尹錫悦(いん・しゃくえつ)次期韓国大統領が相星孝一・駐韓日本大使と面会し、「韓日関係は未来志向で必ず改善し、過去のように良い関係が早急に修復されなければならないと考えている」、「双方とも多くの努力が必要だ」、などと述べたのだそうです。端的に申し上げてお話になりません。日本が努力しなければならない点は何もないからです。
パロディ論説を是非ともお読みください
文在寅(ぶん・ざいいん)政権下で「悪化」した日韓関係を「改善」することはできるのか――。
当ウェブサイトではこれについて、俗世間で出て来るであろう「日韓関係『改善』論」を、詭弁をたっぷり織り込んだうえでインチキ架空論説に仕立て上げ、3月11日付で公表しました(『架空の「日韓諸懸案の一括妥結」論で振り返る日韓関係』参照)。
「尹錫悦政権の発足を契機に、双方が知恵を出し合い、少しずつ譲歩するなどして、日韓諸懸案に関する一括的妥結に対し期待したい。ロシアのウクライナ侵攻やそれにともなう世界経済の混乱が生じている局面で、日韓が争っている余裕はない。日韓指導者の英断を求めたい」。当ウェブサイトでは、こんな趣旨の「オリジナル架空論説」を考案してみました。オリジナル架空論説「尹錫悦政権の一括的妥結に期待する」9日に行われた韓国大統領選で、現在の文在寅(ムン・ジェイン)大統領の後継者として、尹錫悦(ユン・ソギョル)氏が選ばれ... 架空の「日韓諸懸案の一括妥結」論で振り返る日韓関係 - 新宿会計士の政治経済評論 |
具体的には、こんな趣旨の主張です。
- 9日に行われた韓国の大統領選では、保守派の尹錫悦(ユン・ソギョル)氏が左派の李在明(イ・ジェミョン)候補を僅差で破って勝利した
- 朴槿恵(パク・クネ)政権以来5年ぶりの保守政権の誕生であり、徴用工、慰安婦、日本の輸出規制などで悪化した日韓関係にも改善に向けて期待がかかる
- 幸い、尹錫悦氏は日韓諸懸案の「一括的な妥結」を提唱している。日韓は諸懸案を解決するために、お互いに知恵を出し合い、少しずつ譲歩し合って落としどころを探るなど、ともに努力しなければならない
…。
自分でいうのも変ですが、パロディとしてはなかなかの「ケッサク」だと思いますので、まだお読みになられてない方は、「解説」とともに、このインチキ論説には是非ともいちどお目通しいただけると幸いです。
「一括的妥結」ってなんですか?
ところで、当ウェブサイトでこのインチキ論説を掲載したところ、世の中には当ウェブサイトの論説をそのままコピペしたかのような論説・社説のたぐいがたくさん出てきています。『韓国人論者「韓日関係改善に向け日本も協力と譲歩を」』でも触れた、日経電子版に掲載された「韓日関係改善論」などもその典型例でしょう。
GSOMIAと輸出管理は対等な交換条件とは言えない韓国側のいう「韓日関係改善論」とは、たいていの場合、「諸懸案で日本が韓国に譲歩する」ことを前提としたものです。この点が変わらない限り、韓国で政権が交代したとしても、日韓諸懸案が国際法に照らして妥当なかたちで解決されるということは期待できません。そのことを痛感する記事が、昨日、日経電子版に掲載されていました。2022/03/28 15:30追記本文中の誤植を修正しています。関係を「悪化」させたのは、韓国だ『「韓国が」日韓関係を悪化させた』を含め、当ウェブサイト... 韓国人論者「韓日関係改善に向け日本も協力と譲歩を」 - 新宿会計士の政治経済評論 |
正直、世の中にはこの手の「日韓関係改善論」が多くて少々辟易しているのも事実ですが、それと同時に「包括的解決」ないし「一括的妥結」と呼ばれるものがいったい何を指しているのか、なんだかいまひとつ見えてきません。
そもそも論ですが、日韓間の諸懸案は、自称元徴用工問題にせよ、自称元慰安婦問題にせよ、いずれも韓国が一方的に作り出した問題です。なかでも国際法(たとえば1965年の日韓請求権協定など)に違反する法的状態を作り出しているという問題については、国際法の原則上、看過できません。
あるいは、韓国が好きな「被害者/加害者」という表現を使わせていただくなら、韓国こそ国際法を侵害している「加害者」であり、日本はその「被害者」です。被害者である日本が加害者である韓国に譲歩できる余地などありません。
この点については何度強調しても「し過ぎ」ではありませんし、また、日本政府(とくに岸田文雄首相、林芳正外相あたり)が原理原則をはき違え、譲歩してはならないことを韓国に譲歩してしまう、というリスクについては、我々日本国民として、いま一度しっかり認識しておいた方が良いかもしれません。
とくに、岸田首相が尹錫悦氏との電話会談で、関係改善にむけて「ともに努力していきたい」と述べた(『日韓関係改善のために共に協力していきたい=岸田首相』等参照)ことを思い出しておくと、やはり不安ではあります。
本日は、久しぶりに驚いてしまいました。岸田首相が韓国次期大統領と電話会談し、「日韓関係改善のために共に協力をしていきたい」と発言したのです。所信表明演説などでの「韓国にはわが国の一貫した立場に基づき、引き続き適切な対応を強く求めていく」という発言は、いったいどこに行ってしまったのでしょうか?岸田首相、尹錫悦氏と電話会談岸田文雄首相は、韓国の次期大統領に選出された尹錫悦(いん・しゃくえつ)氏と、本日、電話会談を行ったようです。尹次期韓国大統領との電話会談等についての会見―――2022/03/11付 首相官邸... 日韓関係改善のために共に協力していきたい=岸田首相 - 新宿会計士の政治経済評論 |
ただ、万が一、日本政府が韓国に譲歩するにしても、日本が譲歩することのデメリットと日韓関係を「改善」するメリットを比べたうえで、国民世論の反発を抑えたうえで大局的に決断を下すことが必要です。はたして、岸田首相にその政治的決断力があるのでしょうか?
聯合ニュース「次期大統領が関係改善に意欲」
こうしたなか、韓国メディア『聯合ニュース』(日本語版)の報道によると、韓国の尹錫悦(いん・しゃくえつ)次期大統領は28日午前、相星孝一・駐韓日本大使と面会し、「関係改善」へと意欲を表明したのだそうです。
韓国次期大統領 駐韓日本大使と面会=関係改善へ意欲表明
―――2022.03.28 12:03付 聯合ニュース日本語版より
同記事によると、尹錫悦氏は両国関係について、次のように述べたそうです。
「両国の政治指導者、官僚、国民が強い力で両国関係を未来志向で推し進めれば対話を通じて解決できると思う」。
そのうえで尹錫悦氏は、日韓関係を巡っては「未来志向で必ず改善し、過去のように良い関係が早急に修復されなければならないと考えている」としたうえで、「双方とも多くの努力が必要だ」と表明した、などとしています。
この記事を読んでも、尹錫悦氏のいう「包括的解決」とやらが具体的に何を示しているのかよくわかりませんが、ただ、ここで重要なポイントがあるとしたら、尹錫悦氏が過去の日韓関係を「良い関係だった」としたうえで、関係を「改善」するためには「双方の努力が必要だ」と述べた、ということでしょう。
端的にいえば、お話になりません。
竹島不法占拠問題、自称元徴用工問題、自称元慰安婦問題などについて、日本にいったい何の努力ができるというのでしょうか?
竹島不法占拠問題については、「韓国がサンフランシスコ講和条約発効直前のドサクサに紛れ、国際法の根拠もないのに日本領を不法占拠した」という事実を認め、竹島に対する領有権の主張を取り下げる、ということを意味しているのでしょうか?
自称元徴用工問題については、韓国大法院(※最高裁に相当)が下した日韓請求権協定違反の判決に国際法上の効力があると認め、日本企業に対して自称元徴用工への賠償を行うように促せば良い、ということでしょうか?
あるいは、岸田首相が自称元徴用工に「ごめんね」と謝罪し、賠償を行うための基金でも作って、そこに日本政府の予算から10億円のカネを一括拠出しろ、とでもおっしゃるのでしょうか?どうせ政権が代わったら基金も解散させられて、合意などなかったことにされる未来は目に見えているのですが…。
韓国がシャトル外交の前にやること
聯合ニュースによると、尹錫悦氏は「意見の違いがあり、一見解決が難しそうな問題もあるが、真摯に意思疎通し対話すればさほど困難な問題ではないと思う」と述べたのだそうですが、いくら日本側が真摯に意思疎通したところで、韓国が約束を破るから意味がありません。
いずれにせよ、もしも韓国側が日本との関係を修復したいと思うのならば、「真摯な意思疎通」、「シャトル外交の復活」以前に韓国がやらねばならないのは、国際法、条約、国際約束といったものを破らずにきちんと尊重することです。
そして、尹錫悦氏の現時点までの発言を読む限りにおいては、どうも韓国がいう「韓日関係改善」はずいぶんと実現可能性が低いものであるように思えてなりません。
いちおう、尹錫悦氏の発言を巡っては、今後も(あまり期待しないで)注目したいと思う次第です。
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宏池会ときっしーに必要とされている"努力"とは「ついつい韓国に甘い顔をしてこれまでのように助けてしまわないよう我慢する」こと、であり「かのくにが自立した国家足り得るべく突き放す」こと、でありましょうや
日韓関係が、本格的に改善に向かうためには、韓国民が「国家間の条約・合意は、一方の国の主観的な正義に優先する」という国際常識に気付くことが肝要です。そのためには韓国マスコミが(せめて保守系だけでも)反日一辺倒の報道は何も生まないという反省に基づき、客観的な事実を国民に伝えるべきです。米国は、米韓首脳会談では韓国に日韓和解を促しますが、日米首脳会談では日本にはそれを要求しません。韓国側に問題があるとみているからでしょう。しかしながら韓国マスコミにそのような変化はうかがえず、従って日韓関係改善にはまだまだ時間がかかると思われます。そのような情勢判断もなく、選挙期間中に「米国の次は日本を訪問する」と発言した尹錫悦は、公約を破らない限り、米国以外のどこの国にも行けなくなっています。尹錫悦の外交ブレーンである陳昌洙・世宗研究所日本センター長も焦っているのではないでしょうか。シンシアリーさんのブログの孫引きで恐縮ですが、聯合ニュースによる武田日韓議員連盟幹事長のインタビューが傑作です。「日本は尹錫悦次期大統領ににどのような期待をしているのか」(回答)国家間の約束を確実に履行してほしい、2015年の日韓合意が履行されていない、これは自民党だけでなく日本全体が望んでいる「安保や経済などの分野での両国協力を先に構築する、いわゆるツートラックはどうか」(回答)国家間の約束が守られないなら、その後の話をしたところで、また守られない可能性があるではないか。正論ですよね。尹錫悦次期大統領およびそのブレーン、韓国マスコミの皆さんは、安倍元首相や”極右”だけではない日本の多数派意見、そして国際世論にしっかり耳を傾けてください。旧朝鮮半島出身労働者問題と慰安婦問題については、韓国側が解決策を用意しない限り、1ミリも進みませんよ。「双方ともに努力」とか一見聞こえの良さげな呼びかけをいくらしても、日本も米国も国際世論も、誰も反応しませんよ。
受験機関風に「韓国およびそのシンパの傾向と対策(仮)」と題して、講演か出版をされてはいかがでしょうか。過去問は多くても、バリエーションはそんなに多くない気がしますが。
双方の努力が必要なのは一般論だが
これまで、韓国側の努力が皆無だから
まず、韓国側の努力が必須
何かの記事で、「課題をひとつひとつ解決しようと思うと、(尹次期大統領の任期の)5年は短いから、一括包括的な解決が必要だ」みたいなのを読んだ覚えがあるのです♪
「いつくもの政権を経ても変わらない信頼関係を構築する」って視点がないのかなぁって思ったのです♪
約束を守るってそのための一歩だと思うんだけど、政権変わったら全てがチャラになると思ってるから、かる~い言葉が出てくるんでしょうね♪
日本人の発想なら「できる事から始めて一つか二つでも解決しよう」だから
相容れないね
一括解決とは、多数いちゃもんつけて、その後こっちは韓国が妥協するから、これは日本が折れてねというようなことを言い出すこと。
日本人の交渉スタイルをよく観察してるんだと思う。
極左政権継続が残念ながら幻で終わってしまったため、悪夢の「関係正常化」に向かうのか、と危惧していましたが、日韓議員連盟ですらその対応であるなら、望ましい方向での関係正常化継続となりそうで良かったです。
>具体的に何か分からない「包括的解決」
これって、つまり「俺以外の誰かが何とかしろよ!」でしかないのでは……
と思う今日この頃です。
日韓関係改善の為には「韓国が非を認めるか」「日本が韓国を甘やかすか」の二択しかない。
前者は韓国人にとって自殺行為、後者でもそれを主導した政治家は政治生命が
脅かされるハイリスク・ローリターンでしょう。
「こっちと違って日本人の場合は物理的にどうにかされる危険がないんだろ!
そっちがババ引けよ!」これが韓国側の本音だと推測しています。
韓国人に欠けてるものは多々ありますが、著しく欠けているもの それは公の心です。
韓国人には、自分が、我々は、我が民族はなど 自分というものはありますが、「おおやけ」という感覚は全く存在しません。
だから、新しく大統領になった伊氏も 自分がしていない約束を 何故自分が護らないとイケないのか?と 日本が何を問題にしているのか理解出来ないのです。
しかし、日本は その約束を大事にしているので 理解出来ないまでも その約束なるものをなんとかしたら こっちの言う事を聞いてくれよと考えてるのでしょう。
ただ、自分がしてない約束をマモるのであれば、その分日本もなにか譲歩するべきである。
これが、伊氏のいう 包括的解決の意味ではないかと 自分は考えます。
こんな考え方など、日本人には理解不能ですが 理解せずとも知る努力は必要かも知れません。
韓国大統領と日本首相の約束ではなく
韓国と日本国の国と国の間の約束なんだけどね
それを理解できないのは、日本だと認知症扱い
韓国の大統領が、その様な認識をしている可能性があるという話です。
日本人で、そんな認識をしている人もいないし 理解も出来ないでしょう。
しかし、理解出来ないからと 相手が自分と同じ認識をしていると考えるのは間違いだと思うわけです。
「双方ともに努力が必要」
このフレーズを見るたびに、何年か前にあった隣人とのトラブルを思い出します。
普段たいして付き合いもない隣人が突然訪ねてきて、苦情を言い立ててきた。
言い分を聞いてみても、事実認識そのものがおかしいし、そもそもそれがなぜ当方の責任になるのかもよく分からない。
そこのところはおかしい、勘違いだなどと相槌を打っていると、いつのまにやらはなしは最初に戻る。
これを4,5回繰り返して、ようやく分かりました。
「これは認知症だ!」
彼らの努力?
関西人の「行けたら行く」的に吐き出される軽い言葉。
罰則のない努力目標が守られることなんてありません。