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韓国警察幹部竹島上陸で外相会談も実現せず=時事通信

これを日韓関係の「悪化」と呼ぶべきなのでしょうか。時事通信によると、林芳正外相が就任してからもうすぐ1ヵ月が経過しますが、日韓外相会談が行われる予定はないそうです。韓国警察庁長の竹島不法上陸が影響したためだというのが時事通信の説明ですが、個人的には外相同士の会談すらなくなった現在の状況を日韓関係の「悪化」と呼ぶのが適切なのかは微妙だと思う次第です。

韓国に下手な譲歩ができなくなった日本外交

「独り相撲」で勝手に盛り上がる「朝鮮戦争終戦宣言」』を含め、当ウェブサイトでこれまでに何度となく取り上げてきたとおり、日韓間には諸懸案が山積みであり、しかもそれらの諸懸案は、ほとんどが韓国側からの日本に対する一方的な不法行為(国際法破り・条約破り・約束破り・外交非礼・準戦闘行為など)です。

文在寅(ぶん・ざいいん)韓国大統領の唯一にして最大の関心事は「北朝鮮」である、というのが、これまでの当ウェブサイトの見立てです。こうした見立てが正しい証拠が、またひとつ、出て来ました。なぜか韓国でしか議論されていない「朝鮮戦争終戦宣言」を巡って、勝手に盛り上がっているようなのです。もちろん、韓国が壊した日韓関係を復元しようとする努力は、韓国側からはまったく出てきていません。日韓関係を壊した文在寅政権韓国の文在寅(ぶん・ざいいん)大統領は、あと5ヶ月で任期を終えます。文在寅政権下の韓国は、日本...
「独り相撲」で勝手に盛り上がる「朝鮮戦争終戦宣言」 - 新宿会計士の政治経済評論

そして、これらの諸懸案を巡っては、最終的には次の3つのどれかしか落としどころがありません。

日韓諸懸案を巡る「3つの落としどころ」
  • ①韓国が国際法や国際約束を守る方向に舵を切ることによって、日韓関係の破綻を回避する
  • ②日本が原理原則を捻じ曲げ、韓国に対して譲歩することによって、日韓関係の破綻を回避する
  • ③韓国が国際法や国際約束を守らず、日本も韓国に譲歩しない結果、日韓関係が破綻する

(【出所】著者作成)

まことに残念な話ですが、現在のところ①の選択し、すなわち「韓国が国際法を守る方向に舵を切る」という形での諸懸案の解決は、期待がし辛いのが実情でしょう。

そうなると、日韓関係の破綻を防ぐためには、何らかの形で日本が韓国に対し譲歩することが必要です(これには、たとえば「2018年の火器管制レーダー照射事件を不問に付す」、「自称元徴用工判決問題で韓国の判決を認める」、などが考えられます)。

ただし、念のためお断りしておきますが、個人的にこの②の選択肢については、日本国民の1人として、絶対に御免蒙りたいと思う次第ですし、同じように考えている日本国民は大変に多いのではないでしょうか。

このため、もしも日本政府がハンドリングを間違え、韓国に対し何らかの譲歩をしてしまった場合、日本国民の怒りの対象は韓国に対してではなく、その韓国に下手な譲歩をした日本政府の側に向かう可能性が非常に高いと思います。

韓国の不法行為を「不問」に付してきた日本外交の失敗

思うに、『失敗に学ぶ日韓外交:「密室外交」からの脱却が必要だ』でも議論しましたが、日韓両国は何かトラブルがあると(つまり韓国が何らかの問題を作り出すと)、韓国側が密室で日本に譲歩を要求してきたというのが、1965年の国交正常化以来の日韓外交だったのではないかと思います。

日常生活で生じるさまざまなトラブルは「密室」で解決せず、必ず第三者を絡ませなければならないのと同様、信頼できない相手との外交も、必ず第三国の目があるオープンな場で行うべきです。基本的に「密室外交」は「約束を守る」・「信義を重んじる」相手としか成立しません。日韓外交の過去の失敗は、まさにこの点にあるのではないでしょうか。日常トラブルと「密室の解決」中学校のイジメ事件に巻き込まれたA君最近になって、ふと思い出したエピソードがあります。個人的な知り合い(というよりも、ごく近い親戚筋)の話です。登場...
失敗に学ぶ日韓外交:「密室外交」からの脱却が必要だ - 新宿会計士の政治経済評論

そして、「密室の合意」をベースに日本が韓国に謝罪したり、賠償したりすると、韓国はとたんにその合意を反故にし、「そら、日本が謝罪したぞ」と国際社会に対して喧伝し、「日本が悪い」ことにされてしまっていたのではないでしょうか。

たとえば、1993年の「河野談話」にしたって、おそらくは韓国の側から、「慰安婦の強制連行が事実だったことにしてほしい」、「今回だけは日本が謝ってほしい」、という「密室ベースの依頼」があったのではないかと個人的には睨んでいます。

実際、今日において「慰安婦問題」は、「日本軍による性的奴隷の問題」として全世界に認識されています。

これなど、日韓密室外交の大きな失敗だったといえるでしょう。

また、『慰安婦合意で振り返る「岩盤支持層を敵に回すリスク」』でも取り上げたとおり、2015年12月に日本政府が韓国政府との間で慰安婦合意を取り交わした際、官邸には抗議が殺到していた、といった報道もありました。

「慰安婦合意の当時、官邸には抗議が殺到していた」=朝日新聞当ウェブサイトで数日前、姜昌一(きょう・しょういち)氏の駐日韓国大使としての信任状捧呈式を話題として取り上げました。この問題点は、日本の国民感情に照らし、この人物を天皇陛下の御前に立たせることの是非にあったわけであり、こんなことを続けていれば、菅義偉政権に対する岩盤支持層が離反していく事態も懸念されます。ただし、似たような事例は安倍政権下でもありました。それが、2015年の日韓慰安婦合意です。総合的な見方こそが大事安倍政権の2822日をどう見...
慰安婦合意で振り返る「岩盤支持層を敵に回すリスク」 - 新宿会計士の政治経済評論

そして、この慰安婦合意も、韓国で政権が変わったらあっけなく破られました。日本国民の懸念は的中した格好です。

日韓トラブルの「国際化」が大事

もちろん、経済・産業的に見ても、外交・安全保障的に見ても、現在の日本にとって韓国との関係はそれなりに重要ですので、日本が韓国との関係を積極的に「破綻」させることは難しく、また、そうすべきでもありません。

しかし、それと同時に、現時点において、日本がこれ以上、韓国に対して何らかの譲歩をすることは不可能であり、必然的に、日韓関係を巡っては、当面、下手をすると数年は、現在の膠着状況が続かざるを得ないのではないでしょうか。

こうしたなか、日韓諸懸案に対する日本政府の動きで特筆すべきものがあるとしたら、『日韓の「意見の相違」で日米韓共同記者会見取りやめに』などでも取り上げた、「日米韓3ヵ国共同記者会見の中止」でしょう。

米国で17日、日米韓3ヵ国の外務事務次官級協議が開かれましたが、その後の会見が異様でした。会見場に現れたのはシャーマン氏1人だったからです。シャーマン氏は「日韓間で意見の相違はあるが、それらについては解消されつつある」などと述べたそうですが、いったい誰が信じるのでしょうか。しかも、韓国側がしきりに強調している「朝鮮戦争の終戦宣言」についても、シャーマン氏は言及を避けました。シャーマン氏「日韓両国で意見の相違がある」米ワシントンで現地時間の17日、日米韓3ヵ国の外務次官級協議が開かれました。出席し...
日韓の「意見の相違」で日米韓共同記者会見取りやめに - 新宿会計士の政治経済評論

これは、現地時間11月17日に米国で行われた日米韓3ヵ国外務次官級会合で、日本側が韓国の警察庁長の竹島不法上陸に抗議する形で共同記者会見への参加を拒絶した、という「事件」です。

これについては『日本が会見見送りで米国のメンツ潰した「本当の意味」』でも申し上げたとおり、この「事件」の本質とは、竹島問題の「国際化」にあります。

松野官房長官は昨日、ワシントンで日米韓の共同記者会見が見送られたのは日本政府の判断だったことを認めました。結果的に、米国に対する牽制となったのではないでしょうか。なぜなら米国は、竹島占拠をはじめとする韓国による明らかな不法行為の数々に対し、見て見ぬふりを貫いてきたからです。ついでにいえば、日本政府が現在推進しているFOIPも「クアッド」も、もしかすると、本当の効果は「違うところ」にあるのかもしれません。「6対6」じゃなく「5対6」ですよ!本文に先立って、最初に、少しだけ寄り道をしておきます。...
日本が会見見送りで米国のメンツ潰した「本当の意味」 - 新宿会計士の政治経済評論

つまり、日韓両国の同盟国でもある米国に対し、竹島問題の存在を強くアピールし、「竹島問題が日米韓3ヵ国連携に直接影響する」ということを強く牽制したという意味では、日本の外務省は珍しく、大変に良い仕事をしたと思う次第です。

くどいようですが、「密室外交」自体、「ウソをつかない」、「約束を守る」など、信頼に値する相手としか成り立ちません。

日本政府がここ数年、積極的に推進している「自由で開かれたインド太平洋」(FOIP)構想も、これに基づく「日米豪印4ヵ国(クアッド)」による協議の枠組みも、結局のところ、「信頼できる」という相手だからこそ成り立つものです。

おそらく日本は今後、FOIP諸国などとは「密室協議」を積極的に推進していけば良いと思いますが、それと同時に、「約束を破るのはわが国の文化だから、日本はそれを理解せよ」などと平然と言い放つような相手と密室協議をすべきではありません。

韓国メディア『中央日報』(日本語版)に昨日、ある意味で凄い記事が掲載されました。やや乱暴に要約すれば、「約束を破るのは韓国の文化みたいなものだから、日本はそれを容認しろ」、という議論です。正直、呆れて物も言えない低レベルな主張ですが、ただ、私たち日本人が対応せねばならないのは、「相手に約束を守らせること」ではありません。「相手が約束を破る国である」ことを前提としたうえで、関係を薄めて距離を置くことと、可能であれば適切な罰を与えることです。韓国はインチキ外交の国韓国と北朝鮮、5つのインチキ外交...
韓国メディア「約束破りは韓国の文化。日本は理解を」 - 新宿会計士の政治経済評論

今後の日韓関係が修復に向かうのか、破綻に向かうのかは存じ上げませんが、少なくとも韓国との間では、竹島問題を含めた諸懸案を積極的に「国際化」し、韓国の日本に対する不法行為の数々について、国際社会のスタンダードで判断してもらう、という態度が重要でしょう。

日韓外相は電話会談すらない状況=時事通信

こうしたなか、時事通信には昨日、こんな記事が掲載されていました。

日韓外相、電話会談すらなく 「竹島上陸」でさらに冷却

―――2021年12月05日21時08分付 時事通信より

これは、林芳正外相が就任してから10日で1ヵ月を迎えるなか、林外相が各国外相とあいさつを兼ねた電話会談を重ねる一方で、韓国の鄭義溶(てい・ぎよう)外交部長官とは会談の「見通しが立っていない」と指摘する記事です。

時事通信によると、林外相は11月13日にアントニー・ブリンケン米国務長官と会談したのを皮切りに、これまで約15ヵ国の外相と電話、テレビ会議システムなどで会談しているものの、このなかに韓国は含まれていないと指摘。

そのうえで、外務省幹部が「韓国は当分ない」と断言した、と報じています。

本来ならば、新外相の就任は電話会談を推進する良い機会であるはずですが、なぜ、日韓外相会談が開かれていないのでしょうか。

時事通信は韓国警察庁長の竹島不法上陸に日本側が反発したことで「対話ムードがしぼんだ」、「竹島上陸の影響で(電話会談の)調整すら行われない状況に陥った」と述べるのですが、日韓の対話ムードが欠落している状況は、べつに今になって始まったことではないと思います。

日韓の「外交閉塞」状況は当面続く

実際、茂木敏充前外相も、今年5月のロンドンG7外相会合などで鄭義溶氏と対面会談をしていますが、正直、直接会っても両者の会談は平行線をたどるのみであり、決して生産的なものではありませんでした。

また、時事通信の記事では触れられていませんが、今年1月に来日した姜昌一(きょう・しょういち)駐日韓国大使自身も、菅義偉総理や岸田文雄・現首相、茂木前外相や林外相と面会できておらず、その意味では、日韓の外交チャネルは閉塞状況が続いているのです。

少なくとも文在寅(ぶん・ざいいん)政権が続くあと5ヵ月間は、日韓の対話が極端に少ないという状況が続く可能性が高いと見るべきでしょうし、また、文在寅政権が終わったあとで、日韓間の対話が拡大すると期待するのは尚早です。

そして、来年3月時点で文在寅氏の後継者に選ばれるのが「左派」(?)の尹錫悦(いん・しゃくえつ)氏なのか、「極左」(?)の李在明(り・ざいめい)氏なのか、あるいはそれ以外の人物なのかはまだわかりませんが、誰が次の大統領になったとしても、状況はあまり変わらない気がします。

もっとも、「韓国が日本を挑発する行動を取り、日韓が密室で話し合い、日本が譲歩する形で丸く収める」という形での、古き悪しき日韓関係が機能しなくなったという意味では、現在の状況を「日韓関係の悪化」と呼ぶのが正しいのかについては微妙だと思う次第です。

新宿会計士:

View Comments (13)

    • イーシャさま
      ふと思った事です。
      立憲が主張していたゼロコロナは、現状の様な状態の事で、実現不可能な話では無かったとか、言い出さないかな。

      もう一つ
      「ウィズコロナのコリアとウィズコリアするニダ。」
      ただ、感染拡大しているだけじゃん。

      お後がよろしいようで。

  • 外交は、価値観の共有、軍事安全保障、経済安全保障などの要因から、相手国との優先順位が出来て、必要に応じて取捨選択されるものでしょう。
    価値観を共有せずに、安全保障上の価値も下がり、感情だけでNO JAPANをするような国の優先順位が下がるのは、当たり前です。
    それが、関係悪化になるなら、それまでの事。
    「約束を守らない嘘吐きの国の優先順位を上げろ」という話の方が、よっぽどおかしな話だと思います。

  • 日本でコロナ感染者数が反転してきたかな
    正月開けくらいに、また緊急事態宣言かも

  • Q.「日韓関係の悪化(あっか)」と呼ぶのが正しいのかについては微妙・・
    A.「日韓間は空く化(あくか)」しています。

  • 「竹島問題の国際問題化」「韓国の特有性、異常性の国際問題化」と進める意味では、次期大統領は李在明氏が最適人かと思います(笑)。
    又、米国は、韓国の異常性を薄々認識しつつも、その対価(負担)を日本へ押し付けてきましたので、米国以外の国(特にクアッドやファイブアイズ、ASEAN)も巻き込む事がポイントかと考えます。

  •  外務大臣就任の挨拶程度の会談ならTwitterとかFacebookでやり取りしたらそれでええやん。
    SNSを活用した外交をこれからの日韓関係のスタンダードにしていきましょう。

    • ファクスで送りつければいいんじゃないの。
      どうせ 返信には ろくなこと 書かれていないでしょうし。

  • この際、日本の外交白書には、

    「韓国は、わが国と価値観が異なる隣国」と
    「我が国の領土を不法占拠している国」と表記すればよいと思います。

  • 本文中に引用された時事通信の記事末尾に、
    >『元徴用工、慰安婦問題などの懸案を協議する事務レベル対話は継続しており、日韓外交筋は「韓国側がやりたいと言えば検討する」と話す』

    とありますが、そんなこと聞いてへんで。国民の目の届かない「事務レベル」の対話こそ密室外交と違いますか。まあ、記者が勝手にそう書いているだけかもしれませんが。

    • 事務レベルで、韓国側がやりたいと言えば検討すると聞いて、おととしの夏の
      「事務的説明会」
      を思い出しました。

      • 韓国紙に書いてあることは自分に都合よく事実が粉飾されていて、まったく正確性に欠けていますね。