現在、自称元徴用工問題を巡っては、いくつかの日本企業の在韓資産が差し押さえられている状況にあります。ただ、これについては韓国側でやたらと「売却するする詐欺」が繰り返されていますが、待てど暮らせど、「一線」を越えようとしません。しょせんは北朝鮮と同類の「瀬戸際外交」の国なのでしょう。ただ、ものは考え様で、日本の韓国に対する消極的経済制裁が静かに進行していくのだとしたら、それはそれでアリかもしれません。

韓国に「約束破るコスト」を負担させるべし

当ウェブサイトでは今月、「約束を破ることのコストを韓国に負担させるべき」とする議論を展開しました。これについては序論１本、各論８本、合計９本の記事を公表しています。

対韓制裁論

• 『約束を破ることのコストを韓国に負担させることが必要』（2020/12/13 09:00）
• 『対韓制裁論①日韓関係の現状整理：韓国は必要な国か？』（2020/12/14 05:00）
• 『対韓制裁論②韓国の「逃げ得」を許してきた日本の外交』（2020/12/15 05:00）
• 『対韓制裁論③「正攻法」での対韓経済制裁は事実上困難』（2020/12/16 05:00）
• 『対韓制裁論④サイレント経済制裁をうまく使いこなそう』（2020/12/17 05:00）
• 『対韓制裁論⑤「消極的に何もしないこと」も制裁になる』（2020/12/18 05:00）
• 『対韓制裁論⑥相手の自滅に委ねるセルフ経済制裁も一手』（2020/12/19 05:00）
• 『対韓制裁論⑦究極の目標は韓国の不法行為を封じること』（2020/12/20 05:00）
• 『対韓制裁論⑧韓国に鉄槌を加えるものは国際法か仏罰か』（2020/12/21 05:00）

（※ちなみにこれらの一連のシリーズ、ちょっとした書籍くらいの分量がありますが、もしよろしければ年末年始の時間を使って読んでいただけると非常にうれしいです。）

これらの記事で主張した内容は、ごく大雑把にいえば、「韓国が約束を破り続けることのコストを何らかの形で韓国に転嫁することが必要だ」、というものです。

韓国は約束を破ることで日本に損害を与えているわけですから、韓国が自主的にそれらの損害を回復する（日本に対して謝罪したうえで国際法や約束などを守る方向に舵を切る）か、日本が韓国に対して制裁を与えるか、そのいずれかが必要でしょう。

ただし、「韓国が日本に対して謝罪と賠償をする」ということは、期待できません。韓国は国を挙げて、自分たちが「被害者」だと信じているようですし、日本に対してならばどんな不法行為をしても構わないと思っているフシがあるからです。

このように考えていくならば、これから日本が本格化しなければならないのは、対韓制裁の具体的な議論でしょう。

この点、ヒトコトで「経済制裁」と述べても、さまざまな方法があります。

本格的な経済制裁（外為法に基づく貿易規制や資本取引規制、特定船舶法に基づく入国制限など）は、総じて発動するための条件が厳しく、また、下手に発動してしまうと、韓国から世界貿易機関（ＷＴＯ）に提訴されてしまうかもしれません。

ただ、「広い意味での経済制裁」を「経済的手段を使って相手国に打撃を与えること」だと定義すれば、「狭義の経済制裁」に限らず、日本にできることはいろいろとあります。

そのなかでもとくに急ぐべきは、「消極的経済制裁」、つまり「助けない、教えない、関わらない」という形態の制裁です。

具体的には、「▼基本的価値を共有する国との連携を強めることで、日本にとっての韓国の相対的な重要性を引き下げる、▼韓国が必要としているさまざまな技術や支援（たとえば日韓通貨スワップなど）に与えない、▼これ以上韓国との関係を深めない」――、などの方法が考えられます。

また、「サイレント型経済制裁」、つまり「経済制裁だよ」と宣言せずに、現在の法制度のもとでできる行政上の取扱いの変更（輸入検疫の強化、輸出管理の強化など）なども、いつでも発動できるように準備しておくべきでしょう。

三菱の知的財産権売却？どうぞ、どうぞ！

さて、『日韓慰安婦合意５年を迎え、「次の焦点」は主権免除か』では、自称元徴用工問題や慰安婦問題を巡る解決を日本に委ねている韓国の無責任な姿勢に加え、「主権免除」の原則を無視した判決が出てくる可能性についても議論しました。

これに関連してもうひとつ、こんな話題についても取り上げておきましょう。

三菱重工の韓国内資産　売却命令が可能に＝「公示送達」効力発生

日本による植民地時代に強制徴用された韓国の被害者らに対する賠償を拒んできた三菱重工業の韓国内資産の売却命令が２９日から可能となった。<<…続きを読む>>
―――2020.12.29 07:32付　聯合ニュース日本語版より

三菱重工業は2018年11月29日の韓国大法院（※最高裁に相当）で敗訴したのですが、自称元徴用工らへの損害賠償に応じなかったところ、在韓資産である特許権や商標権などの知的財産権の差押を受けてしまいました。

これについて、韓国メディア『聯合ニュース』（日本語版）によれば、大田（だいでん）地裁が先月に公示送達を行った三菱重工の資産差押命令決定分４件が30日までに効力を生じたことで、「三菱重工の韓国内資産の売却手続に関するすべての法的要件が整った」としています。

どうぞ、早くやって下さい。

いちおう、聯合ニュースは「債権額は４人分で計８億400万ウォン」としていますが、金融評論家という立場からは、これらの強制売却で本当にその金額が捻出できるのか、あるいは強制売却手続そのものを具体的にどう進めるつもりなのか、非常に興味があります。

だいいち、鑑定評価はどうするつもりなのでしょうか。また、強制売却手続を実施したとして、いったいどこの誰がそんな資産を買うというのでしょうか。

疑問は尽きません。

支援団体側「売却が嫌なら譲歩しろ」

この点、三菱重工の立場を忖度して申し上げるならば、同社くらいの企業規模であれば、韓国における特許権や商標権が強制売却されたところで、実害はほとんどないでしょう。

そして、韓国が「越えてはならない一線を越えた」という意味では、むしろ日本にとっては対韓制裁を発動する名目を手に入れることができます。その意味で、日本にとってはメリットばかりです。

ただ、韓国側の市民団体にとっては、それが気に喰わないのかもしれません。これに関連して韓国メディア『中央日報』（日本語版）には、こんな記事も出ていました。

韓国の強制徴用被害者側「謝罪・賠償なければ強制売却中断せず」

韓国の強制徴用被害者を支援する市民団体が、日本政府と日本企業の謝罪と賠償を求めた。<<…続きを読む>>
―――2020.12.30 10:00付　中央日報日本語版より

これによると、元「勤労挺身隊」の女性を支援する市民団体が「三菱（重工業）の謝罪と賠償以外に強制売却を中断する方法はない」などと主張したそうです。

市民団体側はまた「強制執行は法治国家で民事訴訟法上債務を履行しない者に対して進められる極めて正常な手続」であり、今回の事態も「裁判所の賠償命令に２年以上も従わない三菱重工業と日本政府が自ら招いた」ものなどとしているようです。

控え目に申し上げて、正直、意味がよくわかりません。やって困るのは韓国の側であり、日本の側ではないからです。「御託は良いから、やるならさっさとやってください」、としか言い様がありません。

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ただし、韓国は北朝鮮と同様、結局は「インチキ外交」が大好きな国でもあります。

【参考】韓国や北朝鮮が大好きな５つのインチキ外交

• ①ウソツキ外交…あることないこと織り交ぜて相手国を揺さぶる外交
• ②告げ口外交…国際社会に対してロビー活動を行い、相手国を貶める外交
• ③瀬戸際外交…協定・条約の破棄、ミサイル発射、資産売却などの不法行為をチラつかせる外交
• ④コウモリ外交…主要国間でどっちつかずの態度を取り、それぞれの国に良い顔をする外交
• ⑤食い逃げ外交…先に権利だけ行使して義務を果たさない外交、あるいはドロボー外交

今回の資産売却「するする詐欺」も、結局は彼らの行動様式に照らして当然過ぎる行動です。

「来年は無視されてキレた韓国が資産売却という一線を越えてくれないかなぁ」、などと漠然と思うこともないわけではありませんが、おそらく来年も資産売却は実現しないでしょう。

もっとも、そうこうしている間に、日本社会における対韓サイレント型制裁が進むのだとしたら、それはそれで結果オーライ、といったところでしょうか。