例の「桜を見る会の前夜祭」問題は、当ウェブサイトでこれまで提示してきたとおり、「公設第1秘書による政治資金規正法違反による罰金刑」で決着がつきました。正直、総理の秘書という立場で、経理処理がやや杜撰だったという問題はあるにせよ、この問題が国政を揺るがす重要性があるとも思えません。この問題を針小棒大に批判するメディアや野党は、政権交代が発生した2009年と比べ、なんにも進歩していないと言わざるを得ません。
桜を見る会疑惑とは?
「桜を見る会」の前夜祭で安倍総理の個人事務所が経費を負担していたとされる「問題」を巡っては、『主要メディアが報じた安倍不起訴とマスメディアの限界』を含め、当ウェブサイトではこれまで何度か取り上げてきました。
改めて要点をまとめておくと、「事件」の概要は次のようなものでしょう。
- 2015年から19年にかけて、安倍事務所が都内のホテルで主催した「前夜祭」で、参加者1人あたり5千円という会費を集めたものの、思っていたよりも参加者が少なく(あるいは思っていたよりも費用がかさみ)、安倍事務所がその費用を補填していた
- 「前夜祭」の費用は5年間で合計2300万円ほどだったが、参加者から集めた会費は1400万円に過ぎず、差額の900万円を事務所が補填していた
- ただし、この金額は有権者1人あたりに換算し、せいぜい2~3千円にすぎず、また、会に参加した有権者らは「食事も物足りず、寄付を受けた認識はない」と証言するなどしており、公選法が禁止する「有権者らへの寄付の禁止」違反が成立する余地は乏しい
- このため、検察側は安倍総理自身の認識を任意聴取したうえで、「安倍総理に虚偽の報告をしていた公設第1秘書ら」を政治資金規正法違反(政治資金収支報告書への不実記載)で立件・略式起訴する方針で検討している
桜を見る会の顛末
結論から言えば、上記の見立てで、ほぼ正解だったようです。
昨日、安倍総理の公設第1秘書が東京地検特捜部により略式起訴され、東京簡裁は罰金100万円の略式命令を出し、同秘書は即日納付し、辞職したそうです。また、安倍総理本人は「嫌疑不十分」で不起訴となりました。
安倍前首相「道義的責任を痛感」 「桜」秘書が略式起訴
―――2020年12月24日 20:09付 日本経済新聞電子版より
といっても、当ウェブサイトの見立てが正しかったというよりはむしろ、大手ウェブ評論サイト『アゴラ』の新田哲史氏が先月26日付で寄稿した記事を大いに参考にさせていただいた、という側面が大きいと思います。
それはさておき、安倍総理は昨日の会見で「道義的責任を痛感している」、「深く深く反省するとともに国民にお詫びする」などと話したのだそうですが、たしかに「ショボい」とはいえ、自身の公設第1秘書が政治資金規正法違反で有罪となったことは事実でしょう。
ただ、この「不正」が行われたことで、国政がどのように歪められたというのでしょうか。これをさも「鬼の首を取った」かのように報じているメディアや、ツイッターなどのSNSで安倍総理に罵詈雑言を投げかけているユーザーを見ていると、正直、ウンザリします。
そして、さっそくツイッターでは「安倍前首相の起訴を求めます」だの、「自民党は全員落とす」だのといった具合に、相変わらずの「トレンド」が形成されているのですが、これについてもかなり理解に苦しみます。
まず、「安倍前首相の起訴を求めます」と要求している人たちは、安倍総理がいったい何法の第何条にどう違反したのか、刑事訴追を含めた法律の仕組みや政治資金規正法の規定をちゃんと理解しているのでしょうか?
こうしたきちんとした知識も考察もなく、ただその場のノリで「安倍は怪しい」、「やっぱり安倍はダメだった」、などとつぶやいているのだとしたら、正直、あまりにもお粗末すぎます。
さらには、検察が捜査情報をメディアに対し、ちまちまと漏洩しているというのも、極めて大きな問題です。
今回の騒動も、正直、安倍総理や現職の菅義偉総理に対して打撃を与えるために、大したことのない問題を針小棒大に叩く目的で、このように1ヵ月にわたって問題を引っ張ったのではないかと思わざるを得ません。
その意味では、財務省、検察といった官僚機構が勘違いして権力を握っている構造についても、大いに問題です。
自民党にはたしかに打撃だが…
ただし、今回の「事件」が、結果的に安倍総理による国会答弁が虚偽だった、という問題を残したことは事実ですし、「その場のノリ」で安倍、菅両総理を叩くネットユーザーも多いことから、おそらくこの騒動は自民党や菅義偉政権に対し、それなりの打撃を与えたことは間違いありません。
仮に菅総理が、いまこの瞬間、解散総選挙に打って出たとすれば、菅政権発足直後と比べれば自民党の獲得議席数は減少するのではないかと思います。また、情勢が落ち着くのを待とうとすれば、結局は解散のタイミングを逸し、「追い込まれ解散」となる可能性もあります。
その意味では、今回の事件が「政局」的には「大したことがない」などと断言することはできないでしょう。
ただ、「自民党は全員落とす」と怪気炎を上げていらっしゃる方々に申し上げたいのですが、べつにツイッターで変な活動をしなくても、ちゃんと自民党よりも魅力的な政策を掲げる政治家ないし政党が出現し、実績を積んでいけば、おのずから政権交代は達成できます。
もっとも、正直、たかだか一千万円弱の政治資金収支報告書の不記載が国政の争点になるというのも、情けない話というほかありません。メディア、野党を挙げて、民主党政権への交代が実現した2009年の総選挙のときからなにも進歩していないと言わざるを得ないからです。
現在の日本で「自民党を全員落と」せない最大の理由は、野党がどうしようもないからではないでしょうか。
その意味では、メディアや野党がこの問題を巡って大騒ぎすればするほど、国民のメディア不信、野党不信はさらに拡大するほかなく、長い目で見たら自民党政権は安泰になるように思えてならないのです。
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若干旧聞に属する話題ですが、こちらのサイトでは大きく取り上げられなかった気がしますので問題提起しておきます。
敵基地攻撃能力の保有に関する結論先送り
https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/63353
菅義偉総理は、じわじわと信頼を失っているように見えます。私は、彼が就任前から消費税を引き下げないと断言したときから落胆していましたが、そろそろ積極的に支持する動機がなくなってきました。
現在の有権者の心理は、ゴミと有害物質のどちらを選ぶかという状況です。とてもではありませんが、マシなゴミを選べる状況ではありません。有害物質よりはゴミを選びますが、それは決して「安泰」とは言えません。この状態が続けば、再び悪夢の民主党政権が実現しないとも限りません。
名選手名監督ならず、ではありませんが、名番頭名当主ならずでしょうか。脇役が主役を張るためには、一皮向けて頂きたいと切に願います。
阿野煮鱒様
>名選手名監督ならず、ではありませんが、名番頭名当主ならずでしょうか。
そうですね。人にはそれぞれ「得手不得手」があり、「得手に帆あげて」と語った本田宗一郎氏の成功は藤沢武夫氏という稀代の名参謀の存在無くしてなり得なかったでしょうし、太閤秀吉には竹中半兵衛や黒田官兵衛という参謀がついていました。
また、秦の始皇帝死去後の混乱に乗じて、西楚の覇王を称して圧倒的優位にあった項羽との決戦を制し、中国の漢族や漢字の由来となった「漢」(前漢・西漢)を建国した劉邦(高祖)が、四面楚歌の由来となった項羽との決戦を制することができた理由として、「項羽は稀代の英雄だが、名参謀・范増1人すら使いこなせなかった。自分は張良、蕭何、韓信という3人の英傑を見事に使いこなすことが出来たからだ」と語っています。
その後、軍事の天才たる韓信を謀反の疑いで捕縛した際、高祖が韓信に「軍事の天才たる韓信が、なぜ軍事の凡才たる自分に負けたのか?」と問うたところ、韓信は「陛下は兵の将としての力はありませんが、将の将としての力をお持ちです。私が捕えられたのもそのためです。それに陛下の才能は天からの授かりもので、普通の人ではないのです」と答えたそうです。
将に将たる才能、即ち有能な部下たちに思う存分その得手に帆をあげさせて、大所高所から決断する。そうしたトップリーダーはだれでもなれるものではなく、稀代の名参謀がトップリーダーを務められるとも限りません。
菅総理は名参謀としての才能は間違いなくあると思いますが、トップリーダーとしての器ではないのかもしれません。
しかし、安倍総理の後任というさらに重圧のかかる環境下で内閣総理大臣という重責を務めることで、菅総理のトップリーダーとしての新たな一面が発揮される可能性もあります。私はもう少し長い目で菅総理の舵取りを見ていきたいと考えています。
有権者らへの寄付というよりは、ホテルへの補填、あるいはホテル側に過剰予約を入れ、キャンセルすることでか何らかの優遇やキックバックを期待したということになるんじゃないかなと思うんですけど。それともホテルでの団体客への7000円分のビュッフェってそんなにしょぼいもんなんだろうか?
読者コメント拒否の朝日デジタルは、「安部首相の記者会見に納得しましたか」というアンケートを嬉々として実施中で、あいかわらずのウマシカ丸出しです。が、産経も朝刊一面で安部首相のことを載せておりこれにはガッカリ。
それに引き換え夕刊フジはいいですね。昨晩一面は二階・菅写真付で「媚中返上(せよ)・(天安門時)屈辱の外交文書」、二日前の夕刊一面は文写真付で「文狂乱・K防疫崩壊・支持率急落・対北ビラ禁止法を強行」。夕刊フジには虎ノ門ニュース出演者の執筆もありますし、朝日系のスポーツ新聞や雑誌に対抗して一般国民皆様の愛読紙になって欲しい。どうでもいいですが私はサンケイ新聞と夕刊フジのデジタル版購読者です。
新宿会計士のまとめを元に再発防止策と突っ込みを考えてみたのです♪
>参加者から集めた会費は1400万円に過ぎず、差額の900万円を事務所が補填していた
1 会費が足りなかったのが問題の発端なので、政治家の事務所が参加者から会費を集める催しを開催することを禁止する
→政治資金集めのパーティの類はぜんぶ引っかかっちゃいますね♪
>会に参加した有権者らは「食事も物足りず、寄付を受けた認識はない」と証言するなどしており、公選法が禁止する「有権者らへの寄付の禁止」違反が成立する余地は乏しい
2 参加者の認識で違反の成立が左右されてるので、寄付を受けた者の認識に関わらず違反が成立するように法改正をする
→上手く使えば普通の売買契約でも罪に問えるかも?
>「安倍総理に虚偽の報告をしていた公設第1秘書ら」を政治資金規正法違反(政治資金収支報告書への不実記載)で立件・略式起訴
3 秘書だけじゃなくて政治家自身も責任を取るべきなので、公職選挙法の連座制みたいなのを政治資金規正法にも導入する
→記載漏れとはよくあるから、下手すると政治が止まっちゃいますね♪
・・・思いつきで書いてみたけど、あんまし良くない気がするのです♪
900万踏み倒せば良かったのに。
金を受け取ったわけでもなく、有権者が利益供与された自覚もなく、ただの記載漏れでしかない。
安倍元総理が秘書に、この補填金は記載するなと命じるわけがないし、命じる理由もない。
これを
何億もの裏金をもらったかのように
5000円の会費で1万円以上の久兵衛の寿司を食べさせたかのように
大騒ぎするマスコミや野党、リークすることで社会的制裁を加えようとする検察、マスコミ。
民主主義をないがしろにするのは右左どちら?
更新ありがとうございます。
桜を見る会の前夜祭、5年で900万円。たかだかそれだけの政治資金収支報告書の不記載でわーわー言うマスコミ、立憲民主党ら野党は情けないです。
がしかし、衆議院解散総選挙は、ちょっと風がアゲインストになっている。やはり、9月の総裁着任時がビッグチャンスだったと思います。逸したな〜。これは任期一杯までやるか、コロナ禍が奇跡的に夏頃迄に落ち着くか、で勝負を賭けるかだと思います。
もっとも、今の立憲民主党や日本共産党が大勝するハズも無いですが、気は緩めずに。
≫自民党政権は安泰
果たしてそうですかね?
背景を知らない小学生の子供たちは安倍さんや菅さんは辞職すべきだと思ってますよ。
学校では社会の問題として取り上げることがあるのだとか。
匿名様
>果たしてそうですかね?
果たしてそうですかね?(笑)
日教組の影響力が強い関西地区では、小学校等で教わったこと、成人した今になって初めてウソだらけだったことに驚きを隠せない等々という話をよく耳にします。
百歩譲ってもし学校で社会問題として取り上げているのであれば、親の責任として子供に正しいことを教えればよいのではないでしょうか。少なくとも私はそうしています♪
関西の小学校です。
悪いことをしたら謝る
嘘はつかない
こう教わってるから結論は
責任をとるべきとなるんですよ。
子供にややこしい背景教えても仕方ない。
利根川先生のお言葉を教えるべきでしょうw
https://live-the-way.com/anime-comic/tonegawa/
いるのであれば自分の子供に教えてあげてくださいw
私は結構です。
安倍さんが国会での答弁時、政治資金収支報告書への記載漏れを知っていたというエビデンスはあるのでしょうか?
無ければ、結果的に事実と異なる答弁をしたことにはなりますが、国会での答弁時点では嘘の答弁をしたことにはなりません。
嘘というのは事実と違うことを言うことであって、本人が事実だと思っていた時点では嘘ではありません。
責任を取るなら秘書に対して法律順守への管理監督責任ですが、誰に迷惑をかけているわけではないので善悪で語ることではありません。
もちろん秘書は法律を破ったので罰を受けるのは当然です。
あなたがそう思っているのだから直接言えばいいだけです
「(他人がこう)思ってます」とか「だとか」とかいいですよ
安倍前総理に関しては印象操作しやすいネタではあるので、しばらく引きずるでしょう。しかし騒ぐだけ騒げばいいと思っています。大げさにするほど疑問に思う人が増えるのはいつものパターンですので。
それよりも心配なのは、菅総理が思っていたより逆風に弱いように見えることです。世論が反対方向を向いたときに風見鶏のように方針を変えるようでは、言い方は悪いですが野党やマスコミのおもちゃにされてしまいます。
GoToについても前々から方針を決めておいて、その通りに停止するというなら一貫していますが、どうもそうなっていないことが批判を浴びている様子。総理としては俯瞰した視点で意見を聞いて、決断して、まとめて、動かして欲しい。しかし、こう言ってはなんですが総理の存在感がない。
もともと二階氏や公明党寄りということで、どうなのかなと思っていましたが、もう一度目指すべきビジョンをはっきりさせて、それに向かって自民党内をまとめて欲しいところです。
野党やメディアって無敵だよなあ。
自分たちはどんだけ不祥事しても、支持受ける側じゃないから言いたい放題できるもんなあ。
ネットがメディアや野党を叩いても、それは公の記事にはならないしね。
刑事責任の面では不起訴処分は妥当で「院外での責任」に関してはもう問われない。
国会の答弁が事実と反してたことについて国会内で追及することは必要だと思います。テンプレである「捜査に影響するので答えできない」も不起訴処分なのだから通用しない。野党にとってはむしろ追及のチャンスかと思う。
院内の発言が院外で責任を問われないのは、国会法、憲法でも保証されているから、議員辞職といった院外にも及ぶような責任の取り方はあり得ない。
まあ、今選挙をやらない前提で、いざ選挙をやる段になって噴出しないよう「爆発物処理」しといただけ。野党としてはこのネタをいつ始まるかわからない選挙まで持続しなきゃいけないのですけど、実際のところ厳しいでしょうね。