判決の内容は関係ない、裁判が行われているという事実が重要
韓国メディアの昨日の報道によると、自称元慰安婦らが日本政府を訴えている件の控訴審で、ソウル高裁は判決を言い渡す日付を、政権交代直後と思われる来年5月26日と「暫定的に決定」したのだそうです。韓国で裁判所が大統領から独立していない証拠でしょう。もっとも、裁判の結果が日本にとって有利であれ不利であれ、こんな裁判がダラダラ続くこと自体、日韓断交に向けた近道を突っ走っているようなものでしょう。
目次
外交は原理さえ理解すればとってもシンプル
いつも申し上げていることですが、当ウェブサイトはもともと、「金融評論サイト」として立ち上げたものであり、昨日の『日本の金融機関、香港と韓国への与信額が減少傾向に』なども、当然のことながら、「本業」の範疇に属する分野の記事です。
ただ、それと同時に、「専門バカ」になってはならないという点については、強く自戒しているつもりです。
とくに、現在は自分自身が所有する企業を除けば、特定の企業の役職員という立場にはありません。したがって独立した立場から自由に情報発信して良いという立場にもあるため、サラリーマン時代にはある程度我慢していたテーマについても、現在は遠慮なく踏み込ませていただいている、という次第です。
こうしたなか、これも常々報告しているとおり、「外交」というものは、「専門家だけが議論して良い」というものではありません。
「外交」というとなんだか難しいテーマに聞こえるという人も多いでしょうが、決してそんなことはありません。国家というものは、究極的には人間の集合体だからです。
すなわち、「人間関係」について考えていけば、おのずから外交が見えてくるのです。
外交を突き詰める
人間関係には4つのパターンが考えられる
そもそも論ですが、よっぽど特殊な生活でもしていない限り、私たち人間というものは、他の人間と関わらなければ生きていけない存在です。そして、私たち人間には「打算」と「感情」がありますので、人間関係もこの「打算」と「感情」に支配されるのです。
これは当ウェブサイトなりの結論ですが、私たち人間が他人とおつき合いする際の基準をとても単純化すると、次の4つに集約できるのではないかと思います。
人間関係の4パターン
- ①その人のことが好き、利害関係上付き合う必要がある
- ②その人のことが嫌い、利害関係上付き合う必要がある
- ③その人のことが好き、利害関係上付き合う必要はない
- ④その人のことが嫌い、利害関係上付き合う必要はない
(【出所】著者作成)
もちろん、本当はこれ以外に、親子・兄弟のように、「切りたくても切れない人間関係」というものもあるわけですが、ここではそうした関係は考慮しません(個人的には、親子・兄弟であっても、やむを得ず絶縁しているという場合もあると思いますが、その議論には当ウェブサイトとして立ち入りません)。
そして、ネット書店で「人間関係」と入力して検索してみると、「人間関係のリセット方法」だとか、「人間関係がしんどいと思ったときに読む本」だとか、「仕事は人間関係で決まる」だとか、要するに全体の約99%が、上記②の関係について議論しているのです。
つまり、「感情的にその人の事は好きになれないけれども、仕事などの関係で、どうしてもその人と付き合わなければならない」というパターンに、人間関係の悩みが集中しているのではないかと思います。
よく子供などに対し、「誰とでも仲良くしましょうね」、などとぬかす人がいますが(学校の先生とかに多いのでしょうか?)、それができれば苦労しませんって。
もちろん、②の関係については、感情をできるだけ前面に出さないようにしながら、円滑に進めていこうとする努力は必要でしょう。そのような努力ができる人を、よく「大人だ」と表現したりするのです。
ちなみに①、③、④については議論する必要もありません。①のような関係を各所で構築することができれば、それだけで「人生、大成功間違いなし」でしょうし、③のような関係が多ければ多いほど、その人の人生は豊かになると思います。一方、④のような関係は、利害関係が消滅した瞬間、消え去ります。
どれもとっても当たり前の話です。
国対国でも同じ関係が成り立つ
さて、「人対人」上記の①~④の考え方は、「国対国」でもまったく同じことが成り立ちます。
国民感情として相手国のことが「好き」、「嫌い」というものが何となく成立しますし、また、その「好き」「嫌い」とは無関係に、国益のためには、どうしてもその国と付き合わなければならない、といったケースもあるでしょう。
だからこそ、上記①~④を「国対国」に置き換えると、次の⑤~⑧の考え方が成り立つのです。
外交関係の4パターン
- ⑤その国に対する国民感情が良く、国益上付き合う必要がある
- ⑥その国に対する国民感情が悪く、国益上付き合う必要がある
- ⑦その国に対する国民感情が良く、国益上付き合う必要はない
- ⑧その国に対する国民感情が悪く、国益上付き合う必要はない
(【出所】著者作成)
ちなみに「国益」とは、「国の利益」、もっと言えば「国民みんなが平和で豊かに暮らせること」を指します。もう少し難しいことばで、「平和」は「安全保障」ないし「軍事的利益」、「豊か」は「経済的利益」などと表現しても良いかもしれません。
ただ、国家のありとあらゆる行動が国益の最大化にある以上、外交もその例外ではあり得ず、高いコストを負担してまで相手国との国交を維持するのも、大なり小なり、それが「国益の役に立つ」という期待があるからです。
たとえば、北朝鮮との関係は「消滅しても問題がない」
ちなみに日本にとって⑧のパターン、つまり「その国に対する国民感情も悪く、国益に照らして付き合う必要もない国」の典型例は、北朝鮮でしょう。
北朝鮮は無辜の日本人を拉致したまま返そうとしない犯罪国家であり、また、近年では国民が苦しい生活を強いられるなか、ブクブク太った独裁者が核、ミサイル、生物・化学兵器といった大量破壊兵器の開発にいそしんでます。
さらにはそれらのその資金源にするためでしょうか、『国連パネル「北朝鮮が暗号通貨3億ドル窃盗」等を報告』などでも指摘しましたが、国連安保理向けの報告書によると、北朝鮮はサイバー犯罪を通じ、3億ドルという巨額の暗号通貨を盗み取っていたとの話もあります。
まさに、北朝鮮という国など、北朝鮮国民だけでなく、地球人類にとって有害な存在、というわけです。
非核化交渉や日本人拉致事件の交渉をしなければならないため、日本政府が北朝鮮と一切関わりを絶つということはできませんが、それでも私たち一般国民レベルで見たら、北朝鮮を日常生活で意識する必要はありませんし、それどころか、北朝鮮という国を潤すあらゆる行動は控えるべきでしょう。
いちおう、日本国民に対しては、2017年4月10日に北朝鮮への「渡航自粛勧告」が出され、外務省は『海外安全ホームページ』で、「目的のいかんを問わず、北朝鮮への渡航は自粛してほしい」とする「危険・スポット・広域情報」を出しています。
もちろん、これは単なる「自粛要請」に過ぎず、法的拘束力はありません。実際、コロナ禍の以前であれば、日本人を対象に北朝鮮ツアーも催行されていたようであり、法的にそれらに参加することは問題ありませんが、個人的には、「そのような旅行に参加すること自体、日本国民としていかがなものか」と思うのです。
人間関係の「好き嫌い」、外交関係の「基本的価値」
さて、ここで重要な点があるとしたら、人間関係と同じく、国と国との関係にも、「国民感情的には相手国のことが好きになれないが、それでも頑張って付き合わなければならない」という事例がある、ということです。
たとえば、過去に何度も何度も支援をしたけれども、まともに感謝してもらうどころか、激しい反日行動をとられ、いわば「恩を仇で返される」、「煮え湯を飲まされる」という経験をした相手に対しては、国民はどういう感情を抱くでしょうか。
あるいは、国と国との約束を平気で反故にされたうえ、相手国の高官が「悪いのはお前たちの国だ」などと言い放ったとしたら、国民は相手国に対し、どんな感情を抱くでしょうか。
これについて、相手国に対する感情を決めるファクターはいくつかある、と当ウェブサイトでは考えているのですが、なかでもその最も基本的な部分は「価値観」にあります。
たとえば、日本は法治国家であり、自由主義国家であり、民主主義国家です。同じような価値観を持つ国に対しては、企業としても安心して進出できますが、そうでない国だと、そもそもカントリーリスクが問題となりかねません。
この点、ビジネスマンの場合は、比較的、感情を表に出さずにビジネスジャッジをする傾向があるのですが、それでも「とある国で日本企業だけを狙い撃ちしたような違法判決がどんどんと出てきている」という状況だと、その国との付き合いを増やすこと自体、株主代表訴訟のリスクを高めます。
また、「民主主義」だ、「自由」だ、「法の支配(※)」だといった概念を持ち出すまでもなく、人間としてのもっと基本的な部分――「ウソをつかない」、「ルール・約束を守る」、「勉強する」、「できる範囲で他人を助ける」――で相手国と共感できるかどうか、という視点も大事です。
(※なお、厳密には「法治主義」と「法の支配」は別の概念だそうですが、本稿ではこのあたりの詳細に立ち入ることはしません。)
日本では子供向けの絵本の段階で「ウソをつくのは悪いこと」と教え込まれますが、外国では、政府高官レベルで平気でウソをつく、という事例もあります。そのような国に対し、日本国民のマジョリティが嫌悪感を抱くのは、ある意味では当然のことでしょう。
さらには、国を挙げて国際法に違反するばかりでなく、こちらが「条約を守れ」「合意を守れ」「国際法を守れ」と当たり前のことを要求したら、「それは外交的無礼だ」と呼んで逆ギレしてくるような国と、果たしてうまく付き合っていけるのか、という点は、常に問題となるでしょう。
人間関係を「断交」する条件と必要な準備
さて、外交関係を人間関係になぞらえて議論するというやり方は、個人的には大変気に入っているものです。その理由は、(日本外交が失敗する理由も含めて)外交というものを、直感的かつ正確に理解できるからです。
こうしたなか、先ほどは人間関係の②、つまり「その人のことが嫌いだが、利害関係上付き合う必要がある」という関係こそが、最も厄介だ、と申し上げました。
これについてはうまくマネージできるのが「大人」というわけですが、ただ、世の中はきれいごとだけでは回りません。どうしても、「大人」になり切れない人もいますし、「大人同士」であってもどうしても我慢できない、というケースもあるのです。
さらには、こちらが「大人」になろうとしてても、相手がどうしても子供じみた行動に終始することもありますし、さらには相手が何らかの違法行為に手を染めているケースもあります。そのような場合に、こちらが「大人の対応」と称して相手の言い分を丸呑みするのは、極めて不適切な行動です。
そういうときには、どうするのが良いのでしょうか。
当ウェブサイトは「転職相談の場」でもありませんし、「人間関係コンサルティング」をする場でもないのですが、敢えて申し上げるならば、「その場を去る」のもひとつの選択肢です。
たとえば、職場がどうしても自分と合っていないと感じ、追い詰められそうになっているのであれば、思い切って転職してしまうことで、事態が打開できることもあるかもしれません(※ただし、当ウェブサイトとしては読者の皆様の選択に責任を持つことはできませんので、ご了承ください)。
そして、ウェブ主自身が若い社会人の皆さまと話をするときに、強くお勧めしているのは、「会社になじむ努力をすること」、「現在の会社でベストを尽くして頑張ること」もさることながら、それと並んで、「会社の外でも通用するスキルをひとつでもふたつでも身に着けておくこと」です。
人間、本当に人間関係で行き詰まってしまい、その人間関係を終わらせるために職場を去る、という選択をせざるを得ないことはあります。そういうときに、他社でも通用するスキルを持っている人は強いでしょう。
外交関係にも、まったく同じことがいえます。
その相手国と付き合わざるを得ないのがどういう事情なのか、ケース・バイ・ケースだとは思いますが、多くの場合はだいたい軍事的理由か、経済的理由です。
逆にいえば、これらの理由が消滅すれば、その相手国との関係を「終わらせる」ことができてしまう、というわけです。
日韓断交論
「ウソをつく」「約束を破る」「感謝してくれない」
さて、長々と議論してきたのですが、「際的な約束を守らない」、「政府高官レベルで平気で見え透いたウソをつく」、「責任転嫁をする」、「助けてあげても感謝をしてくれない」という意味では、まことに残念なことに、日本の周囲にそのような国が多いのもまた事実でしょう。
この点、わが国が公的接種では当面使用しないとされる、英アストラゼネカ(AZ)製のワクチンを台湾に供与したという話題は、先週の『私たち日本の大事な友人である台湾に送られるワクチン』、『ワクチン台湾提供が「6月4日」に実現したことの意味』などで詳しく取り上げました。
また、『台湾に続き、「友好国」にワクチンを優先提供する日本』では、それに対する感謝の気持ちとして、台北にある日台交流協会台北事務所に台湾の人々からたくさんの花が贈られた、などとする話題を紹介したところです。台湾は、本当に紳士的な国だと思います。
当ウェブサイトでこうした話題を取り上げた理由も、結局、台湾を例外として、日本の周囲にある国は、いずれも非常識で不穏当、ウソばかりつくという特徴があるように思えてなりません。
そのなかでもとくにタチが悪いのは、表面上、日本と同じ自由、民主主義、法の支配などの考え方を採用するように見えていて、じつは日本とは全く似て非なる社会を作り上げている、韓国という国ではないかと思います。
これに対し中国や北朝鮮の場合は、社会体制自体が露骨に日本とまったく異なるため、「異形の国」ということで、ある種「あきらめ」(?)もつきます。その意味で、韓国という国の行動は、本当に困ったものですね。
そして、韓国の異常な行動にはさまざまなものがあるのですが、文在寅(ぶん・ざいいん)政権下の4年少々で出てきた「事件」のなかでも、特に中核を占めているのが、2つの「虚偽の歴史問題」――自称元徴用工問題と自称元慰安婦問題――に関わる違法判決問題です。
いうまでもなく、自称元徴用工については、2018年10月と11月、最高裁にあたる「大法院」が日本企業に対して損害賠償を命じた違法判決、自称元慰安婦については今年1月、日本政府に下された「主権免除違反判決」が日韓関係に打撃を与えています。
裁判自体は絶賛迷走中
ただし、その韓国の司法ですが、最近、さまざまな「混乱」が見られることも事実です。
たとえば、自称元慰安婦に関しては、1月8日に日本政府が敗訴するという、いわゆる「主権免除違反判決」が出されました(この裁判の問題点については『【総論】韓国主権免除違反判決の現時点におけるまとめ』でも議論したとおりですので、本稿で詳細は繰り返しません)。
ただ、この訴訟自体に日本政府が「国際法違反だ」などと強く警告したためでしょうか、4月には、韓国の地裁が日本政府からの訴訟費用の取り立てを否定する決定を下しました(『韓国地裁、日本政府からの訴訟費用取立を否定する決定』等参照)。
あわせて、別の自称元慰安婦らが日本政府を相手取って訴えていた問題では、1月8日の件とは真逆に、原告らの訴えを客観する判決が4月21日に出ています(『第2次訴訟で自称元慰安婦らが敗訴=韓国メディア速報』等参照)。
さらに、自称元徴用工問題に関しては、自称元徴用工85人が日本企業16社を相手取った訴訟の判決が、6月7日に突如として前倒しで宣告され、やはり原告側が敗訴しています(『自称元徴用工訴訟・一審「却下」』等参照)。
この3つの訴訟は、どれも韓国の司法の「暴走」に司法自身が歯止めをかけたものであるかにも見えます。
実際、日本国内では、これらの判決や決定を巡り、「韓国が日本に対して配慮を示した証拠だ」、「だから日本も韓国との対話のテーブルに着く必要がある」、といった主張をしたメディアもありました(『どうしてもやめられない、韓国の「ツートラック外交」』等参照)。
しかし、こうした主張はナンセンス極まりないものです。
そもそも裁判所が国際法や条約に沿った判決を下すのは「当たり前」の話ですし、また、これらの判決ないし決定によって、過去に韓国の司法府が下した国際法や条約に反する判決が取り消されたわけでもないからです。
なお、韓国の司法府の「変節」については、一部では「裁判所内の左派と右派の対決だ」、「左派政権の終焉が近づいていることを受け、文在寅政権の裁判所に対する圧力が働きづらくなったことの影響だ」、といった分析があるようですが、これはこれでひとつの着眼点としては興味深い点でしょう。
いずれにせよ、違法判決と合法判決が繰り返されている点に関しては、日本に対する挑発と譲歩を繰り返しているかにも見えますが、ちょっとやそっと、日本に対して配慮した(かに見える)判決が出て来たところで、韓国の「約束破り」「国際法破り」という事実が動くわけではありません。
これに加えて、4月21日に敗訴した自称元慰安婦、6月7日に敗訴した自称元徴用工らは、いずれも控訴していますし、自称元徴用工裁判も同時並行的に多数進行中です。日本企業の資産差押え(あるいは「売却スルスル詐欺」)も引き続き進行中であることを忘れてはなりません。
文在寅政権を「見限った」ソウル高裁
こうしたなか、4月21日の件で敗訴した自称元慰安婦の控訴審に関連し、ソウル高裁が判決の期日を来年5月26日に「暫定的に決定」した、とする記事を発見しました。
日本政府相手取った慰安婦訴訟の控訴審 来年5月に判決=韓国
―――2021/06/23 14:09付 聯合ニュース日本語版より
ソウル高裁としては、「うまいこと考えた」つもりなのかもしれません。
5月といえば、予定では文在寅氏が韓国大統領としての任期の満了を迎え、次期政権が発足・始動する直後のことです(文在寅氏の行き先が監獄なのか天国なのかはについても、早ければ見通せるでしょう)。要するに、次期政権の顔色をうかがいながら、判決を出すことができる、ということなのでしょう。
韓国では三権分立がまともに機能していないというのは当ウェブサイトにおける仮説のひとつですが、今回の高裁の動きこそ、韓国では裁判所側が政権の顔色を見ながら判決を決めようとしている証拠に思えてならないのです。
ただ、それ以上に感慨深いのは、ソウル高裁が「文在寅政権下で判決を出す」ことを控えた、という点でしょう。言い換えれば、裁判所が文在寅政権を「見限った」、ということです。
さきほど、韓国で歴史問題を巡り、違法判決とそうでない判決が交互に出てくる理由を巡り、「裁判所内部の勢力争いに基づくものだ、とする分析もある」という話題を紹介しましたが、裁判所としても、文在寅政権の意向に従った判決を下し、次期政権で粛清されるのを恐れているのかもしれません。
裁判継続自体が日韓断交への要因に
ただし、こんなことを続けていることが、韓国自身にとって良い話であるはずなどありません。
経済活動は一般に「ヒト、モノ、カネ」であるとされます。
このうち「ヒトの流れ」に関しては、2020年3月以降、日韓の往来がほぼ停止してしまいましたが、これに関しての理由は「日韓関係の停滞」ではなく、あくまでもコロナ禍の影響であるため、考慮する必要はないでしょう。
ただ、これに対し、「モノの流れ」、たとえば貿易面でいえば、日本の貿易相手国としての重要性が、韓国と台湾で逆転しそうになっている状況にあります(『貿易統計③日本の貿易上、台湾と韓国の地位は逆転へ?』、『日本にとって台湾が韓国よりも重要な貿易相手になる日』等参照)。
図表1 日台・日韓の貿易総額の推移
(【出所】普通貿易統計より著者作成)
また、金融面では、昨日の『日本の金融機関、香港と韓国への与信額が減少傾向に』でも述べたとおり、対外与信統計上、日本の金融機関の国際与信に占める韓国の割合がどんどんと減ってきている状況にあります(図表2)。
図表2 日本の金融機関の対外与信に占める韓国の額と比率
(【出所】日銀『BIS国際与信統計』、 The Bank for International Settlements “Download BIS statistics in a single file” 等のデータをもとに著者作成)
(※なお、昨日は議論し切れなかったのですが、国際与信統計上、ほかにも少し気になるデータがあります。これについては早ければ本日中にでも言及してみたいと思っています。)
すなわち、コロナ禍の影響で読めない「ヒトの流れ」は別として、「モノの流れ」、「カネの流れ」に関しては、間違いなく日本が国を挙げて、韓国との関係を薄める方向に動いているのです。
これこそ、「裁判が続くこと自体が日韓断交への道」、というわけですね。」
そもそも議論の前提が成立しない、「大人になれ」論
さて、よく外務省や一部メディア界隈から聞こえてくるのが、「日本は大人になるべきだ」、とする主張です。
たとえば、日経電子版に先週掲載された、「日本は韓国との対話を探るべき」とする戯言も、この「日本は大人になるべき」論の派生形でしょう。
[社説]日韓は地域安定へ対話探れ
―――2021年6月15日 19:00付 日本経済新聞電子版より
ただ、先ほども指摘したとおり、人間関係においては「嫌な相手とうまく付き合っていく努力」をしなければならない、という指摘も、原則論に照らせばあながち間違いとは言えないのですが、それと同時に、現在の日韓関係は、日本が「大人になって譲歩する」ことで丸く収まる段階を越えています。
もし日本政府がそれをやったら、韓国は名実ともに無法国家になりますし、日本政府は日本企業の利益を守るという、政府としての本質的な役割を放棄してしまうことになり、日本自身も無法国家に転落するかもしれません。
その意味では、「日本は大人になれ」論は、もはや主張としてのそもそもの前提が成立していないのです。
だからこそ、現在の状況では、日本としては韓国に対し、「国際法、条約、約束を守るのか、守らないのか」を改めて問わなければなりません。もし韓国がそれらをどうしても守らないというのであれば、それは韓国の選択であり、その立場を尊重してあげるべきでしょう。
正直、自称元慰安婦、自称元徴用工の訴訟で、「日本に有利な判決が出るか出ないか」は、あまり関係ありません。そんな違法な要求をする訴訟が継続しているという事実こそ、日本がそんな国をまともに相手にしてはならないという証拠なのです。
幸い、韓国以外に友人はたくさんいます
そして、そのうえで、日本は日本として「できること」を粛々とやっていかねばなりません。
それが、「韓国がなくても大丈夫な日本」を作ることです。
幸いながら、現在の日本には、安全保障上は「自由で開かれたインド太平洋」(FOIP)という理念に賛同してくれる、米国、豪州、インド、カナダ、英国などの友人がいますし、経済的には半導体王国で親日感情も強い台湾という友人もいます。
だからこそ、日本は約束を守らない国――短期的には韓国、中・長期的には中国――から徐々に「足抜け」し、基本的価値と戦略的利益を共有するかけがえのない友好国との関係を深めていかねばならないと思う次第です。
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日経は昔「中国進出」を煽りまくったことは反省したの?
与信の絶対額は、残念ながらあまり減っていません。
韓国、中国からは足抜けするだけでなく、血抜きも早く進めたいですね。
例の裁判、地裁は1回だけ法廷を開いてすぐ結審、判決となりました。そもそも門前払いが判決の内容ですから開廷の必要すらないのです。高裁では一転して複数回開廷するみたいですね。まあこれだけでも、判決を変える気マンマンということでしょう。次の政権まで高裁判決を先延ばしし、次の政権で都合が悪ければ無期限延期、ちなみに判決そのものはほぼ地裁判決を覆すことで確定(時間をかけて審議して門前払いはできないという推測)。
前回の地裁判決を受けて、進行中の徴用工と日本企業の裁判では「慰安婦判決が確定するまで休廷したらどうか」と日本企業側から提案があったみたいですね。まあ、最終的に日本の言い分を裁判所が聞くわけないのですが、マトモな主張なので無視もできないでしょう。
今後、韓国お得意の超薄切りサラミスライスがやりにくくなることは想定できます。サラミが乾燥してカチカチになっちゃった感じですね。スライスしたところでおいしくもない。
裁判が継続している事よりも、既に出た判決による国際法違反状態か解消されない事が、日韓政府の対話を困難にしている要因だと思います。
文大統領に会った米国特別代表、韓国外交部長官も会えなかった日本外務省局長
https://s.japanese.joins.com/JArticle/280023?servcode=A00§code=A10
先日行われた、韓日米の北核首席代表協議で
>米国は歓待して日本は冷遇する任期5年目の文在寅(ムン・ジェイン)政府外交の現住所という評価だ。
別に船越局長は、韓国高官と面談を希望しておらず、どうでも良いんですが、韓国が現在の日本政府との交渉窓口を重視しなかった事が「韓国政府の日韓関係改善の本気度」を表していると思います。
>「今、韓国はバイデン政府の要求でやむを得ず韓日米協議に乗り出す形式的なジェスチャーを取っているが、実際には米国との協力にすがるばかりだ」
というのが正しい解釈で、首脳会談をしようとするだけの韓国政府のアクションや最近の判決は、「ジェスチャー」でしか無いという事です。
まとめると、関係改善に向けて日本政府は、韓国政府の国際法違反状態の解消を前提とし、韓国政府はそれをせずに「関係改善のジェスチャーをしている」というのが、今の日韓関係だと思います。
だんな様
「実務者協議に顔をだした文大統領」「日本が韓国を忌避していること」の2つの事実を韓国脳で混ぜ混ぜすると「文大統領に会った米国特別代表、韓国外交部長官も会えなかった日本外務省局長」という答えになってしまうのが如何にもですね。
これまでの経緯を踏まえるならば、文大統領の行動は「韓国の国家元首が小役人に会うほどに卑屈になっている」、日韓協議がないのは「日本から声もかけてもらえず相手にもされていない」と解するのが適当だ、と思うわけですが。
ともあれ、国内外でレイムダックになっている事実は変わりがないので、本当にどうでも良いですが、気持ち悪い。
気持ち悪いつながりで、
オリンピックにボイコットだとか、文大統領が来るとか来ないとかも、非常に気持ち悪いですね。
擬人化すると、韓国の態度っていうのはこんな感じでしょうか。
「彼のところなんて絶対行かないんだから。というか行くべきではないし絶対許さないわ。私が行かないと、彼はさぞかしがっかりするはずよ。ふふふ。ざまあみろ!!!、、、でも、彼って結構顔が広くって便利に使えるから利用した方が良いかしらねぇ・・・いいわ、行ってあげることにする。会いに行ってお話してみるわ。。。。でも、会ってお話してくれるかしら。会ってさえくれなきゃショックだし、やっぱり行くのやめようかなぁ。ちょっと電話して聞いてみようかなぁ・・・でも、誘われているわけでもないし。こっちから言うのは絶対嫌だしぃ!!!どうする?どうする?私どうするの!!!がんばれ文文!!あいつほんとに腹が立つーーー!!!」という心の声がだだ漏れしてるっつーのは、本当に気持ちが悪いですね。
漏れ聞こえている日本は、
「だれがお前みたいなブスを相手にするか!」
という態度でずーっと黙っていますが、
彼らは無頓着に腰をフリフリ
「整形したけど(関係改善のジェスチャーをしたけど)、どうかしら?ウッフン」
それでも日本が相手にしないと
「私は苦労して整形したのに、相手にしないアイツはひどい奴だ」
と罵声を浴びせる始末です。
サイト主様がおっしゃるように、国を人に例えると、非常に気持ち悪くなります。
謝罪と賠償をもとめる!
与信額をジワジワ減らしていくのは良策とは思えません。
ジワジワなら日本から米でも中でも乗り換えは可能だからです。
なので一定額はキープしておいて、何かあったらサッと引き上げるという事が大事だと思うのです。
ジワジワと短期に切り替えておくのが良いでしょうかねえ。
門外漢 様
相手が乗り換えようと、どうしようと、どうでも良いのです。武力で取り返すことのできない日本企業は、焦げ付かせないことが最優先です。中韓から見て、日本企業は逃げ足が速いというのは最上級の誉め言葉です。(実際は遅いというのが今までの評判ですが)
門外漢様
*一定額のキープに賛成。かつ日本から第三国への乗り換えも賛成です。
個人的には、貸し剥がして損切りしてキレイさっぱり留飲を下げたい気持ちはやまやまなのですが、そんなことしちゃうと日本は世の混乱の元凶としての汚名をかぶらなといけなくなります。
そこまでに至らなくても、与信の絶対額を極端に減らしてしまうと「日本が手控えた」との憶測からの資金流出を誘発し、邦銀が債権回収の焦げ付きを発生させる懸念もあります。
結果として、違和感なく他国にババを掴ませる(後釜につかせる)ためには「日本が韓国から引揚げざるを得ない状況」を ”韓国側” に作らせる必要があるのかと。(進行中?)
*仰られるように、「備える」という意味では、長期融資は短期に。手形の期限も短く。全額手形から半金半手に・・。との条件変更は有効な対処なのだし、そうでなくちゃだと思ってます。
新宿会計士 様
韓国の3大紙とも韓国銀行の警告に、大騒ぎです。
もし、韓国のバブルが崩壊し、不良債権化が進行する可能性が高まっていると推測します。そのリスク管理の観点から、専門家の視点で、日本への影響を予測して頂けませんか?
1)2国間貿易では、日本全体の貿易に占める比率も小さく、限定的?
2)国際金融市場の観点では?
3)入国制限の解禁と同時に、どうっと出稼ぎ韓国人が増えるのでは?
4)金塊の密輸が、再び横行し、日本の金価格が暴落しませんか?
邦銀の韓国与信は収斂段階に入ったとは言え、下記の案件などで、欧米銀行からの融資が増えている様に思います。巡り巡って、大きな影響があるのでしょうか?
韓国企業は、低金利を利用して、下記の案件などで、湯水のごとく資金を使っています。
自己資金とは思えず、当然、欧米企業からの融資と思います。
1) 合弁とはいえ、米国に車載リチューム電池工場を設立
2) ソフトバンクから米国ロボット会社の買収
>これは当ウェブサイトなりの結論ですが、私たち人間が他人とおつき合いする際の基準をとても単純化すると、次の4つに集約できるのではないかと思います。
日本人にはその通りですが海外ではそれに
敵味方(自分を脅かす存在かどうか)
上下関係
のファクターが入るのかなと思います。
特に隣国は上下関係が重要なようで、マウントを必死で取りに来ますね。
韓国は自称元慰安婦らの、日本政府を訴えている控訴審で、判決を政権交代直後の来年5月26日にしたと。小狡い手を使っても日本人の気持ちは変わらないし、何時でもいいから、勝手にやって下さい。ハイハイ自分のクビと世界の仲間を減らしているサラミスライスだ(スライム?)
三権分立なんて理解もない酋長国の韓国では、裁判所が大統領から独立していない証拠です。それと新宿会計士さん、とうとうトドメの文言を残しましたね(笑)。
【こんな裁判がダラダラ続くこと自体、日韓断交に向けた近道を突っ走っているようなものでしょう】。いやそれを読んで、ホッとしました。
「その場を去るのもひとつの選択肢です」これはチャチな私の事ですが、現役時代、顧客だろうが理不尽な相手には「話し合い終了、帰りなさい」と言いました(笑)。回り回って本社の役員から電話がありましたが、話にならないから他の業務に影響する。顧問弁護士を立ててください、て言いましたよ。私に実害無かったから、「ストーカー顧客」だったんでしょう。
日台・日韓の貿易総額の推移8兆円前後で追いつ追われつ。来年はパイナップルでプラス輸入1,000億円!(無理か)。
韓国は9兆円以上あったのに、こりゃ減る一方の無限地獄ですな〜。日経の相変わらず親韓寄り記事、酷いもんです。「日韓は地域安定へ対話探れ」ん〜下がってヨシ!本社を北京かソウルに移せ!日本語版はイラナイ。
前にも呟きましたが「タナカ珈琲」さん、最近見ませんね〜。
「日本は大人になるべき」いや、大人を通り越して老人になるべきだ。
「日本は韓国との対話を探るべき」はぁ?最近耳が遠くなってなw
日本の裁判もそのうち原告・被告ともに亡くなってしまうのではないかと思うくらい長いですが、韓国の裁判もやけに長いですね。国を相手に訴えているため被告が亡くなってしまう心配はないのですが、原告の自称徴用工や自称慰安婦自身が先に昇天してしまう可能性が大きいです。しかし、その家族も同時に訴えているのだから終わらずに続くでしょう。その家族も亡くなると今度は孫、ひ孫と続き、永遠に終わらない裁判としてギネスブックに登録できるまで頑張りましょう。
因みにギネスブックに登録されている世界一長い民事訴訟は日本の家永教科書裁判で、判決まで32年かかっています。更に光華寮訴訟は1967年の提訴50年を超えた2018年4月時点でも京都地裁で係争中であり記録更新中だそうですが、自称徴用工・自称慰安婦裁判は始まったばかりであり、まだまだです。日本政府はもう政治的解決は二度としないでしょうから、あと100年は続くかもしれません。いや、1000年かな。