本稿は、速報です。昨晩の『英国にとって「日韓外相会談が行われない」ことの意味』で示した、「日韓外相会談については開催されない可能性が高い」という当ウェブサイトなりの予測は、大外れしました。英国時間5月5日午前、日米韓3ヵ国外相会談のあとで、日韓外相会談についても開催されたからです。ただし、内容について改めて読んでみると、「わざわざ開催する必要があったのか」と疑問に感じざるを得ません。
当ウェブサイトの予測は大外れ!
当ウェブサイトでは昨晩の『英国にとって「日韓外相会談が行われない」ことの意味』の末尾で、こんな趣旨の内容を記述しました。
- ①日米韓3ヵ国外相会談に関しては、以前から開催に向けて調整していたため、実現する可能性が高い
- ②しかし、日韓2ヵ国外相会談が実現するかどうかは微妙である
- ③日本政府の立場としては、「韓国が作り出した国際法違反の状態を、韓国自身が解決しない限り、首脳会談、外相会談を実施しても意味がない」、と判断している可能性が非常に高いからだ
その答え合わせをしておきましょう。
このうち①については当たりましたが、②については大きく外れました。結論的には、日米韓3ヵ国外相会談、日韓2ヵ国外相会談がともに実現したからです。
しかし、③についてはどうでしょうか。
一概に「間違っている」とは言い難いように思えるのですが、いかがでしょうか?
というよりも、現実に韓国政府が発表した内容を読むと、わざわざ今回、日韓・日米韓で外相会談を行う意義があったのかと疑問に思わざるを得ないのです。
韓国政府の2本のプレスリリース
さて、本稿執筆時点において、わが国の外務省からは、「日米韓」、「日韓」ともに、まだ報道発表が出ていません(ついでにいえば、米国務省ウェブサイト上も、日米韓3ヵ国外相会談についての発表は現時点では見当たりません)。
しかし、韓国政府・外交部は、いずれの会談についても、すでに報道発表を行っています。どちらもさほど長くありませんので、当ウェブサイトの文責において、全文を日本語訳しておきます。
まずは、日米韓3ヵ国会談の方です。
日米韓外相会議の結果【※韓国語】
鄭義溶外交部長官は、ロンドンG7外交・開発大臣会議に出席する機会を使い、現地時間の5月5日(水)午前、アンソニー・ブリンケン(Antony J. Blinken)米国国務長官と茂木敏充・日本外務大臣と韓米日外相会議を持ち、韓半島問題に関連する3ヵ国間協力方案と域内情勢などについて意見を交換した。
日米韓外相は、北朝鮮・核問題に関し、3ヵ国が緊密にコミュニケーションしてきた点を評価し、今後も韓半島の完全な非核化と恒久的な平和定着の実質的な進展のために協力を強化していくことにした。
ブリンケン長官は米側の対北朝鮮政策検討の結果を日韓双方に説明し、3大臣は、今後の対北朝鮮政策の推進過程でも3ヵ国間の継続的・緊密な疎通と協力を続けていく。
あわせて、3ヵ国の大臣は韓米日協力の重要性を再確認し、域内の平和・安全保障・繁栄を促進させるための互恵的未来志向的な協力を継続模索していくことにした。
―――2021/05/05付 韓国外交部ウェブサイトより
若干、訳がこなれておらず、日本語として読み辛い部分がある点に関しては、ご容赦ください。
全部で4つの文章から構成されていますが、正直、これまでの米韓外相会談や米韓「2+2」などでもみられた表現から踏み込んだものはありませんし、「北朝鮮の非核化」という表現もなければ、今回のG7外相会談のテーマである「対中牽制」という文言もありません。
当ウェブサイトでは、「韓国政府の発表にはウソが大変に多い」と考えているのですが(たとえば『電話首脳会談に関する米韓両国の発表内容が違い過ぎる』等参照)、今回の韓国政府・外交部の発表内容自体には、さほどの違和感はありません。
ある意味、まったく予想通り、というわけです。
日韓外相会談、「まったく意味をなさず」
その一方で、日韓外相会談については、次のとおりです。
日韓外相会談(5.5)の結果【※韓国語】
鄭義溶外交部長官は、ロンドンG7外交・開発大臣会議に出席する機会を使い、現地時間5月5日午前、茂木敏充・日本外務大臣と韓日外相会談を行い、その後の関心事について意見を交換した(※鄭義溶外交部長官就任後初めて日韓外相会談)。
両大臣は、日韓が北東アジアと世界の平和と繁栄のために緊密に協力する必要性に共感して、韓日関係を未来志向的に発展させていこうということに意を共にした。
鄭長官は、日本政府の福島原発汚染水の海洋放流決定が周辺国との十分な事前協議なしに行われたことについて、深い懸念を反対の立場を明確に伝達した。
鄭長官はまた、汚染水放流は、私たちの国民の健康と安全、そして海洋環境への潜在的な脅威を与える可能性があるという点で、非常に慎重にアプローチする必要があることを強調した。
茂木大臣は、日本軍慰安婦被害者提起損害賠償訴訟の判決と強制動員被害者に関する最高裁判決の問題の日本側の立場を説明した。
これに対し、鄭長官は日本側の正しい歴史認識がなければ、過去の歴史問題が解決されることがないことを強調して、慰安婦と強制動員被害者関連の私たちの立場を説明した。
一方、両大臣は、北朝鮮・核問題関連、日韓両国と韓米日3カ国が緊密にコミュニケーションしてきた点を評価して、今後も朝鮮半島の完全な非核化と恒久的平和定着に実質的な進展を取得するために、持続的に協力していくことにした。
両大臣は、日韓間の懸案を解決するために、両国間の緊密な対話と疎通を続けていくことにした。
―――2021/05/05付 韓国外交部ウェブサイトより
…。
いったい何なんでしょうか、これは?(笑)
そもそも福島第一原発のALPS処理水の海洋放出に関して、「汚染水」という誤った用語を使っている時点で、日本に対する侮辱です。
また、自称元徴用工判決問題、自称元慰安婦に関する主権免除違反判決問題など、韓国の国際法違反問題に関しては、「日本側の正しい歴史認識がなければ解決されることがない」という言い草、完全に国際法を舐め腐った態度です。
一部報道によれば、今回の会談は20分程度だったのだそうですが、正直、日本の外務大臣の20分という時間をこんな不毛なことに使うとは、なかなか呆れる話でもあります。
いかなる「裏」があるのか
もっとも、今回の日韓外相会談がなぜ実現したのかについては、何らかの「狙い」、あるいは「裏事情」でもあるのではないかと疑うのが自然な発想ではありますが、これについては正直、現段階ではよくわかりません。
もしかして、茂木外相が単に米国の顔を立てて韓国の鄭義溶(てい・ぎよう)外交部長官と会ってやっただけなのかもしれませんし、あるいは日韓外相会談を実施してみせて、G7外相会合主催国である英国に「ほらね、韓国を招いても意味がなかったでしょ?」と見せつける意図でもあったのかもしれません。
(※いずれの解釈もやや強引ですが…。)
さらに不自然な点があるとすれば、韓国の外交部は大言壮語する傾向が強い(※著者私見)にも関わらず、今回の2つのプレスリリースを読む限りにおいては、正直、予想を大きく外れた内容は見当たらない、という点です。
いずれにせよ、日米双方とも、今回の日韓・日米韓会談については、現時点においてプレスリリースを出していないため、もしこれらについても公表されたならば、あらためてそれを読み、上記韓国政府の発表内容と照らし合わせてみても良いと思う次第です。
View Comments (28)
独断と偏見かもしれないと、お断りしてコメントさせていただきます。
(そう自分に言い聞かせないと、朝日新聞と同じく、自分は間違えない存在と自惚れそうなので)
韓国と朝日新聞が、「日韓外相会議をしたことに意味がある」と言い出すのではないでしょうか。
駄文にて失礼しました。
引きこもり中年様
>韓国と朝日新聞が、「日韓外相会議をしたことに意味がある」と言い出すのではないでしょうか。
(*´▽`)ノ ハーイ♪ あたしもそれに一票なのです♪
加えて、朝日新聞が「会談をきっかけに、日韓関係の改善に向けて努力すべき」と言い出すと思うのです♪
> 「日韓外相会議をしたことに意味がある」
というか、現在までの報道内容を見る限り、「会談をしたという意味しかない」という感じですね。おそらく、事前の事務方による調整がどうにもならなかったのでしょう。日米韓外相会談も日韓外相会談も、見事なまでに実質的成果なく終わったようです。
まあ、日本としては、会談開催に汗をかいたらしいアメリカの顔を立ててやることができましたし、無駄なことした開催国イギリスの顔も立ててやることができましたし、良かったんじゃないですか、これで。外務大臣としては、無駄な会合も仕事の内でしょう。
忙しい中、わざわざ20分も時間を割いて会談してやったんだから、当分韓国外相や韓国大使と会話せずとも、会談や面会を断る理由ができたと思えば、それでいいんじゃないでしょうか。
読んでみると今回も平行線で、お互いに自国の主張を言いあったという事ではないでしょうか。
多分韓国はホワイト国復帰とか金貸してくれとか、ワクチン協力(www)しようとか、漁業協定の復活とか厚かましい事たくさん言ったが茂木さんにスルーされたんだと思う。
文章を読む限り韓国国民に対して「言うべきことは言いました」というだけみたいな気がする。
韓国のプレリリースは自国内向けに都合よく出される事は織り込み済みですので、日米共に韓国のプレリリース事がコメントのタイミングではないでしょうか。
一見無意味な会談のようですが、首脳会談を阻止する為の布石ではないかと思えますね。
通訳込で実質10分の会談で首脳会談を潰せるのなら、易いものかと。
今後は国際法違反が是正されるまでは大臣級の会談はないのでは?
G7の顔も立てましたしね。
真相はバイデン大統領に脅されたので会っただけとかでしょうか。証拠の記念写真も撮ったからとりあえず安心ですね。
まあお互いここで引くと政権が傾くから、一歩も引かずに会議の議題を決めるための会議とか、会議の効率をよくする会議とかで時間を無駄に浪費するのが最善ですね。
それは日本にとって困らないというか、一方的に韓国の国力だけが低下して益々戦いやすくなるだけなので、むしろ望むところでしょう。
いい感じに焦土になってくれれば中国との緩衝地帯としてずっと西側に有用になりまする。
日韓外交は、日米外交と完全に切り離せるわけではないですからね…
会いはするし話もしますが、さりとて何かが進むわけではないでしょう。
どうせ韓国側はある事無いこと言い、事務方で纏めた事柄を都合のいいように曲解するだけでしょうし。
あらら、茂木っち日韓外相会談に応じちゃいましたか。
折角、G7諸国の首脳に日韓関係の現状がどんなものかを直感的に理解して頂ける良い機会だったんですがねえ。
単に人が好いのか、第三者からの視点でどう見えるかのイマジネーションを持って戦略的に考えられないのか、どちらなのかは知らないが、茂木っちは駄目だなあ。
コロナ以降、ひじタッチしていない国際会議写真はじめて見ました。いいことです。
さて、突然ですが、「自由で開かれたインド太平洋ブルークアッドチーム」対「非法治レッドクアッドチーム」の集団抗争、勝機が見えてきました。
中国には一目おいていたのですが、ここ最近、愚劣ぶりが韓国と全く同じになってきました。昔なら、葛飾北斎の版画へ冒涜等、属国韓国にやらせていたはずです。
まずG7共同ステートメントで、香港・チベット・ウイグル・台湾すべてに言及してもらいましょう。
更新ありがとうございます。
日韓外相(害障。テヘ)会談は、米国の顔を立ててやって、「時間の無駄になるが、やってやろうか」という茂木大臣サイドの考えがあったと思います。また、何かしらんけど、オブザーバーとして呼んだ議長国の英国の顔に泥を塗る訳にいかないので、日米韓の3カ国会談の後、開催したのでしょう。
話は相変わらず噛み合いません。茂木大臣としては「ブリンケン長官、こんなに話の分からない蕃国人ですヨ!」、英国には「見ろ、韓国人など二度と呼ぶなッ」でしょう。
日韓は話が平行線のまま。何か韓国としての提案を持って来る訳でもなく、日本に対する謝罪も無い。別れしなに「アンタとこと会う日本高官は、私が最後だ。姜は何時引き取って貰ってもいい。おかわりは要らんヨ!」と言って欲しいですね。
会談はしてほしくなかったですね。
毅然とした態度で断るべきでした。
しかし、この外相階段を契機に、自称?次期大使がの信任状捧呈につながらないとよいのですが、、、
ATMあたりは、これを機に関係改善をなんていいだすかも、、。
主様皆様お疲れ様です。
③(略)首脳会談、外相会談を実施しても意味がない」、と判断している可能性が非常に高いからだ
そう、意味がないと判断することと実際にやらないということは違いますよね。
皆様ご存じの通り意味のない会議、規則、チェックリスト。大人って大変ですね。(有益なのも当然ありますが)
ともあれ皆々様そして茂木外相お疲れ様です。