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地球の未来壊す中国に大規模停電というセルフ経済制裁

中国で大規模な停電が発生しています。現地メディアなどを読み解くと、その原因は大きく①冬場の電力需要の増大、②旱魃や水面凍結などによる水力発電量の減少に加え、③豪州産石炭禁輸措置によるセルフ経済制裁、の3点に求められるようです。ただ、これらの要因は一時的なものとは言い切れません。そして、ここから浮かび上がる問題点は、環境コストを無視して石炭をガンガンに燃やし、地球環境に多大な負担を掛けながらダンピングで「世界の工場」の地位を獲得しているという中国の姿です。

2020/12/24 12:50追記

記事のジャンルが間違っていましたので訂正しております。

中国で大規模停電

最近、武漢コロナウィルスの新規陽性者数が急増しているためでしょうか、わが国の社会では全体的に沈鬱な空気が漂っていますが、それでも本日に関しては、街も少しだけ華やかさを取り戻したように見えます。まだ小さなお子さんがいらっしゃる家庭では、ケーキやプレゼントを用意しているというケースも多いでしょう。

ただ、東シナ海を挟んだお隣の国では、数日前から大変なことが発生しているようです。

『ラジオ・フリー・アジア』のウェブサイトに21日付で掲載された次の記事によると、中国では豪州からの石炭輸入の禁止措置を受け、大規模な停電が発生しているのだとか。

Guangdong Cities in Temporary Darkness Amid China Power Glitch

Residents in the southern Chinese province of Guangdong are reporting power outages around midnight, amid a nationwide power crunch in the wake of a ban on coal imports from Australia.<<…続きを読む>>
―――2020-12-21付 Radio Free Asiaより

リンク先は800語弱の記事ですが、当ウェブサイト側の文責にて、内容を日本語で簡単に要約しておきましょう。

  • 中国が豪州から石炭の輸入を禁止する措置を講じたことを受け、中国全土で電力危機が発生している
  • 中国南部・広東省の住民が冬至の21日深夜、SNSに投稿された写真やビデオによれば、州都・広州の繁華街の街路や、東莞、深圳、佛山、珠海などの工業都市などが暗闇に包まれた。また、給水やインターネット接続も影響を受けた
  • 広東省電力供給局は月曜日、停電の原因は配電機器の一時的な故障だとしたうえで、すでに修理によって電力供給は回復したと発表。香港『アップルデイリー』紙の月曜日の報道によれば、国営「中国南方電網」が「グリッド障害」と説明している
  • 広州の白雲区の住人は、「ここ数週間で停電が頻発している」、「停電は10年ぶりのことだ」と述べており、また、停電には事前の停止通告もなく、SNSには住民からの苦情の投稿が殺到している

…。

このRFAの報道が事実なら、これはなかなか大変な状況です。

中国に限らず、現代社会では電力がなければ生活していくことはできません。たとえば、高層マンションのエレベーターや給水も電力に依存しているからです。住民の日常生活が成り立たなくなれば、社会不安にも直結しかねません。

また、これが広東省ないし中国国内の問題にとどまれば良いのですが、そういうわけにもいきません。広東省といえば「世界の工場」であり、給電障害が日常化すれば生産活動も影響を受けますし、そうなるとサプライチェーンが世界的に不安定化しかねないからです。

しかも、RFAによると、中国当局の「検閲官」は、「石炭不足」、「停電」などのキーワードが含まれた投稿を片っ端から削除しているそうです。やはり共産党一党独裁国家では、社会不安の芽はこのようにして摘まれる、ということなのでしょう。

石炭発電が4割弱?

一方、RFAの記事が引用していた『アップルデイリー』の元記事についても、興味深いことが記載されています。

Blackouts in China export powerhouse raise concern over reliance on other provinces

―――2020.12.21 20:12付 アップルデイリーより

アップルデイリーによれば、広東省の電力供給の4割弱は石炭発電に依存しており、それ以外は25%が長江三峡ダムと雲南省南西部の水力発電、10%が天然ガス、5%が原子力発電、それ以外がその他の水力発電事業から賄われているとしています。

該当する原文は次のとおりです。

Guangdong buys about one-fourth of its power from Yunnan province and the Three Gorges Dam. Of the remainder, it generates around half from coal, a fifth from natural gas, a tenth from nuclear and the rest from other hydro projects.(広東省は消費電力の4分の1を雲南省と三峡ダムから得ている。残りについてはその半分を石炭、5分の1を天然ガス、10分の1を原子力、それ以外はその他の水力発電プロジェクトから得ている。)

つまり、(100%-25%)×50%≒40%弱、というわけです。

そして、アップルデイリーによると、今般の電力危機の背景にあるのは、石炭供給と並ぶもうひとつの電力供給源である三峡ダムの水量不足だと指摘します。

今年の夏の洪水に続き、今度は数ヵ月の旱魃が発生し、水力発電設備で生成されるエネルギーが急激に減少。寒波の到来に伴う湖南省と江西省、内蒙古自治区などでの電力消費の増加が、電力需要を逼迫させているというのです。

つまり、今回の中国における電力不足問題は、いわば、豪中両国の貿易紛争に加え、自然災害という要因もありそうです。

SCMPも同様の報道

こうしたなか、香港メディア『サウスチャイナ・モーニングポスト』(SCMP)にも電力不足に関する話題が取り上げられています。

China suffers worst power blackouts in a decade, as post-coronavirus export boom, coal shortage hit supply

Provinces across China are struggling with blackouts, as authorities use restrictions to curb energy use and manage supply / Analysts blame the resurgence of manufacturing, a coal shortage and China’s central economic planning for the problem<<…続きを読む>>
―――2020/12/23 22:00付 SCMPより

親中的な論調で知られるSCMPですが、記事タイトルでは「十年来で最悪の停電」「ポストコロナの輸出拡大期に石炭供給不足が打撃」、とあるとおり、今回の大規模停電が冬場の電力需要急増と石炭不足、水力不足に直面しているものである、と指摘しています。

そのうえでSCMPは、現在、「5億米ドル相当の豪州産石炭を積載した貨物船が中国の海岸沖に停泊している」とするブルームバーグの報道を引用したうえで、「輸入禁止措置が解除されれば状況は改善されるだろう」とする香港大学教授のコメントを紹介しています。

環境破壊しながら「世界の工場」

ただ、これらの記事を読みながら感じるのは、中国という国の生産活動が、いかに地球環境に優しくないか、という点です。

「世界の工場」と呼ばれる広東省でさえ、電力供給の多くを環境負荷が高い石炭発電に依存しているということであり、言い方は悪いのですが、「環境負荷を無視し、コストを優先して生産活動を行っている」、「地球の将来を食い潰している」、というようなものでしょう。

はたして、私たち人類は、そのような国に「世界の工場」としての役割を担わせても良いのでしょうか。

個人的には、どうにも納得が行きません。

※ ※ ※ ※ ※ ※ ※

いずれにせよ、今回の中国の電力不足事件は、旱魃や水面凍結による水力発電量の減少に加え、豪州産石炭禁輸による「セルフ経済制裁」、そして冬場の電力需要の増大という3つの要素のコンビネーションによりもたらされたものだと考えて良いでしょう。

私たちの国・日本にとっても、新たな中国リスクが浮上した、といえるかもしれません。

新宿会計士:

View Comments (30)

  • リスク増す景気(リスクマスケーキ)のままじゃいけないんですよね。
    いろんな意味で、きちんと後始末もしなくっちゃね。

  • そういうわけで、現在、中国は国を挙げて、
    原子力発電所の内製化&量産化に取り組んでます。

    はた迷惑には変わりませんけど。

  •  独断と偏見かもしれないと、お断りしてコメントさせていただきます。
    (なにしろ、日本マスゴミ村と違って自分が間違う存在であると自覚しているので)
     3.11の経験から、日本マスゴミ村は電力がなくなったら現代社会がどうなるか分かっているはずです。しかし、朝日新聞で中国の停電の記事は見たことがありません。(他の大手メディアが報道していたら、すみません)
     キャッシュレス社会という風が吹いている限り、日本マスゴミ村は大規模停電を報道できないのかもしれません。(なにしろ、日本社会は、完全な正答しか許さないのですから)
     駄文にて失礼しました。

  • 水力発電量減少の原因は水面凍結ですか。
    三峡ダムの水位は 173〜174で安定しているようですが。

    • 三峡ダムで生産した電力は、約1,100km離れた上海へは、超長距離送電に適したHVDC(直流500kV)で送電されているそうです(なお、添付記事では「50kVの直流」とありますが500kVの間違いだと思います)。
      → https://www.itmedia.co.jp/smartjapan/articles/1312/07/news010_2.html

      広東省も、三峡とは1,000km以上離れているので、この方面にも上海へと同様、HVDC送電していると思われます。で、HVDC送電は設備費が高額故、超長距離送電にのみ特化し、通常の交流送電網とは別個に設置されています(HVDC=飛行機、交流送電=鉄道みたいな感じ)。そのため、HVDC送電線の終端以外では、交流送電線とは接続できません。それ故、このHVDC送電線に故障が生じると、迂回送電ルート形成が難しくなくなります。つまり、三峡ダム~広東省間HVDC送電線が故障すると、事実上この間の送電ができなくなるという訳です(仮に無理やり交流送電線で迂回ルートを形成しても、送電ロスが大きすぎ殆ど送電できないはずです)。

      中国南方電網がグリッド(電力網)障害と言っているのが本当だとすれば、上記のようなことではないかと想像します。

      • 超高圧直流送電系の機器群で問題が多いところは開閉器やサーキット・ブレーカーです。

        何しろ交流だとどんな高電圧の送電でも、2極間では一秒間に100回或いは120回電圧が0ボルトになりますが、直流では一定の高電圧のままです。 だから交流の切断時には接点間にアークが飛びますが、0ボルトになった瞬間アークは自動的に消滅しますが、直流の場合のアークはそうは行きませんので、結果的に接点の部分的溶解による摩耗が半端ないです。

        ですので、今の時点でのHVDC送電系は交流送電系と比べて変電所の設備の信頼性がイマイチです。

      • はぐれ鳥 様
        情報ありがとうございます。
        中国のことですから、もしもの場合に備えた多重化とかしてなさそうですし、そういう根幹部分でトラブルが起これば対処に時間がかかるでしょうね。
        北京や上海にまで及んでいると聞いて以来、個人的には、選挙介入に対する報復(=サイバー戦争)も疑っています。

  • 大連の港が閉鎖されている模様です
    理由は?
    コロナともいわれている様ですが…
    日本国内でも影響出そうです

    はようサプライチェーンから外さんからじゃ!

    とナリマスモノヤラ…

  • 停電の原因は複合的なものだと考えますが、そもそも安定した発電方法なんて種類が極めて限られるはずです。もし根本的なバランスが問題であれば、短期的な修正は不可能でしょうね。

    原因はさておくとしても、電力の安定供給とコストは経済合理性だけでなく、ライフラインや災害リスクの面でも言うまでもなく重要です。正確な内情がわからなくても、生産拠点としての中国のイメージ悪化は避けられないでしょう。中国さん、やってしまいましたね。

    停電云々を抜きにしても、国家的なダンピングで無理やり経済合理性を作り出したり、過度な政治的介入でサプライチェーンを偏らせるのは止めて欲しいですね。電力供給に限らず、歪なバランスや偏りは何らかの被害を伴いながらいつかは修正されると考えるので。

  • 火力発電に大いに依存してる日本が中国のこと批判する権利なんてないでしょ。

    • メクソハナクソDD論デスネ
      日本の火力は非常に高度な環境対応がなされているとは聞きますがはてさて…

      ムリクリ例えるとこうスか?
      戦前の有鉛ガス車と現代のEURO5適合車、どっちも排気ガス出すんだから(ry

      アーニンゲンモ温暖化ガス排出スルカラダメカモネ~

    • 日本の石炭火力では環境装置が付けられており煙突から出ている白い煙は水蒸気が大部分であり、また電力量全体に占める石炭火力の割合も減ってきています。現在日本の火力発電は天然ガスを燃料としCO2の発生がより少ない高効率コンバインド発電が主流となっています。重油による発電は非常用としてほとんどは休止しています。
      だから、中国を批判する権利があるのかとなると別ではありますが、中国はCO2削減努力よりも金儲けを優先してきたことは否めないでしょう。

  • >「世界の工場」と呼ばれる広東省でさえ、電力供給の多くを環境負荷が高い石炭発電に依存しているということであり、言い方は悪いのですが、「環境負荷を無視し、コストを優先して生産活動を行っている」、「地球の将来を食い潰している」、というようなものでしょう。

    とても同意できません

    このような考えは英米のプロパガンダを助長します

    大気汚染に絞っての日中比較
    火力発電は「悪」ではありません
    CO 2排出自体は大気汚染と直接関係はありません
    大気汚染の主な原因はNO x ・ SO x ・PM 2.5(PM 10も含む)と言われてます
    日本は頻発する「光化学スモッグ」から↑上記大気汚染物質の削減に取り組んきました
    取り組みの結果日本では「深刻な大気汚染」の報道はほとんどなされなくなりました
    中国は経済を優先するあまり対策を怠ったと言うだけです

    日中韓の共同研究で大気汚染の隣国への影響と言うものがあります
    韓国においては中国からの影響は約50%残りは自国排出分です
    ※韓国国民は大気汚染の責任は100%中国にあると主張してます
    日本は中韓からの影響は2%だそうです
    ※黄砂が日本各地に飛来することを考えればちょっと考え難い数字です

    • ブログの文章をよく読むと「大気汚染」とは書いておらず「環境負荷」となっています。ここではNOXやSOXの汚染物質のことはさておいて、環境負荷の高いCO2のことを言っているのではないでしょうか。

      • 端的に言いますね

        新宿会計士 様 二酸化炭素は環境負荷で「ある」
        私 二酸化炭素は環境負荷で「ない」
        と言う認識の違いです

  • 更新ありがとうございます。

    本編によると、中国は地域にもよりますが、未だ40%が石炭の火力発電、30%強が水力発電。なんか大昔の日本を彷彿とさせますね〜。質の良い無煙炭なら環境への負荷が低いですが、瀝青炭以下なら人体実験ですヨ(火力発電より燃焼効率も悪いです。)。

    石炭の燃焼による発生するのは、二酸化硫黄が多く、酸性雨や大気汚染の最も危険な形態のPM2.5粒子状物質を生成します。煙突からの排出物は、喘息、脳卒中、知的障害、 動脈閉塞、心臓発作、うっ血性心不全、不整脈、水銀中毒、狭窄症、肺がんを引き起こすそうです。

    そういえば最近、日本では「煙突」というモノを見かけませんね。大都市には何百、何千という大小煙突があり、モクモクと白い、たまに黄色い煙りを吐き出してました。ノッポの煙突を私が最後に見たのは、某四国地域で22年ぐらい前です。

    アレには後期〜末期は先っぽにフィルターを付けたり煤煙軽減装置が付いてました。でも所詮臭いです(笑)。あんなのをまだまだ使っている中国!PM2.5やら人体に良くないモノを吐き出し続けている。世界の工場は引退して貰いましょう。豪州は石炭配給止めたままに!

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