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日本にとって「徴用工集団訴訟」問題よりも大切なこと

放っておけ、どうせ越えてはならないラインの手前でピタッと止まるから

すでにいくつかのメディアが報じているとおり、あらたな自称元徴用工判決が来月10日にくだされるのだそうです。これを報じたメディアのうち、産経ニュースでは、もしも日本企業側が敗訴した場合、「日韓政府間の協議に影響を与えるのは避けられない見通し」などと述べているのですが、当ウェブサイトはこの見解に同意しません。相手は韓国人のこと、どうせ越えてはならないラインでピタッと止まるからです。

自称元徴用工裁判

この話題、当ウェブサイトで取り上げるべきかどうか悩んだのですが、世間的にはやはり比較的関心が高いらしく、また、「新宿会計士」自身も今年2月に『韓国がなくても日本経済はまったく心配ない』なる書籍を上梓した手前、やはり簡単に触れておかざるを得ません。

いったい何の話かといえば、『日本企業16社が韓国で訴えられる=「最大級の規模」』でも取り上げた、韓国で「自称元徴用工」が日本企業16社を相手取って起こした訴訟に関する話題の続報です。具体的には、「来月にも1審判決が宣告される」、と複数のメディアが報じたものです。

ここでは日本メディアから産経ニュースの記事、韓国メディアから『中央日報』(日本語版)の記事、それぞれのリンクを紹介しておきましょう。

徴用工訴訟、年内にさらに複数判決へ 日韓協議への影響不可避

―――2021/5/28 19:47付 産経ニュースより

「強制徴用訴訟」日本企業16社を相手取った訴訟、来月に1審宣告

―――2021.05.28 14:41付 中央日報日本語版より

これらの内容について紹介する前に、自称元徴用工に関して簡単に申し上げておきます。

正直、当ウェブサイトではすでにこの自称元徴用工問題について、「結論」を出してしまっているので、本稿で述べるべき「何か新しい結論」はとくにありません。自称元徴用工問題の概要とそれを持ち出してきた韓国側の「狙い」を再確認しておしまい、というわけです。

ごく大ざっぱにいえば、日本が目指すべきは「韓国がなくても日本の安全保障に支障がないような状態」、「韓国がなくても日本経済にはまったく問題がない状態」ですが、その状態が実現するまでには少々の時間がかかることも事実です。

だからこそ、「日韓関係の破綻は可能な限り先送りすべきだ」、という考え方が成り立つのです。ちなみにこれは、「日韓関係を『本当に破綻させるべき時期』が到来するまでは、日韓関係の破綻は避けるべきだ」、と言い換えても良いでしょう。

例の「集団訴訟」

中央日報は相変わらず基本的な用語使いがメチャクチャ

少し前置きが長くなりましたが、実際の報道を眺めておきましょう。

このうち、中央日報の報道では、記事の書き出しの時点で「日帝強占期時期に日本企業に連れて行かれて強制労役に苦しめられた強制徴用被害者やその遺族」、などとメチャクチャなことが書かれていますが、先日も報告したとおり、「強制徴用被害者」という用語は間違っています。

そもそもこの問題は、「強制徴用問題」ではなく、「自称元徴用工問題」と呼称すべきでしょう。これについて、当ウェブサイトなりに簡単に定義しておきます。

朝鮮半島で『強制徴用された』と自称する者(いわゆる旧朝鮮半島出身労働者、あるいは自称元徴用工)やその遺族らが、日本企業を相手に損害賠償を要求している問題」。

ここで「自称元徴用工」という用語を使うのには、ちゃんとした理由があります。それは、「強制徴用された」という主張が、あくまでも「自己申告」ベースである、という点にあります。政府レベルでしょっちゅうウソをつく国に暮らす民が、ウソツキではないという保証は、いったいどこにあるというのでしょうか。

この点、「強制徴用された」と自称する者たちの中には、もしかすると本当に、国家総動員法に基づく国民徴用令で徴用されたケースもあるのかもしれませんし、工員の募集に応募しただけの者(つまり応募工)や、酷い場合には働いてもいないのに「強制徴用された」と称している場合もあるかもしれません。

だからこそ、これらをひっくるめて、韓国側の「強制徴用被害者」という呼び方ではなく、「自称元徴用工」とカテゴライズすべきである、というのが当ウェブサイトで報告してきた主張、というわけです

用語は正しく使いたいものですね。

それはさておき、この訴訟の概要自体は『日本企業16社が韓国で訴えられる=「最大級の規模」』でも触れたので、これ以上の詳細は本稿では触れません。

中央日報によると、この訴訟は28日午前11時に「初の弁論期日」が開かれたのだそうですが、この日裁判所は「弁論を終結する」と宣言したらしく、具体的には「6月10日午後1時30分に宣告期日を進める予定」、と記載されています。

ずいぶんと早いですね。

「日本企業敗訴判決」が相次いでも問題ない理由

中央日報によると、この自称元徴用工らは「裁判が終わった直後、日本企業の訴訟代理人資格として裁判に出席した国内弁護士数十人に対して、『弁護士は先祖もいないのか』『恥を知れ』などと叫んで不満を噴出させた」のだそうです。

この場合、「恥を知るべき」は、間違いなく、自称元徴用工の側でしょう。。

驚くべきは、それだけではありません。中央日報によると、類似の裁判はソウル中央地裁だけで19件(!)も進行中なのだとか。

そして、産経の方の報道では、地裁では今週、ほかにも同種の訴訟3件でも弁論が行われ、年内に複数の判決が出る見通し、などと述べているのです。

もっとも、産経には「企業の韓国国内の資産を差し押さえ現金化する手続きが着々と進む中、賠償を命じる司法判断がさらに続けば、日韓政府間の協議に影響を与えるのは避けられない見通しだ」、などと記載されているのですが、当ウェブサイトとしてはこの記述には同意しません。

「結論」から申し上げておきましょう。

本件で原告側が勝利したとしても、あるいは今後、同種の自称元徴用工判決が韓国でいくら出てきたとしても、おそらく事態はほとんど動かないでしょう。その理由は簡単で、韓国人というものは、「越えてはならない」と相手が宣言している「一線」を、本当に越えないからです。

彼らがやることといえば、基本的に、半万年変わりません。

「越えてはならない一線」の手前で相手を挑発し続け、それで相手が1ミリでも譲歩すれば、そこを手掛かりに次々と譲歩を引き出す、という戦略だからです。これを当ウェブサイトでは「瀬戸際戦略」と名付けています。

自称元徴用工問題に話を限定すると、日本側が「越えてはならない」と警告している「一線」は、「日本企業に不当な不利益が生じること」にあります。そして、その解釈は、「被告となっている日本企業の資産が売却されたときに、日本政府は『不当な不利益が生じた』とみなすだろう」、とされているようです。

だからこそ、彼らはわざと換金できない資産ばかりを選んで、これみよがしに差し押さえているのでしょう。

たとえば、差し押さえられている資産は、日本製鉄と不二越に関しては非上場の合弁会社株式であり、三菱重工業については知的財産権(商標権や特許権)です。

「資産現金化」は典型的なサラミスライスの瀬戸際戦術』でも報告したとおり、しょせんは「サラミスライス」、つまりサラミをスライスするように、相手の出方を見極めながら、薄く、薄く手続を進めていくというやりかたに過ぎません。

(※なお、このうち非上場株式の売却の法的性質については『非上場株式の売却、「法治国家では」とても難しい』でも議論したとおりですので、是非ともご参照ください。ちなみにこう見えても公認会計士は会社法の専門家でもあります。)

つまり、今後、自称元徴用工判決が続々と出てくることは十分に予想される話であり、それらの判決はいずれもそろいもそろって、「日本企業に不当な不利益を生じさせない」という「越えてはならない一線」を越えない範囲でピタッと止まるのです。

最終目標は「利権の確立」

ちなみにわざと換金し辛い資産を選んで「売却するぞ、売却するぞ」と脅す目的は、いうまでもなく、相手型である日本企業が譲歩するのを待つ、という点にあります。究極的には、慰安婦問題に倣い、基金かなにかを設立させて、日本企業から無限に賠償金をせしめるような構造を作ろうとしているのでしょう。

彼らが狙っているのは、「新たな利権構造」でもあります。そして、ちなみに普段から申し上げているとおり、利権には一般に、「①得てして理不尽なものであり、②いったん確立すると外から壊すのが難しく、③しかし、利権を持っている者の怠惰や強欲で自壊することもある」、という特徴があります。

利権の3つの特徴
  • ①利権は得てして理不尽なものである。
  • ②利権はいったん確立すると、外からそれを壊すのが難しいという特徴を持つ。
  • ③ただし、利権を持っている者の怠惰と強欲で利権が自壊することもある。

(【出所】著者作成)

このことは、歴史問題の「先輩」である慰安婦問題で考えてみればよくわかります。

そもそも慰安婦問題自体、30年もの時間をかけて、韓国が国を挙げて、(時として朝日新聞の捏造報道などの力を借りながらも)頑張ってゼロから捏造(つく)り出してきた利権そのものでもあるからです。

事実、日本を除く全世界で、慰安婦問題を「日本、日本民族、日本という国そのものが韓国・朝鮮民族に対して行った、極めて深刻な人権侵害事件」などと誤認させるのに成功したため、韓国がこの問題さえ持ち出せば、水戸黄門の印籠よろしく日本をやっつけることができます。

慰安婦問題を筆頭とする歴史問題とは、韓国にとっては楽しくて仕方がない娯楽であり、また、本来ならば実力では絶対に勝てない相手国である日本に対し、半永久的に、道徳的優位に立ち続け、日本から技術や資本を引き出し続ける貴重な「外貨獲得源」でもあります。

まさに、韓国による卑劣な利権そのものであり、だからこそ、慰安婦問題を含めた歴史問題は絶対に「解決」しないのであり、慰安婦問題も「韓国の自滅」以外に解決する方法はない、というわけです。

そして、おそらく自称元徴用工やその支援者らが確立しようとしているのは、「慰安婦利権」と同じようなものでしょう。

ラインを示したのは正解?不正解?

このあたり、日本政府も「このラインは越えてはならない」と宣言してしまったのが失敗だったのではないか、という見方も成り立ちます。

一部の韓国マニアの間では、「日本政府がその『ライン』を示していなければ、いまごろ韓国では日本企業の資産の強制売却・換金がなされ、それにより日本政府の何らかの『対抗措置』が発動されていたのではないか」、という見方があることも事実でしょう。

ただし、当ウェブサイトとしては、日本政府が「ライン」を引いたこと自体、良し悪しの効果があったと考えています。批判を覚悟で申し上げるならば、そのなかでも最も良い効果があるとしたら、「日韓関係の破綻を先送りすることができる」、という点ではないでしょうか。

そもそも、韓国(や北朝鮮)が大好きな瀬戸際戦略に対抗するうえで、短期的に最も有効な手段は、「無視すること」につきますし、無視している限り、短期的には大した問題は生じません。膠着状態が現状維持したままで続くだけの話です。

この点、当ウェブサイトではこれまでに何度か論じてきたとおり、中・長期的に見て、日韓関係の破綻は不可避ですし、また、破綻させるべきだと考えているわけですが、だからといって、日韓関係を「今すぐに破綻させる」べきではありません。

現在、日韓関係が破綻してしまうと、日本には経済、外交、安全保障面など、広範囲にさまざまな弊害が生じてしまうからであり、現状では「韓国がなくても大丈夫」とまでは言い切れないからです。

したがって、「韓国がなくても大丈夫」といえる状態を作るべく、産業・経済面においてサプライチェーンを組み替え、安全保障戦略上も「日米韓3ヵ国連携」に代替し得るさまざまな枠組みを構築してからでなければ、日韓関係を破綻させてはなりません。

だからこそ、当ウェブサイトや拙著『韓国がなくても日本経済はまったく心配ない』では、「今すぐ韓国と断交せよ」、「今すぐ韓国に経済制裁を発動せよ」、といった勇ましいことを主張せず、まどろっこしい現状整理に終始している、というわけです。

対韓制裁と日韓関係破綻

法的枠組みが大事

ついでに少しだけ、寄り道をしておきましょう。

当ウェブサイトで「今すぐ韓国に経済制裁を適用すべき」と主張し辛い理由は、それだけではありません。日本には相手国に対し、経済制裁を発動するための根拠規定が非常に少ないからです。

その典型例が、「外為法」(※正式名称は『外国為替及び外国貿易に関する法律』)です。

一般に、経済制裁は「ヒト、モノ、カネ、情報の流れを制限することで、相手国に経済的な打撃を与えること」を指し、これについて日本で最も包括的に規定しているのが外為法です。

ここで、一般的な経済制裁のやり方をパターン分けすると、次の7つが考えられます。

  • ①わが国から相手国へのヒトの流れの制限
  • ②わが国から相手国へのモノの流れの制限
  • ③わが国から相手国へのカネの流れの制限
  • ④相手国からわが国へのヒトの流れの制限
  • ⑤相手国からわが国へのモノの流れの制限
  • ⑥相手国からわが国へのカネの流れの制限
  • ⑦情報の流れの制限

この7つのうち、外為法が主に関わるのは②、③、⑤、⑥、そして部分的には⑦の各分野ですが、これらを「経済制裁として」発動させるためには、次の3つのいずれかが必要です。

  • (1)国連安保理決議で相手国への制裁が決議されること
  • (2)有志国連合がその相手国に対する制裁を決定すること
  • (3)日本独自の制裁として閣議決定すること

具体的には、その国が「国際社会の平和と安全に懸念を与えている」ことが必要であり、その具体例としては「大量破壊兵器を製造している」、「テロ組織を匿っている」、などの証拠が必要です。

中国への経済制裁が適用できなかった

そして、これら以外の理由で外為法による経済制裁を発動することは非常に困難だ、というのが拙著などでの主張だったわけですが、その主張が正しかったことは、案外早くわかりました。

具体的には、『中国に経済制裁をするための大きな課題は「法の不備」』でも述べたとおり、欧米諸国が中国における人権侵害を理由に、今年3月頃に対中経済制裁を発動した際、日本は欧米と足並みをそろえた対中経済制裁に踏み切れなかったのです。

韓国に対しても、同じことがいえます。

自称元徴用工判決問題、自称元慰安婦問題などにおいては、韓国が日本に対し、経済的・法的な不法行為を仕掛けているわけです。しかし、別に韓国は、(表向きは)大量破壊兵器を作っているわけでも、タリバーンなどを匿っているわけでもありません。

だからこそ、韓国に対して、外為法に定める経済制裁の規定を使った制裁を発動すること自体、非常に難しいのが実情でもあるのです。こんなことは、法律をちゃんと読めば誰にでもわかることなのですが…。

(※その意味で、当ウェブサイトの説明の正しさの証拠として、拙著を2月の段階で上梓しておいたのは大正解だった、というわけです。)

広い意味での制裁を考えるべき

ただし、外為法に代表される、狭い意味での「経済制裁」については、発動することが非常に困難であることは間違いないのですが、ここで失望すべきではありません。

じつは、著者独自の考え方に基づけば、経済制裁には「広い意味の制裁」が3つばかり存在します。それが、「サイレント経済制裁」、「消極的経済制裁」、「セルフ経済制裁」です。

このうち、本稿では「サイレント型経済制裁」をおもに振り返っておきましょう。これは、「経済制裁」と名乗ってはいないものの、結果的に相手国に制裁を発動したのと似たような経済効果をもたらす行政上の措置のことです。

その典型例が、2019年7月に日本政府が発表した「輸出管理厳格化措置」、あるいは当ウェブサイト風にいえば「対韓輸出管理適正化措置」でしょう。

これは、輸出管理上の韓国の扱いを「(旧)ホワイト国」(現在の「グループA」)から外すとともに、フッ化水素など3品目を包括許可の対象から外し、原則として個別許可の対象にするという厳格化措置のことです(※その後、一部品目については部分的に緩和されています)。

というよりも、欧州連合(EU)が韓国を「ホワイト国」待遇していなかったことなども踏まえると、日本が韓国を「ホワイト国」待遇していたこと自体が異常な優遇措置であり、対韓輸出管理適正化措置自体、その異常な優遇措置をやめたにすぎません。

もっとも、日本が対韓輸出管理適正化措置を発表した直後から、韓国はこの措置のことを「輸出『規制』」としきりに間違った用語で堂々と呼び続けていますが、

この点、輸出管理と輸出規制は根拠条文が異なりますし(輸出管理は外為法第48条第1項、輸出規制は外為法第48条第3項)、輸出管理は現実に輸出管理は万国共通の仕組みです。対韓輸出管理適正化措置は、韓国に対する経済制裁でも報復でも何でもありません。

ただ、輸出管理適正化後の韓国の常軌を逸した振る舞い(一貫して「輸出『規制』」と呼び続ける、日本に対する対抗措置としてGSOMIA破棄などを発表する、など)を見ていると、じつはこの措置自体、潜在的には韓国に対する「サイレント経済制裁」として機能する可能性があります。

つまり、日本は「狭い意味での経済制裁」だけではなく、「広い意味での経済制裁」として、サイレント型経済制裁、消極的経済制裁、セルフ経済制裁などを駆使し、韓国にさまざまな打撃を与えることができる、というのが当ウェブサイトなりの仮説なのです。

広い意味での制裁は、すでに始まっている

広域連携から韓国を排除する

そして、その意味では、「広い意味での制裁」は、すでに始まっています。

それは、「韓国を除外した国際協力の枠組み」です。

次の図表1は、当ウェブサイトで長らく提唱し続け、かつ、拙著『韓国がなくても日本経済はまったく心配ない』にも転載したのが、日本が現時点で関わっている、または潜在的に関わる可能性がある国際的な連携を示したものです。

図表1 「1~20の連携」とCPTPP
国の数 同盟ないし連携 参加国
(日本単独)
日米同盟 日米
日米韓3ヵ国連携 日米韓
日中韓3ヵ国連携 日中韓
FOIPクアッド 日米豪印
クアッド+英国 日米豪印英
ファイブアイズ 米英加豪NZ
クアッド+英仏 日米豪印英仏
シックスアイズ 日米英加豪NZ
G7 日米英仏独伊加
10 D10 G7+豪印韓
11 TPP11 日豪NZなど
13 ASEAN+3 ASEAN+日中韓
15 RCEP 日中韓ASEANなど
20 G20 G7+BRICSなど

(【出所】著者作成)

このうち、韓国が関わっているのは「日米韓」、「日中韓」、「D10」、「RCEP」、「ASEAN+3」、「G20」あたりですが、国際連携の枠組みは日本だけでなく、ほかの先進国や有力国などの思惑でも決まってくるため、韓国を完全に排除することができないのはある意味で当然の話です。

しかし、それら以外の、たとえば「4」の部分にある「FOIPクアッド」には、韓国は明示的に排除されており、つい最近も『茂木氏、クアッドに韓国など加える議論は「全くない」』で紹介したとおり、韓国を加える予定はまったくないとの見解を茂木敏充外相が示しています。

防衛協力は今後消滅する

また、日本がこれから重視する枠組みであるFOIPを中核にした「日米豪印」、「日米英」、「日米仏」、「日米加」などの重層的な協力の枠組みに、韓国の姿は見えてきません。防衛省自身が韓国の存在を無視しているほどです(図表2)。

図表2 FOIP

(【出所】防衛省)

さらにいえば、防衛白書上も、韓国との「ハイレベル交流」が目に見えて滞り始めていることがわかります(図表3)。

図表3 防衛当局のハイレベル交流実績(過去4年分)【※クリックで拡大/大容量注意】

(【出所】過去4年分の『防衛白書』より著者作成)

この図表でいう「ハイレベル交流実績」とは、「防衛大臣、防衛副大臣、防衛大臣政務官、事務次官、防衛審議官、各幕僚長」といった防衛省の高官が「それぞれのカウンターパート」と実施する2国間会談のことです。

確認すると、日韓間では2016年6月~18年6月までの期間においては年5回以上の交流実績がありましたが、2018年6月から19年6月にかけては「3回以上」に減り、直近の2019年4月から2020年3月までの期間に至っては、交流実績はたったの1回でした。

すなわち、日本にとって韓国が「必要だ」という理由のひとつであるはずの外交・安全保障面における日韓協力は、いまや確実に停滞しています。

いわば、日本が韓国との友好の源泉となっている理由が、ひとつずつ、しかし着実に潰れていくことで、将来の日韓関係破綻に際しての影響を最小に留めることができるのかもしれません。

消極的制裁は経済・金融面にも及ぶ

さて、わかりきった話ですが、いちおう、本稿をまとめておきましょう。

くどいようですが、自称元徴用工問題は、自称元慰安婦問題と同様、韓国が自壊・自滅するなどの理由でもない限りは、おそらく半永久的に解決しません。

だからこそ、日本としては、①韓国の不法行為の責任を韓国自身にコストとして転嫁するため、あるいは②日韓関係が破綻したときに日本に生じる悪影響を最小限にとどめるため、といった理由で、韓国に対し、いまから少しずつ制裁を進めていかねばならないのです。

ただし、現在の日本の法制上、「制裁」には簡単に発動できるものとそうでないものが混在しており、それぞれの発動要件や効果を見ながら、少しずつそれを進めていかねばなりません。

このうち「消極的制裁」に関しては、「国際社会における連携の枠組みから韓国を外す」、「通貨スワップや為替スワップ、ABMI(アジア債券市場育成イニシアティブ)や日韓ハイレベル経済対話など、韓国が必要としている金融・経済協力をわざと提供しない」、といった項目が、少しずつ進んでいます。

また、自称元徴用工判決がいくら積み上がろうが、基本的には無視しておけばよい、というのが当ウェブサイトの考える「短期的な対処法」ですが、これについても放置しておけば、日本企業が自然と韓国と距離を置くきっかけになるでしょう。

実際、昨日の『日本にとって台湾が韓国よりも重要な貿易相手になる日』でも報告したとおり、貿易高に関する「台韓逆転」は、もうすぐ近くにまで来ています。

いずれにせよ、自称元徴用工問題に関しては、くれぐれも韓国の「瀬戸際戦術」に騙されず、表面上は泰然自若と構え、丁寧な無視を続けるとともに、韓国が自滅するのに備えた消極的・サイレント的な対応を続けていくのが良いのではないかと思う次第です。

新宿会計士:

View Comments (49)

  • うーん、
    仮に次期の選挙で南朝鮮側に保守の新米(反日は変わらず)の大統領が誕生した場合、
    日本は今までの反日狼藉を「無かったこと」として普通に経済、軍事的にも関係正常化に動こうとしないか…、そこが懸念です。
    今までのパターンだとそうなる。
    なにせ自民も甘ちゃん政党なので。

    かと言って代替となる政党も無い。(←これが一番痛い。)

    • たけ様

      全く同感です。
      というか、今の日本世論が今のままである限り、そうなると思います。

      右派以外の中道世論が「韓国は許せない」としているのは、慰安婦合意破りからの「韓国は約束破りの歴史粘着国家である」という認識が主な理由のように見えます。
      「奴らの歴史、大体嘘」「詐欺師が世論を操る国」という認識の広がりは、まったくもって不十分かと。
      日本政府も「国際法破りの状況を是正せよ」と言っているだけで、「嘘ついてんじゃねえよクズ」とは一言も言ってません。

      もし保守派の新政権が「差し押さえの取り下げ」「政府による自称被害者への弁済」を強引にまとめてしまった場合、今の日本がそこから韓国のすり寄りを撥ね付け続けることができるとは、とても思えません。
      日本の嫌韓世論を「強化・増進・恒久化」するためには、これまでとは違う切り口でのアプローチが必要なのではないでしょうか。

    • たけさま
      アメリカは、韓国の行動無くして信用しないんじゃないかと思います。
      そして韓国が、アメリカの求める行動をすると、中国に叱られるでしょう。
      韓国が、それを我慢出来るとも思えません。

    • 理屈としては心配なのですが、どうも見ていると韓国人って反日しないと生きていけない生き物なので、せいぜい「必死に隠す」「無理矢理我慢する」くらいしかできないのじゃないかと。情報をマスコミがコントロール出来た昔ならまだしも、現在ではもはや無理なのかなと思います。

      韓国がこれから発展して、それこそ日本を超えたいなら、まず日本の存在を忘れることから始めないといけないですね。

    • >なにせ自民も甘ちゃん政党なので

      韓国がらみの利権をなくすことから始めないと、いつまでも「甘ちゃん政治家」は一定の勢力を保ち続けると思います。外国企業や外国人からの政治献金を受けることは一応法で禁じられていますが、日本の政治資金規正法はザル法と言われていて、抜け穴はいろいろありそうです。

  • 何と呼ぼうと徴用は徴用ですから徴用に従った事は徴用工も従ったが個別企業も「従っただけ」なのであり「従った企業」を罰して【取れる所からカネを取る】と言うこうした訴訟はスジチガイも甚だしい。これに問題が在れば徴用令を出した国に言うべき事であり、国相手が叶わなければそれで終わりです。
    そもそもデタラメな被害者なりすまし詐欺と言う本質もあるが、上記の当時の法に従っただけの企業を不法行為の主として慰謝料の相手とする理不尽も如何にこの話が根本的におかしいかとアピールする事になるので意見の違う人に訴求して言い続ける必要があると思います。
    一見法に基づく救済を得ようとして居る様な体裁ではあるが「真理は細部に宿る」。益体もないゴロツキのハッタリですからよく見れば各方面にボロが出ている。

  • 裁判については、ロクに事実認定もせず、判決も決まっているようなものだと思います。
    日本企業は、控訴するでしょう。
    安倍前首相は、韓国は一線を越えたと言ってますので、判決は韓国政府の負担になるでしょう。
    来月は、この判決、オリンピックボイコット、処理水排出と揃って、関係改善のかけらも無さそうだと思います。

  • >いずれにせよ、自称元徴用工問題に関しては、くれぐれも韓国の「瀬戸際戦術」に騙されず、表面上は泰然自若と構え、丁寧な無視を続けるとともに、韓国が自滅するのに備えた消極的・サイレント的な対応を続けていくのが良いのではないかと思う次第です。

    このように新宿会計士様の仰ることは、理性的なところでは理解できるのです♪

    できるのですが、感情的なところでは、彼らの瀬戸際戦略自体が鬱陶しいという気持ちもあるのです♪

    それに「どうせ一線を越えない」と言うのは、彼らの理性を信頼しすぎてる気もするのです♪
    彼らもたくさんの訴訟を進めているってことは関係者もそれなりに多いんだと思うのだけど、その中のひとりが、瀬戸際戦略の果実を得られないことにしびれを切らして暴発したりすることもあるんだと思うのです♪

    長期的には、韓国との関係を徐々に薄めていくというのは正しいと思うのですが、法的に今できる事とできない事を整理して、できる事を増やしていくってことも必要なのかな?って思うのです♪

    例えば、外為法の発動に、
    >その国が「国際社会の平和と安全に懸念を与えている」ことが必要
    だから使えないってことなんだったら、その要件に「我が国との約束を遵守していない」こととか「著しい人権侵害を行っている懸念がある」ことを加えるとかを検討しても良いんじゃないかなって思うのです♪

    もっとも、そういう事をすると、相手の中の短絡的な人の暴発を誘発しちゃって、長期的に関係を薄めていくって戦略自体を破綻させかねないのかもしれないけど・・・・

    それでも、ちょっとくらいは、政府としての動きを見せて欲しいと思っちゃうのです♪

    そんな、あたしみたいなののガス抜きが、以前報道されてた自民党有志による政府への提言とかなのかな?
    だったら、一年近く音沙汰ないので、そろそろ次のガス抜きを希望なのです♪

    • 七味 さま

      ガス抜きついでに、抜けていくガスに点火することを期待しております。
      ガスの勢いが強いときは点火できないこともありますし、問題ないかもしれません。(棒)

  • 目先、一番よさそうなのは、
    mRNA ワクチンに予想以上の効果があったために日本国内で余った武漢肺炎ワクチンを、
    台湾を初めとする他の国々には次々と提供しながら、
    あの腐敗した半島には一滴たりとも渡さないことでしょう。
    ファビョった愚民達が反日を強め、次も極左政権を選択するように。

  • 日本の年金資金で、高値圏にあるサムスン電子の株を大量に空売りできないのかなぁ。
    借金して信用買いしている蟻さん達に強制決済させて、暴落したところを買い戻す。
    いえいえ、蟻さん達を破産させることが目的ではありません。
    日本の年金の有利な運用としての話です。

    • イーシャさま 
      年金機構は、サムスン株の手持ちが結構あるはずですので、ただ売りゃあ良い所もあるでしょう。
      一杯一杯の自転車操業でしょうから、サムスンを狙うんじゃ無く、小さい財閥を狙って、連鎖反応させる方が、効率が良いと思います。

      • だんな 様

        借金して株を買っている    蟻さんたち、大丈夫でしょうか ?
        "外国人投資家が売りも売ったり「9.3兆」!2020年03月以来最大の韓国売り" (money1 2021.05.30)
        「2021年05月01~30日の段階で、外国人投資家は「9兆372億ウォン」(約8,947億円)を売り越しています。<中略>
        面白いのは、国民株といわれる『サムスン電子』を最も売り越しており、<中略>売り越し第2位は『SKハイニックス』」

        割高なものを売るのは、当然ですよね。
        韓国人が群がって来たら、終了のお知らせ。
        韓国内でも繰り返しているでしょ。チキン屋とかコーヒー店とか。

        • イーシャさま
          ビットコインの方が、ヤバいらしいですよ。
          徳政令待ちの若者が、日本に逃げて来ないと良いですね。
          借金から逃げて来て、政治難民認定しろとか、言いますからね。

        • イーシャ様

          スキマが有ればスカしてみるクセがつきました。
          あんまりドキッとさせないで下さい。

          • タナカ珈琲 様
            ヒント: コメント欄では、フォントの色指定はできません。

          • 横から失礼します。試してみました。

            フォントのとサイズを変更する

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            項目B

            値A1
            値B1

            値B1
            値B2

          •  

            住所 氏名 職業
            監獄 朴槿恵 囚人
            監獄 李明博 囚人
            青瓦台 文在寅 囚人予定者

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  • 【大韓民国の反日史】
    まとめてみました。
    ご周知のことばかりかとは思いますが、休日の読み物として御目通しいただけますと幸いです。

    韓国が反日を開始したのは、建国と同時でした。

    ①日帝は朝鮮に対し、悪逆非道な暴政を行っていた。あんまり自覚が無かったかも知れんけど、そうなのだ。
    ②それに抗い、独立を勝ち取った(?)我々(大韓民国臨時政府)は、朝鮮の正当な統治者としてふさわしい。
    ③もちろん、ひたすら強制を受けていた(?)被害国たる朝鮮が、戦争協力国などであろうはずがない。どちらかと言えば、戦勝国だ。

    みたいな事を主張するために、韓国は反日を「建国の正当性」の根拠に設定しました。

    「韓国人は『圧政』の中でも、民族としての誇りを持ち続けてきた。そうだよな?」
    「もちろん日本と通じた奴もいる。それは日帝と協力した裏切り者だが、当然わが民族においては『少数派に過ぎない』。そうだよな?」
    「疑いようのない裏切り者、『親日派』はこうしてやる。でも『お前』は違う・・・そうだよな?」

    という大韓民国臨時政府のやり方は、少し前まで「日本人として生きるのも、悪くないかな。ただし内鮮は一体!ちゃんと内地と同じに扱ってくれるならだけどねッ!」とか言っていた当時の朝鮮人を震え上がらせました。
    以降、日本時代を肯定するような発言は韓国内でタブーとなります。

    これはその後、戦線が半島全体をワイパーの如く洗った朝鮮戦争の惨禍を経て、原点(世界最貧国)に立ち戻った韓国人が「日本統治時代は良かったなあ・・・」という人として当然の感想を漏らした際、「お前には韓国人としての誇りが無いニカ!」と、その不満を封殺する方向にも良く働いたことでしょう。

    ただ普通に善政を敷いてしまっていた日本を「悪逆非道の暴君」に仕立て上げるのも楽ではありませんので、この辺りから様々な捏造が創られ始めます。
    「あれ?これ?朝鮮戦争の時の死体じゃね?」とか言っちゃう奴が韓国人としての誇りを理解しているとは思えませんので、とりあえず親日派に分類しておきます。

    李承晩らは反日を最大限活用し、南朝鮮の統治者として定着していきました。
    道義的な観点から見れば言葉もありませんが、最初期の段階では、大韓民国臨時政府的に「反日は国益に適っていた」と言えます。

    その後韓国は極貧から脱すべく、自由主義国家との連帯を重視した政策を進めます。
    特に猛烈な勢いで復興を遂げていた日本との関係改善は韓国経済にとって垂涎の的であり、その頃には「韓国政府の正当性」はすでに定着していましたので、次第に反日の強調は為政者側にとって無用の長物となっていきました。

    ところが権力を手にするために利用した反日が、ここから彼らの首を絞めることになります。

    そもそも大韓民国臨時政府なる亡命テロリスト集団に国家を運営する能力などあろうはずもなく、当時の韓国を動かしていたのは日本式の教育をしぃ~っかりと受けた、朝鮮総督府に連なる官僚たちでした。
    「親日清算はしたい、でも自分たちでは国が立ち行かない」という涙ぐましい事情の下、辛くも存続を許された旧総督府出身の官僚たちではありましたが、しかし韓国で独裁なんてやったら腐敗するのは自然の理と申しましょうか、彼らもまた「袖の下」を旨とする由緒正しき「朝鮮式」をそのまま実行し、何度となくスッパ抜かれては民衆の怒りを買います。

    そこに目を付けたのが、韓国切り崩しを図っていた、北に通じる社会主義者達でした。

    農業国が経済発展する上で所得格差が広がるのは仕方のないことですし、韓国上層部が腐ったのは伝統に過ぎないはずなんですが、なぜかその原因は「日帝強占期から続く未精算の親日既得権層が権力を独占し、国民を搾取しているから」ということになってしまいました。
    歴史を省みない民族ならではと言えましょう。
    このこじつけが貧困の中で不満を溜め込んでいた韓国大衆に大ウケしたことで、韓国左派による「歴史の弄び」はここから彼らの政権批判の代表的な手法として定着していきます。
    過去の日本が悪ければ悪いほど、「その後継」たる現政権の既得権層も悪い、というロジックです。
    そして独裁と対日融和を進める政権を「親日派」と罵倒し、「韓国を国民に取り戻すこと」が左派のスローガンとなります。

    高木正雄(朴正煕)らは懸命に「し、親日ちゃうわ!」と主張して沈静化を図りますが、自ら普及した史実(嘘)を逆利用した燃える「反日=反独裁」の流れは、韓国内で着実に支持者を増やしていきます。
    共産主義勢力に国を滅亡寸前まで追いやられた記憶冷めやらぬ当時の韓国では、基本的には世論も「反共保守」が多数派を占める状況が続いてはいましたが、「朝鮮人は棒で叩け」を地で行く独裁政権の言論弾圧ぶりは、地域対立を助長する特定地方への「ひいき」と経済成長オールインによる福祉その他の置いてけぼり感も相まって、「弱者のため」と嘯く連中の主張に世論の共感を集める上で大いに肯定的な影響を与えてしまいます。

    ここで彼ら「北のスパイ」が秀逸だったのは、「政治腐敗が許せない」とか「人権、平等、民主主義の希求」といった、独裁の下で一般大衆がごく自然に抱くであろう価値観の中に、「反共ではなく民族融和」というイデオロギーをしれっと混ぜ込んだことです。
    民主主義どころか独裁やってるのは「北こそ」な訳ですが、このあからさまな矛盾をガン無視せしめたのは、朝鮮半島特有とも言える民族主義でした。

    それを表す代表的な文献として、1979年発行「解放前後史の認識」という本があります。
    「韓国史上最も影響を与えた書籍」の一つに選ばれたというこの本、内容的にはまさに「場当たり的に創られたまま取っ散らかっていた韓国内の「史実」を(都合の)いい具合に再構成し、反日を軸とした民族主義的ナショナリズムを高揚させるために書かれたもの」という感じです。

    この本で重要なのは「内容が嘘」という点ではなく、「ナショナリズムの主体を民族に置いている」という点です。
    「主敵は日本」とし、その支配に抗ってきた「わが民族」という構図でナショナリズムを煽ることは、朝鮮民族伝統の価値観に非常にマッチしていたこともあり、「親日独裁政権打倒」への機運を高めるとともに、「同じ民族の北って、ホントは敵じゃないよね?」的な考えをじわりじわりと半島南部に普及させる上で大きな役割を果たしました。

    反日は北朝鮮にとって「反共独裁政権への最高の攻撃手段」であるとともに、「自分たちに融和的な世論形成」を仕掛けることのできる、一石二鳥の扇動ツールだった訳です。
    朝鮮戦争直後では考えられなかった対北融和路線が、ここからどんどんと力を増していきます。

    「民主化(=反独裁=反日)を掲げる市民団体」の活動は学会にとどまらず、「権利を求める市民の声」として、言論弾圧下の韓国社会でしぶとく世論への働きかけを行っていきました。
    民主化を求めた韓国人の大半は社会主義者などではないでしょうが、民主化の旗を振っていた連中の中核が社会主義者というかスパイであったため、市民団体が掲げた「独裁政権打倒のための反日」は、その裏に「左傾化」という目的を隠したまま、「人権・平等・民主」と同レベルの普遍的な正義として韓国社会に完全に定着します。

    そして「反共ゴリゴリの軍事独裁政権」を「フワッとした融和主義の民主政権」に置き換えようという北朝鮮の長年の試みは、轟々たる論戦とショボい武力闘争を経て、1987年に実を結びます。

    その民主化の直後、韓国内には各種の市民団体が激増し、求めるテーマも多様化したそうです。
    理由はもちろん、民主化しちゃったからお役御免となった民主化運動団体のプロ市民たちが、新たな所属先を求めたからです。

    その内容は経済、教育、環境、女性問題など、まあぱっと見は真っ当に見えるものでしたが、その後の彼らの活動を追ってみればその正体は一目瞭然と言えます。
    何せ民主化を境に登場したのは、ざっと挙げるだけでも韓国版日教組である「全教組」、トラクターに乗って南北統一を叫ぶ「全農」、「落薦落選運動」を主導した「参与連帯」、今もHPに「福島汚染水Q&A」を載せている「みどりの環境連合」、左派政権で政府高官を何人も輩出した「経実連」などなど、従北左派の代表格とも言える悪名高い連中ばかり。
    ハンギョレ新聞の創刊もこの時でした。

    こういった左派市民団体の爆増には「独裁下で封じられていた市民の声が花開いた」だの「後回しにされていた社会福祉を担う役割が市民団体に求められた」だのもっともらしい理由が付けられているようですが、本質はそこじゃないと思います。
    ここに至るまでの文脈を踏まえれば、反共政権を解体に至らしめた「弱者のためを謳って右派を攻撃する勢力」が、自由と人権(=自由民主主義国家のつけ入るスキ)を利用して韓国社会全体に展開した、と捉えるべきでしょう。
    棒で叩いた朴正煕は正しかったのだ。

    そして韓国内で最も北寄り・左寄りのプロ市民、さらにその中の特別な使命を帯びる「違う意味のプロ」の皆様にとっては、他よりさらに一歩踏み込んだ直接的な「反日」を志向することが求められました。
    これまで反日の矛先だった「独裁」が終わったことで、反日を使った世論扇動のための新たな攻撃対象を設定する必要があったからです。
    反北勢力をさらに追い詰め韓国を徹底的に左傾化させるとともに、日本(=自由主義陣営)との関係をも断ち切る。
    「独裁政権打倒のための反日」から「さらなる左傾化のための反日」へと軌道修正をかけるべく、韓国のプロ市民ガチ勢は次なる一手を探し始めます。

    そんな彼らに垂涎のネタを提供したのは、当の日本のプロ市民(あるいは違う意味のプロ)でした。
    慰安婦問題です。

    1983年に発行され日本で見向きもされなかった吉田清治の捏造本「私の戦争犯罪」が、民主化間もない1989年に韓国語版へ翻訳され、そこから爆発的大ヒットを飛ばしたという不自然な経緯の背景がコレでした。
    韓国内においても80年代当初から存在はしていた慰安婦問題が「時限信管の如く爆発」したのも、元から細々と活動していた反日活動家に民主化運動からあぶれた大量のプロ市民らが合流し、特大の動力として作用したことが原因と考えられます。
    慰安婦問題とは最初から、「さらなる左傾化のための反日」を掲げて再出発した韓国プロ市民(およびスパイ)たちの新たなメシの種となるべく引っ張り出されたものと言えるでしょう。

    そんな韓国内の事情など産毛の先ほど興味の無かった当時の日本は、突如として全身全霊で向かってきた「謎のブチギレ集団」を前に持ち前の「ごめんなさい病」を遺憾なく発揮し、当時すでに主張の説得力を失っていた「社会主義者とは名乗れなくなった人たち」の全面的な支援もあって、ほとんど相手の言い値通りに事を進めていきました。

    そして民主化成功で勢いに乗る反日市民団体の増長は、河野談話による日本の完全敗北で決定的なものとなります。

    過去の「国内で完結していた反日」とは違い、「雲の上の存在だった日本が韓国の主張を認め、謝罪した」と言う状況は、これまで反日にさしたる興味を示さなかった層にまで、幼少から刷り込まれた日本への敗北感や劣等感を払拭させ、民族主義的快感(韓国では「無条件愛国酒」と呼ぶらしい)に酔わせることに成功しました。
    ラリってる自覚はあるのか。
    そしてそれをやった「挺対協」をはじめとする反日団体は、「韓国の正義」を盲信する民衆からの絶大な支持を集めます。

    「対日勝利」の熱狂によって、韓国における反日はもはやカルト宗教の様相を呈することとなりました。
    政治・経済・メディア・教育など、全方位に散った左派市民団体が大衆に触れる情報を反日に染め上げる中、それをあえて乗り越えて「あれ?これ?日本の極右に反論できてなくね?」とか気付いちゃう奴が韓国人としての誇りを理解しているとは思えませんので、とりあえず親日派に分類しておきます。

    この望外とも言えるオイシ過ぎる状況をフル活用しない手は無いと、ここから彼ら反日団体はカルトよろしく、せっせと利権の構築に邁進していきます。
    その手法とは、慰安婦問題で「反日の味」を覚えさせた大衆に対し、数々の追加キャンペーンを打って「ご当地限定万能調味料・反日味の素」として商品化することで、どんな素材を使っても「反日をすれば寄付金が集まる」「反日をすれば売れる」「反日をすれば宣伝になる」「反日をすれば支持が集まる」という構造を韓国内に作り上げるというものでした。

    この企ては知性の水準に疑問符を付けざるを得ない「反日教信者」こと韓国大衆に対してバカウケし、回りに回る反日利権によって「富・名声・権力」のすべてを手に入れた反日市民団体の教祖たち(スパイ)は、韓国内において不可侵の聖域を形成し、この世の春を謳歌していくこととなります。

    さぞ、笑いが止まらなかったことでしょう。

    以降、金大中が出れば北に核ミサイルが出来、廬武鉉が出れば南北会談で自らの献身を語りと、韓国は着々と北への融和路線に進んでいきます。
    李明博にしろ朴槿恵にしろ、一度は「日本との歴史問題にこれ以上こだわらない」とか言っておきながら、結局反日に走るというパターンを繰り返すのも、「反日をすればウケる」という世論を反日団体が長年に渡り培ってきた結果です。
    為政者側から見た「国益としての反日」など60年代にはとうに消滅しており、それ以降で政権が反日をする意義など「弁明と人気取り」以外には存在しません。

    とはいえ、左派右派ともに反日という共通項は持つものの、肝心の融和先である北朝鮮が文句のつけようのないクソっぷりを披露し続けてくれることと、やっぱり米との関係は重要だよねって話で、対北融和路線は韓国内で何度も揺れ動き、なかなか左派の思うようには進みません。

    そして左派待望の超・対北融和型リベラルモンスター、我らが文在寅が登場し、その剛腕で韓国の内政・外交をボコボコにしていく傍ら、かろうじて我に返っていた日本との間で当然のハレーションを引き起こし、当然の八方塞がりに陥った状態で、今に至ると。

    以上まとめますと、

    ・韓国の反日は、大きく3つの段階に分けられる

    (ⅰ)大韓民国臨時政府のための反日
    大韓民国臨時政府の正当性の根拠。国論形成のための異論封殺。見せしめ重視。捏造の創作と普及。50年代後半には実質的な役割をほぼ終える

    (ⅱ)独裁政権打倒のための反日
    反日の発信源が政府から左派市民団体・政治団体に移る。人権、平等、民主主義を訴え、反共政権打倒のための世論糾合を狙う。(ⅰ)で拡散された「日本の悪辣さ」を根拠とし、政治腐敗や経済格差の原因を「未精算の親日派」に求める。裏の目的は左傾化と統一

    (ⅲ)さらなる左傾化のための反日
    民主化後、独裁に代わる新たな攻撃対象の設定。日本への直接攻撃。(ⅱ)のロジックを生かしつつ、極大の成功体験を生かした「市民団体による利権」の構築と反日世論の強化・増進、問題の恒久化。対北融和路線を絶やさないための命綱。

    ・1960年代以降、韓国の反日は社会主義勢力との合流を目指す左派市民団体およびそれを支持母体とする野党側の政治家によって強化・増進されてきた

    ・「同じ文脈で主張していた」影響で、反日は韓国において「人権・平等・民主」と同列に近い価値を有している。それらの美麗字句と民族主義的価値観によって、主張者が隠し持つ「左傾化」という本音はオブラートに包まれ、韓国大衆の目を眩ませている

    ・「日本の悪辣さ」を教え込まれた韓国人にとって、反日は甘美な蜜であり、それを利権として構築した左派市民団体は終わりの無い反日を繰り返す

    ・形や目的を変えながらも、韓国の反日は建国以来形成されてきた「常識」「国民感情」および「利権」によって、もはや学術的根拠を受け付けない宗教と化している。手綱を握るのは、異論への監視と封殺の役割を担い、利権を受け取る左派市民団体に潜む「教祖たち」である

    ということで、以上私が認識している【大韓民国の反日史】でした。
    長い長い駄文でしたが、ここまで読んでくださった方、ありがとうございます。

    PS
    諸悪の根源は明白。
    抱える弱点も、明白。
    なぜそこを攻めないんだ、日本・・・

    • 匿名二番さま
      長編お疲れ様です。

      諸悪の根源は明白。
      抱える弱点も、明白。

      全部読んでも分からなかったので、諸悪の根源と、弱点を教えてください。

      • だんな様

        読んでいただいてありがとうございます笑
        すいません、長すぎました・・・

        私が諸悪の根源だと思っているのは、韓国内の「反日教教祖」です。
        「隠れ社会主義者」「北の支持者」と言い換えてもいいですが。

        韓国で反日やってる人間は、おおまか2つに分かれると思っています。
        一つは単純に、韓国の正義を信じている「信者たち」
        韓国民の大多数であり、アホの子です。

        もう一つは、歴史の真実を知った上で、社会主義思想と利権のために反日やってる確信犯で、それが「反日教教祖」です。
        教祖は韓国内のどこにでもいるでしょうが、主に左派市民団体を母体にしていると思われます。

        弱点も2つで、1つは言わずもがな、主張が学術的根拠に基づいていないということ。
        もう1つは、「少数の教祖」と「大多数の信者」という構造です。

        信者たちはごく普通に、韓国を覆う「教義」に従って反日をしています。
        特に北の信奉者という訳でもありませんし、自由民主主義、資本主義のありがたみは過半数が当たり前に理解していると思われます。
        反日は当たり前のことすぎて、特に教義を疑うこともありませんし、本当に漠然と「韓国は善、日本は悪」と信じています。

        しかし教祖は違います。
        反日にも理論武装が必要で、そのためには必ず当時の一次資料にアクセスしなくてはいけないはずです。
        決して表には出しませんが、奴らがそこで「歴史の実態」を目にしていないはずがありません。
        あえて断言しますが、奴らは絶対に「正面切っての証拠の突き付け合いでは勝ち目が無い」ことを自覚しています。

        もし日本が特定団体、特定人物を名指しして「証拠を出せ」と大声で訴えた場合、信者と教祖でその反応が変わってくるのではないでしょうか?

        信者は無邪気に、「奴らを黙らせろ」と要求するでしょう。
        当然のこと、「それができる」と信じているからです。

        ところが教祖は、そうはいきません。
        真実を問う討論会場の椅子が、教祖にとってまさに「処刑部屋の電気椅子」に等しいということは、確信犯たる彼ら自身が誰よりもよく分かっているはずだからです。

        奴らは必ず、逃げ回ります。
        それこそ死に物狂いで、「日韓歴史討論会などに賛同するような奴は、親日派の中の親日派だ!」とかワケの分からんことをのたまいながら、何が何でも処刑台への片道切符を鼻先に突き付けられるような展開は阻止しに来るでしょう。
        奴らにとっては自分の人生が、立場によっては命がかかっています。
        だからこそ、そこに「なりふり構ってはいられない」はずなのです。

        この、追い詰めれば追い詰めるほど奴らが「必ず晒してくれるであろう醜態」を、「日本が利用しない手は無い」、というのが私の考えです。

        • 匿名二番 さま
          返信遅れましたm(__)m

          私より深刻な陰謀論で、文章の書き方がカニ太郎さんに似ている印象です。

          さて、「反日教教祖」は、私が良く言ってる中朝工作員と同じ事だと思います。
          反日教になったのは、そんなに古く無いと思います。

          >反日にも理論武装が必要で、そのためには必ず当時の一次資料にアクセスしなくてはいけないはずです。

          そんな事は無いと思います。
          難癖、言いがかり、日本側が提供した材料も多いです。
          慰安婦の証言が証拠ニダは、ご存知でしょう。

          次回のコメント楽しみにしています。

        • だんな様

          ありがとうございますw
          私は一昨年くらいからここに通ってます。

          まあ韓国人ですから、たしかにみんな真面目に一次資料に当たっているってことは無いと思います笑

          ただ李栄薫教授らの公開討論要請をああもあからさまに無視した経緯とその言い訳を見ていると、どうにも「確信犯疑惑」は拭えないんですよねえ・・・
          「反論できてるように見える証拠を出して来る役」の人は、その一次資料の「都合のいい部分」を発見するために、一体いくつの地雷を踏みぬいていったのか。
          そう考えるとその精神力には笑・・・驚嘆に値します。

          近々そこらへんをまとめた投稿を上げさせていただきたいと思うので、よかったらまたお願いしますw

    • > 韓国は反日を「建国の正当性」の根拠に設定しました。

      御説のおおまかな流れについては特に異論はないのですが、初期韓国の指導者、朴正煕大統領までの指導者が国内統合のために「反日」を利用した動機として、もう一点、韓国国内の内部対立、特に地域対立の激しさを加味した方が良いのではないかと思います。
      韓国(朝鮮)史を省みれば、ただただ内ゲバ、党派争い、足の引っ張り合いの連続でしたし、両班と白丁などの身分差も激しく、およそ国民の団結という精神に欠けていました。特に、高麗期に全羅道排除が行われて以降、全羅道への差別は激しく、それ以降も慶尚道と全羅道との地域対立は非常に激しいものがあります。そして、ネットのコメントなどを見る限り、この地域対立は現在に至るまで、全く解消されていません。
      そうでなくとも、「3人寄れば4つの政党ができる」と言われるほど党派好き、党派争い好きの風土なので、全羅道 vs 慶尚道のような深刻な地域対立を放置すれば、たちまち国家が空中分解しかねません。対北を想定して「反共」を掲げるにしても、所詮は同族という想いは消せないでしょうから、力で抑え込むための口実にはなりますが、ちょっと緩めばグダグダになり、地域対立が再燃する惧れがあります(実際、金大中政権以降、「反共」はグダグダになりました)。

      そこで、国民を結束させるために持ち出されたのが「反日」です。李朝500年の間に叩き込まれた朝鮮式朱子学に基づく華夷秩序観念により、「侮日」精神はほぼすべての国民に刻み込まれていました。さらに李朝消滅によってすべての特権を喪ってしまった両班の「恨み」も加わりました。「反日」は地域対立や階級対立をも超える国民統合のスローガンとして、この上なく都合が良かったのです。
      李承晩大統領は没落両班としての恨みという要素が強かったかもしれませんが、朴正煕大統領はもろもろ承知の上で「反日」を手段として活用したように思えます。もっとも、ここまで「反日」が暴走することまで考えていたかどうかはわかりません。それだけ「反日」の素地が強固だったということなのかもしれませんね。

      • 龍様

        確かにそうですね。
        建国直後は、それこそ大量の派閥が乱立して収集が付かなかったとか、その混乱が南進の引き金にもなったとか・・・

        反日が国論統率のために都合が良かったのは間違いないですが、朴正煕がその暴走を予見出来ていたとは思えないですね。
        むしろ自分を攻撃する手段、反独裁の正当化に使われるとは夢にも思っていなかったでしょう笑

  • 更新ありがとうございます。

    文が任期半ばで失脚しようが、来年5月から獄中生活送ろうがポスト文も用日か反日です。最初は親米かもしれないですが、宗主国の中国には隷属に変わりない。
     
    「強制徴用工問題」という名称も彼らの思う壺で、実は「自称徴用工」「志願労働者」です。チマチマと日本企業相手に訴訟を繰り返してますが、これは嫌がらせ、精神的に参らせる作戦でもあります。

    どうせ、どんな韓国側有利の判決出ても、捨て置けば良い事。無視、関知しないです。

    その間にブーメラン発動、消極的制裁のスワップナシ、自由主義の枠組みであるFOIP、クワッド、シックスアイズ、日英・日仏・日台関係強化、更にTPP等からの締め出しで、国際社会における連携の枠組みから韓国を外すべき。

    金融・経済協力?ないない。日本国と日本企業が韓国と距離を置き、半面台湾とは更なる友邦構築するのが良いでしょう。

  • いつも楽しみに拝読しております。

    報道機関が加工しない情報が広まった結果、韓国と韓国人の本性がはっきりわかってきたので、賢明な日本の国民は政府に先立って静かに経済制裁を初めているのかもしれませんね。国内でヒュンダイの車が全然売れない、サムソンのスマホが売れないといった現象は実際に起こっており、漸次他の分野へ広がっていくように思います。勿論私自身も個人経済制裁を実施中です。

  • 韓国が度々ゴールを動かしたからと言って、
    こちらもラインを勝手に動かして
    ラインを越えていると因縁を付けたら
    泥沼になりそうですね。
    来年くらいから、ラインを越えても、
    体の一部は越えていない、
    とごねられるようになるとか。
    両腕を背中側に突き出して走るナルト走りをするとか、
    挑発もとい長髪にしてバカ殿のように後頭部にマゲを伸ばすとか、
    猿真似をするとか。
    そんなに頭は良くないので、
    ラインを勢いで越えてしまってから、
    真っ青になってどう対処するのかを
    GSOMIAのときのように
    楽しむ もとい静観する
    という楽しみもあります。

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