普通貿易統計発表:輸出入はともに大きく落ち込む
本稿は予告編かつ速報です。財務省は本日、2020年12月までの『普通貿易統計』の速報値を公表しており、これによると日本の2020年を通じた貿易は輸出が68兆4066億円(前年比8兆5250億円の減少)、輸入が67兆7369億円(前年比10兆8626億円の減少)で、貿易収支は6697億円の黒字(前年は1兆6616億円の赤字)でした。国別にみると対中輸出がほぼ横ばいの反面、対米輸出は大きく落ち込んでいます。
本日、財務省が2020年12月までの『普通貿易統計』の速報値を公表しています。
速報値なので変更される可能性があるほか、最近、財務省の統計は明細を積み上げても、財務省が発表している「合計値」と合っていないケースもあるのですが、それでも『普通貿易統計』は「貿易」を通じた日本の姿を映し出す鏡としては、非常に有益です。
さて、本稿では「速報」として、日本の外国との貿易額について紹介しておきたいと思います。
まずは、輸出相手国です。
図表1 輸出相手国(2020年と2019年からの増減)
相手国 | 金額(2019年比) | 構成比 |
---|---|---|
中華人民共和国 | 15兆0828億円(+4009億円) | 22.05% |
アメリカ合衆国 | 12兆6125億円(▲2兆6421億円) | 18.44% |
大韓民国 | 4兆7662億円(▲2776億円) | 6.97% |
台湾 | 4兆7391億円(+505億円) | 6.93% |
香港 | 3兆4145億円(▲2508億円) | 4.99% |
タイ | 2兆7231億円(▲5676億円) | 3.98% |
シンガポール | 1兆8885億円(▲3103億円) | 2.76% |
ドイツ | 1兆8776億円(▲3275億円) | 2.74% |
ベトナム | 1兆8261億円(+290億円) | 2.67% |
マレーシア | 1兆3435億円(▲1054億円) | 1.96% |
その他 | 18兆1328億円(▲4兆5241億円) | 26.51% |
合計 | 68兆4066億円(▲8兆5250億円) | 100.00% |
(【出所】財務省『普通貿易統計』より著者作成)
これで見ると、日本の輸出総額は前年比で8.5兆円落ち込み、とくに米国向けの輸出が2.6兆円も下落していることがわかります。その一方で、中国向けの輸出はプラス4000億円と微増し、結果的に中国が最大の輸出相手国に浮上しました。
次に、輸入相手国についても確認しておきましょう。
図表1 輸入相手国(2020年と2019年からの増減)
相手国 | 金額 | 構成比 |
---|---|---|
中華人民共和国 | 17兆4776億円(▲9762億円) | 25.80% |
アメリカ合衆国 | 7兆4275億円(▲1兆2127億円) | 10.97% |
オーストラリア | 3兆8053億円(▲1兆1523億円) | 5.62% |
台湾 | 2兆8563億円(▲713億円) | 4.22% |
大韓民国 | 2兆8380億円(▲3891億円) | 4.19% |
タイ | 2兆5363億円(▲2287億円) | 3.74% |
ベトナム | 2兆3525億円(▲984億円) | 3.47% |
ドイツ | 2兆2649億円(▲4578億円) | 3.34% |
サウジアラビア | 1兆9694億円(▲1兆0464億円) | 2.91% |
アラブ首長国連邦 | 1兆7494億円(▲1兆1061億円) | 2.58% |
その他 | 22兆4599億円(▲4兆1235億円) | 33.16% |
合計 | 67兆7369億円(▲10兆8626億円) | 100.00% |
(【出所】財務省『普通貿易統計』より著者作成)
一方で、輸入については全体で11兆円近く落ち込み、とりわけ米国や豪州からの輸入が1兆円以上落ち込んでいるほか、産油国であるサウジやUAEなどからの輸入も落ち込んでいます。コロナショックのため、航空燃料などの輸入に急ブレーキがかかったのでしょうか。
ついでに、貿易収支についても確認しておきましょう。
まずは貿易黒字の相手を上位5ヵ国ほど抽出しておきます(図表3)。
図表3 2020年における貿易黒字相手国の上位5ヵ国と前年の収支
相手国 | 2020年 | 2019年 |
---|---|---|
アメリカ合衆国 | 5兆1850億円 | 6兆6143億円 |
香港 | 3兆3296億円 | 3兆4403億円 |
大韓民国 | 1兆9282億円 | 1兆8167億円 |
台湾 | 1兆8828億円 | 1兆7609億円 |
シンガポール | 9759億円 | 1兆3475億円 |
(【出所】財務省『普通貿易統計』より著者作成)
対米貿易黒字額はざっくり1兆円少々落ち込んでいますが、香港、韓国、台湾、シンガポールという「4小龍」については、シンガポールを除き、いずれも貿易黒字額はほぼ横ばいです。
次に、貿易赤字の相手についても、上位5ヵ国を確認してみましょう(図表4)。
図表4 2020年における貿易赤字相手国の上位5ヵ国と前年の収支
相手国 | 2020年 | 2019年 |
---|---|---|
オーストラリア | 2兆5090億円 | 3兆3778億円 |
中華人民共和国 | 2兆3948億円 | 3兆7718億円 |
サウジアラビア | 1兆5168億円 | 2兆4591億円 |
アラブ首長国連邦 | 1兆1561億円 | 2兆0728億円 |
カタール | 8719億円 | 1兆3112億円 |
(【出所】財務省『普通貿易統計』より著者作成)
こちらについては、資源国である豪州、サウジ、UAE、カタールの各国について、貿易赤字幅が縮小しています。資源の輸入量が大きく落ち込んだためでしょうか。一方、対中貿易赤字については、輸出が小幅伸びた反面、輸入が落ち込んだために、1兆円以上収支が改善しています。
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
いずれにせよ、今回の普通貿易統計については追々、国別・品目別に分解したうえで、じっくりと分析作業に取り組みたいと思う次第です。
本文は以上です。
日韓関係が特殊なのではなく、韓国が特殊なのだ―――。
— 新宿会計士 (@shinjukuacc) September 22, 2024
そんな日韓関係論を巡って、素晴らしい書籍が出てきた。鈴置高史氏著『韓国消滅』(https://t.co/PKOiMb9a7T)。
日韓関係問題に関心がある人だけでなく、日本人全てに読んでほしい良著。
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同じ貿易黒字でも、輸入側の大幅減に伴ってのものだと、漸進的に国内での雇用が保てなくなりそうで心配なんですよね。
予告されている、さらに詳細な分析を加えた続報を期待しています。
本筋からは離れた感想ですが、安全保障面だけでなく、貿易面でも台湾の重要性が増してきているようですね。いまや韓国と肩を並べ、もうすぐ追い抜きそうな勢いに見えます。隣国同士というのは得てして仲が悪いもの、というもうひとつの例にならないよう、関係を大切にしていきたいですね。
会計士様
輸出入データの傾向分析ありがとうございます。
米中デカップリング、民主主義陣営からの韓国切り離しに向け、半導体材料(Siウェハー、フッ化水素等)および半導体製造装置の輸出状況と半導体の輸入状況がどのような推移を辿っているか分析いただけるとこちらでの議論が盛り上がるのではないかと思います。
不肖はにわの興味も、半導体材料(シリコンウェハーおよび微細加工化学素材)に向かっています。台湾向け貿易動向を特に重要と考えます。グローバルウェハーこと環球晶圓社のやってきたこと、これからやることはきっと話題の中心になり世界報道の耳目を集めることでしょう。
新宿会計士様
いらぬDATAかもしれませんけど、
船舶・航空機統計、国籍別入港表により、入港隻数を拾ってみました。新型コロナの影響を見てみたい衝動からです。
[入港隻数累計(年)]
https://www.customs.go.jp/toukei/srch/index.htm?M=67&P=1,,,,,,,1,,,,2020,,12,,,,,,,,,,,,,1,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,
2016年12月 108,805隻
2017年12月 106,594隻
2018年12月 104,930隻
2019年12月 102,046隻
2020年12月 96,493隻
暦年で推移をみれば日本に入隻する海上コンテナ船の大型化など、様々な要因がありそうですが、過去5年はこんな推移です。
昨年は欧州のコロナ影響の入港拒否と香港共産化リスクの忌避、Pusan経由コンテナ積み替えの減少(自動車部品) が目立ったなという印象でした。でも、逆に高雄やシンガポールの経由船も思ったほど増えてはいない、上海青島は結構伸びてるのかな?と、個人的な感想をもっていました。結局コロナで関税は減ってるんでしょう。
(だからなんやねん)
豆知識にもならないと思います。お目汚失礼いたしました。
2016-2018までの入港隻数の減り方はコンテナ船の大型化などで説明できるような気がしますが、2019-2020の差はやはり輸出入両方の落ち込みが主因となっている気がします。
ところでコンテナ船の大型化と軽く言ってしまいましたが、日本はそのように大型化したコンテナ船がそんなに頻繁に来てるんですかね?日本で一番取り扱い量の大きい港である東京港でさへ世界からみればその扱い量はベスト30に入るかどうかですし、全長400mほどあるコンテナ船が着けるバースがそんなにあるのでしょうか?(最近できた?のかもしれませんが)欧州域は20KTEUなどの大型船がこの状況下でも頻繁にやってきて船混がひどいです。
欧州某国駐在 様
ここ数年で明石海峡大橋やレインボーブリッジが巨大化したとは聞いてはいないので、コンテナ船の大型化はひょっとしたら「アレ?」な仮説かもしれませんね。申し訳ございません。
欧米型巨大船から日本向けの船舶への積み替え地が、今後コロナ禍、共産化後にどう変わるか、特に台湾の清浄国アピールに注目しております。(K防疫は無視)
ところで、航空便は顕著なようですね。
「入港機数 累計/年」
2016年12月 264,104機
2017年12月 278,430機
2018年12月 289,262機
2019年12月 309,083機
2020年12月 109,349機
基本直行便ですので、「コロナガー」にはこちらの数字の方がよいかもしれません(妄想)。
貿易防疫はいろんな角度から語れるので、今後も妄想に邁進して楽しんでいこうと思います。