FOIPとTPPで日英連携深化

岸防衛相、英空母視察で「英国の強い意志感じた」

日本に寄稿している英空母「クイーン・エリザベス」を岸信夫防衛相が6日に訪問し、記者団に「インド太平洋地域の平和と安定に対する英国の強い意志を感じることができた」と述べたのだそうです。英国といえば、君主をいただく島国という点では日本と共通していますし、自由、民主主義、法の支配、人権尊重などの基本的価値を共有している国同士でもあります。今年6月にはTPP加入手続も始まった英国。日本との関係を深める動きには注目されます。

岸防衛相が「FOIP」に言及

産経ニュースなどの報道によると、岸信夫防衛相は6日、米軍横須賀基地に寄港中の英海軍の最新鋭空母「クイーン・エリザベス」を視察したそうです。

岸防衛相、英空母「クイーン・エリザベス」視察

―――2021/9/6 18:37付 産経ニュースより

これにはいったいどういう狙いがあるのでしょうか。

じつは、岸防衛相自身は先週金曜日の記者会見で、日英防衛協力について言及しています。

防衛大臣記者会見(令和3年9月3日)

―――2021/09/06付 防衛省HPより

(※どうでも良い話ですが、防衛省は資料の公表が非常に遅く、上記リンクも記者会見が行われたのは先週金曜日ですが、内容が公表されたのは月曜日です。)

岸防衛相は英空母打撃群などの日本への寄港について、次のような趣旨のことを述べています。

  • 英空母「クイーン・エリザベス」(9月4日~9日)、英補給艦「タイドスプリング」(9月5日~7日)、オランダ・フリゲート艦「エファーツェン」(9月5日~7日)などが日本に寄稿する機会を活かし、エファーツェンとクイーン・エリザベスを訪問する予定
  • 英空母打撃群との間で9月2日~7日の間、東シナ海から関東南方に至る海域において共同訓練を実施する。こうした英空母打撃群の日本寄港や自衛隊との共同訓練の実施は、長い歴史と伝統を有する日英防衛協力が「新たな段階」に入ったことなどを示す象徴となるものだ
  • 防衛省・自衛隊は、今後も基本的価値と戦略的利益を共有する英国などととも「FOIP」の維持・強化、そして、グローバルな安全保障上の課題への対処のために協働し、地域の平和と安定に引き続き積極的に貢献していく考えだ

…。

FOIPは日本にとって「外交・防衛の基軸」に

非常に短い記事ではありますが、日本にとっては大変に重要な変化です。

以前の『日本政府、外交青書でFOIPから中韓を明らかに除外』や『ついに日韓ハイレベル防衛交流「ゼロ回」に=防衛白書』でも指摘しましたが、すでに日本の外交の基軸は、「中露韓」という「近隣国外交」ではなく、「自由で開かれたインド太平洋」に移っているからです。

ちなみに、この「自由で開かれたインド太平洋」、最近では英語の “Free and Open Indo-Pacific” を略した「FOIP」という用語が一般的に使われるようになっており、岸氏の発言にも特段の注釈なしに出て来たほどです。

いちおう、簡単に事実関係を振り返っておきましょう。

  • 外交青書では、日本外交の「7つの重点分野」のうち1番目に「日米同盟」を据えているが、以下、かつて2番目にあった「中国・韓国・ロシアといった近隣諸国」が3番目に転落し、かわって2番目に「FOIPの推進」が登場した(『日本政府、外交青書でFOIPから中韓を明らかに除外』等参照)
  • 防衛白書において、「FOIP」構想に図示されている国は米・加・豪・印・NZ・英仏などであり、ほかに中南米・太平洋島嶼国・東南アジア・南アジア・中東・アフリカなどが含まれているが、中露韓の3ヵ国は除外されている(『ついに日韓ハイレベル防衛交流「ゼロ回」に=防衛白書』等参照)

FOIPは一帯一路を外から包み込む形状

わかりやすく、防衛白書に掲載されたFOIPの概念図についても確認しておきましょう(図表1)。

図表1 防衛白書上のFOIPのイメージ

(【出所】『令和3年版防衛白書』P311)

もちろん、岸防衛相や茂木外相らが会見で、このFOIPについて、「中国を牽制する対中包囲網だ」、などと述べたことはありません。

ただ、この地図を見ていただければわかりますが、FOIPは明らかに、中国が掲げる「一帯一路」(図表2)に対し、内陸部分については外側から包み込むとともに、海洋部分では明らかにバッティングしています。

図表2 一帯一路のイメージ

(【出所】中国国務院報道局英語版ウェブサイト “How the world will benefit from China’s Belt and Road?” )

FOIPが対中牽制であるというのは、たしかにそのとおりでしょう。

深まる日英連携

さて、先ほどの産経ニュースによると岸防衛相はクイーン・エリザベスの視察後、記者団に対し「インド太平洋地域の平和と安定に対する英国の強い意志を感じることができた」と述べたのだそうです。

陸の地図だけを見ていると、ユーラシア大陸の東端と西端で大きく離れた日英両国が密接に結び付くというのも、なんだか理解できないという人もいらっしゃるかもしれませんが、実際、日英は海でつながっており、また、英国はインド太平洋の安定に利益を有している国でもあります。

そういえば、英国といえば、今年6月2日にTPPへの加入手続の開始を決定しました(下記資料参照)。

村経済再生担当大臣記者会見記録(令和3年9月1日(水)10:56~11:05)抜粋【※PDF】

―――2021/09/01付 内閣府HPより

いずれにせよ、経済面、外交面、安保面で日英両国が連携を深めていくのは、非常に重要な動きです。

英国といえば、日本とは自由主義、民主主義、人権尊重、法の支配など、基本的な価値を共有していますし、また、皇室をいただく日本と王室をいただく英国には、立憲君主制という点でも共通点を持っています。

そんな英国との関係強化、楽しみでならないと思う次第です。

読者コメント一覧

  1. 匿名読者 より:

    日本に寄稿している英空母「クイーン・エリザベス」の寄稿は寄港ではありませんか。

  2. 匿名 より:

    イギリスが出張ってくるのを見るとこれを思い出さずにはいられないですw
    https://chie-pctr.c.yimg.jp/dk/iwiz-chie/que-13190506053?w=999&h=999&up=0

    1. ちょろんぼ より:

      匿名様

      当然の事です。 軍事上では、遥か昔から攻める地域・国に近い集団・国が
      先陣を申しつけられる事になっています。
      そして、加勢集団が後詰する事も決まっております。
      但し、前回は人間(露)対猿(日本)の戦争でしたから、後詰すべき集団・国が、
      戦場に来ず自国で昼寝をしていました。

  3. めがねのおやじ より:

    更新ありがとうございます。

    英国はEUから退出して独自路線を歩み始めました。ヨーロッパでは孤立気味、米国とはかつてほどのパイプがなくなっている。そうなるとアジアの東端の有力国、ちょっと遠いけど日本との関係拡大、経済も軍事も同盟級を結ぶ前提でトントンとハナシが進んでいるのでしょう。

    岸防衛大臣、是非留任を(笑)。次いでに日英阿蘭陀の演習も、クイーン・エリザベスか海自旗艦に乗られて謁見されてはいかがでしょう?衆議院議員選挙前に、良いデモンストレーションになると思いますがネ〜。

    日本も防衛白書の通り、近距離・近場優先を我慢に我慢を重ねましたが、相手が暴力国家、愚連隊国ばかりで、遠距離でも価値観の合う先進国「FOIP」、米・加・豪・印・NZ・英仏などと手を取り合い、そして近隣は台湾、ASEANに握手外交を求めてます。中露韓北は除外でOKです。

  4. じゃん🐈 より:

    脱亜論。
    100年の時を経てやっと、という感じ。

  5. PONPON より:

    FOIP、素晴らしいですね、安倍前首相は本当に素晴らしい宝を残してくれました。
    単に安全保障の連携でなく、加工貿易型の国と資源輸出型の国、先進国と発展途上国がバランスよく加入しているまさに補完的関係にある経済連携、将来的に旧EC(EUではない)のような経済共同体への発展を感じさせます。

    日本の将来の命運は、このFOIP構想の成功にかかっていると言っても過言ではないでしょう。
    次期自民党総裁には、ぜひこのFOIPを推進できうる国際感覚とリーダーシップ、経済戦略&多極型安全保障構想を持った人になって欲しいものです。

  6. 匿名 より:

    先月末には米軍が「カール・ビンソン」を補給のため横須賀に寄港してましたね。イギリスもオランダも来ましたか。。
    中国が非難するのは必至ですが、東京2020オリパラに続いて洋上で「ゲーム」やりに来たんだよ!とか洒落をかましてアメリカあたりに反論してほしいところですw

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