1ドル1200ウォンの大台を再び突破した韓国ウォン

韓国ウォンが1ドル=1200ウォンの水準を突き抜けたようです。『米韓為替スワップ終了で韓国の外貨準備はどうなるのか』でも議論したとおり、総額600億ドル相当の米韓為替スワップが失効した現在、外為市場でウォン安基調が続くのであれば、もしかすると韓国の通貨当局は外貨準備をジリジリと溶かしていくという展開もあり得るのかもしれません。

1ドル=1200ウォンの壁を突破

米韓為替スワップ終了で韓国の外貨準備はどうなるのか』では、2021年12月末をもって、韓国の外貨準備高が減少に転じた(かもしれない)、という話題に触れましたが、その直後の本日、外為市場では大変興味深い現象が生じています。

1ドル=1200ウォンの大台を、行きつ戻りつしているようなのです。

韓国銀行の公式データによると、引け値ベースで1ドル=1200ウォンの大台を最後に超えていたのは2020年7月24日(1ドル=1201.50ウォン)でしたが、およそ1年半ぶりに1ドル=1200ウォンの大台に達した格好です。

このあたり、当ウェブサイトで以前から申し上げてきたとおり、どうも韓国の通貨当局は、なかば公然と為替介入を繰り返しているというフシがあります(ちなみに『米国財務省が「韓国は為替介入を行っている」と認める』でも述べたとおり、韓国の為替介入の事実は米国政府も把握しています)。

韓国ウォンが米ドルなどに対し上昇し過ぎれば(=ウォン高・ドル安となりすぎれば)、韓国の輸出産業にとっては輸出競争力が損なわれることにつながりかねませんので、これはこれで困りものです。

その一方で、韓国ウォンが米ドルなどに対し下落し過ぎれば(=ウォン安・ドル高となりすぎれば)、外貨建てで借りている債務の自国通貨換算額が上昇し過ぎ、自国企業の債務状態が悪化してしまいかねませんので、これもまた困りものです。

つまり、韓国の通貨当局にとっては、ウォン安になっても、ウォン高になっても、「困りもの」なのです。

ドル建てスワップは1本もない

こうしたなかで、現在の韓国が諸外国と保有している通貨スワップ、為替スワップについては図表のとおりですが、このなかに、CMIMを除けば、米ドル建てのものは1本もありません。

図表 韓国が諸外国と保有する通貨スワップ等
相手国と失効日相手通貨とドル換算額韓国ウォンとドル換算額
UAE(2022/4/13)200億ディルハム ≒ 54.5億ドル6.1兆ウォン≒50.7億ドル
マレーシア(2023/2/2)150億リンギット ≒ 35.6億ドル5兆ウォン≒41.6億ドル
オーストラリア(2023/2/22)120億豪ドル ≒ 85.9億ドル9.6兆ウォン≒79.8億ドル
インドネシア(2023/3/5)115兆ルピア ≒ 79.9億ドル10.7兆ウォン≒89.0億ドル
中国(2025/10/10)4000億元 ≒ 627.5億ドル70兆ウォン≒582.0億ドル
スイス(2026/3/31)100億フラン ≒ 108.7億ドル11.2兆ウォン≒93.1億ドル
トルコ(2024/8/12)175億リラ ≒ 12.7億ドル2.3兆ウォン≒19.1億ドル
二国間通貨スワップ  小計…①1,004.8億ドル114.9兆ウォン≒955.3億ドル
多国間通貨スワップ(CMIM)…②384.0億ドル
通貨スワップ合計(①+②)1,388.8億ドル
カナダ(期間無期限)※金額無制限

(【出所】各国中央銀行ウェブサイト等を参考に著者作成。なお、カナダとのスワップは通貨スワップではなく為替スワップ。換算レートは日本時間2022年1月6日夕方4時半ごろのものを使用)

いちおう、二国間通貨スワップの小計は1000億ドル少々ですが、このうち6割強を占めているのが中国との人民元建ての通貨スワップであり、これは引きだしても米ドルに両替することは困難でしょう。

今後の展開に注目

もちろん、為替相場というものは、上がったり下がったりするものではあります。

ただ、現在、世界の外為市場では、基本的に米FRBが金融緩和政策の段階的縮小(テーパリング)を加速するなかで、ドル高となりやすい地合いが続いていることもたしかでしょう。

米韓為替スワップが存在しないなかで、ウォン安基調が続くようであれば、もしかすると韓国は外貨準備をジリジリと溶かしていくという展開もあるのかもしれない、と思う次第です。

本文は以上です。

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読者コメント一覧

  1. タナカ珈琲 より:

    夕食を食べて、ネットで確認したら1205.16になっていました。ワタシはニッコリ微笑みながらKの将来が心配になって来ました。ホントです。

    1. haduki より:

      タナカ珈琲様
      確認してきましたら、15:00頃から急落をはじめ
      18:55現在1206に達していますね

      1. がみ より:

        タナカ珈琲様 haduki様

        こんな時、CMIM加盟国のどこかがスワップちょっと行使して韓国の背中をそっと押してあげる優しさにあふれた世界をふと想像してしまいますね。

  2. サムライアベンジャー より:

     為替スワップには為替を安定させる使い方はできないと理解していましたが、アメリカとの為替スワップ終了と呼応して、ウォン安が進んだように見えますね。

     まあ米国の政策で、ドル高が進む、相対的にウォン安が進んでいるのでしょうか。

     為替介入を行っているはずの韓国の中央銀行には防衛する力がかなり弱まっているように見えます。韓国の外貨準備にどれだけちゃんと現金化できる資産があるか疑問ですが。

  3. 愛読者 より:

    お隣の心配も大切かもしれませんが,私としては円のほうも心配しています。ちゃっかり,ドルの持ち高を増やしていますが。

  4. 引きこもり中年 より:

    独断と偏見かもしれないと、お断りしてコメントさせていただきます。
    (というより、自分でも外れて欲しいので)
    私としては、韓国のことより、円の対ドルレートの方が心配です。
    駄文にて失礼しました。

  5. しきしま より:

    まだまだ油断はできないですね。
    以前も「1300行くか?」と皆がワクワクしていたらまたウォン高に振れて、いつの間にか1200を切っていました。
    ここ数日も1190付近をウロウロしていて、けっこう少なくない頻度で1170台まで戻ったりしていました。

    大統領選が終わるまでは何だかんだ言ってしぶとく粘るのではないでしょうか。
    カタストロフが来るのはその後だと、個人的には思います。

  6. 豆鉄砲 より:

    このままじわりじわりとドルを溶かし、3月頃から大統領選挙や配当の支払いでドッカンとなりますかねぇ?

  7. より:

    世界でも屈指のエンタメ通貨として名を馳せる韓国ウォンが、久しぶりに真価を発揮しつつあるという感じですね。多くの通貨では、「市場」とかいうわけのわからない怪物に支配されていますので、上がっても下がっても「ほぉ~」とただ眺めるよりないのですが、韓国ウォンの場合、韓銀というプレーヤーがはっきり見えてますので、「頑張れ韓銀」「負けるな韓銀」と声援を送ることができます。所詮は他人事なので、とっても気楽です。エンタメ通貨たる由縁ですね。

    ちょっと真面目な話をすると、今年のキーポイントは、FRBが予告している利上げに日銀がどこまで追随できるかということです。追随できなければ、円安が進みます。125円程度まではあり得る線ではないかと、個人的には思ってます。

    1. 匿名 より:

      その辺まではアリアリと思っています。 世間は「てーへんだ!てーへんだ!」ですね。それが彼らのビジネスなのです。 それに乗っかてる「てーねんだ!てーへんだ!」勢力。ご苦労様(笑)です。 

      金利で追従しませんし、極度のドル高はそこまでです。

  8. sqsq より:

    ドル/ウォンの市場はどれくらいの規模があるのか?
    一般の韓国人がFXで参加できるのか? それとも韓国銀行対投機筋の一騎打ちなのか。
    調べたら日本に円/ウォンを扱うFX会社はSBIの1社だけだった。
    ウォンはマイナー通貨なので、円/米ドル、円/豪ドルのようにFX取引のカバー先が少ないということか。知ってる人いたらお願いします。

  9. 福岡在住者 より:

    少し前から、ウォン安ではなくドル高なのでは? FRBの金利上げまっせ!(強弱)発言でいろいろゾワゾワしている昨今ですが。 

    迷惑な隣国ですが、これまでの努力?(売国+売国利確定売り)で、そこそこ(潰せないレベル)になっていると思います。 おめでとう!

    たぶん、デフォルトしませんよ。 ここまで大きくなったら・・・  

    1. 世相マンボウ . より:

      >たぶん、デフォルトしませんよ。
      おっしゃるとおり、
      ズタボロ経済での自若通貨ウォンですが
      デフォルトはしないと思います。
      すでに先の通貨危機の後始末で、
      サムスンはじめ韓国財閥は
      外資が過半の米国の経済植民地状態です
      それだからこそオバマ民主党時代を中心に
      米国は韓国の肩を持ってきたわけです。

      また、文ちゃんもそれは承知で
      韓国から逃げ出したいサムスントップを
      投獄して人質にしたりと頑張ってます。

      だた、中共の走狗の姿勢がありありの
      文ちゃん政権を米国も容易に甘い顔して
      助けることはないでしょうから
      北朝鮮のような経済瀬戸際外交を
      鑑賞することになりそうです。

      注意スべきは間違っても、
      巨額売国のだスワップのような
      我が日本が、かもねぎでたかられることは
      二度とあってはなりません。

  10. 陰謀論者 より:

    私、為替のことは詳しくないんですが、今日の22:30ぴったりくらいに下に長いひげができているのは、介入に失敗して踏み上げられちゃったんでしょうか?
     介入だとしたらもっと分かりやすくして参加者を疑心暗鬼にさせたほうが効果があるんじゃないでしょうか。
     私が日銀砲の踏み上げから強制利確退場になったときは、ど素人でもわかるくらい、わかりやすくやっていたような気がします。
     戦力は小出しにすると負ける気がするんですが。それともウォンに味方する筋の方でもいるのかしらん。

  11. 世相マンボウ . より:

    昨年末からの韓国ネットの反応は
    吉本新喜劇を見てるよりおもしろいと感じます。
    もともと、
    トルコリラと韓国ウォンという
    脆弱通貨同士の通貨スワップは
    通貨崩壊リスク加速の効果しか
    無いのにと言われてました。
    (私は親日国トルコのことを心配してました)

    昨年末のトルコリラ急落で
    韓国のネットでは
    「なんでトルコみたいな国と通貨スワップ結んで」
     我が韓国が迷惑かけられなきゃいけないんだ」?
    と、韓国ウォンが脆弱通貨であること棚に上げての
    思い上がりのコメントで溢れてました。
    そんなこというなら、どうして
    G7国際決済通貨である日本円と
    韓国ウォンみたいなものと
    スワップなんてとんでもないと
    なるのにと笑いがこみ上げます。

    まあ、潤沢と宣伝される
    韓国の外貨準備高なるものは
    アラン・グリーンスパンの回顧録でも
    バラされているように
    IMF管理下での時期を除いては
    韓流水増しだったことが知られている中で
    韓国中央銀行さんの不当為替介入での頑張りを
    しばし見物することといたしましょう。

    1. バシラス・アンシラシスは土壌常在菌 より:

      トルコ以外ともスワップ結んでいたはず

    2. どみそ より:

      BTSがいるから 大丈夫でしょう。
      精神勝利です。

  12. 草W より:

    全くの経済・金融オンチですが、韓国の「外貨準備」の中身には「韓進重工が発行した米ドル建ての社債」等々のミズモノが入っていないと言う保証はあるのでしょうかね?

  13. epicurian より:

    歴史は繰り返す。という言葉を意識すると、前にIMFの支援(介入)を受けた時も大統領選挙のタイミングだったような…
    国政よりも関心を奪われるような事があって、かつレイムダックで指導力も発揮できず、ズルズルと行くかもしれません。
    まあ、高見の見物が出来る立場が有難いです。

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