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NHK虚偽字幕は「倫理の問題」ではなく「違法行為」

叩けば叩くほど埃が出る利権組織・NHK。今度は「虚偽字幕問題」がBPOの審議入りです。ただ、今回の「虚偽字幕問題」、NHKの発表通りならば、これは「倫理の問題」ではありません。れっきとした「違法行為」です。放送法第4条第1項第3号には、「報道は事実をまげないですること」とありますが、事実を曲げて報じた時点で、NHKは違法行為をしたのです。

NHKは「自称・公共放送」

NHKといえば、「公共放送」を自称していることで知られます。

そして、NHK自身が述べる「公共放送」とは、「①営利を目的とせず、②国家の統制からも自立して、③公共の福祉のために行う放送」なのだそうです。

公共放送とは何か

電波は国民の共有財産であるということからすると、広い意味では民放も公共性があるということになりますが、一般的には営利を目的として行う放送を民間放送、国家の強い管理下で行う放送を国営放送ということができます。これらに対して、公共放送とは営利を目的とせず、国家の統制からも自立して、公共の福祉のために行う放送といえるでしょう。/NHKは、政府から独立して 受信料によって運営され、公共の福祉と文化の向上に寄与することを目的に設立された公共放送事業体であり、今後とも公共放送としての責任と自覚を持って、その役割を果たしていきます。

―――NHKウェブサイト『よくある質問集』より

なるほど、NHKが放送法の規定で、事実上、テレビを設置したすべての視聴者から半強制的に受信料を取り立てる権利を与えられている理由は、NHKの存在が「公共の福祉のために放送事業を行うこと」にあるからなのだ、と考えると、(納得はいかないまでも)一応は説明として通じなくもありません。

すなわち、国家権力が放送内容に介入せず、また、民間放送と異なり、「商業主義にまみれた放送」(?)とは距離を置き、あくまでも「公共の福祉」を追及するような放送を行っているのであれば、NHKが半強制的に受信料を取り立てることの説明になる(と少なくともNHKは思っている)のでしょう。

NHK自身が公共性の3要件に違反しまくり

ただし、ここでいう「公共性の3要件」に、NHK自身、あるいはNHKが放送している内容が合致しているのかは、別問題です。

たとえば、昨年末の『「公共放送の3要件」から明らかに逸脱する紅白歌合戦』などでも述べたとおり、『紅白歌合戦』なる番組自体、ポップ・ミュージックの歌手(や、最近だとユーチューバーなど)を出演させているという点では、どう考えても商業放送そのものです。

そもそも論として、超豪華な舞台セットで人気歌手が歌い踊る『紅白歌合戦』は、果たしてNHKが騙る「公共性」に合致しているのでしょうか。2006年の紅白歌合戦では、出演した歌手が素っ裸に見える格好で踊るという下品なシーンもありましたが、そもそも人気歌手を集めてきている時点で、それは単なる商業放送ではないかという気がしてなりません。本稿では改めて、NHK自身が主張する「公共性」について、考えてみたいと思います。テレビのない生活は意外と快適冒頭でひとつ、報告があります。かつてから報告しているとおり、著者...
「公共放送の3要件」から明らかに逸脱する紅白歌合戦 - 新宿会計士の政治経済評論

これに加えて『NHKの紅白歌合戦視聴率が史上最低?何か問題でも?』などでも取り上げましたが、2006年の『紅白歌合戦』では、出演したダンサーが全裸(に見える服?)で踊り狂うという、大変に下劣なコンテンツが流れました。はたして、「全裸ダンス」のどこが「公共の福祉」のための放送なのでしょうか?

年末の紅白歌合戦の視聴率が過去最低を更新したとする記事がありました。NHKが半強制的にかき集めた受信料で作られた番組の視聴率が落ちているというのも興味深いところですが、ただ、NHK自身は放送法に守られた組織であり、かつ、「公共放送」だそうですから、極端な話、すべての番組の視聴率がゼロ%になったとしても、この世にテレビがある限り、NHKが倒産するということはなさそうです。もっとも、民放はそういうわけにはいかないようで…テレビ広告の凋落新聞社だけではないオールドメディア年初の『「ブログ化する新聞」...
NHKの紅白歌合戦視聴率が史上最低?何か問題でも? - 新宿会計士の政治経済評論

さらにいえば、NHK自身が「国家の統制から自立している」と騙っているわりには、NHKが存続できるのは放送法第64条第1項本文という条文を国家が準備してくれているからであり、その意味では、NHKは「国家の統制から自立」しているとはいえません。

結局のところ、「公共性」も突き詰めていくならば、現在のように歌番組からクイズ番組、お笑い番組、アニメ番組、大河ドラマまでをカバーするという在り方そのものが、NHK自身が騙る公共性とは大いに矛盾している、という点から逃れることはできません。

この点、NHKを巡っては、とにかく「ツッコミどころ」だらけなのですが、著者自身は基本的にNHKも「利権団体」の一種だと考えており、そして、利権団体は得てして深い議論を徹底的に嫌う、という傾向にあります。

しかし、NHK問題を巡っては、問題点は「公共放送」だけにあるのではありません。

職員の異常な高給水準、1兆円を超える巨額の金融資産、数多くの関連団体、そして『日本新聞協会がNHKに受信料引下げなどの改革を要求』などでも触れた巨額の剰余金問題など、調べれば調べるほどに、さまざまな関連論点が芋蔓式に出て来ます。

異常に高額な人件費、有り余る資産――。NHKの異常性を示す財務指標の実態が、近年、徐々に知られ始めています。こうしたなか、新聞業界といえば、近年、部数減に歯止めがかかりませんが、日本新聞協会が先週金曜日、NHKの繰越金が2000億円近くに達することなどを踏まえ、その経営の在り方を(不十分ながらも)批判する声明を、今年も出しました。これは興味深い現象です。NHKの高額人件費の衝撃昨年の『NHK「1人あたり人件費1573万円」の衝撃的事実』などを含め、これまでに当ウェブサイトで何度も取り上げてきている問題...
日本新聞協会がNHKに受信料引下げなどの改革を要求 - 新宿会計士の政治経済評論

ついでに、「NHKを巡る諸論点」についても、改めて列挙しておきましょう。

NHKを巡る諸論点の例
  • ①現代の日本社会に公共放送というものは必要なのか
  • ②公共放送が必要だったとしても、現在のNHKにそれを担う資格があるのか
  • ③「見ない人からも徴収する」などの受信料制度は妥当なのか
  • ④1兆円超の金融資産、莫大な不動産などは、NHKの経営に必要なのか
  • ⑤少なく見積もって職員1人あたり1550万円超という人件費水準は妥当なのか

(【出所】著者作成)

虚偽字幕問題

こうしたなか、少し前から話題となっているのが、「虚偽字幕問題」です。

NHK字幕問題、BPOが放送倫理違反の審議対象にするかの討議開始

―――2022年1月14日 20時37分付 朝日新聞デジタル日本語版より

朝日新聞によると、昨年末に放送されたNHK・BS1スペシャル『河瀬直美が見つめた東京五輪』で、取材内容と異なる字幕が付けられていたのだそうです。

具体的には、映画監督の河瀬直美さんらが東京五輪の公式記録映画を製作する現場に密着。匿名の男性を映した場面で「五輪反対デモに参加している」「実はお金をもらって動員されていると打ち明けた」、などと字幕で説明した、としています。

そして、この問題を巡っては、先週木曜日の夜、「放送倫理・番組向上機構」(BPO)が審議入りを決定したそうです。

NHK事実と異なる報道 BPOが審議入り

―――2022/02/11 0:02付 Yahoo!ニュースより【日テレNEWS配信】

日テレによると、NHKが公表した社内調査の結果、30代男性の担当ディレクターは上司から事実確認を求められたにも関わらず、「東京五輪反対デモにカネをもらって動員された」という男性に直接、連絡をとっていなかったことが判明。

また、BPOの放送倫理検証委員会も10日夜、「放送倫理違反の疑いがあり、放送に至った経緯などについて詳しく検証する必要がある」として、審議入りを決めた、としています。

倫理問題ではなく違法行為では?

この点、日テレはNHKが当該ディレクターと上司のチーフプロデューサーをそれぞれ1ヵ月の停職処分とすることを発表した、と報じていますが、この処分が軽すぎるのではないか、という点もさることながら、現実には「倫理の問題」ではなく、「放送法違反の問題」ではないでしょうか。

ここで、放送法第4条第1項の規定を確認しておきましょう。

放送法第4条第1項

放送事業者は、国内放送及び内外放送(以下「国内放送等」という。)の放送番組の編集に当たつては、次の各号の定めるところによらなければならない。

一 公安及び善良な風俗を害しないこと。

二 政治的に公平であること。

三 報道は事実をまげないですること。

四 意見が対立している問題については、できるだけ多くの角度から論点を明らかにすること。

放送法第4条第1項第3号には、「報道は事実をまげないですること」と明記されています。

NHKの行為が事実であれば、まさに「倫理の問題」ではなく、れっきとした「違法行為」です。

そして、そもそも違法性があるかどうかが疑われるような事案を、「BPO」などという、放送業界が身内で固めて作ったような組織が審議するという仕組み自体、実効性が極めて疑わしいものです。

というよりも、当ウェブサイトで以前からしばしば言及しているとおり、NHK自身が騙る放送内容の「公共性」を巡っては、現在はNHKの自主性に完全に委ねられてしまっているかたちであり、NHKから独立した第三者が担保する仕組みが存在していません。

このように考えていくと、やはり、「放送内容はNHKの自主性に委ねる」、「受信料の徴収もNHKに委ねる」、「職員の採用、職員の処遇もNHKに委ねる」、「外国籍の職員の内訳など、都合が悪い資料は国会に提出しない」、といったNHKの在り方が正しいのか、改めて国民的議論が必要ではないでしょうか。

いずれにせよ、NHKを巡っては、叩けば叩くほどに埃が出る組織であるという可能性は濃厚だといえるでしょう。

新宿会計士:

View Comments (12)

  • 日本と日本国民にとって、いらない組織ですな
    テレビを捨てて10年経つが、全く困らない。

  • NHKのことよりも誰がデモの扇動者かを知りたい。シールズの扇動者と同一人物か、手口が似ている。
    デモを先導して、メディアに取材させ、「こんなに多くの人が反対してるんですよ。それでもやるんですか?」と問いかける。実はデモしてるのはほんの一握りの人。

  • 「反日組織に支配されているマスコミ界が「反·反日派」を排除している姿」の一段面を視ている感じがします。深く暗い世界。

  •  昨年、ドンキホーテが発売したチューナーレステレビはフルHDでしたが、今年の5月にSTAYERから4K対応のチューナーレステレビが発売されるそうです。
    今後はこういうのが増えていくんですかね?

  • やはりここは、担当ディレクター氏にはクビになってもらって欲しいですね。
    で、「意志に反する証言をさせられ、不当な待遇を受けた」とNHK相手に訴訟が起きてしまうと、実は真相に近づいたりするかもしれません。
    とりあえず、NHKのこの不祥事が徹底的に批判されるのはいいことだと思います。

    ・・・クビにはしないだろうなぁ。

  • 「東京五輪反対デモにお金を貰って参加している」というくだりについてはウソはないと思いますけどねw
    国会や首相官邸、沖縄ほかの米軍施設、日本各地の自衛隊施設、果ては主要電力会社の本店など、例を挙げれば枚挙に暇がない様々な反対デモに毎回同じような顔触れがそろっていたり、使っている団体は違うはずなのに同じナンバーの車両がいつも写り込んでいるなど、手の内の分かり切った連中が結集していることなどから分かる通り。

    これで反対デモがビジネス化してませんなんてたわ言が通用するはずがありません。
    これを審査するBPO自体も審査を行う面々を見れば丸分かりな通り、そっち側の人間の集まりで、到底事実に基づく正しい判断なんて望むべくもない。

  • 報道以外でも普通に 当時 植 民 地 だった朝鮮(韓国) とか、人物紹介で
    行ってますな
    シルクロードのヤラセ、奇跡の詩人で傀儡讃美、消防団で男性と同じ事したいが
    男性と同じ訓練はしたくない生物的には女性な方を取り上げたドキュメント的なものとか
    公共放送が税金同様に料金取り立ててやる内容なのか甚だ疑問

    • 774様

      最近のドキュメンタリー映像、中国ばっかりだしね…

      せめて放送法に罰則も明記していただきたい。
      悪意をもって捏造した社員やチェックしても放送しちゃった責任者は減俸とかじゃ済まない罰則で。

      官僚・公務員は辞めりゃ最大責任とった事になるのが疑問。
      対外的捏造日本下げなんて、金銭換算したらとんでもない被害額。
      きちんと責任背負わせないと無くならないと思います。

  • こんな事しておいて、そこである必要がない渋谷の一等地の放送局やら本社(?)やらの建て替えに5000億円〜8000億円もかけて法に守られながら国民から強制侮蔑ピンはねし続ける…
    あの土地って国有なのかなNHK所有地なのかもわからんのだが…

    無理あるなぁ

    首都圏でも他の県なら地価安いだろうに。
    芸能人の交通の便? 知りませんよそんなもの。
    誰がバラエティー放送してくれって言ったよ…

    その東京都周辺の県にもスタジオ付きで放送局もってるし。
    神奈川・千葉・埼玉なんて近すぎるから廃局して事務所だけ賃貸で借りたら?

  • 元の発言に無い「韓国」の文字を字幕でねじ込んだ件とかそこまで問題にはしてなかったなあ
    あれも原因究明と再発防止策を示して欲しいのだけど

  • 立ち位置は、公営でも民営でもない”異法人”
    やり逃げて「じゃあな!リズム」の”違法人”

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