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    Categories: 金融

経済制裁の一環としてのロシアに対する輸出管理厳格化

政府、輸出管理厳格化が経済制裁の手段であると認めてしまう

輸出管理の厳格化が経済制裁の一環として発表されました。すなわち、日本政府は昨日、経産省、財務省、外務省の連名で対露制裁のパッケージを発表したのですが、そのなかに、輸出「規制」ではなく、輸出「管理」の厳格化措置が含まれていたのです。これは非常に面白い現象です。日本政府は公式には輸出管理と輸出規制は別物だと説明しているからです。

経済制裁概論

経済制裁の7つの態様

これまでしばしば言及してきたとおり、一口に「経済制裁」と言っても、さまざまな種類のものがあります。

一般に経済制裁とは「経済的な手段を使ってヒト、モノ、カネ、情報の流れを制限し、相手国に経済的打撃を与えること」と理解されます。

経済制裁の概要

経済制裁とは、経済的な手段を使って相手国に打撃を与えることである。「ヒト、モノ、カネ、情報」の流れの制限という視点から、次の7つの形態があり得る。

  • ①自国から相手国へのヒトの流れの制限
  • ②自国から相手国へのモノの流れの制限
  • ③自国から相手国へのカネの流れの制限
  • ④相手国から自国へのヒトの流れの制限
  • ⑤相手国から自国へのモノの流れの制限
  • ⑥相手国から自国へのカネの流れの制限
  • ⑦情報の流れの制限

(【出所】著者作成)

わが国における経済制裁は使い勝手が悪い

ただ、非常に残念なことに、わが国は、上記①~⑦のすべての経済制裁手段を持っているわけではありません。

経済制裁について最も包括的に規定を設けている法律は「外為法」(正式名称は『外国為替及び外国貿易法』)ですが、この外為法の経済制裁には、大きく次の7つの措置があります。

外為法による主な経済制裁
  • ①第16条第1項措置…日本から外国への支払の制限
  • ②第21条第1項措置…日本と外国との資本取引の制限
  • ③第23条第4項措置…日本から外国への対外直接投資の制限
  • ④第24条第1項措置…いわゆる「特定資本取引」の制限
  • ⑤第25条第6項措置…役務取引(技術移転など)の制限
  • ⑥第48条第3項措置…輸出規制
  • ⑦第52条措置…輸入規制

そして、「保守派」を自称する論客のみなさんも勘違いしているのですが、経済制裁はおいそれと発動できるものではありません。これらの経済制裁を発動するためには、基本的には次の3つのいずれかの条件が必要だからです。

外為法上の経済制裁を発動するための条件
  1. 国連安保理で決議された内容に従った経済制裁
  2. 有志国連合に同調する経済制裁
  3. 外為法第10条第1項に基づく日本独自の経済制裁

(【出所】外為法の規定を参考に著者作成)

経済制裁の発動要件を緩和すべし』などでも詳しく説明したとおり、国連安保理が決議した制裁に従うか、欧米などの「有志国」が実施する制裁に同調する場合以外に、日本が独自に経済制裁を発動することは、非常に難しいのが実情です。

外為法第10条第1項を改正せよ「ヒゲの隊長」の愛称で知られる佐藤正久参議院議員は昨日、ツイッターとご自身のブログで、「韓国による竹島を巡る不法行為を許すな」、「不法行為には相当の痛みが伴う事を韓国に自覚させないと!」などと発言されました。これはこれで、たしかに正論です。ただ、「正論」ではあるのですが、佐藤氏ご自身が国会議員であるということを踏まえるなら、これではまったく不十分です。もし「相当の痛み」を相手国に与えるならば、まずは外為法の不備を修正されてはいかがでしょうか。本稿ではその具体的な改...
経済制裁の発動要件を緩和すべし - 新宿会計士の政治経済評論

狭い意味での経済制裁が難しいなら…

ただし、上記はあくまでも「狭い意味での」経済制裁です。

かつて拙著『韓国がなくても日本経済はまったく心配ない』などでも説明したとおり、「経済制裁」を、「結果的に相手国に対して経済的な打撃を与えること」という、広い意味で解釈した場合には、日本政府に講じることができる手段は、もう少し広がります。

そのなかでもとくに注目すべきは、「サイレント経済制裁」、すなわち「経済制裁と銘打っているわけではないが、結果的に経済制裁と同じような経済効果をもたらす措置」です。

もちろん、この「サイレント経済制裁」は、日本政府などの公式の用語ではなく、あくまでも当ウェブサイトで勝手に使っている用語です(似たような事例に「セルフ経済制裁」「消極的経済制裁」などがあります)。

その具体例が、「輸出管理」です。

輸出管理そのものについては、当ウェブサイトでは『輸出管理の仕組みをまとめてみた』あたりでかなり詳しく議論したつもりですので、その詳細については繰り返しません。

昨日の『韓国政府高官「韓日技術協力は続けなければならない」』などでも触れましたが、最近、当ウェブサイトでは再び「輸出管理」について言及することが増えています。そうなってくると、各稿で輸出管理についていちいち説明するのは面倒です。そこで、本稿ではちょっとしたメモとして、また、最新の金融規制動向という観点で、この輸出管理の仕組みについて、著者自身が理解しているところをまとめておきたいと思います。輸出管理が今後のテーマに?現在、とある事情があって、日本から外国への技術移転や輸出管理などについて調べ...
輸出管理の仕組みをまとめてみた - 新宿会計士の政治経済評論

ここでポイントだけ述べておくと、輸出管理と輸出規制はまったくの別物であり、実際、根拠条文そのものも異なっています(輸出管理の方は外為法第48条第1項に、輸出規制の方は第3項に、それぞれ規定が設けられています)。

外国為替及び外国貿易法第48条第1項(輸出管理)

国際的な平和及び安全の維持を妨げることとなると認められるものとして政令で定める特定の地域を仕向地とする特定の種類の貨物の輸出をしようとする者は、政令で定めるところにより、経済産業大臣の許可を受けなければならない。

外国為替及び外国貿易法第48条第3項(輸出規制)

経済産業大臣は、前二項に定める場合のほか、特定の種類の若しくは特定の地域を仕向地とする貨物を輸出しようとする者又は特定の取引により貨物を輸出しようとする者に対し、国際収支の均衡の維持のため、外国貿易及び国民経済の健全な発展のため、我が国が締結した条約その他の国際約束を誠実に履行するため、国際平和のための国際的な努力に我が国として寄与するため、又は第十条第一項の閣議決定を実施するために必要な範囲内で、政令で定めるところにより、承認を受ける義務を課することができる。

すなわち、輸出管理の仕組みは経済制裁そのものではなく、また、輸出規制とはまったく異なる措置なのですが、ここで重要なポイントがあるとしたら、使い方次第では、輸出規制と同様、経済制裁「的」な措置として機能させることができなくはない、という点でしょう。

日本の対韓輸出管理適正化措置

ここで参考事例として思い出しておきたいのが、日本政府が2019年7月に発表した、韓国に対する輸出管理の厳格化(ないし適正化)措置です。

経産省の『大韓民国向け輸出管理の運用の見直しについて』によれば、これは韓国を輸出管理上の(当時の)「ホワイト国」(※現在の「グループA」)から除外する措置と、フッ化水素など3品目の韓国向け輸出を「包括許可」の対象から外し、「個別許可」の対象とする措置から構成されています。

この措置を巡っては、当初、一部のメディアが「韓国に対する半導体用の素材の輸出禁止措置だ」とさかんに報じましたし、韓国政府や韓国メディアに至っては、いまだに「輸出『規制』」などの誤った用語を使い続けています。

もっとも、この輸出管理適正化措置自体は、「経済制裁」とは言い難いほど緩い措置でした。なぜなら、3品目の輸出については、用途が明確に確認されたものに関しては、まったく問題なく輸出許可が出続けているからです。

フッ化水素(HS2811.11-000)の事例でいえば、貿易統計上は、2019年8月には日本から韓国に向けたフッ化水素の輸出が激減しましたが、その後は回復し、用途が問題ないと確認されたものについては、現在でも韓国に向けて問題なく輸出が続いています。

ただ、あくまでも「知的ゲーム」として考えるならば、たとえば輸出管理上、特定国に対する「半導体等製造装置」の輸出許可を厳格化し、現場の裁量で「わざと許可を出さない」などの措置を講じれば、理屈の上では輸出管理の仕組みを使い、相手国の半導体産業を壊滅させることも可能です。

当ウェブサイトでこんなことを述べると、経産省側は、公式には「輸出管理の仕組みは輸出規制ではないし、経済制裁ではない」と反論するかもしれません。しかし、あくまでも外為法の条文上の解釈としては、経産省が「その気」になれば、相手国に対する輸出を止めてしまうことができなくはない、ということです。

対露経済制裁の詳細

ウクライナ情勢を巡る日本の経済制裁措置の詳細

こうしたなか、外務省、財務省、経産省の3省は昨日、ウクライナ情勢に関する外為法上の措置について発表しました。

ウクライナ情勢に関する外国為替及び外国貿易法に基づく措置について

―――2022/02/26付 財務省HPより

ウクライナ情勢に関する外国為替及び外国貿易法に基づく措置を実施します

―――2022/02/26付 経済産業省HPより

ウクライナ情勢に関する外国為替及び外国貿易法に基づく措置について

―――2022/02/26付 外務省HPより

その概要は、次のとおりです。

(1)支払規制・資本取引規制(資産凍結措置等)

自称「ドネツク人民共和国」、自称「ルハンスク人民共和国」の両「共和国」関係者として指定された24の個人とバンク・ロシアの1団体に対し、①支払規制(支払を許可制とする措置)と②資本取引規制(預金・信託・金銭の貸付契約を許可制とする措置)を適用する(ただし、バンク・ロシアに対する資産凍結等の措置は3月28日から実施する)

(2)輸出入禁止措置

両「共和国」との輸出入を禁止する

(3)ロシア政府等によるわが国における新規の証券の発行・流通禁止措置
  • ①ロシア連邦政府等による本邦における新規の証券発行・募集を許可制とする
  • ②ロシア連邦政府等が新規発行した証券を居住者が非居住者との間で売買することを許可制とする
  • ③ロシア連邦政府等が本邦で証券を発行・募集するための労務・便益の提供を許可制とする
(4)ロシア連邦の特定の銀行による我が国における証券の発行等の禁止措置

本邦における証券の発行等を禁止しているロシア連邦の特定の銀行について、より償還期間の短い証券(30日超)を当該禁止措置の対象とする

(5)国際輸出管理レジームの対象品目のロシア連邦向け輸出の禁止等に関する措置

国際輸出管理レジームの対象品目のロシア連邦向け輸出及び役務の提供について、審査手続を一層厳格化するとともに、輸出の禁止等に関する措置を導入する

…。

サプライズは「輸出管理」を経済制裁として使用していること

このうち、(1)~(4)については、当ウェブサイトではすでに『対ロシア制裁の本命は「ロシアのドル取引からの排除」』や『日本政府はロシアへの「半導体輸出などの制裁」を発表』などで議論したとおり、既存の外為法の条文に従った経済制裁であり、特段の「サプライズ」はありません。

ただ、個人的にちょっと気になったのが、(5)の措置です。

「国際輸出管理レジーム」という言葉でピンと来た人がいらっしゃるかもしれませんが、この措置、まさに2019年7月に発表された韓国に対する輸出管理適正化措置と同様、ロシアに対する輸出管理の厳格化措置なのです。

これについて、経産省・貿易管理部が昨日公表した『ロシアを仕向地とする貨物の輸出及び技術の提供の包括許可要件等の見直し』と題するPDFファイルを読むと、経産省通達上、ロシアを「と地域①」「と地域②」から除外し、「ち地域」に含めることで、次の改正が加えられるのだそうです。

  • ①特別一般包括許可、特定包括許可及び特定子会社包括許可の対象外とする。
  • ②許可申請に当たっての提出書類を変更する。
  • ③許可申請の窓口を原則本省とする。

これにより、「まずはリスト品目のロシア連邦向け輸出及び役務の提供について、審査手続を一層厳格化する」としています(改正通達の交付は2月26日、施行は3月5日)。

「まずは」、という表現、気になります。

ロシアの態度次第では、もう一段、厳格化される可能性もある、ということかもしれません。

ちなみに、現在の輸出管理の仕組み上、日本は世界中の国をグループAからグループDまでの4つのカテゴリーに分類しているそうですが(図表)、もしかするとロシアをグループDに落とすのでしょうか?

図表 グループA~D
グループ 具体的な国 措置
グループA(旧ホワイト国) 4つの国際的な輸出管理レジームに参加している日本以外の29ヵ国のうち、トルコ、ウクライナ、韓国を除く26ヵ国 リスト規制品については「一般包括許可」という最も緩い許可が認められる品目も多く、4グループのなかで唯一、キャッチオール規制が適用されない
グループB 韓国など、いずれかの国際的な輸出管理レジームに参加している国のなかから指定される国。なお、経産省は具体的な国名を公表していない リスト規制品については「一般包括許可」は認められないが、「特別一般包括許可」、「特定包括許可」などの仕組みが使える品目がある
グループC A、B、Dのいずれにも該当しない国 リスト規制品については、「グループB」と比べると「特別一般包括許可」などの対象品目は少ない
グループD いわゆる「懸念国」。『輸出貿易管理令』の「別表3の2」や「別表4」に掲載されている国で、重複を除外すると現時点ではアフガニスタン、中央アフリカ、コンゴ民主共和国、イラク、レバノン、リビア、北朝鮮、ソマリア、南スーダン、スーダン、イランの11ヵ国 リスト規制品については基本的にすべて個別許可の対象となる。また、グループB、グループCと比べてより厳格なキャッチオール規制が適用される

(【出所】輸出貿易管理令および経産省『リスト規制とキャッチオール規制の概要』などを参考に著者作成)

ただ、経産省の輸出管理の仕組み上、ロシアを「グループD」に落とすためには、政令である『輸出貿易管理令』の改正が必要となるはずですので、パブコメを募集したりしなければならず、なかなか迅速に改正できるものでもありません。

いずれにせよ、経産省の「まずは」の表現が何を指すのかについては、ちょっと気になるところでもあります。

ロシアへの経済制裁、効果は限定的

なお、『ロシアは中国とのブロック経済圏形成で制裁を逃れる?』あたりでも詳しく議論したのですが、ロシアに対して半導体などの輸出規制措置(あるいは輸出管理厳格化措置)を講じたとしても、正直、ロシア経済に対する打撃は非常に限定的でしょう。

ロシアの駐日大使が日本に「重大な対抗措置を取る」と表明するも――。日本政府の対露制裁パッケージは、経済的に見たらほとんど実効性がありません。2021年におけるロシアへの半導体輸出高は6億円未満と、日本の半導体産業にとっては無視できる金額でもあります。もっとも、ひとつ気になる点があるとすれば、中国を中心とするブロック経済圏にロシアが加わろうとするかどうか、です。経済制裁の実情日本政府の対露追加制裁『日本政府はロシアへの「半導体輸出などの制裁」を発表』で「速報」的に取り上げたとおり、日本政府は25日、ロ...
ロシアは中国とのブロック経済圏形成で制裁を逃れる? - 新宿会計士の政治経済評論

その理由は、そもそも日露貿易高自体が「隣国同士」としては非常に少なく、日露両国の貿易・金融取引などが完全に停止したとしても、正直、日本にとってもロシアにとっても、さほど大きな影響はないと考えられるからです(天然ガスなどのように、一部の品目では少なくない影響が生じるかもしれませんが…)。

いや、もちろん、一部の企業はロシアとの経済関係が停止すればかなり困ったことになりますし、また、一部には

「ロシア産の素材が産業にとって極めて重要である」という事例もないわけではありません。しかし、全体として見れば、基本的にはコントロール可能です。

SWIFT除外にはドイツなどが強く反対した

このように考えていくならば、やはり対露制裁は、日本だけが実施するのではなく、西側諸国全体で協調して実施することが必要であり、とりわけロシアの銀行をSWIFTから除外するなどの措置が強力です。

これに関連し、AFPBBニュースは昨日、ロシアをSWIFTから排除することを巡って、欧州連合(EU)内部でも意見が対立している、などと報じています。

SWIFT排除でEU分断 対ロシア制裁、エネルギー懸念が影

―――2022年2月26日 7:02付 AFPBBニュースより

AFPによれば、このSWIFTからの除外についてはウクライナに加え、バルト三国(エストニア、ラトビア、リトアニア)、ポーランドなどが訴えており、フランスも支持しているそうですが、その反面、ドイツ、ハンガリー、イタリアなどがこれに反対しているのだとか。

とくにドイツがこれに反対する理由は、「ドイツがロシアからガスや資源の供給を絶たれる高いリスクがある」(ドイツのクリスティアン・リントナー財相)ためだそうですが、このあたり、原発を停止してロシア産のガスにエネルギーを依存しているという「やむにやまれぬ」事情もありそうです。

ロシア制裁の意義

いずれにせよ、ウクライナ戦争を巡る対ロシア制裁では、日本にできることには限界もありますが、現状としては欧米主要国と歩調を合わせたことに加え、輸出管理の仕組みを経済制裁として使用することができるという実例を見せたという意味では、大変に有意義であったのではないかと思います。

そして、日本政府の措置自体は、ロシアに対しては大して効果がないことはたしかですが、それと同時に、もしもこれが適用される相手国が中国や韓国などである場合には、かなりの打撃を相手国に与えることも可能です(※ただし日本経済も打撃を受ける可能性はありますが…)。

いずれにせよ、もしも中国が台湾侵攻の意思を示そうものならば、日本としても今回と同じような(あるいはさらにハイレベルな)経済制裁を直ちに発動し得るよう、準備を怠らないことが大事でしょう。

新宿会計士:

View Comments (7)

  • 輸出管理と輸出禁止を混同している国があったが
    「実質的に輸出禁止にできる」というのは事実ということか?

    • 国税監査を匂わすだけでの、「間接的に輸出禁止」にもできますよww

  •  今から50年以上も前のこと、中学生の頃だったと思います。同級生同士で映画を観に行くことにもまだ新鮮というか、心踊るそんな時代に観た映画がありました。ただそのような若すぎた時代にこの映画を選んだのは、今思い返せばそれほどに悪くない選択だったのかもという気もします。

     それは、M・マストロヤンニとS・ローレン主演、そして巨匠ヴィットリオ・デ・シーカ監督による『ひまわり』という映画でした。あらすじは省きますが、重要な舞台となったのは地平線の彼方までに続くなひまわりの花が咲きほこる大地、それはウクライナでした。

     それとこれはあくまでも蛇足ではありますが、助演のリュドミラ・サベーリエワというロシア人の女優が大好きだったので、それもこの映画を選んだ理由の一つでした。ホントに綺麗な女優さんでしたねぇ。

     そんなことはともかく、今の地理の教科書でどのように説明されているのか詳しくは知りませんが、私の若い頃にはウクライナといえば必ず「ソヴィエトの穀倉地帯」というキャプションがついていたような記憶があります。

     しかし、その裏には実はかなり悲しく切ない歴史がつきまとっています。

     ウクライナはその広大にして肥沃な大地を有するが故に、常に他民族からの侵略を受け続けてきた過去がありました。詳細については割愛しますがご興味があればお調べください。 

     今回のロシアによるウクライナ侵攻には、そうした背景もあっただろうかと私は考えています。それと同時に今回の侵略にはそれ以上の理由があるとも考えております。それはロシア国内に於けるプーチン自身の延命策です。すなわちプーチン自身が「アジア式専制的独裁者の地位から自ら降りる」ことは己れの政治的且つ肉体的(つまり生物的なる死)となることと同義であると考えているのではないかという疑惑を抱かざるを得なという懸念です。それはおそらく彼にとって本能的な生存的危機感なのではないかと思わざるを得ないのです。であれば、彼は必然的に死ぬまで現在の地位を手放すことは絶対にあり得ないでしょう。

     このあたりの事情については後日改めて、他稿によってご説明しようと思っております。

     ところでロシアは過去数百年にわたって、ウクライナだけではなく東欧を含む周辺国を常に侵略する側の帝国でした。アジアはもちろんのこと、同じスラブ民族同士の、そして何を隠そうロシア人同士でも、血で血を洗う闘争があったことはけっして忘れてはならないことでしょう。そうした争いを扇動し続けてきたのはプーチンも同様です。そうした過去に於ける互いの憎悪の連鎖の反作用を、何よりも恐怖しているのが現在のプーチンではないかと考えます。彼の20年以上に亘る独裁政治体制下で、一体どれほどの対立勢力、あるいはジャーナリストや一般市民らが命を失ってきたのか、枚挙に暇がないほどです。

     ソヴィエト建国以来の、共和国連邦化という誤魔化しに次ぐ誤魔化しが続き、また粛正に次ぐ粛正により、彼らはその残虐さに関しては殆ど神経が麻痺していたとしか思われません。それが1991年のソヴィエト体制の崩壊によって修正されるのかと思われた時期もありました。ペレストロイカ、あるいはグラスノスチなどといった言葉が新聞の見出しに踊っていたあの時代を、今私は懐かしくも、しかし無残な思いで振り返りたくなります。

     しかし、そのソヴィエト体制の崩壊によって台頭してきたのが、アルコール中毒患者にして元ロシア連邦大統領のエリツィンによって引き上げられたプーチンです。いわばアル中が秘密警察上がりの元KGB大佐にしてチンピラであったプーチンを名指しで後継者に選んだわけです。何という笑うに笑えぬ悲喜劇だったことでしょうか。

     かつてCCCP(旧ソヴィエト社会主義共和国連邦)の一員でもあったウクライナは、ロシアに加担してきたことも事実でしたが、そうした過去はともかく、21世紀の現在、日本にとってはある程度の友好国といえる存在になったといえるでしょう。ウクライナ国民のかなりの人々が、日本ロシア間の北方領土の問題に関しても、日本の側に寄り添ってくれているという話もまま耳にします。むろんその背景にはクリミア半島など自国とロシアのの抱える問題との関連性故という事情もありましょうが。

     今の日本とウクライナの間において、貿易等経済的な結びつきは必ずしも大きなものではないかもしれませんが、自由主義・民主主義、そして反覇権主義といった価値観を共有できる国家であるようにも思われます。そうした価値観による結びつきを重視し、そして積み重ねていくことは、今後のロシア並びに中国といういわば「ヤクザな国家」と対峙していく上で、重要なファクターではないかと考えるものです。

     そしてそれは、台湾を巡る中国の姿勢に対する我が国の根本的な有りようを再認識する上で、相応の重みを持つ視点であろうかと考えます。

    ロシア並びに中国さらには大陸か経済制裁はら海洋にはみ出している虫垂突起のような国家などは、けっして遠い海の彼方の国ではありません。我々日本人はこれらの国々を海上にあるはずの国境線を、いつでも自国に都合よく変更しようとしてくる「ヤクザな国家」すなわち恐るべき野蛮な隣国だと思い知るべきです。

     今回のロシアによるウクライナ侵攻という、何度でも言いますが「ヤクザの論理」に立ち向かうに当たって、岸田・林という、あまりにも非力で外交能力の欠如したリーダーしかいないという我が国の不運・不幸はともかく、それでも我々国民がもう少しずつでも声を挙げていかねば、我が国およびその周辺国にとっての未来は昏いのではないかということを改めて覚えます。

    そしてたとえ効果が薄くともロシア・中国および北朝鮮に対する経済制裁はG7を始め世界が協力しあい、継続して行っていくべき対抗策だと考える次第です。

    継続は力、です。

  • 日本は、直ちにロシア産石油、LNGの輸入をやめるべきです。
     電力不足は、取りあえず使える原子力発電を稼働させれば対応できます。
    原子力規制委員会がいうように、100%完全にしてから稼働するしつようもない。稼働しながら100%にすればいいのだから。
     石油、LMGの高騰はさけるべきだ。

  • ウクライナ憲法にもし日本と同じ憲法9条があったとしたら、ロシアのウクライナ侵攻は防ぐことができたんでしょうかねえ。憲法9条信奉者に聞いてみたい。

  • > 経産省の輸出管理の仕組み上、ロシアを「グループD」に落とす

     今のところロシアはグループCですね。CからDは近そうですが手続きの煩雑さが壁になりそうです。

     ところで、「ロシアからの輸入は一律禁止」ってできないのでしょうか?

    > ロシアの銀行をSWIFTから除外する

     SWIFTを知らないので、この件をもう少し掘り下げてもらえると幸いです。