本稿は、「速報」的に、いくつかのメディアが報じた給付金に関する議論を取り上げておきます。報道等によれば、自民党と公明党は本日、18歳以下の子供に対する10万円相当(5万円の現金と5万円のクーポン)の支給で合意し、年収960万円以下の所得制限を設けるかどうかについては継続協議する、などとされたようです。その政策効果については疑問ですが、これについては今後の国会論戦に期待すべきなのでしょうか。
詰めが甘い、給付金議論
今朝の『利権構造にヒビが入り、給付金議論がさっそく活性化へ』でも触れた論点のひとつが、公明党が主張する「18歳以下の子供に対する一律10万円の給付」という議論です。
これについては正直、所得制限や年齢制限を設けるということに関しては、どうも政策としての必要性がよくわかりません。
「生活困窮者への支援」を目的としているのであれば、子供がいない世帯が支給対象から漏れてしまうという問題点がありますし、「経済の活性化」を目的としているのであれば、所得制限を設けてしまえば、消費喚起という趣旨が損なわれます。
つまり、現金の給付は良いのですが、これをいったい何のためにやっているのかについては、もっと詰めていく必要がある、というわけです。
大変残念な続報
ところが、これに大変残念な「続報」がありました。
複数のメディアの報道によれば、自公両党の幹事長は9日、国会内で会談し、18歳以下に10万円相当を支給することで合意し、うち先行して現金5万円を配り、来春をめどに残り5万円をクーポンで支給するなどの方針を確認したのだそうです。
また、自民党の茂木敏充幹事長は公明党の石井啓一幹事長に対し、年収960万円以下に限定する案を示し、石井氏が党内に持ち帰り協議すると伝えたことを、石井氏が明らかにしたのだとか。
現金給付・クーポン各5万円 自公、所得制限は検討継続
―――2021年11月9日 13:22付 日本経済新聞電子版より
自公、現金・クーポン各5万円支給で合意 子供給付
―――2021/11/9 13:29付 産経ニュースより
与党「10万円相当」給付で合意 自民、年収960万円以下主張
―――2021年11月09日13時30分付 時事通信より
いくつかのメディアの内容を確認したのですが、どのメディアもだいたい同じようなことを報じています。
10万円を現金とクーポン5万円ずつに分割したという点を除けば、だいたい公明党の案を自民党が丸呑みし、これに所得制限を主張している、ということだと考えて良いでしょう。
また、日経や時事通信などによると、これらとは別に自民党が衆院選で訴えた生活困窮者への経済支援に関し、住民税非課税世帯を対象に10万円を支給することとしたほか、マイナンバーカード所有者へのポイント付与については額を引き続き調整する、などとしています。
これで良いのか?まったく狙いも効果もわからない政策
いちおう、これらのメディアの報道から考えるならば、生活困窮者でかつ子供がいる世帯には、世帯に10万円に加え、子供1人あたり5万円の現金と5万円のクーポンが配られる、ということであり、生活困窮者ではなく、子供がいない世帯には、現金もクーポンも一切配られない、ということです。
これを図示すると、おそらくは次の図表のとおりです。
図表 今回の給付金案
区分 | 現金 | クーポン |
---|---|---|
生活困窮・子供あり | 10万円+5万円×子供の人数 | 5万円×子供の人数 |
生活困窮・子供なし | 10万円 | なし |
所得960万以下・生活困窮でなく子供あり | 5万円×子供の人数 | 5万円×子供の人数 |
所得960万以下・生活困窮でなく子供なし | なし | なし |
所得960万円超・子供あり | なし | なし |
所得960万円超・子供なし | なし | なし |
(【出所】報道等をベースに著者作成)
正直、意味がわかりません。
そもそも生活支援という意味では、所得制限を設けることについては理解できなくもないのですが、960万円を1円でも超えたら「10万円×子供の人数」がもらえないというのもよくわかりませんし、少なくとも消費の活性化という効果は期待できないでしょう。
このあたり、さっそく、国会議員の皆さんが仕事をするという意味で、出番がやってきたようです。
自公で調整するというよりも、どちらかといえば、今後補正予算を議論する国会論戦のなかで修正されるかどうかにも注目したい点です。
View Comments (37)
公明党も何というか、立憲共産党と変わらないクズ政党と思うのは間違いでしょうか・・・。
年収960万円以下の根拠
国家公務員給与を定める「行政職俸給表」や地方公務員の給与を定める「号」「級」で課長職以下のほぼ全員が該当することが困窮の目安のようです。
ばかばかしい。
馬鹿だなあ…
人(公明党)の話を聞きゃあいいってもんじゃないだろ。
折衷案にしても複雑で意味不明さに拍車がかかってるじゃねーか。
公明支持よりも圧倒的な自民支持の有権者のことを考えろや、ほんとお人好しで押しの弱いお坊ちゃんだこと。
対抗馬の勝利でしたね。
しっかしまあ……元の案よりだめでわかりにくい案になりましたね。妥協を探る時にありがちですけど。
> 住民税非課税世帯を対象に10万円を支給することとした
一番の問題はこれが守られるかどうかですね。あとは1人10万円なのか1世帯10万円なのかでも違います。
引き続き注視しましょう。
18歳以下の青年、少女に10万円を配るとは公明党も中々エグいことを考えますね。
死にゆく犬作先生からの最後のお年玉的な意味合いなのでしょうか。
しかし、純粋に親が搾取せず子供が自分の頭で10万円を使うとなるととても興味深い。
平成の子供達はスーパーファミコンとかポケモンなどにお金を使っていましたが令和では何に使うでしょうか。
ダイソー、マスク1千箱 うまい棒1万個 高校生なら参考書が買いまくれますね。
ヒャッハー酒池肉林じゃーと札束を手に少年達が商店街を練り歩いていたら世紀末な気がしないでもありませんが。思考の実験としては夢がありますが。デフレの時代でもないので効果は薄いかもしれませんね。
ハッ!某宗教団体のお子様に10万円を配ってしまうと年末には全て布施リンチョされてしまうので某教団を肥らせるだけですね。何と夢のないことよ。
簿記3級様。
大胆な書き込み...。
ワタシは恐くてそのような書き込みはしません。
死に行く、『犬作』…
蛇足です。
大胆さに敬意を表し、座布団10枚です。
私も好きです
>死にゆく犬作先生
生き仏ですね。
死なせて貰えないとか。
門外漢様
既に「空海様」の境地に達していると思います。
朝・夕の二食の食事もつけて。
仏教的には
西ゆく 犬作
も、ありかと…
わたくし、口が悪すぎました。
反省するとともに描写を代えさせていただきます。
晴れた初夏の日に育ちつつある稲のイキイキした田圃を眺めながら
「犬作どん! もうすぐ彼岸じゃのう〜」
くらいにしておきます。
生活困窮者支援、経済活性化の両立ということであればまた一人一律10万円配布とすれば良いのに・・・と思います。ただし現金だと貯金されてしまう可能性があり、貯金されると経済活性効果がないので結構厳しめの期限のついたクーポンにすればよいのでは?と考えたりしてます。そして所得制限や年齢制限はしないほうがよいと個人的には思います。当該制限のボーダーにいる人たちの不満はそれこそ「食べ物の恨みはおそろしい」ではありませんが、根深いものになり来年の参院選にも影響が出る可能性があります。前回の10万円給付の際、やはり所得制限をしようとしていたのは自民党ですが(バックに財務省の影がチラホラでしたが)、ただでさへ鬱憤がたまっている国民に不公平感を煽ってこれ以上鬱憤をためさせてどうするのか?下手をすれば分断だ!ということでいかなる制限をつけるのもよくないとしたのは公明党でした。そのとき自民党(安倍さん)もそういえばそうだねということで制限はなくなりましたが、今回は公明党も何言ってんだか?こういう政策をバラマキと非難する財務省あたりが自公にネジ巻いて暗躍する根が深い財源を踏まえた迷走のような気がします。
(生活困窮者支援、経済活性化の財政出動をしたい政府 VS 国債を増やしたくない財務省)の図
個人的にはこれまで存在したこのような特別給付を一切受け取ったことがないので白けていますが。今回もどうせ受け取れないし。
5万円のクーポンって・・・
大人ならビール1ケースに米10キロに・・・日々の食費に・・・ガス代、電気代、水道代、ガソリン代とか5万円使えるけど
子供が本とか文房具買ってもそんな5万円とか金額にならないでしょ・・・
こういうのは19才の子供とか、
19才の子供を持つ親が
自民党に投票しなくなるから
こういうのは理屈じゃなくて感情が大きいから
自民党に投票しなくなるから
子供も食費や衣服使うぞ
子供の服とか買い物した事ありますか?
遊びに連れて行った事とかありますか?
分かります。真冬に日本横断の旅に行こうとしていた19歳の青年にとっては激怒案件ですもんね。私も10万円あったら冬の日本海と蟹が見たいなあ。
以前「創価学会婦人部」と書きましたけど「婦人部」はなくなって「女性部」に変わっていましたね。失礼しました。選挙のお礼ですから,無視はできないでしょう。ねらいは明確だと思いますが。
マイナンバーカードの3万円は,どうなるでしょうか。これは,財務省の発案でしょうが。
マイナンバーに紐づけると行政コストが安上がりで、不正受給も難しくできるので良いですね。
年齢制限や所得制限は、主に予算削減のためだけに言われてるのでしょうね。経済効果だけを考えるなら、貧困層より富裕層に配る方が効果的、子供(がいる世帯)より大人に配った方が効果的ですからね。
「経済対策として何かやった」「貧困層の味方」「子育て世帯の味方」とアピールしたいだけなんでしょうね。
つまり、経済学的には正しくないが政治的に「正しい」案ということですね。
いや、政治的にすら正しいかどうか怪しいですが。
チキンサラダ様
マイナンバーカードへの銀行口座の紐付け問題は、メリットを与えるのではなく
2~5年を目途に金融機関の口座毎にマイナンバーを登録させるようにし
経過年後、マイナンバーが紐つかない口座にある金額を全て国の収入に
すれば、簡単に紐付ける事ができます。
現在のメリットを与える方法では、立憲共産党支持者は絶対にマイナンバーに
銀行口座を紐付ける事はできません。(マイナンバーは戦争の道具だ!!)
この提案で一番悪い点は、架空名義の口座がバレるので、いわゆる人達の反発を
頂く事ですね。(例:生活保護を貰いながら、豪遊しているとか、外車を
2~3年毎に買い替えする人達等とその支持者)
最近は年代別の支持層のセオリーが変わってきているようです。昔は高齢者というと自民党支持でしたが、最近はその辺がだいぶ左寄りに変わったようです。だからこそ甘利さんや小沢さんみたいな政治家が小選挙区の議席を落としたりするのです。親が甘利さんの選挙区にいるのでわかりますが、彼は古いタイプの利益誘導型のイメージです。その辺の支持層が揺らいだから大物といえどイチコロだったわけです。
若者や壮年の現役たちは結構自民党支持ですね。彼らの動きを出口調査では掴めなかったので、予測の大外しにつながりました。
本題です。現役バリバリ頑張る層は基本政治にはさほど期待してません。選挙に行かないのはそういうことです。自力でなんでも実現できる力があるのですから。唯一政治に言いたいことは「邪魔するな」。今回自民党が勝てたのは、立民が共産とくっついて、もし彼らが躍進すれば「邪魔される」と思った層が動いたのだと思います。お年寄りはある意味利益誘導さえ有れば支持に回りますが、現役層は束縛を嫌います。
若者現役層の存在感はだいぶ強くなったと思います。高齢者天下は終わったと。自民党もそこを感じ取って、「弱者」に配慮するふりよりももっと頑張る普通の人たちを見て動いて欲しいです。公明党は邪魔ですね。