韓国メディアの記事活用し、FOIPを正確に理解する
当ウェブサイトではこれまで何度となく取り上げて来た「自由で開かれたインド太平洋(FOIP)」に関しては、論じるべきポイントが多々ありますが、その全体像は「基本的価値に基づく同盟」と考えて良いでしょう。これについて理解するうえでは、「理解していない人」が書いたコラムを読むのが手っ取り早いのかもしれません。
FOIPが重要である理由
当ウェブサイトではこれまで連日のように、「自由で開かれたインド太平洋(FOIP)」について取り上げて来ましたし、これからも取り上げることでしょう。
先週金曜日の「日米豪印テレビ首脳会談」もさることながら、本日の「日米2+2会合」、さらには来月の菅義偉総理大臣の訪米による日米首脳会談など、日米を基軸とした外交関係に関しては、話題が目白押しだからです。
当然、名指しこそしていませんが、その大きな目的のひとつは、東シナ海や南シナ海で武力による現状変更を試みて来る中国を牽制することにありますが、FOIPの日本にとっての位置付けは、それだけではありません。
あくまでも著者自身の見解ですが、現在の日本は米国にとって、単に「東アジア」「太平洋」「インド洋」に限らず、いまや米国の全世界戦略にとって、欠かすことができないほど大事な国に変わりつつある、という意味でもあります。
もちろん、「日本が米国にコミットし過ぎると、米国が中東などでメチャクチャな戦争を起こしたときに、それに巻き込まれることになる」といった懸念が出て来るであろうことは、そのとおりでしょう。
しかし、それと同時に、日本が米国にとって「かけがえのないほど重要な国」になれば、米国が日本の国益に反するような行動を取ろうとしたときに、日本が米国の行動にブレーキを掛けることができるようになる、という意味でもあります。
著者自身は、そういう形の日米同盟が望ましいと考えています(※ただし、この「あるべき日米間系」についての記述をし始めると、キリがなくなってしまいますので、可能ならば別稿にて近日中に議論したいと思います)。
中央日報コラムニスト「米韓同盟は二流同盟へ」
さて、日米がいかなる同盟を目指すべきかを具体的にイメージするうえでは、そのほかの国と米国がいかなる同盟を結んでいるかについてのケーススタディを行うのが手っ取り早いでしょう。
ちょうどその参考になりそうな記事が、韓国メディア『中央日報』(日本語版)に掲載されていました。
【時視各角】米国の「二流同盟」の道をゆく韓国
―――2021.03.16 10:24付 中央日報日本語版より
この記事を執筆したのは、「コリア・ウォッチング業界」界隈ではちょっと有名な中央日報のコラムニストの方です。なぜ有名なのかについては、本稿ではあえて申し上げませんが、その理由はご想像にお任せします。
そして、当ウェブサイトではかねてより、「韓国メディアでは『クアッド』『クアッド・プラス』などの表現を見かけるが、『自由で開かれたインド太平洋』ないし『FOIP』という表現を見かけることは非常に少ない」と報告しているのですが、リンク先記事もその例外ではありません。
2000文字弱の文章ですが、「クアッド」という表現は13ヵ所も出て来るくせに、「自由で開かれた~」、「FOIP」という表現は、たった1ヵ所も出てこないのです。じつは、この事実こそ、リンク先記事を読み解くカギです。
要するに、リンク先記事の執筆者の方が、「なぜ日米豪印4ヵ国が結束しようとしているのか」について、根源的なところをまったく理解していないのではないかと思えてならないからです。
誤解に満ちた認識
最初に、記事の冒頭部分を読んでおきましょう。
記事では今月12日のクアッド首脳会議を契機に、「韓国はクアッドに参加しなければならないのだろうか」とする問題提起が行われています。
そのうえで、先月末には国際政治経済ジャーナルの『フォーリン・アフェアーズ(Foreign Affaires)』に『アジア自由秩序の指導者・日本』という「露骨なタイトルの記事」(※原文ママ)の、「米国はインド太平洋内の長年の同盟である日本に従わねばならない」とする記事が掲載された、と指摘。
さらには、米戦略国際問題研究所(CSIS)、ブルッキングス研究所、ヘリテージ財団なども相次いで日本の戦略的価値を強調する報告書を公表し、こうした環境を受け、菅義偉総理大臣がジョー・バイデン米大統領の初の対面首脳会談の相手に決まった、などと述べています。
ここまでの記述を読めば、著者の方が「日本ばかりが米国から尊重されるのが悔しい」という思いが見て取れるものの、「ではなぜ、米国の研究所が日本とのパートナーシップの重要性を主張しているのか」という肝心の論点には一切触れられていません。
だからこそ、普段であれば、ここから先の文章も読む気が失せてしまうのですが、頑張って続きを読んでみましょう。
このコラムニストの方は、バイデン氏が日本を「インド太平洋の平和と繁栄のための礎石(cornerstone)」、豪州を「錨(anchor)」と呼んだのに対し、韓国を「北東アジアの平和と繁栄のための核心軸(linchpin)」と呼んだという事実に着目し、次のように嘆いてみせます。
「この表現には大きな差がある。日本・オーストラリアは大きなインド太平洋の安全保障パートナーで、韓国ははるかに狭い北東アジアの同盟と規定した理由だ」「結局、韓米同盟の重要性がアジア太平洋から北東アジア次元に縮小されたのだ」。
ちなみに2013年のバラク・オバマ米大統領と朴槿恵(ぼく・きんけい)韓国大統領、2017年のドナルド・J・トランプ米大統領と文在寅(ぶん・ざいいん)韓国大統領(※肩書はいずれも当時)の首脳会談で、米国側は米韓同盟を「アジア太平洋の中心軸」と位置付けていたのだそうです。
もっとも、なぜ自分たちの国がそこまで軽視されるようになったのか、このコラムニストの方の文章を読んでも、その原因の分析が一切存在しないというのはご愛嬌、といったところでしょうか。
そのうえで、このコラムニストの方は、次のように主張します。
「多くの専門家は韓米同盟の地位回復のために韓国のクアッド加入が切実だとみている」。
この認識自体、すでに誤りに満ちています。
「クアッド」、すなわち「4ヵ国」とは、「FOIPにコミットした国が4ヵ国だった」という意味であり、最初から「4ヵ国ありき」ではありません。
それに、「クアッド加入」と軽々しくおっしゃいますが、これへの参加が認められるためには、韓国自身が「法の支配」を重んじるのに加え、中国に強く立ち向かっていく覚悟を持つことが求められます。つまり、「韓国がFOIPにどう貢献できるか」が大事、というわけです。
権利主張して義務を果たさない
驚くのは、それだけではありません。「クアッドが太平洋インド洋をカバーする同盟として優遇される」などとしたうえで、次のように言い放つのです。
「そのうえクアッドは地震・津波のような自然災害やコロナなど伝染病対応のための協力まで議論する機構だ。だからクアッド参加時にはこれら4カ国の助けも得ることができる」。
要するに、FOIPに対して貢献するという議論よりも先に、「韓国が除け者にされること」を懸念する、というものです。義務の議論を無視して権利だけを主張するのは、テンプレートかなにかでしょうか。
韓国を代表する保守系メディアである『中央日報』の「コラムニスト」という方がこのような認識であるということを考えるならば、現在の左派政権がFOIPの考え方を正しく理解しているとはとうてい思えませんし、日米がFOIPへのコミットを強めるほど、日米韓3ヵ国連携も弱まらざるを得ないのでしょう。
ちなみにリンク先記事では、「このままいけば、韓国は日本・オーストラリアに至らない『二流同盟国』に転落するのは明らかだ」と述べていますが、この認識でも甘いでしょう。
日本を代表する優れた韓国観察者である鈴置高史氏が今から2年以上前の時点の『米韓同盟消滅』でも予言したとおり、米韓同盟は「二流同盟」どころか「消滅」への道を辿る可能性が高まっていると思う次第です。
【参考】『米韓同盟消滅』
(【出所】アマゾンアフィリエイトリンク)
本文は以上です。
日韓関係が特殊なのではなく、韓国が特殊なのだ―――。
— 新宿会計士 (@shinjukuacc) September 22, 2024
そんな日韓関係論を巡って、素晴らしい書籍が出てきた。鈴置高史氏著『韓国消滅』(https://t.co/PKOiMb9a7T)。
日韓関係問題に関心がある人だけでなく、日本人全てに読んでほしい良著。
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【おしらせ】人生で10冊目の出版をしました
自称元徴用工問題、自称元慰安婦問題、火器管制レーダー照射、天皇陛下侮辱、旭日旗侮辱…。韓国によるわが国に対する不法行為は留まるところを知りませんが、こうしたなか、「韓国の不法行為に基づく責任を、法的・経済的・政治的に追及する手段」を真面目に考察してみました。類書のない議論をお楽しみください。 |
【おしらせ】人生で9冊目の出版をしました
日本経済の姿について、客観的な数字で読んでみました。結論からいえば、日本は財政危機の状況にはありません。むしろ日本が必要としているのは大幅な減税と財政出動、そして国債の大幅な増発です。日本経済復活を考えるうえでの議論のたたき台として、ぜひとも本書をご活用賜りますと幸いです。 |
> 米韓同盟は「二流同盟」どころか「消滅」への道を辿る可能性
米韓同盟消滅は、韓国そのものの消滅につながることも、理解していないのでしょうね。
内心、その日を心待ちにしているのです。
日本による制裁と米国による韓国経済焦土化が発動されないと、
せっかく作った「みずいろの雨」の替え歌 ver.2 「制裁の雨」 or 「焦土化の雨」を
発表する機会が訪れないではありませんか。
イーシャ様
いつも楽しみにしてます。
派生で「ミスリードの雨」とか、期待してもよろしいでしょうか??
ぜひぜひ。m(_ _)m
カズ 様
ミスリードの雨・・・口をあまり開かない母音が続き、発声し難そうです。
無関係ですが、メディアがよくやるのはミスリード、
韓国人お特異の論点ずらしはミスディレクションだと認識しています。
うーん…
イマのトコロ韓国はヲチ対象としては秀逸なプリマですが、
こっからダキツキカミツキ盗ルネード仕掛けてきそうでヤナ感じがビンビンです…
今以上の国家間ソーシャルディスタンスを森羅万象担当大臣のガースーには求めたいトコロですが、サテ…
記事については、アメリカ側に残りたい韓国人が書いたものとして、納得いく内容だと思います。
「その場その場で最大限の利益を得ようとする」以外に、思想やポリシーは無いんです。
なるほど。確かに韓国世論を誘導するには、理念なんぞより利得を説いた方が良さそうです。そこに「我々にはこれこれこういう努力が必要になるが」などと事実を書き加えては、効果を減じてしまいますね。ここでも事実陳列罪は重い。
しかし、前記事「台湾を国と呼称」末で”ジャーナリズムかくあるべし”と新宿会計士様が述べられた内容と真逆ですね……
農民さま
「記事を書くのも韓国人」ですから。
”用日”の考え方と同じく”用米”、更には韓国にとって中国以外の諸外国は利用するために存在しているという考え方が露骨に表れていて、「参加すべきか」以前に自国はどういう役割を果たすことができるのかという視点が全く欠如していて呆れてしまいます。
北朝鮮をめぐる世界外交の中で常に自分が必要とされるキーマンという立ち位置を米国から無償で与えられていたので、外交の中では自国は何もせずとも周りからちやほやされる特別な国になれるのだという誤解に気づいていないようです。
これが有名なコラムニストですか? まあ、自分の欲求に従って読みたいものだけを読む韓国人向けの記事のひとつであり、わざわざ日本語版になっているのが不思議です。あっ、日本の中にもそういう人がいるのでしたっけ。
>もちろん答えは出ている。クアッドに入るものの後遺症を最小化するのが最善だ。
「クアッドへは請われて仕方なく加盟したのだから限定的にしかコミットしない」って状態にしたいのかな?
カズさま
「アメリカさんに誘われて断れなかったから入るだけ。日本なんて関係無いの。だから中国さんは、怒らないでね。」
ですかね。
だんな様
きっと怒られない訳ないんですけどね。
中:三不の誓いは?
韓:日ではなくクアッドとの同盟ニダ・・。
ロールシャッハ・アドバイザリー(株)のジョセフ・クラフト代表が、3月15日付マーケット情報レポートで、QUAD首脳会談の功罪を検証しています。
中国側が声明文をどのように捉えたか?に加えて、インドの存在をアキレス腱とする指摘は興味深く、未読の方は是非一読されてみてはいかがでしょうか。
過去の投稿も知的好奇心をくすぐられます。
日本はインド対策に加えてアメリカ対策も含めてイギリスやフランスの参加を促すべきですね。
ただ日本がFOIPで世界の平和と安定にどのような形で、どこまで貢献できるのかという事が問われるようになることも覚悟しておく必要があると思います。
更新ありがとうございます。
韓国人に最も欠けているのは、問題を考える時に、必ず誤った決定に自ら進む事です。同盟とは何か、友邦とはどういう国か、自国の損益を勘案したか、付き合いを減らす国は何処か、そして自由民主主義陣営の韓国の進むべき道を、どうすれば実現出来るかーーー。
ところが、下記のような悪い癖(直す事が不可能)があります。
①深く考える事が出来ない。だからロクな論考しか無い。
②間違いを指摘されたら強引に相手を貶す、怒る。最後は不貞腐れる。
③常にどちらが上か下か、から始まる。
④真面目に汗をかくより、楽して儲けたい。
⑤職業に貴賎があると、学歴に優劣があると心底思っている。
⑥論文の途中又は最後に、欧米人の哲学者、研究者、歴史上の有名人の名句を引用し、自身のつまらぬ文章と繋ぎ合わせる(読み手は混乱する)。
「多くの専門家は韓米同盟の地位回復のために韓国のクアッド加入が切実だとみている」「米韓同盟は二流に落ちた」。この認識自体、すでに間違えています。
「米韓同盟」は地域同盟、所詮北東アジア以外の人には関心ありません。又、影響力もありません。「FOIP」について話を進めずに、「クワッド」ばかり言う(笑)。「4ヵ国ありき」では無い事、分からないのか。
韓国が「クアッド+1」とか「クワッド加入」。笑止。まずは韓国自身が法の支配を重んじ、デタラメ政治を止める事。そして中国に立ち向かえ!激しく抵抗せよ。日本、米国、インド、豪州が(嫌だが)介入するのはその後だ(日本は本当に嫌なんだ。だから4か国の最後になる)。
それが出来ず、二股かけてフラフラする奴には誰も手を出さない。
アメリカ政府の安全保障政策の中で、従来は「北朝鮮の核開発問題」が東アジア地域の最重要課題でしたが、習近平政権の登場とともに「中国の覇権主義問題」が、東アジア地域に止まらず、全世界的な最重要課題になりました。
これに伴い、従来は、在韓米軍基地を展開し、北朝鮮と国境を接する最前線国家として、韓国の戦略的価値は非常に高く、後方基地である在日米軍基地を抱える日本政府が、アメリカ政府から韓国政府に対して意に沿わない妥協を強いられることが多かったのには止むを得ない面があったことは事実です。
しかし、現在、世界最大の米軍基地と兵員を展開し、東シナ海をはさんで中国と対峙する最前線国家として、また、台湾有事の際には最重要軍事拠点となる日本の戦略的価値が高まっています。一方で、日本国民の覚悟も求められていますが。
その反面、アメリカ政府にとっての韓国の戦略的価値は相対的に低下していますが、韓国政府は、そのことを認めたくないと思います。何故なら、それは半世紀以上にわたる韓国の既得権であり、利権と言ってもいいからです。韓国政府のこの既得権意識、利権意識は、中国政府への恐怖心と併せて、FOIP参加への大きな障害になると思います。
また、FOIPの生みの親は安倍晋三総理ですが、習近平政権無しでは生まれなかったという意味では、真の生みの親は習近平氏であると言えると思います。
名無しの権兵衛様
一昨日サキ大統領報道官が、対北朝鮮政策につき「日本や韓国の考えによく耳を傾け、外交を通じて緊張激化のリスクを減らす目標を達成したい」と記者会見しました。
ブリンケン国務長官の来日前に敢えて報道官レベルで記者会見したということ自体、もはやアメリカが日韓同盟及び日本韓国の連携を、東アジア全体というより対北朝鮮政策のみに限定していることを示しているように思います。
本日の協議においても、FOIPクアッドは出てきましたが、日米韓連携の話は出てこなかったのではないでしょうか?(私が知る限り)
おっしゃるように、アメリカは明確に、「韓国の戦略的価値は相対的に低下したのだ、だからFOIPクアッドなのだ」と腹をくくったように思えます。
加えて、南北統一を最大目標とする左派民族主義国の韓国は、法を重視する自由民主主義国家としての価値観をベースとするFOIPクアッドにはもはやお呼びではない、という深いメッセージも込められているように思います。
先ずは正誤表です。(ナム・ジョンホ氏自身の間違えか日本語訳の問題かは分かりませんが)
Foreign Affaires :✕
Foreign Affairs:〇
Linchpin は核心の応力を担う「核心軸」では無く、大部分の応力を担う核心部品が外れないようにする「補助的な留め金」でしかありません。
物事の本質を見極める事が苦手な虫垂半島の住人らしい勘違いですな。
頑として「FOIP」とは言わずに「クワッド」と言い続けるのは
その理念を理解したくなく、ただの4か国の利害関係のみによる連携ということにしたいからだと思います。
だから、「FOIP」の意味するところを分かった上で、意図的に「クワッド」と呼んでいるのだと思います。
呼称の呼び方で「FOIP」に対するマスコミのスタンスも見えてくるように思います。