ひとつの時代が終焉を迎えます。報道等によれば、安倍・菅両政権下で3205日間、副総理兼財相を務めた麻生太郎総理が、「岸田文雄体制下」で閣外に去るようです。「安倍・麻生連立政権」の「功」といえばFOIPの推進ですが、「罪」は間違いなく、財務省の影響力を増長させ、2度に及ぶ消費税等の増税で日本経済を疲弊・破壊したことにあります。
目次
史上最長:安倍・麻生連立政権の功罪
2012年12月に発足した安倍晋三政権の特徴を、当ウェブサイトなりに申し上げるならば、それは「安倍・麻生連立政権」だったと思います。
そして、その安倍晋三政権は、昨年8月24日をもって、戦前・戦後を通じ、「通算在任」でも史上最長を更新したのですが、その要因を当ウェブサイトなりに総括すれば、次のようなものだと考えています。
- 安倍晋三総理大臣自身が2007年9月、マスメディアの偏向報道や持病の悪化などにより退陣を余儀なくされたという辛い経験を持っており、第二次政権以降はそのときの反省を踏まえているものと思われる
- 安倍政権に麻生太郎総理が副総理兼財相として入閣しているため、事実上、「総理大臣級の重量政治家が2人いる内閣」であるほか、菅義偉内閣官房長官が安倍総理をしっかりと支えている
- 鳩山由紀夫、菅直人、野田佳彦の各元首相という3代の民主党政権があまりにも酷すぎ、また、民主党やその後継政党が自分たちの失敗について、何らの反省も総括もしておらず、結果的に2012年12月以来の大型国政選挙で6連敗している
- インターネット環境の普及と発達で、従来、情報を独占していたマスメディアの神通力が落ち、「もりかけ問題」「桜を見る会問題」などの虚報・印象操作で政権支持率を下げるという手法が、国民に通用しなくなった
…。
つまり、新聞・テレビを中心とする「オールドメディア」の社会的影響力が凋落する最中にある、という側面はあるにせよ、安倍晋三、麻生太郎という両総理の存在を筆頭に、極めて個性の強い政治家がリーダーシップを発揮したという要因は大きいでしょう。
実質的には3205日も続いたのだが…
そして、安倍総理が昨年9月16日に内閣総辞職し、かわって「安倍・麻生政権」下の官房長官だった菅義偉総理大臣が内閣を発足させましたが、その「菅政権」でも、麻生総理は引き続き、副総理兼財相として留任しました。
このことから、実質的な「安倍・麻生連立政権」の枠組みは、2012年12月26日から2021年10月4日までの、じつに「3205日」も継続した、という言い方ができるのかもしれません。
ただ、個性が強いというのは、必ずしも褒め言葉とは限りません。
安倍総理が「アベノミクス」を引っ提げてさっそうと再登板したものの、日本経済がどうも今ひとつなのは、やはり麻生総理が日本経済を回復させるための財政出動に対し、全力でブレーキを掛けたからだと思わざるを得ないのです。
安倍政権に対する批判者が、「現在の日本経済は株価頼みだ」、などと批判していることは有名ですが、この点については当ウェブサイトとしてもほぼ同意です。
経済学の研究によれば、日本のような「開放経済」の場合、財政政策(減税、公共投資など)だけだと、経済を回復させることは難しく、中央銀行による金融緩和などを含めた金融政策が必須です。
この点、2008年のリーマン・ショック直後の麻生政権による財政出動も、白川方明総裁(当時)の体制下での日本銀行が大胆な金融緩和を渋り、結局は「日本国内の金利上昇と円高をもたらしてお終い」、という惨状でした。
その後の安倍政権で副総理兼財相に就任したにも関わらず、その麻生総理が財政出動を渋った理由はさだかではありませんが、やはり自身が政権を担った際、せっかくの財政政策の効果を金利上昇と円高が打ち消したことに対する苦い記憶もあったのかもしれません。
日本が必要としているのは「増税」ではなく「減税」
しかし、現在の日銀は、安倍総理が任命した黒田東彦総裁のイニシアティブのもとで大胆な金融緩和政策を取り、預金取扱機関(銀行、信用金庫、信用組合、農協など)の国内預金量は1660兆円、日銀当預の額は538兆円にも達しています(図表1、図表2。『2000兆円に達する日本の家計資産:国債増発が急務』等参照)。
図表1 日本全体の資金循環バランス(2021年6月末時点・ストック、速報値)【※クリックで拡大】
(【出所】日銀『データの一括ダウンロード』のページより『資金循環統計』データを入手して加工)
図表2 日本全体の資金循環バランス(2021年6月末時点・ストック、速報値)【※PDFファイル】
(【出所】日銀『データの一括ダウンロード』のページより『資金循環統計』データを入手して加工)
日本国債市場では短期・中期国債を中心にネガティブ・イールド(マイナスの利回り)が定着していますし、こうした状況は、国債を大胆に増発する大きなチャンスなのです。
もちろん、調達した国債で何をするかについては、さまざまな議論があっても良いでしょう。
また、いくら日本に巨額の資金が唸っているからといって、さすがに日本国内の国債引受余力を遥かに超える国債を発行して良いという話にはなりません(このあたりは、俗にいうMMT理論の主張に、当ウェブサイトとしては同意しない部分です)。
個人的には、とりあえず日本のGDPとほぼ同額の500兆円程度の国債増発を行い、時限的に所得税、法人税、消費税、住民税などの課税を3年間ほど凍結する、といった措置を講じるのが最も効果的だと考えています。
ただ、麻生総理自身は結局、最後の最後まで財政出動を渋りましたし、それどころか不要不急であるにも関わらず、2回に及ぶ消費税等の増税を実行したのも、間違いなく安倍・麻生連立政権の政策ミスです。
消費税等増税直後に訪れたコロナ禍、そしてコロナ禍下であるにも関わらず強行されたレジ袋有料化、さらには最近になって議論され始めた金融所得課税強化…。
まさに、麻生太郎総理自身が全力で守った「財務省」という名の「国民の敵」が、日本経済を食い尽くすモンスターに化けているのでしょう。
いずれにせよ、「安倍・麻生連立政権」の大きな功績が、外交・安全保障面にあったことは事実であり、とくに、菅義偉総理が最後の総仕上げとして取り組んだ「自由で開かれたインド太平洋(FOIP)」は、今後の日本外交の大きな財産となることは間違いありません。
しかし、日本経済を失速させた消費増税は、野田佳彦元首相の置き土産であるとはいえ、安倍・麻生両総理自身、それを覆すことができなかったという責を負う必要はあるでしょう。
麻生総理が閣外に去る:ひとつの時代が終わった
さて、来週早々に発足するであろう岸田文雄政権を巡って、本日もさまざまな報道が流れています。
こうしたなか、個人的に最も印象深いのが、岸田「次期首相」が麻生太郎総理を自民党副総裁として処遇する、という話題です。
麻生総理自身、すでに80歳近い高齢者でもありますし、さすがに細かい予算法案、税法などを読みこなすのは難しいのではないかと思いますし、とりあえず財相としての在任期間も戦後最長の3205日に達しているという事情もあり、財相から外れるというのは、妥当な決断でしょう。
しかし、言い換えれば、麻生総理が閣外に去ることで、名実ともに「安倍・麻生連立政権」が終わりを告げる、ということでもあります。
もしも今回の自民党総裁選に、菅総理自身が出馬していたとしたら、もしかすると違った展開もあったのかもしれませんが、いずれにせよひとつの時代が終わったことは間違いないでしょう。
もっとも、菅総理自身も今年73歳を迎えるという高齢者でもあります。
そういえば、安倍総理も今年67歳であり、もしも3年後、岸田「首相」が任期まで勤め上げきれなかったとして、「安倍再々登板」待望論が持ち上がったとしても、そのときの安倍総理の年齢は70歳です。
やはり、新しい政治家が続々と育って行かなければなりません。
利権構造の崩落で、日本社会はどう変わっていくか
こうしたなか、先ほども申しあげたとおり、「安倍・麻生・菅」連立政権が9年近くも続いた大きな要因のひとつが、まさに「官僚・メディア・野党議員」という「利権のトライアングル」構造にガタがきている、という点にあるというのが、当ウェブサイトなりの見立てです。
具体的には、官僚機構がオールドメディアに「紙」を流すことで世論を支配下に置き、オールドメディアは偏向報道を通じて立憲民主党などの勉強しない野党勢力を全力で擁護し、立憲民主党など特定野党が政府・与党の足を引っ張る、という構図ですね。
ただ、この構図、真ん中にあるオールドメディアの世論支配力が急低下していることで、間違いなく崩れ始めています(『憲法改正だけでなく「放送法改正」についても急ぐべき』等参照)。
もちろん、コロナ禍下で、オールドメディアが仕掛けた「コロナ対策に失敗した菅義偉政権」という虚構に、少なくない有権者が騙されたという点を踏まえると、オールドメディアの社会的影響力はまだまだ侮れません。
しかし、先日の自民党総裁選でも、メディアが全力で「河野太郎総裁」を推していたにも関わらず、岸田文雄氏が総裁選を制したことは、間違いなく、社会の変化の兆しではないでしょうか。
そして、首相がだれであろうが、日本社会の変化はこれからも間違いなく進んでいきます。
岸田「首相」が財務省にそそのかされ、さらなる増税を画策しようとしても、それをネットの国民世論が止める、そんな時代が到来するのかどうかについては、あえて楽観的に「きっとそんな時代が来る」と予想したいと思う今日この頃です。
View Comments (23)
>「現在の日本経済は株価頼みだ」
経済音痴の素人だけど、経済って、必要な人のとこにお金が回ってきて物とかサービスがちゃんと提供されるって状況だったら、経済が良いって感じられるのかな?って思うのです♪
批判の意味って、株価が上がったからって発行してる会社の資産が増える訳じゃないし、上がった株価で物とかサービスを買うわけじゃなければ、経済にはなんにも関係ないってことなのかな?って思うのです♪
ただ、国民が貯金だけじゃなくて株式でもお金を貯めるようになれば、株価が上がって資産が増えたら、何かお買い物しようという気にもなるだろうし、そうすれば会社も儲かる。その結果、株価が上がってっていう循環になれば、経済にも意味があるのかな?って思うのです♪
なんとなく、NISAとかを国が推してるのは、そういう意味なのかな?って思ってるのです♪
ただの雑感でしたm(_ _)m
重しが取れた財務省や財務官僚が跳ねあがらないように、しっかり見つめていかなくてはなりませんね…
岸田氏のブレーンは、木原誠二氏と村井英樹氏らしい。いずれも岸田派所属衆議院議員、東大卒で財務省OB。村井氏のほうはハーバード卒のおまけつき。これ…大丈夫か?
>>コロナ禍下で、オールドメディアが仕掛けた「コロナ対策に失敗した菅義偉政権」という虚構に、少なくない有権者が騙されたという点を踏まえると、オールドメディアの社会的影響力はまだまだ侮れません。
>>しかし、先日の自民党総裁選でも、メディアが全力で「河野太郎総裁」を推していたにも関わらず、岸田文雄氏が総裁選を制したことは、間違いなく、社会の変化の兆しではないでしょうか。
そうか?
昔から、メディア受けが悪い首相も普通にいたような気がするけどねー
それに、「菅政権のコロナ対策が失敗」と本気で思っていたら、ワクチン担当大臣の河野も同罪と思うのでは?
まあ消費税10%の増税決めて国際公約にしたのは旧民主党政権の野田総理ですけどね・・・麻生さんも財務閥として増税論者じゃなければもうちょっと違う道も有ったのかなとは思います
元々は麻生さんは増税論者じゃなかったんですがねえ.少なくとも彼自身が総理大臣だったときはむしろ減税論者だったと思うのですが.
麻生さんも財務大臣を長く続けている間に財務官僚によってすっかり洗脳されてしまったか,それとも財務省に予算を握られて財務省の飼い犬と化している警察や検察に何か脅されているのか.
各候補の主張や議論はつぶさにネットに流れ、一般国民の批評にさらされていました。
街頭演説が無かったのがよかったと思います。候補者同士の議論に多くの時間が割かれました。
議論の経過はつぶさにネットで世に伝えられ、即座に国民の批評の対象となり、各候補の評判の変化に直結したと思います。
ネットの時代、街頭演説はもういらないんじゃないですかね。リモートワークと同じでコロナによって選挙の形が変わるといいと思います。
演説よりも議論が聞きたいです。
マスコミ関係でいうと、「本命・石破、対抗・河野」などと予想してた記者の記事が、総裁選後にネットで晒されていたのには笑いました。
シャーク・アイランドさんねw懲りずにプレジデントにアベガー記事あげてたよ。「岸田新総裁はアベの傀儡だっ!」とかってやつ。この人の経歴ゴリゴリ左だよね。京大→朝日新聞
経済対策で減税を主張する人は多いけど
原発不稼働による代替燃料費、CO2排出権や再エネ推進による再エネ賦課金に言及しないのは何故でしょう?
両者を合わせると消費税5%のインパクトはあると思うのですが。
消費税は政府を通じて国内へ還流するが
代替燃料費は資源国への流出。
CO2排出権も発展途上国への流出。
再エネ賦課金はパネルを通じて中韓に流出。
同じ金額なら消費税より質が悪いとおもいますけど。
新内閣の評価はもう少し様子を見ないと難しいですし,国際情勢もドイツの新政権がどうなるかで変わってくると思います。それで,政治関係のコメントは抜きで経済の話だけします。
コロナも落ち着いてきて,経済回復期待も大きいですが,以下の話は今でも生きています。
>「現在の日本経済は株価頼みだ」
世界的に金利上昇局面に移行したようで,今後恐らく世界的な株安と債券安が起きると予想しています。日本もゼロ(マイナス)金利政策を継続するのは難しくなって,国債の利払いが財政を圧縮するようになってくると思います。税率は世界的に上昇が見込まれます。
恒大はそれ自身の問題より,株価のトレンドを反転する効果のほうが大きかったようで,今はプロの投資家は株売却に入っていて,素人投資家やAIが一時的にそれを拾っている状態だと思います。私も持っていた外国株はほとんど処分しました。海外での国債デフォルトもいくつか発生するでしょう。
菅内閣はコロナに潰された,と評価すれば,岸田内閣は上記のような世界的な経済困難と闘うことになる気がします。
通常では、株安は債券高になる(リスクオンからオフへ)と思われますが、株安と債券安が同時に進行するということは、つまり世界的な信用収縮、さらには金融恐慌に至るというお考えですか?
独断と偏見かもしれないと、お断りしてコメントさせていただきます。
(というより、もし、そうだとしたら、自分でも怖いので)
もし世界が乱世で、日本も、それに巻き込まれるのが避けられないとしたら、「才能さえあれば、不倫しようが、汚職しようが、重く用いる」ことが必要になるのではないでしょうか。もちろん、トップが、相手の才能を見抜き、党内の反発を抑えて、使いこなすだけの力量が求められますが。
駄文にて失礼しました。
曹操のような大天才は中国でも彼以降には現れてません。
まして、日本では強力すぎる or 有能すぎる指導者は排除される傾向にあるので、期待薄でしょうね。
政治は才能より「運」の方が大事な気がします。
むろん才能が必要なことは十分理解していますが
結果的に勝負に勝ち続ける人物は 才能を超越した何かを持っています。
たとえば安部は そういう意味で、
祝福されているというか・・・人並外れた「時の運」を持っているような気がします
是非今後も影響を発揮してもらいたいものです。
引きこもり中年 様
トップの資質としては、難関を突破できる実力と、担がれてやる度量だと思うのです。
両方あれば最高ですが、どちらか一つでも良いと思います。
すみません。追加です。
本日の朝日新聞の社説で、自民党党幹部人事を批判していましたが、「乱世の世界に日本が巻き込まれようとしている現在、才能さえあれば、過去の疑惑は問わない」と言い出したら、国民は、これに反発するでしょうか、納得せざるを得ないでしょうか。(実際に才能があるかは、別問題です)
テレビ東京が言ってたけど、過去、長期政権ほど景気がいいそうです。
佐藤、中曽根、小泉、安倍。
4人のうち中曽根、小泉は予想外の長期政権。
岸田さんでどうなるかな。
それは、原因と結果が逆では?
私は、安倍総理と麻生副総理は必死に消費税増税の時期を遅らせてきたと解釈しています。しかし、いずれはやらざるおえなかった。経済が冷えるのはわかりきっていたけれど。ナショナリストの安倍・麻生コンビでも難しかった、と考えるのが妥当だと思います。
なぜ?
麻生家は、代々紅茶の国の有力経済勢力との太いパイプがあるそうです。そこからは、様々な情報が入ってきていたのではないかと思います。ワンワールド主義のディープステートとの駆け引きで、ここは押してもいいけどここは退いておけといったような、(そんなに単純なものではないと思いますが)非常に難しい舵取りがあったのではないかと想像します。
消費税を仕方なく上げた代わりに、日本国のためになるものを得たのかもしれません。
ファイブアイズからのラブコールや、紅茶の国のラブコールにその辺りを感じます。FOIPがうまくいったのもそれかもしれません。軍事同盟国とインテリジェンス。もしそうだとしたら、これはものすごい対価だと私は思います。
次の政権は、高市さんがプライマリーバランス凍結が経済浮揚には重要だということをズバリと指摘したことで、一般常識に随分なったのではないかと思います。財務省の国の借金うそCMは、もう流すことはできないでしょう。安倍・麻生コンビが消費税を上げないために総選挙を打たざるおえなかった頃とは、隔世の感があります。
これからも、麻生さんには裏から日本を支えていただきたいと思います。ありがとうございました。