日本、いつのまにか「世界第3位のワクチン支援国」に

茂木外相、日韓電話会談巡り「日本にとって大切な国はたくさんある」

インターネット時代の特徴がひとつあるとしたら、私たち一般人が、新聞、テレビを含めたマスメディア(あるいはオールドメディア)を経由することなしに、官庁などのウェブサイトから自由に会見録やデータを入手し、加工・分析に使用することができる、ということでしょう。こうしたなか、茂木敏充外相の本日の記者会見を読むと、なかなか興味深い話題がたくさん盛り込まれているようです。

茂木外相の記者会見が面白い!

インターネットが普及したことで、私たち一般人が新聞、テレビなどのマスメディア(あるいはオールドメディア)を経由せずに「直接入手できる情報」というものも増えて来ました。こうした情報源のひとつが、官房長官を筆頭とする、閣僚などの記者会見です。

そして、なかでも興味深いのが外務省の会見なのですが、茂木敏充外相が本日の会見で、興味深いことをいくつか発言しています。

茂木外務大臣会見記録(令和3年10月15日(金曜日)10時43分 於:本省会見室)

―――2021/10/15付 外務省HPより

朝日「中国のTPP入りにチリが賛同したが」→「まずは国内手続早く」

最初の話題です。

朝日新聞の相原記者が、茂木外相にこんなことを尋ねました。

TPPについて伺います。先日、中国政府がチリの外相から中国のTPP加盟について支持を取り付けたと発表しました。<略>ここのところ、中国によるTPP加盟をめぐる外交攻勢というのが続いているようですけれども、これについての大臣の所感と、日本のスタンスについて改めてお聞かせください」。

これは、TPPに加盟申請している中国(『中国のTPP加盟申請の「狙い」』等参照)が最近、南米のチリからTPP加盟に向けて支持を取り付けたとされている件に関する質問ですが、これに対し茂木外相の答えが大変興味深いものです。原文のまま紹介しましょう。

まず、チリについては、国内手続を早く進めていただきたいと、加入に向けて、非常に遅れておりますので。チリで署名式までやったわけですよ。これは、当時のバチェレ大統領が、是非チリで署名式を行いたいということで、3月18日、署名式を行ったわけでありますけれども、まだ入れていないということで、まずは、他人のことよりも自分の手続をしっかり進めて欲しいと思っています。

要するに、外国のTPP参加を云々するよりも自国の手続をしっかりやれ、という注文でしょう。

この手の返し、個人的には嫌いではありません。

日韓首脳電話会談については明言せず

次に、『日韓電話首脳会談は史上初「自動音声対応」でいかが?』を含め、これまでに当ウェブサイトでしばしば言及して来た日韓首脳電話会談に関する質問です。質問者は韓国メディア・東亜日報の記者です。

早ければ、きょう夜、日韓電話会談が行われると見込みがありますけれども、これについて日本側のスタンスについて教えていただければ幸いです。<略>今回は韓国の順番が後回しになったような気がしますけれども、韓国側には日本側から、ないがしろにされているとの声もありますけれども、これについても、どう受け止めてますでしょうか」。

これに対する回答は、こんな具合です。

岸田総理、主要国の首相と順次、就任して間近、また、国会等々もある中で、順次、首脳電話会談というのを行っているところであります。今まで行いましたのが、米国、豪州、ロシア、中国、インド、さらには英国という形でありまして、まず、日本にとって大切な国は、たくさんあるわけでありますけれど、相手の都合もありますので、そういう時間の調整もしながら、電話会談を行っていると、このように考えております」。

質問が微妙なだけあって、回答もなかなか微妙です。

茂木外相自身は日韓外相会談が行われるかどうかについて、明言はしませんでしたが、シンプルに考えるならば、相手が日本にとって大切な国であるならば、日本としても「国会等々もあるなかで」、都合をつけて電話首脳会談をしようと考えるでしょう。

会談が今晩行われるのかどうかは存じ上げませんが、結局、岸田文雄首相が会談を行った「第一陣」の相手国は、米英豪印などの同盟国、中露という近隣国であり、そこに韓国が含まれていなかったという点に、答えが尽くされているような気がしてなりません。

日本は世界3番目のワクチン支援国に

さて、茂木外相はほかにも、冒頭でこんな趣旨の発言をしました。

  • 新型コロナ・ワクチンの対外供与に関し、各国からの追加支援要請を踏まえて、インドネシアとフィリピンに各200万回分、タイに40万回分、ベトナムに50万回分の追加供与を行うことを決定した
  • これらのワクチンは本日以降、準備が整い次第、順次、輸送する予定であり、台湾についても追加供与を行うべく調整中
  • COVAXを通じた提供についても、東南アジア、南西アジア、中南米、中東・北アフリカ、太平洋島嶼国等を念頭に、合計500万回分の追加のワクチン供与を実施すべく、調整を開始している
  • 日本はすでに2500万回分のワクチン供与を行っており、ユニセフによればこれは世界第三位の実績である

…。

直接の支援対象国がASEANと台湾である、という点からも、日本の外交の力点がどこに移っているかが伺えるというわけですが、それだけではありません。春先にはワクチン接種がまったく進んでいなかった日本が、すでに日本が世界3位の支援大国になったというのも凄い話です。

現実に、日本はすでに、自国民に対しては1.8億回近くの接種実績を有しており、公式ベースでも接種率は1回目で約75%、2回目で約66%です(図表)。

図表 総接種回数と接種率
区分総接種回数接種率
全体合計178,255,509 
 うち1回目94,599,32574.69%
 うち2回目83,656,18466.05%
65歳以上合計64,764,811 
 うち1回目32,587,25691.11%
 うち2回目32,177,55589.96%
12~64歳合計113,490,698 
 うち1回目62,012,06978.61%
 うち2回目51,478,62965.26%

(【出所】VRSオープンデータおよび首相官邸ウェブサイト『新型コロナワクチンについて』データをもとに著者作成。10月15日時点で取得したVRSデータ、10月15日時点で取得した職域接種データ・重複計上データなどを使用。「接種率」とは累計接種数を『令和3年住民基本台帳年齢階級別人口』【※エクセルファイル】記載の人口で割った数値。「65歳以上」の接種率は累計接種回数を3576万8503人で、「12~64歳」の接種率は、総接種回数合計から65歳以上への接種回数を引いた数値を7888万5741人【※12歳未満人口を1200万人と仮置き】で除して算出)

また、「ワクチン接種記録システム(VRS)」へのワクチン接種回数の未入力という問題もあるため、現実には一部自治体を除いて、接種を希望する人たちへの1回目接種については、ほぼ一巡したと考えても良いでしょう。

日本は支援を受ける国ではなく支援をする国、というわけですね。

※ ※ ※ ※ ※ ※ ※

いずれにせよ、外務省の情報発信自体がわかりやすいとはいいがたいにせよ、自分自身でPC、スマートフォンなどを使って情報を入手しようとする人にとっては、正直、新聞やテレビ(あるいはニューズサイト)などを見るよりも、官庁のウェブサイトを直接覗いてみた方が有益な情報が得られることもある、そんな時代です。

当ウェブサイトのように「ジャーナリスト」ではない金融評論家が運営しているサイトでも、それなりの評論をすることができるのも、まさにインターネットの恩恵というほかないと思う次第です。

本文は以上です。

読者コメント欄はこのあとに続きます。当ウェブサイトは読者コメントも読みごたえがありますので、ぜひ、ご一読ください。なお、現在、「ランキング」に参加しています。「知的好奇心を刺激される記事だ」と思った方はランキングバナーをクリックしてください。

にほんブログ村 政治ブログ 政治・社会問題へ

このエントリーをはてなブックマークに追加    

読者コメント一覧

  1. 引きこもり中年 より:

     素朴な疑問ですが、今回の総選挙で「アベスガ政治は許さない」と言っている野党は、日本が他国にワクチン支援をすることも許さないのでしょうか。

    1. 裏縦貫線 より:

      某国経由で供与し、某国が支援したことにするぶんには大いに許すと思います。
      そういえばVRSもいずれは入力締切になるでしょうが、その日が来ても「人手が足りない」「項目多すぎ」と言う自治体は有るのでしょうか…

  2. 新宿会計士 より:

    1. バシラス・アンシラシスは土壌常在菌 より:

      政治や外交の世界は、昔から、やる意味の無い儀式や付き合いの連続で
      意味の無い会談ばっかりだぞ

      1. 匿名 より:

        韓国の工作員乙

  3. 匿名29号 より:

    日韓電話首脳会談をやっちゃいましたね。明日の韓国紙の内容次第では、何度同じ失敗をしても懲りないおっさんとなりかねないですが。

  4. 門外漢 より:

    >まずは、他人のことよりも自分の手続をしっかり進めて欲しいと思っています

    こういうイケズな言い方は茂木氏によく似合うww

※【重要】ご注意:他サイトの文章の転載は可能な限りお控えください。

やむを得ず他サイトの文章を引用する場合、引用率(引用する文字数の元サイトの文字数に対する比率)は10%以下にしてください。著作権侵害コメントにつきましては、発見次第、削除します。

※現在、ロシア語、中国語、韓国語などによる、ウィルスサイト・ポルノサイトなどへの誘導目的のスパムコメントが激増しており、その関係で、通常の読者コメントも誤って「スパム」に判定される事例が増えています。そのようなコメントは後刻、極力手作業で修正しています。コメントを入力後、反映されない場合でも、少し待ち頂けると幸いです。

※【重要】ご注意:人格攻撃等に関するコメントは禁止です。

当ウェブサイトのポリシーのページなどに再三示していますが、基本的に第三者の人格等を攻撃するようなコメントについては書き込まないでください。今後は警告なしに削除します。なお、コメントにつきましては、これらの注意点を踏まえたうえで、ご自由になさってください。また、コメントにあたって、メールアドレス、URLの入力は必要ありません(メールアドレスは開示されません)。ブログ、ツイッターアカウントなどをお持ちの方は、該当するURLを記載するなど、宣伝にもご活用ください。なお、原則として頂いたコメントには個別に返信いたしませんが、必ず目を通しておりますし、本文で取り上げることもございます。是非、お気軽なコメントを賜りますと幸いです。

匿名 へ返信する コメントをキャンセル

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

【おしらせ】人生で10冊目の出版をしました

自称元徴用工問題、自称元慰安婦問題、火器管制レーダー照射、天皇陛下侮辱、旭日旗侮辱…。韓国によるわが国に対する不法行為は留まるところを知りませんが、こうしたなか、「韓国の不法行為に基づく責任を、法的・経済的・政治的に追及する手段」を真面目に考察してみました。類書のない議論をお楽しみください。

【おしらせ】人生で9冊目の出版をしました

日本経済の姿について、客観的な数字で読んでみました。結論からいえば、日本は財政危機の状況にはありません。むしろ日本が必要としているのは大幅な減税と財政出動、そして国債の大幅な増発です。日本経済復活を考えるうえでの議論のたたき台として、ぜひとも本書をご活用賜りますと幸いです。
関連記事・スポンサーリンク・広告