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    Categories: 金融

「借金踏み倒し宣言」?ロシアが非友好国リストを公表

ロシア政府が今度は「非友好国リスト」を公表し、それに含まれた国に対しては、外貨建て債務のルーブルでの返済を許可したそうです。事実上の借金踏み倒し宣言であり、なんだかメチャクチャな大統領令です。国際法に反する大統領令は違法であり、無効ですが、問題はロシアがこうした違法行為を堂々と決定するようになったという事実であり、また、ロシアが今後世界各国からカネを借りることが難しくなったという見通しでしょう。

ルーブル急落:その原因は「非友好国リスト」か?

昨晩はロシアの通貨・ルーブルの対ドル相場が一時1ドル=150ルーブルを超過するルーブル安となりました。もちろん、今世紀に入って以来の最安値水準です。これについて手掛かりを調べてみたところ、「ロシア政府が現地時間7日、『非友好国リスト』を公表した」、という話題がありました。

これについて、ロシア・メディアの『タス通信』(英語版)の報道を紹介しておきましょう。

Russian government approves list of unfriendly countries and territories

The countries and territories mentioned in the list imposed or joined the sanctions against Russia after the start of a special military operation of the Russian Armed Forces in Ukraine<<…続きを読む>>
―――2022/03/07 20:08付 タス通信英語版より

タス通信によると、ロシア連邦政府は月曜日、「ロシアの政府、企業、市民に対して非友好的な行動を講じている国」のリストを承認しました。

タス通信によると、これに含まれる国・地域は次のとおりです。

The list includes the United States and Canada, the EU states, the UK (including Jersey, Anguilla, the British Virgin Islands, Gibraltar), Ukraine, Montenegro, Switzerland, Albania, Andorra, Iceland, Liechtenstein, Monaco, Norway, San Marino, North Macedonia, and also Japan, South Korea, Australia, Micronesia, New Zealand, Singapore, and Taiwan (considered a territory of China, but ruled by its own administration since 1949).

名指しされているのは次のとおりです。

米国、カナダ、欧州連合(EU)加盟国、英国(ジャージー、アンギラ、BVI、ジブラルタルを含む)、ウクライナ、モンテネグロ、スイス、アルバニア、ナドラ、アイスランド、リヒテンシュタイン、モナコ、ノルウェー、サンマリノ、北マケドニア、日本、韓国、豪州、ミクロネシア、ニュージーランド、台湾

とりわけ台湾に関しては「中国の領土と見られるものの、1949年以降は独自の政府により統治されている」との付記がなされています。「台湾は独自の国であるとは認めないけれども非友好『国』」というのも、なんだか奇妙ですが…。

外貨建て債務のルーブルでの返済を許可

タス通信によると、ロシア政府はこれらの諸国・地域を、「ロシア軍のウクライナにおける特殊軍事作戦開始以降、ロシアに対して制裁を加えた国」と定義。そのうえで、次のように宣言しているのです。

The government noted that according to this decree, Russian citizens and companies, the state itself, its regions and municipalities that have foreign exchange obligations to foreign creditors from the list of unfriendly countries will be able to pay them in rubles. The new temporary procedure applies to payments exceeding 10 mln rubles per month (or a similar amount in foreign currency).

つまり、ロシア政府、ロシア市民、ロシア企業は、「非友好国リスト」に含まれている国・地域からの外貨建ての債務については、外貨ではなくルーブルで支払うことを容認。この時限的ルールについては、毎月1000万ルーブル(またはそれに相当する外貨)の支払手続に適用される、などとしています。

おそらく、これがルーブル安の原因ではないでしょうか。

なんだかメチャクチャな大統領令です。

当たり前の話ですが、外貨建て(ドル建て、ユーロ建て、円建てなど)の債務については、ルーブルではなく、その外貨(ドル、ユーロ、円など)で返済する必要があります。ロシアの国内の法令で勝手に「自国通貨で返済して良い」などと決めたところで、国際的には無効であり、違法です。

このあたり、アルゼンチンが国内法に基づき、ドル建ての国債の元利払いを停止したことに関しては、2014年6月に同国が米国の裁判所で敗訴し、テクニカル・デフォルトに陥った事例などが参考になるでしょう。

また、2018年10月に韓国の最高裁判所に相当する「大法院」が、日韓請求権協定を無視して日本企業に対し損害賠償を命じる判決を下したことがありましたが、これも日本政府は韓国に対し、「判決や強制執行手続は国際法違反だ」と繰り返し警告しています。

いずれにせよ、国内法令で勝手に国際法違反の状態を作り出したところで、それが有効になるはずなどありません。

ロシア政府の「借金踏み倒し」宣言

おそらくロシア政府としては対外債務を「踏み倒す」つもりなのでしょうが、もし本当にそれをやれば、今後、ロシアの政府、企業、個人が国際的な資金市場でカネを借りることが大変困難になるのは間違いありません。

もっとも、金融市場はロシアと西側諸国の緊張関係の高まりに過剰反応しているフシがありますが、『国際与信統計で読み解く各国の「金融パワー」と力関係』でも述べたとおり、外国の金融機関がロシアに対して有している与信額は、最終リスクベースでせいぜい1000億ドル少々に過ぎません。

ロシアは「どうせ欧州は制裁しない」と高を括っていた国際決済銀行が公表した2021年9月末時点の国際与信統計を使えば、各国の金融パワーや力関係が見えてきます。たとえば、ロシアに最も多くのカネを貸している国はフランス、イタリアの両国でした。実際、報道等によれば、最後までロシアの銀行をSWIFTNetから除外する措置に反対したのが欧州諸国だとされていますし、統計データで確認する限り、ロシアは直前まで、「どうせ欧州や日本は自国への制裁に踏み切らない」と高を括っていたフシがあります。国際与信統計(CBS)とは?:...
国際与信統計で読み解く各国の「金融パワー」と力関係 - 新宿会計士の政治経済評論

今回のロシア政府の決定だけで見れば、これが世界全体の金融市場に与える影響は限定的と考えて良いでしょう。

ただし、西側諸国が今後、ロシア産原油の輸入禁止措置などを講じるなどすれば、一段と緊張が高まる可能性も高く、金融市場における「ロシア発の混乱要因」には十分に警戒すべきであることは間違いありません。

新宿会計士:

View Comments (26)

  • 斬新な「債務はルーブルでなら返すが、ロシアから買った物品購入費用はルーブルでは受け取らん!」…

    紙のお金で払うねん!

    この展開は予想していませんでした。

    ロシアのプーチン周辺の閣僚リストをみて疑問…
    かなりの比率です皆さん元KGBなんですが、KGBにも経済戦のパートがCIAのようにあって不思議じゃないんですがプーチンの周囲にはいない。
    イケイケの武闘派ばかり…
    全員プーチンさんで固めていれば意見は割れないでしょうが多様な意見や進言も無さそうな陣容です。

  • そのうちパキスタンからの強力な経済制裁を受けてロシア経済は破滅するだろう。

  • 民間企業の債務に限ってみると、ルーブル建てか外貨建てかは、その会社と相手先との契約に基づいてるんですよね?
    大統領がなにか言っても関係ないと思うので、西側への政治的なスタンス表明か、大統領には責任は無い宣言みたいなものでしょうかね。

    次から金を借りれなくて困るロシア企業からすると、「うるせえ黙ってろ」てとこでしょうか。

  • 普通に考えれば、例えば、ドル建ての債務をルーブルで払いますと言われて、「はい、そうですか」といって受け取るような企業はまずないでしょう。「アホか。ドルに両替して持ってこい」と言われるのがオチです。「ルーブルで支払っても良い」なのか「ルーブルでしか支払ってはいけない」なのかによって多少の違いはありますが、前者であれば、ルーブルでは誰にも受け取ってもらえないので、結局ドルなりユーロなりに両替せざるを得ず、後者であれば、支払いが成立しないので、債務不履行にならざるを得ません。「ルーブルでしか支払えないんだもん」と言い張ったところで、相手にしてくれる企業はないでしょう。
    ......と書いたところで、国際的には全く通用しないローカル通貨でまんまと原油の買い付けに成功した国がありましたねえ。しかも、「制裁」を口実にそのローカル通貨での支払いも凍結しているという、ほとんど取り込み詐欺のような真似をしてましたっけ。もしかしたら、そんな国であれば、ルーブルでの支払いに応じてくれるかもしれませんよ。

    • 龍さま
      そして国民が「紙屑になったルーブルの責任」を政府のせいにする国ですね。

      • 最終的には、悪辣な日本のロビー活動のせいということにすれば、丸く収まる国です。あるいは、超時空太閤ヒデヨシのせいにするという最終手段もあります。

  • 約500の航空機リースを受けているロシアは、機体全部はおれのもの、金も払わんと言っているそうで。ロシア事業で売上げなり利益などを夢想していた企業は、かかる事態においては計画そっくりガラポン、命があるうちに手を切るしかない状況。ビジネスの世界は冷酷、こんなことって起きるもんですね。

    • はにわファクトリー さま
      外国に飛んで行ったら、空港で差押えになるんでしょうね。

      • 外国の空港で燃料代、着陸料どうやって払うんだろう。
        ドル紙幣もっていくのかな。

  • ロシアの海外に有る資産が差し押さえられたとの報道がありました。ロシアに踏み倒される金額との比較ではどうなのでしょう。教えてもらえるとありがたいです。

  • 欧州のパイプラインの天然ガスの禁輸はしないけれど、支払いは確かになされて、それはドル又はユーロで決済し、そのマネーは欧州内の銀行口座に積み上がっても、プーチンの戦争をプーチンが諦め、ウクライナに謝罪して被害額を賠償し終えるまで塩漬けのまま、と言う事に最悪なるのではないでしょうか?何しろ送金手段も難しい。
    これを見るに欧米西側諸国の白人国家に対しての侵略や脅迫への反応はアフリカやアラブやチャイナや北朝鮮への対応と明らかに違うという事も痛感しました。

    • ロシアの最大手銀行であるズベルバンクと、ガス生産会社であるガスプロム傘下のガスプロムバンクはSWIFT排除の対象外です。従って、ユーロだろうとドルだろうと、送金に問題が生じることはない(はず)です。

      • 皆様

        着陸してもカネなら払えん!
        文句言うなら滑走路のど真ん中に飛行機おいてっちゃうから!

        なんだか比叡山延暦寺の僧兵が御神木と称する大木の丸太を京都の都王路まで担いで行って放置してくるという嫌がらせを思い浮かべてしまいました。

  • >ロシアの国内の法令で勝手に「自国通貨で返済して良い」などと決めたところで、国際的には無効であり、違法です。

    このとこって、「両者合意の上でどの通貨を使うか決めたものを、特定国の法令に基づいて、債務者が一方的に反故にするのは、常識に反しててけしからん。債務者はルーブルでの返済を受け取る必要などない。」ってことなのかな?

    ところで、国際金融ってよくわかんないけど、もしかしたら、「両者合意のもと決めた使用通貨を一方的に変更できるような立法はしない。」みたいなことを決めた条約なんかがあったりするのかな?
    「違法」って言葉にちょっとだけ引っかかったのです♪

    • ドル建ての債務ということは、すなはち「ドルで債務を支払います」という契約なので、ルーブルで払いますといったところで、却下されておわりです。ただし、当事者同士で契約内容を変更することで合意したのであれば、原契約の「ドルによる支払」を上書きすることは可能だろうと思います。一方的に宣言しても無効であることには違いありません。
      とは言え、「違法」かどうかはまた別の問題でしょう。「契約違反」であり、「債務不履行」にはなるかもしれませんが、「契約違反」や「債務不履行」自体は起こりうること(普通はそれを織り込んだ契約書にします)なので、その違法性を問うことはあまりないような気がします。

    • 七味 様

      同じような事を思ってしまいました。
      西側(?)諸国から言わせれば、「そんなアホな!」なので、支払いはドルでやって呉れ、となるでしょう。
      根拠はもちろん「契約」ですよね。書いた物がモノを言う、のが資本主義の基本原理だからです。
      しかしロシア側からすれば、じゃ資産凍結だの、スイフト除外だのも可笑しいじゃないか、となりますよね?航空機リースだって期限までは履行しろよ、と言うと思うんです。
      契約書に「貴国が侵略行為を行った時にはチャラにします」とでも書いてあるんですかね?
      別にロシアに肩入れする訳じゃないんですが。

    • 七味 様

       それぞれの契約が何処の法律に準拠しているかで決まります。また、契約違反の仲裁を何処でやるかも。まさか無いとは思いますが、準拠法をロシアの民法?とか仲裁地をロシア国内とか中共支配地内にしていたら、違法ではなくなる可能性が高いです。

      違法でなくなろうと違法であろうと次の契約(可能性はほぼないですが)は無いか非常に過酷なものになるのはほぼ間違いないと思いますが、現在の債権を上手く回収できるか否かには大きく影響すると思います。

       守るか否かは別ですが、どこかのチンピラと違って、ヤクザはヤクザなりに法は理解していると思います。

      まあ、ロシアと契約しようなんて国・企業は一部の国を除いてハゲタカみたいなものなのでヘッジはしっかりしていると思います。

    • 皆様

      コメントありがとうなのです♪

      細かい言葉遣いだから、そんなに気にすることじゃないかもだけど、記事中に韓国のことが例示されてたので、ちょっと気になったのです♪

      韓国のは、請求権協定とか国どうしの約束に反してるから、明確に「違法」なんだと思うけど、ロシアのはどうなんだろうな?って、思ったのです♪

  • これでプーチン大統領が長期的な視点をさほど持っておらず目先の感情で動いているらしいというのが濃厚になりましたね.

    同大統領らロシア政府に長期的視点があれば外貨建ての債務に関して,外貨準備凍結等の経済制裁を受けた結果として已むを得ず債務不履行になってしまうのと,今回のルーブルによる返済許可の大統領令を出してロシア政府自らが意図的に(契約に定められている通貨での)債務返済しないと宣言するのとでは,ウクライナ後の世界でのロシアに対する信頼度が大きく違うと理解するでしょうに.

    どうも今回の件では,プーチン氏は「偉大なる我が祖国ロシアにヨーロッパや日本といった小国らが制裁するとは何様のつもりだ!」といった類の感情なのでしょうが,怒りの余りに冷静に考えずに目先の感情で将来に亘って彼の祖国に対する他国からの信用に大きな影響を及ぼす愚策を選択してしまったようです.

    独裁政権にとってのインターネットの危険性と有用性とを考え抜いた対策をうたずに対外侵略を始めてみたり,同じ巨大国家における独裁志望者でも習近平氏のほうがよほど狡猾だ.

    実に哀れですね.

    • 迷王星様

      ここまでロシア自身がルーブルやロシアの対外金融・経済関係を軽んじて突っ走るとは思っませんでした。

      ウクライナとの戦争がどうなろうとロシアの経済的・対外的信用は5年位では再構築出来ないんじゃないかな?

      この世界情勢で5年ハブンちょになるのは致命傷かも。
      情報というものが他国に対しての飴にも鞭にもなる時代ですが、ロシアの対外的情報戦略はバレバレの他国企業や政府機関へのハッキングやクラっキングばかりが顕著。
      もし、国家間・国際社会からの情報ネットワークからの締め出しをされたりすると現在のロシア政府首脳部が想定している被害レベルを軽々超えてしまう気がします。

      メンツをとって未来をかなぐり捨てた気がします。

      なんとなく旧ソ連が中華人民共和国を育てたのに自分を見失って世界から離れて籠城して孤高を気取って以来軽々と中華人民共和国に乗り越えられてしまった時の既視感…まぁ中国があれだけ短期間の登り詰めると西側だった考えておらずコントロール可能だと思っていた伏しもありますが。

      地球儀的な地政学的には中国とトルコがロシアを一気に蚕食する事さえあるかも…とか…

      • 仮に中国が台湾に侵攻して泥沼化したら、その隙にロシアは中露国境を越えて来ると思うんです。支援とか秩序確保とか言いながら。
        それに比べると中国は優しいなあ、と思ったりしています。

  • 名誉なことですね。

    プーチンの軍票と化したルーブルを渡されて「マネーです」と言われましてもねぇ。
    軍事費が日本の1.25倍、名目GDPが3分の1程度のロシア。
    日本の兵器調達コストが割高なのを考慮しても、兵器の稼働率を考慮すれば、通常兵力は案外たいした規模ではないのかもしれません。
    プーチン政権、何時まで持ちますかね。

    • ロシアの国防予算をみれば日本でもGNP比2%程度の防衛予算で戦略原潜4隻体制を作れそうな気もしてきますね。

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