報や出所の分からないSNS画像を元にニュースを作ることが多いようで、更にマスコミ業界の同調圧力が強いのか、皆同じ論調なのが不思議です。引用された『ダイヤモンドオンライン』の中に「マスコミの大本営発表」とあるのが納得できます。

    日本のマスコミは南京事件まで遡らなくても、ごく最近では慰安婦問題のように韓国の情報戦に完全に飲み込まれて日本人に贖罪をさせようとした実績があり、情報戦という存在すら知らないような報道人やテレビのMCの方を見ていると、ほとんど信用できません。
    しかしこのような新聞・テレビを見て判官贔屓からくる正義感によってロシア=巨悪、ウクライナは1mmも悪くない善でありウクライナが発信元の情報は真実だ、と思い込む人が一定数出てくるのは当然です。ウクライナは旧ソ連譲りのプロパガンダに長けている上に世界中のハッカーがウクライナを支援しているためロシアは情報戦で負けており、むしろプーチン大統領が事実を把握することが難しくなっているのではないかという気さえします。

    よって何を信じたらよいのか分からない、とは言えどうやらプーチンは悪党だというのは本当らしいです。

    • 貴信で言われるように、当方もプーチンは、大悪党、ロシアマフィアの総元締めってとこかなあとおもってます。ただ、ロシアとか、中国とかっていう広大で多民族が入り組んでいるとこは、善人には、統括、統治できないんだろうなあって思うんですけど。その点、日本は、全く正反対っていうとこでしょうか。

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