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    Categories: 外交

「作戦第一段階は完了」と言い張るロシアの苦しい内情

ロシア軍自身がウクライナ戦争で苦戦しているという事実を認めたのでしょうか。ロシアのメディア『タス通信』によると、ロシア軍は「作戦の第一段階の主要な目標はおおむね完了した」、「ウクライナ軍は壊滅状態だ」などと述べたそうですが、その内容を子細に検討していくと、実際にはロシア軍が大変に苦戦しているという点を、彼ら自身が認めたようにも見えます。

「ロシアは作戦の第一段階を完了した」

ロシアの『タス通信』(英語版)ウェブサイトに金曜日、こんな記事が掲載されていました。

Operation in Ukraine proceeds as planned, first stage goals complete

―――2022/03/25付 タス通信英語版より

これによると、ロシア国防省は金曜日のブリーフィングで、「ウクライナでのロシアの軍事作戦は計画通りに展開されている」、「作戦の第一段階のすべての主要な目標はおおむね完了している」と述べたのだそうです。

具体的には「ウクライナ軍は深刻な損失を被った」として、次のように述べます。

  • ウクライナの航空・防空能力はほぼ完全に破壊された
  • ウクライナ海軍はすでに存在していない
  • ウクライナにはすでに予備役すら尽きてしまっている

…。

そのうえで、「ドンバスの領域はほとんど解放された」、ということだそうです。

「ロシア軍の武器性能は高い」「損害はウクライナの10分の1」

なんだか、これも「凄い言い分」だと思いますが、タス通信の記事の続きを読んでいきましょう。

タス通信によると、ロシア軍参謀本部長のセルゲイ・ルドスコイ准将は、ウクライナの軍事力が大幅に低下したことにより、今後の作戦は「ドンバス地域の解放」に集中できることになった、などとしており、作戦自体は「最高司令により設定された目標の完全な完了まで続く」、とも述べたのだそうです。

その一方、タス通信によると、ロシア軍はキーウ、ハルキウ、チェルニヒブ、スムイ、ニコライウなどの主要都市の包囲を続けており、これに加えてヘルソンやザポリージャについては完全に支配下に置いている、と評しているのだそうです。

そして、軍関係者によると、ロシアの武器は「高い精度、信頼性、迅速に使用できる能力」などを示している、などとしています。

ちなみにタス通信の報道によれば、ロシア軍の戦死者は1351人、負傷者は3825人であるのに対し、ウクライナ軍の側は「回復不能な損失」が14000人、「総損失数」はウクライナ軍全体の11.5%に相当する3万人、などとしています。

すなわち、ロシア側の発表する人的損害は、少なくとも戦死者についてはウクライナ側がロシア側の10倍に達しているということでしょう。

よく読むと…!?

こうしたタス通信の「大本営発表」(?)を読んでいると、ロシア軍は本音では「軍事侵攻から1ヵ月も経過しているにも関わらず当初の目的を達成していない」ので、「戦線を縮小し、ドンバス地域の制圧に目標を変更した」、という可能性もあるように思えます。

というよりも、ロシア軍自身が「ウクライナの主要都市を包囲している」という事実を認めたことは、当初の「ドンバス地域での限定的な特殊軍事作戦」というみずからの言い分がメチャクチャだったということを認めた、という意味でもあります。

しかも、キーウなどについては「包囲している」と述べる一方、ヘルソンなどについては「制圧した」と述べているということは、言い換えれば、キーウなどについては「制圧できていない」と認めたという意味でもありますし、物量で圧倒しているはずのロシア軍が大変苦戦しているということを、間接的に認めたという意味でもあります。

いずれにせよ、1ヵ月の戦争で、ロシア軍には少なくない戦費に加え、西側諸国から供与されたジャベリンなどの武器をウクライナ軍が使用するなどした結果、少なくない損害が発生していることは間違いなさそうです。

これに加え、外貨準備の凍結を筆頭に、西側諸国からの厳格な経済・金融制裁が科せられ、ロシア側としては戦争遂行能力が大きく低下し始めている可能性もあります。

このように考えていくならば、少し気が早いかもしれませんが、『国際社会はそろそろ「ロシア解体」を議論し始めるべき』でも議論したとおり、「ロシアの敗戦処理」に関する考察も、そろそろ開始しても良いのかもしれない、などと思う次第です。

そろそろ「戦後処理」を議論しても良い局面かもしれません。国際法を無視し、武力で外国を侵略するような無法国家を、国連常任理事国の地位に留めておいてよいはずはありませんし、そのような国が核、生物・化学兵器といった大量破壊兵器を所持しているという状態は解消しなければなりません。その方法論には依然課題は多いとはいえ、ここらで「ロシア連邦解体」についても考えておくことは有益でしょう。G20追放論ロシアのG20追放にバイデン氏が言及当ウェブサイトでは以前から、ロシアがG20から追放されるという可能性や、...
国際社会はそろそろ「ロシア解体」を議論し始めるべき - 新宿会計士の政治経済評論
新宿会計士:

View Comments (33)

  • ロシア大本営発表は、ガダルカナル転進を思い浮かべます。
    ロシア軍がウクライナから敗走するまで追い込んで駆逐して欲しいです。
    ロシア解体まで夢が膨らみます。

  • 今回の戦争でよくわかったことは:
    全体の戦況を正確に把握している人はいない。
    誰もが自分たちの目の前で起こっていることを真実とウソと誇張をまぜて伝えている。

    様々な情報から、どうも確からしいと思えるのは:
    ロシアは想定していたより苦戦している。(ウクライナは善戦している)

  • 自分は昔、兵站の意味を理解出来てなかった。
    勝てば強い、負ければ弱い。
    そんな単純な考えでした。

    しかし、「ギレンの野望」をやって兵站を少しは理解出来ました。
    アムロのガンダムもシャアのジオングも弾切れ燃料切れでタコ殴り出来ます。

    第二次世界大戦前の日本軍は世界がビビる位には最強でした。
    そんな最強の軍隊も孤島に補給なしで置き去りにされたら、為すすべもなく全滅します。

    ロシアの軍隊も、軍隊同士が 遮蔽物無しの戦場で正々堂々と戦ったら最強だったと思います。
    しかし、市街戦は形を変えた攻城戦なんで、籠城側の10倍の兵力が必要となります。
    しかも、籠城側は 世界中から無限の補給があり、ロシア軍は兵站が伸び切って切れかかってます。

    全ては結果論ですが、ロシアや中国の戦略は強大な軍隊で脅して言う事聞かせるが最上で実際に戦争をしたら負けてしまいます。
    しかし、この様な戦略は舐められたらおしまいで、舐められたら サッとたたいてサッとひく。
    が、今回戦略目標をギーヴ陥落にしたため、泥沼の攻城戦にさせられたのが敗因かも。
    プーチンがボケたのか?入ってくる情報に騙されたのか、簡単にキーヴが陥落すると思ってたのに落ちなくて、でも もう少し頑張ったら落ちるかもとズルズル泥沼にハマったように思います。

    もしキーヴ攻略を諦めて2日で撤兵したら、世界の経済制裁が続いてたかどうか、怪しいです。
    今は、ロシアの負けが見えてきてるので、世界はこの機会を使いロシアの脅威を排除しようとしています。
    経済制裁は、ロシアが崩壊するまでやめないでしょう。

    • >>世界中から無限の補給
      国境までは物質大量に来るかもしれないけど、それを戦場まで運ぶのは骨では?

    • >アムロのガンダムもシャアのジオングも

      「シャアのガンダム」(正確にはキャスバル)なんて作れて面白かった。
      トリアエーズ・61式戦車で凌いでる時期が連邦プレイでは苦痛だった…。

    • あと兵站を語りたいなら是非とも「太平洋の嵐」をw
      ただし、システムソフト・アルファてめーはダメだ!

  • 最近ロシアが日中戦争にはまり込んで抜けられない某帝国に見えてきました。
    池乃めだかばりに「今日はこれくらいにしといたるわ」と勝利を喧伝しつつぼろぼろになって撤退するのが、一番丸く収まる方法かなと思います。
    プーチンの退陣は避けられないでしょうが。
    問題は損切りできずに倍々プッシュした時。
    それからブチ切れて押してはいけないボタンを押してしまった時でしょうか。

    •   >池乃めだかばりに「今日はこれくらいにしといたるわ」と勝利を喧伝

       あるいは某半島の「精神的勝利宣言」にロシアも感化されたのでしょうか。

  • ロシア軍中枢がウクライナ戦場を把握できているとはとても思えません。彼ら側の発表は少しの事実と、知らないこと確認できていないことへの誇張で盛られているのでしょう。
    ロシアには戦闘能力とは火力そのものであるとの古典的な「思い込み」があり、事実実践もしていますが、戦争遂行能力に通信が占める割合は今や圧倒的と考えます。つまり効率の問題です。
    ・部隊が市民ラジオ級無線テクノロジーで作戦通話しているのが筒抜けになってる
    ・兵士がこっそり戦場へ持ち込んだ携帯電話がウクライナ通信網を使ってロシア(国番号+7)へ通話している内容がそっくり盗聴されていて、攻略の手掛かりを提供し続けている
    ・ウクライナ前線に出てきた高級将官次々と仕留められるのは所在がばれているから
    早い段階で StarLink を国内配備しインターネット通信を死守し続けるウクライナは、通信こそが戦闘継続能力であると分かっていたのでしょう。抗戦側が動画撮影能力付きスマートフォンを携行して最大活用しているのに、攻め込んでいるのロシアの戦い方はまるで古いです。

  • 失敗したときの収拾策ほど難しいものはないですよね。プーチンも、現状の戦局から、ウクライナ東部地区のロシア人保護→独立承認→実効支配→ロシア併合で、矛を収めるしかないとしぶしぶ納得したということでしょう。でもそれで収まるかな、ロシア内部での反発→政権崩壊に至る可能性も大きい。①東部地区の住民の反発はどのくらいなのか②キエフ周辺のウクライナ国民は支援に動くのか③そろそろ飽きてきた国際的関心がいつまで続くか、ですよね。希望的な観測は、プーチン政権崩壊→ロシア撤退(木村太郎も二匹目の泥鰌を狙っている)ですが、そうならずロシアの領土拡大で終わってしまうリスクもありますよね。この一手がうまくいけば、また「プーチンは天才」と評価されるんでしょうね。

  • 確か2014年に大半のウクライナ海軍艦船がロシアに接収されて居るので今更わざわざロシアが「存在しない」と言う時点で発表出来る戦果に餓えてるのではと勘繰りたくなりますね。

  • ここの掲示板の論調が変わりましたね。
    少し前までは
    「プーチンはボケてはいない、ちゃんと考えてやっている」
    「ロシア軍を侮ってはいけない、彼らはまだツメを隠している」
    みたいな論調を見かけたのですが。

  • 戦争のことって良くわかんないだけど・・・・

    ロシアがウクライナ侵略で苦戦してて、当初想定よりもおっきな損害が出てるんだってことだけど、その被害ってどの程度のものなのでしょうか?

    もうボロボロで、ロシアに逃げ帰ることもできない、なんとか逃げ帰ったとしても本国自体が経済制裁とかで国としてはやっていけない程になってるのでしょうか?

    それとも、数ある作戦行動のひとつが失敗したくらいで、痛手ではあるものの、今なら回復可能な程度のものなのでしょうか?

    >「ロシアの敗戦処理」に関する考察も
    ロシアが既にボロボロ、もしくはボロボロにする意図もできる見込みがあるなら、ロシアの解体とまではいかなくてもウクライナからの完全撤退、多額の賠償なんかを科して、将来的には国家解体まで持っていくって道筋もあるのかな?って思うのです♪

    ちょっと火傷した程度でしかなくて、ロシアを追い込む気がないとかそこまでできそうにないなら、ウクライナからの撤退はさせるにしても東側の独立を認めるかとか、なんかややこしいことになりそうな気がするのです♪

    ↑はロシアが負けの前提だけど、ウクライナ側の継戦能力ってどうなのかな?
    被害なんかは極めて軽微、士気も高く、物資はじゃんじゃん入ってくる。その上、万一ウクライナ自身が揺らいでもNATOとかが控えてるから問題なしって思ってて良いのかな??

    m(_ _)m 口出ししてみようとしたけど、素人すぎて何だかよくわからなくなっちゃったのです♪

    • 七味様の考えで概ねあってると思います。
      概ねと言ったのは、自分の考えが正しいとは限らないので 正しくは 自分の考えと七味様の考えは同じなので、自分は正しいと考えます。

      ややこしくてすみません。

    • ちょっと追記なのです♪

      ロシアに大きな被害が出てる、ウクライナは善戦してるって話を聞くけど、そんなに楽観できる状況なのかな?ってちょっと思ったのです♪

      あたしには、双方の被害が実際のとこどのくらいかってわかんないけど、戦場はウクライナなわけで、戦争が1ヶ月も続いてて、撤退できるロシアと後のないウクライナでは、受けた被害の深刻さが違うような気がしたのです♪

      •  正確な情報などありようがない上に進行中事案で時期によってどんどん数値は変動しますが、ここ数日で見られる情報では、ロシア兵の死者数についてNATO側情報では1万人以上、負傷や捕虜では数万とも。ロシア側情報では1千数百名、というものが見られます。
         ちなみにロシア軍の兵員総数は90万人ほど(これでも定員には不足)、ウクライナ軍は20万人ちょっと。
         暴論ですが、ロシア軍は目標さえ達せられれば、兵が10万人死亡しようが、日本と価値観を共有する諸国のようには狼狽えないとは思います。逆に言えば目標が達せられなければ許されない敗北ですし、達せられるまでいくらでも血を流す可能性もあります。
         対するウクライナは少数の生き残りでも国を守りきれば良いので、継戦能力は「諦めなければ勝ち」とも言えますが。

         ただ、ロシアメディアが1万人の損失と報道した直後に記事が削除されたり、兵どころかロシア派遣軍の最高階級にあたる軍人が複数戦死していたり、同僚の大量戦死に怒ったロシア兵が指揮官を負傷させたりといった情報がひっきりなしにあがってきます。ロシア側の心理的には相当に厳しそうです。

      • 七味さま

        ひさびさ書き込みます。
        ロ軍はもちろんですが、ウ軍もかなり疲弊していると思うので、今は我慢比べではないかと思います。
        ただ、ウ軍はもともとの軍人と予備役、傭兵、新兵(総動員体制で召集した)を上手く組織化してローテーションできれば、人的資源という面でも優位に立てるでしょう。兵器や軍需物資、食糧などについては、当初から西側の支援があるので露軍より有利で、露軍がよほどのテコ入れをしない限り、時間がたつほど差は開いていくと考えられます。次第に経済制裁も効いてくるでしょうし。
        ということで、みなさんのおっしゃってるように、余程のことがない限り、ウ軍がジワジワと失地を取り返していくものと思います。

        • 現様

          コメントありがとなのです♪

          ちょっぴり安心したのです♪
          あたしは、ウクライナのあちこちで戦闘になってて、ウクライナ軍の方は安全な後方に下がって休むなんてことができないと思ってたのです♪

          災害と戦争じゃ違うのかもだけど、震災のときいつ余震が来るかと思いながら職場で寝泊まりしてたときと、いちおうローテを組めて休むときは宿で休めるようになったときじゃ全然違ったように感じたのです♪

    • 多国籍軍を結成してロシアを占領する力量は有るでしょうが、なんと言っても核がありますから。

      西側はロシアより損害の許容値がずっと低いから、自分達が殴られたのでも無ければ覚悟は決まらないと思います。
      本格介入の結果、自軍に核を撃ち込まれたら、ロシアより先に政権が変わるんじゃないですかね。

    • 売電は天文学的な賠償金を課した上でロシア解体を視野に入れてそう

  • 戦後処理について、ロシアの武器生産を制限すると、ロシア製兵器に依存している国に戦力の空白が生まれる危険が出てくるでしょう。

    西側の武器は高価なため代替し難く、埋め合わせは中国製が有力でしょうか。(北朝鮮製なんて可能性も)
    中国の影響力が高まるのは日本にとって具合が悪いですが、例えばロシア製兵器で中国に対抗していた国々はどうなるでしょう。インドが代表的ですが、日本にとってクアッドの一角が崩れるのはもっと痛いかと。プレゼンスの面で。

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