X

北朝鮮五輪不参加で(勝手に)追い込まれる文在寅政権

四面楚歌の韓国、起死回生策は「東京五輪ボイコット」か?

「韓日関係の改善が必要だ」、「米中双方に曖昧な顔をする戦略はそろそろやめるべきだ」…。最近、この手の主張が韓国メディアから聞こえてこない日はありませんが、これらの主張にはそろいもそろってひとつの共通点があります。それは、「具体的な提案が一切ないこと」です。ただ、ここにきて主要都市の市長選で与党候補者の敗北も予想され、さらに追い打ちとして北朝鮮が東京五輪不参加を表明しました。東京五輪の政治利用を勝手に目論んでいた文在寅政権は勝手に追い込まれた格好ですが、文在寅氏に「起死回生策」はあるのでしょうか。

放射能五輪の記憶

はじめに、少しだけ無関係な話をしておきましょう。

東京オリンピック・パラリンピック(東京オリパラ)を巡っては、2013年9月に安倍晋三総理自身がアルゼンチンの国際五輪委(IOC)総会に参加して勝ち得た大会ですが、この五輪に先立って、韓国がIOC大会の前日に日本産の水産物の禁輸措置を大々的に公表したことがあります。

タイミングから判断して、これは明らかに「東京五輪潰し」でしょう。

また、2019年7月には、韓国の国会議員が、東京五輪を揶揄するこんな画像をツイートした、という「事件」もありました。

図表 日本に対するヘイト画像

(【出所】韓国の国会議員のツイート)

そのツイートは現在でも閲覧可能です。

民間人レベルで「東京五輪は放射能五輪だ」などといわれるのなら、まだ我慢できなくはありませんが、韓国政府や韓国の国会議員が堂々とこのようなジャパンヘイトを仕掛けてくるというのは、どうにも理解できません。

なにより、こんなことを仕掛けてくる国との相互リスペクトに基づく友好関係が成立するとも思えませんし、ましてやその国が東京オリパラを朝鮮半島和平に利用しようとしているというのも言語道断でしょう。

具体的提案のない韓国

前段と後段でつながらないのは韓国メディアの特徴

余談は以上として、以下、本論です。

当ウェブサイトの読者コメント欄には、さまざまな立場の方がコメントを残してくださいます。これらのコメントのなかには、ときどき、ハッと気付かされるものもありますし、こすひたコメントに出会うことが楽しみであるため、当ウェブサイトを続けているという側面があります。

こうしたなか、以前、こんな趣旨のコメントを当ウェブサイトに書き込んでいただきました。

韓国メディアに掲載される論考の多くに見られる毎度お馴染みの論調とは、前段では小難しい理屈を並べ立てておきながら、結論部では前段とまったくリンクしない結論(たとえば『大国の態度をとれ』だの『度量を示せ』だのといった感情論)になってしまう、というものだ」。

このコメントを下さったのは「匿名29号」様というコメント主様ですが、まったくそのとおりだと思います。韓国メディアを読んでいて覚える違和感の正体とは、まさに、前段でもっともらしい理屈を並べ立てておきながら、メチャクチャな結論を導き出すことにあります。

ただ、「匿名29号」様は同時に、韓国メディアにこうした議論が繰り返し掲載される点については、「なるほど、そうだ」などと騙される日本人が少なからず存在したことがその背景にあるのではないか、とも指摘しています(匿名29号様、大変有意義なコメント、ありがとうございました)。

米中二股外交を続けるのか?続けないのか?

じつは、この一連の指摘こそ、大変に重要です。一見するともっともらしい理屈を並び立てながら、前段と後段の理屈がつながらない(あるいは後段に具体的な提案が存在しない)というのは、韓国メディアだけでなく、韓国政府にもよく見られる現象だからです。

まずは、米中双方との外交に関連する事例を、2つほど挙げておきましょう。どちらも韓国メディア『中央日報』(日本語版)の記事です。

【リセットコリア】米中の片方だけ選択しないようにするなら精巧な外交戦略立てなくては

―――2021.04.01 11:38付 中央日報日本語版より

【時視各角】「安米経中」の有効期限は過ぎた=韓国

―――2021.04.06 11:07付 中央日報日本語版より

どちらもタイトルだけの紹介に留めます(時間を無駄にしたいという方は、是非、リンク先記事の全文を読んで下さい)。

どちらの記事でも、例の「米中二股外交」(米中双方に良い顔をする外交)を巡って、前段では「そろそろ行き詰ってきた」などと危機感を示しつつも、後段ではこれに対する具体的な提案が欠落しているという代物です。

  • 複数の世界で構成されるメタ世界を抱くことができる想像力と、堂々とこの中でメンバーシップを主張する政治的意志、これを政策的に実行するための精巧な外交戦略が必要」。
  • 「(文在寅政権の綱渡り外交は)それがどれほど際どいゲームであるかを我々は先週末に(日米韓3ヵ国安保担当高官協議と中韓首脳会談で)目の当たりにした」。

本来、韓国人の読者が求めているのは「現状分析」ではなく、「どうすれば良いか」の提案なのではないかと思いますし、同様に、米国としても、韓国が旗幟を鮮明にすることを求めているのではないかと思う次第です。

しかし、これらのリンク先記事を読んでも、「韓国は米国陣営に留まるべきだ」とも、「中国陣営に行くべきだ」とも記載されていません。とくに前者の記事でいう「精巧な外交戦略」とは、「いままで以上に曖昧さを維持する戦略」と読めてしまいます。

具体的提案もなしに「対話の準備」って…

一方、同じような「前段と後段がつながらない」事例は、韓国政府にもあります。

その典型例として、文在寅(ぶん・ざいいん)韓国大統領が今年1月18日の新年記者会見で、次のように述べたことを思い出しておきましょう(『文在寅氏「韓日協力」に菅総理「韓国が適切な行動を」』等参照)。

韓日間の諸懸案を外交的に解決しようと協議しているなか、慰安婦判決が出た。率直に言って、少し困惑しているのが事実だ。2015年の韓日の慰安婦合意が両国政府の公式合意だった事実を認める。その土台の上で被害者も同意する解決策を見つけられるよう、韓日間で協議する」。

「慰安婦判決」とは、自称元慰安婦問題を巡る、例の主権免除違反判決(『【総論】国家免除条約と「主権免除が認められる事例」』、『【総論】韓国主権免除違反判決の現時点におけるまとめ』等参照)のことです。

文在寅氏は「(2015年12月28日の)日韓慰安婦合意は両国政府の公式合意だった」と述べてはいますが、それをどのようにして履行するかについて、何ら具体的なことを述べていないという点に注目してください。

文在寅氏が日本に対し、一見すると宥和的な内容を発言したのは、このときだけではありません。文在寅氏は3月1日の演説でも、日本に対して「いつでも対話する準備ができている」、などと述べています(『【資料】文在寅氏「3・1節」演説の日本に関する発言』等参照)。

しかし、現在までのところ、韓国政府が自称元徴用工問題や自称元慰安婦問題などの日韓問題に関し、何か具体的な提案をしたという事実はありません。要するに、「その場しのぎで口から適当なことを述べる」というのは、文在寅政権の(あるいは韓国の)常套手段だ、と考えて良いのでしょう。

平昌アゲイン?それとも…

中央日報「北朝鮮の五輪不参加で『平昌アゲイン』は水泡に」

こうしたなか、理解に苦しむ記事がもうひとつ、韓国メディアに掲載されていました。

北朝鮮「東京五輪不参加」…文政府「平昌アゲイン」は水泡に帰す

―――2021.04.07 06:55付 中央日報日本語版より

すでに報じられているとおり、北朝鮮は今年7月の東京オリパラへの不参加の意思を示していますが、中央日報は「東京五輪を南北の和解契機にして朝鮮半島平和プロセスを再稼働するという文在寅大統領の計画にも支障が生じることになった」、としています。

勝手に期待しておいて勝手に「水泡」というのもわけがわかりません。

そもそも韓国にとって日本は外国であり、その外国で開催される五輪を自身の「南北和平」という勝手な目標のために利用しようとしていたという点も驚きですが、ただ、これには、文在寅氏自身の「成功体験」があることは間違いないでしょう。

その「成功体験」とは、「2018年2月に平昌(へいしょう)で開催された冬季五輪を契機に、南北対話や米朝対話が実現した」、というものです(といっても、この実態は「韓国外交の成功」とは言い難いのですが、少なくとも文在寅氏自身はそう信じ込んでいるフシがあります)。

あくまでも文在寅氏の認識に基づけば、平昌五輪開会式で北朝鮮から独裁者である金正恩(きん・しょうおん)の実妹である金与正(きん・よしょう)らがやってきたことが、その後の南北首脳会談や米朝首脳会談のきっかけになった、のだそうです。

韓国政府が東京五輪を第2の平昌五輪にするという構想を打ち出したのは、環境が整えば北朝鮮も対話に臨むだろうと信じていたためだ」。

だからこそ、北朝鮮の東京五輪不参加は、そもそもの「平昌アゲイン」が「水泡に帰す」という意味で、韓国政府をいたく落胆させている、ということなのだとか。

いろいろ勘違いされていませんか?

ただ、中央日報の記事では、次のような記述も含まれています。

2019年2月、米朝首脳会談が『ハノイノーディール』に終わって北核問題をめぐる異見が浮き彫りとなり、北朝鮮は韓国が米朝対話の仲裁者役を担う力はないと判断したとみられる。また、トランプ政府とは違ってバイデン政府は首脳同士まず会おうというトップダウン式のアプローチ法を敬遠する」。

この記述、一見するともっともらしいのですが、やはり実態を調べていくと、おかしなことを述べていると思わざるを得ません。これについてやはり参考になるのは、日本を代表する優れた韓国観察者である鈴置高史氏の議論です。

鈴置氏はそもそも論として、「韓国が米朝仲介の役割を果たしてきた」、「2018年6月のシンガポールでの米朝首脳会談実現などに一役買った」といった主張に関しては、「実態は米朝に頼み込んで仲介役のフリをさせてもらっていたに過ぎない」と指摘しています。

たとえば、デイリー新潮の2019年6月29日付『北朝鮮が韓国に“仲介者失格”の烙印 それでも文在寅が続ける猿芝居の限界が来た』という記事で、鈴置氏は次のように指摘します。

米国は米朝交渉の邪魔をされたくなかったので、韓国の顔を立てて『フリ』をすることを許した。一方、北朝鮮は韓国を使って米国を騙そうとした。

要するに、韓国に米朝仲介の邪魔をされたくなかった米国と、韓国にドルを送金させたい北朝鮮の思惑が一致して、韓国に「仲介役」を演じさせた、というのです。おそらく、これがもっとも実態に近いのでしょう。

反日がさらに加速しないか、心配だ…(棒)

さて、事前の報道によれば、本日予定されている韓国のソウル・釜山両市長選挙では、文在寅氏の出身母体である「ともに民主党」の候補者の苦戦が予想され、野党である保守政党の候補者が量選挙戦を制する可能性が高いとみられているようです。

そういえば昨日の『姜昌一氏が信任状捧呈式を「急遽延期」へ=日テレ報道』では、駐日大使として日本に赴任したはずの姜昌一氏の信任状捧呈式が延期され、しばらく同氏が駐日大使として活動できない、とする話題も取り上げました。

(※本日、余裕があれば、この「姜昌一問題」についてはのちほど別稿で改めて触れるかもしれません。)

文在寅政権は、対米、対中、対北、対日のすべての外交を行き詰らせている状態にあり、これで、主要都市の地方選で敗北すれば、レームダック化に突入してしまうかもしれません。

ただ、文在寅氏にはまだ起死回生策があります。

それは、「韓国も東京五輪をボイコットする」、です。

そのうえで、自称元徴用工判決問題で差し押さえている日本企業の資産の売却手続を開始し、自称元慰安婦訴訟に関しては日本政府の在韓資産の差押に着手し、文在寅氏自身が竹島に上陸することで、支持率の挽回を図る、という手法が残されているのではないでしょうか。

…、というのはもちろん笑えない冗談ですが、行き詰った文在寅政権の「次の一手」には、十分な注目と警戒が必要であることは言うまでもありません。

もともと韓国が国を挙げて東京オリパラを妨害していたという事実を思い出すならば、「東京オリパラが南北和平プロセスに利用できない」となったときには、東京五輪不参加とともに全世界に対する猛烈なネガティブキャンペーンを始める、という展開も考えられます。

いずれにせよ、個人的には韓国で反日がさらに加速しないかが心配でならず、夜も10時間しか眠れないほどなのです。

新宿会計士:

View Comments (18)

  • オリンピックは平和の祭典で、政治利用すべき物では有りません。
    北朝鮮不参加の報道に「東京オリンピックは、南北融和の場となるべき物だった」と政府がコメントすること自体が異常なのです。 

    また、放射能五輪の話をするなら、開催地の投票が行われる前に福島産の水産物輸入を禁止して、東京オリンピックを邪魔しようとした事を書かないと、片手落ちだと思います。
    北朝鮮が不参加になれば、思い出したように「放射能五輪」の話を持ち出して来ると思います。

    また韓国に具体策が無いのは、何事においても(かく有るべき」だけでHOWが有りません。朝鮮人の理想と現実の区別が付かない思考法が原因で、これからも変わる事はありません。

  •  常日頃から放射"能"と放射"性"の混用、誤用が気になるのですが、「放射性五輪」とかなってもまた違和感があるか。

     放射能五輪。数学オリンピックだの技能オリンピックだのといった用例に倣えば、放射能=放射性崩壊の数=放射線の強さを競う大会であると思われます。原発排水競技と自然放射線競技の種目での日韓対決は韓国の勝ちですね、おめでとうございます。

  • もっともらしい理屈を並べて、代替案や結論が無いのは、日本にもいますね。
    特定野党さん、と科学を振りかざすな新聞ですかねw

  • >韓国人の読者が求めているのは
    >「現状分析」ではなく、「どう
    >すれば良いか」の提案
    これはちょっと違うと思う。
    彼らには自分こそ絶対正義というのが根底にあり、新聞は「こいつが悪だ!」「みんなでこいつを叩こうぜ!」というのを示すのを期待されている。提案なんてしたら新聞の方が叩かれかねない(何かを叩くための提案除く。というか、彼らは無数のスタンダードを繰り出す人々なので原理原則は通じない)

    • 韓察者さま
      ただ、自分に都合の良い「ウリ側」の記事を喜ぶだけだと思います。

  • 朝鮮半島土着の原住民の皆さんにとって『外交関係』とは「韓国の外にある国のうち、今現在ボクちゃんに損得勘定で得になる事をしてくれるのは何処の誰だろう? (勿論ボクちゃんは口先だけで、何をしてあげる心算も、何の責任を執る心算も無いけど)」との設問の答えを模索する過程を意味します。

    全てが「外国と交渉した結果により韓国国内で結果的に起こる事に限定された損得勘定」が「韓国の外」との関係を支配している訳ですから。

    何しろ、朝鮮半島の「正義」とは「ボクちゃんが相手の上位に立つコト」であり、「道徳」とは「上位の無理難題を下位の者にムリヤリ聞かせるコト」であり、「約束」は「下位のモノのみが守るべきコト」であり、「責任」は「どっかの誰かに押し付けるモノ」ですのでね。

    このような思考回路・行動原理を持った民族の外交は「国内でのマウンティングの取り合いの葛藤」と「国内でのウリとナムの今現在の損得勘定」に支配されていて、「国家100年の計」とか、「国家間の約束」とか、「国家間の信頼関係」とかは彼らの理解を超えているのだと思います。

  • > 夜も10時間しか眠れないほど
    心中お察しします。(笑)

    日本のメディアも不安を煽って韓国のように露骨でないにせよ、オリンピック妨害に一役買っていると思いますが、始まればそれを利用(報道等)して金儲けをするのでしょう。
    韓国については是非ボイコットして欲しいものです。韓国の試合は不快感が残る場合が多いので。

  • 大統領選挙の前哨戦にあたる、ソウルとプサンの市長選挙が始まりましたね。
    北朝鮮のオリパラ不参加も、選挙結果に影響を与えるのではないかと思います。
    文大統領にとって重要な政治タイミングに、南北和平プロセスを不可能(拒絶)した北の思慮ってあると思うのです。
    南北和平一本槍の文大統領は、「はしごを外された」とみるべきではないでしょうか。
    次の大統領選挙は、保守派が勝つのが濃厚な情勢とみてよいと思います。

    その場合、一般人となった文在寅氏の去就が気になるところです。
    保身には人一倍気を付けていらっしゃいますが、ご自身が体現した通り韓国の約束や法律に意味はありませんから、命があるうちに亡命を考えた方が良いかもしれませんね。

    さて、亡命と言えば、敗色濃厚な朝鮮戦争勃発の時期に「山口県に6万人規模の亡命政府を作っても良いか」と外務省に要請したこともある、李承晩(結局最期は亡命先のハワイで客死)という人もいましたね。
    そんな依頼をするにも関わらず、2年も経たず李承晩ラインを作った人です。
    厚顔無恥は伝統ですから、文在寅氏も日本やアメリカに「保守政権になったら、亡命させてほしい」と言い出すかもしれませんね。
    是非、彼の愛する北朝鮮や中国に亡命してほしいところです。

  • >>外国で開催される五輪を自身の「南北和平」という勝手な目標のために利用しようとしていた・・・
    段取りは当然イルボンがしてくれるハズニダ!ぐらいの感覚だと思いますニダ、既に彼らを十分に理解しているハズなのに彼らに理路整然とした話を求める方が間違っていると思いますし、愚にも成らない話に突っ込みを入れるのも如何かと私は思いますが。

  • 方向性を示すだけで具体的方策を示さないのは、韓国メディアも政府も同じこと。 突出した責任回避能力の為せる業なのでしょうね。

    2022年冬季北京オリンピックは、2月4日から2月20日までの17日間。
    次回韓国大統領選挙は、2022年3月9日

    彼らは、何故に核心に触れないのだろう?

    「諦めるのには、まだ早い! 身も心も宗主様に捧げ、南北の橋渡しをお願いすればこそ、開ける未来もあるのだ!」と・・。

1 2