例の『数字で読む日本経済』の最新稿の一環として、一昨日の『数字で読む「中国は14億人の魅力的な市場」論のウソ』と昨日の『経済を政治利用する中国にサプライチェーン依存するな』では、日中関係を「ヒト、モノ、カネ」の流れからざっと確認してみました。本稿では日本企業が中国に進出する理由のひとつであるはずの人件費水準について、いくつかのデータを紹介したいと思います。
目次
データが信頼できない国
数字で日中関係を読むうえでの障害
当ウェブサイトでは久しぶりに『数字で読む日本経済』シリーズを開始し、一昨日と昨日は、「数字で見た日中関係の現状」について触れてみました。
これは、おもに「ヒト、モノ、カネ」という「経済活動の3要素」について、公的な統計(たとえば日本の財務省や外務省、法務省などの官庁が公表するもの、国際決済銀行(BIS)やJETROなど準公的な組織体が公表するもの)をベースに、日中の関係を浮き彫りにしようとする試みです。
ただし、前2稿を掲載し終えたあとになって恐縮ですが、正直、中国についての統計データは、不完全な部分や、かなり不正確な部分があります。
たとえば、BISの国際与信統計(Consolidated Banking Statistics, CBS)に関していえば、「日米欧などの主要国が、中国に対し、いったいいくらカネを貸しているか」というデータを把握することはできるのですが、香港などオフショアから中国へのカネの流れなどについては、統計から漏れてしまっています。
「香港」が出たついでに申し上げるならば、日本と中国本土との貿易については、品目別・年別に詳細の金額を把握することができるのですが、日本から香港に輸出された品目については、そのさらに先はどのようになっているのか(たとえば全量が中国に輸出されているのか、など)を分析することは困難です。
ヒトの流れのデータは取得し辛い
さらには、「ヒトの流れ」のうち、「日本人が年間何人、中国に渡航しているのか」というデータについては、なかなか得ることが難しいのが実情です。
これについては少々、補足説明が必要でしょう。
日本政府は「世界のどの国から何人がやってきたか」については統計を取っているのでデータが存在するのですが(たとえば日本政府観光局『月別・年別統計データ(訪日外国人・出国日本人)』等)、「日本国民が世界のどこの国に何人渡航したか」というデータについては、そもそも存在しません。
なぜなら日本政府は、出国する日本国民がどこの国に向かうのたのかについて、おそらくは把握していないからです。
海外旅行に出かけたことがある方ならご存じだと思いますが、国際空港で手荷物検査を受け、税関前を通れば、あとは出国審査です。その際、日本国民はパスポートと自身が搭乗する航空券を審査官に見せますが、最終目的地については尋ねられません。
個人的な思い出を申し上げるならば、2013年、南米のアルゼンチンに出掛けた際には、経由地であるニューヨークのジョン・F・ケネディ国際空港(JFK)までの航空券しか発券されず、米国にはいったん入国し、あらためてJFKでブエノスアイレス行きの航空券を発券してもらいました。
このようなパターンだと、JFK行きの航空券を持っている人は、出国審査官から見て、ニューヨークが「最終目的地」なのか、たんなる「経由地」なのかを判別することはできません。だからこそ、「日本人がどこの国に何人出かけたか」というデータは、いちいち相手国の統計を見るしかないのです。
統計公表をやめてしまう国
ちなみに日本人が世界のどこの国に出掛けたのかという統合的なデータは、民間企業である株式会社JTB総合研究所が『アウトバウンド 日本人海外旅行動向』というページでまとめてくれていて、それはそれで大変ありがたいのですが、ここでもうひとつの問題があります。
じつは、先進国などであっても「入国者統計」というものを取っていないケースもあるようであり、また、データの取り方や公表タイミング集計基準も異なるため、「日本人がどこの国に出掛けたか」、「どこの国から日本にやってきたか」、といったデータについては、そもそも統一的な尺度で把握することはできません
このため、「中国を訪問した日本人の人数」を把握することができないというのは、必ずしも「中国の統計システムが前近代的で劣っている」、という意味であるとは限りませんのでご注意ください
ただ、中国に関してもうひとつ問題があるとすれば、中国国家統計局は、かつて外国人入国者に関する統計を作成し、公表していたにも関わらず、最近になってその公表をやめてしまったようなのです。
この点、統計そのものを公表してくれていれば、いちおう、それを手掛かりに分析することはできます(中国が公表する数値自体、信頼して良いのかという議論があることは事実ですが…)。しかし、統計そのものも途中からなくなってしまうとなれば、もう完全にお手上げなのです。
労賃については?
月額最低賃金は年平均7~13%伸びている!
さて、前稿では、「中国では人件費の上昇が著しい(らしい)」、という点を指摘したのですが、本稿ではこれについて、もう少し深掘りしておきましょう。
それは、「過去と比べて具体的にどれだけ人件費が上昇しているのか」、という点と、「現時点で中国の人件費はどうなっているのか」、という点です。
この点、「中国の人件費が上昇している(らしい)」、という話題については、さまざまな機会で目にしますが、中国各地域の最低賃金のトレンドについては、三菱UFJ銀行・国際業務部が作成する『中国主要都市の最低賃金推移』というPDFファイルが比較的よくまとまっています。
これによると、中国の各地方の最低賃金は、2011年と比べ、高いところでは100%以上、低いところでも50%程度は上昇していることが確認できます(図表1)。
図表1 中国主要都市・地域の月額最低賃金の変化と上昇率
都市・地域 | 月額最低賃金の変化 | 上昇率とその年平均 |
---|---|---|
北京市 | 1,160元(2011年)→2,200元(2019年) | 89.7%(年平均11.2%) |
天津市 | 1,160元(2011年)→2,050元(2017年) | 76.7%(年平均12.8%) |
石家庄市 | 1,100元(2011年)→1,900元(2019年) | 72.7%(年平均9.1%) |
上海市 | 1,280元(2011年)→2,480元(2019年) | 93.8%(年平均11.7%) |
蘇州市 | 1,140元(2011年)→2,020元(2018年) | 77.2%(年平均11.0%) |
南京市 | 1,140元(2011年)→2,020元(2018年) | 77.2%(年平均11.0%) |
杭州市 | 1,310元(2011年)→2,010元(2017年) | 53.4%(年平均8.9%) |
厦門市 | 1,100元(2011年)→1,800元(2020年) | 63.6%(年平均7.1%) |
深圳市 | 1,320元(2011年)→2,200元(2018年) | 66.7%(年平均9.5%) |
重慶市 | 870元(2011年)→1,800元(2019年) | 106.9%(年平均13.4%) |
ハルビン市 | 1,160元(2012年)→1,680元(2017年) | 44.8%(年平均9.0%) |
新疆ウイグル自治区 | 1,160元(2011年)→1,820元(2018年) | 56.9%(年平均8.1%) |
(【出所】三菱UFJ銀行・国際業務部作成『中国主要都市の最低賃金推移』の内容を抜粋)
これによると、広東省などのいわゆる「珠江デルタ」などと呼ばれる地域において、この10年弱で、最低60~70%は上昇しているようですし、北京、上海などの大都市の場合、賃金上昇率が90%前後にも達しているのです。
また、これらの地域の人件費変化について、上昇率を年数で割った単純な「年平均上昇率」は、低いところでも7~8%台、高いところに至っては15%近くという状況です。つまり、中国の人件費の上昇速度は、経済成長率を大きく上回っている可能性すらあるのです。
「四小龍」など除く製造業の基本給は中国がトップに
もちろん、ここで示されている「月額最低賃金」が守られているのかどうかは、よくわかりません。とくに最近、「中国の新疆ウイグル自治区などでは事実上の奴隷労働が行われている」などの報道もあるため、現実にはここに示された数値とかけ離れた低賃金で生産されている例もある可能性は否定できません。
しかしながら、とりあえずここで重要な事実があるとしたら、中国全土で最低賃金水準がこの10年間で2倍近くに上昇している、という点でしょう。
では、その結果、何が発生しているのでしょうか。
日本貿易振興機構(JETRO)が2020年4月15日付で公表した『アジアの労務コスト比較、意外に大きい賃金水準の地域差』という地域分析レポートに、『図1:在アジア日系製造業の作業員・月額基本給』というものが掲載されています(図表2)。
図表2 在アジア日系製造業の作業員・月額基本給(ドル)
国 | 中央値 | 平均値 |
---|---|---|
中国 | 441 | 493 |
タイ | 390 | 446 |
インドネシア | 351 | 348 |
マレーシア | 331 | 414 |
インド | 253 | 278 |
フィリピン | 231 | 236 |
ベトナム | 216 | 236 |
カンボジア | 183 | 196 |
ラオス | 164 | 160 |
ミャンマー | 138 | 159 |
パキスタン | 127 | 129 |
スリランカ | 112 | 130 |
バングラデシュ | 99 | 104 |
(【出所】JETRO『アジアの労務コスト比較、意外に大きい賃金水準の地域差』)
JETROの着眼点は、賃金の中央値と平均値が乖離しているのは、その国における労働者の二極分離(極端に人件費の安い集団と、比較的人件費の高い集団が同じ国のなかに混在していること)を示唆しているのだそうですが、本稿の着眼点はそこだけではありません。
中国における製造業賃金水準の平均値と中央値の乖離が大きい点もさることながら、ここに列挙された国々のなかでは、中国の人件費がいまや、タイ、マレーシア、インドネシアンなどのアジア諸国の人件費水準を追い抜いているという事実でしょう。
非製造業では1000ドル超も!
非製造業については、さらに驚きます(図表3)。
図表3 在アジア日系非製造業スタッフの月額基本給(ドル)
国 | 中央値 | 平均値 |
---|---|---|
中国 | 963 | 1,029 |
マレーシア | 914 | 890 |
タイ | 813 | 859 |
インド | 562 | 703 |
ベトナム | 519 | 570 |
フィリピン | 480 | 520 |
カンボジア | 475 | 529 |
ラオス | 460 | 540 |
インドネシア | 421 | 472 |
ミャンマー | 360 | 411 |
バングラデシュ | 296 | 371 |
スリランカ | 281 | 328 |
パキスタン | 253 | 288 |
(【出所】JETRO『アジアの労務コスト比較、意外に大きい賃金水準の地域差』)
非製造業・スタッフの月額基本給は、中国だと平均値で1000ドルを超えているということであり、それだけ、コスト優位は損なわれているのでしょう。
もちろん、過去に「四小龍」などと呼ばれた国・地域(台湾、韓国、香港、シンガポール)と比べれば、賃金水準は低いのだと思いますが、少なくとも「四小龍」を除けば、いまや中国は最も人件費が高い国となったことは事実でしょう。
次なる課題は?
以上、本稿では中国の人件費水準について、日本企業にとっては「無理をしてでも中国に留まらなければならない」という水準ではないという点を確認しました。
もちろん、個社が外国に進出する理由はさまざまであり、人件費が多少上昇したとしても、中国で生産活動を続けるという企業が多いことは事実でしょう。国家間でギクシャクが生じたとしても、企業経営の世界では、おいそれと中国から撤収するという話はならないのだと思います。
しかし、それと同時に、日本企業が中国を脱出すべき要因が「人件費以外」にも発生してくるならば、日本企業が中国にしがみつく理由がなくなるだけでなく、むしろ中国に拠点を置いていることがリスクになるという可能性も出てくるのではないでしょうか。
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
このように考えていくと、日本企業にとっての「次なる課題」は、中国から撤収する方法の研究でしょう。
もちろん、「中国から今すぐすべての日本企業が撤収する」というものではありませんが、いざというときに備え、そのような方法については健闘しておくべきです。というよりも、これはべつに「嫌中」を煽るという目的ではなく、企業にとっては常に健全なリスク管理を行うという視点が重要でしょう。
View Comments (22)
新宿会計士様
毎朝定刻に有難うございます。
中国がこのようになるとは、誰か予想していたのでしょうか?人件費の安さが目的であれば東南アジアに移転しても同じ結果となると思います。製造業はロボットなど活用して国内に回帰してもらいたいものです。
おはようございます。
中国に限らず、製造業と非製造業の賃金が大きく乖離しているのに驚きました。
インドは、非製造業の中央値と平均値も隔たりが大きいですね。労働者のカーストによる賃金格差でしょうか。
だとしたら暗澹たる気持ちになります。
いずれにしても、これだけ格差があると、現在世界の工場を自認している国であっても、積極的に製造業に就業したがる人は確実に減っていくだろうなと思います。
新たな途上国に目をつけて工場の移転を繰り返すより、製造業の国内回帰を本気で考えた方がいいかもしれません。全部は難しいでしょうが、医療物資などのコアな製品だけでも。
更新ありがとうございます。
中国では工場を閉じるのも一苦労で、中国からの撤退方法を指南するコンサルタントが居るというお話しを聞いた事があります。
FANUCだったかの経営者が、『人件費の安さを求めてアフリカまで進出しようと、結局其処の人件費が向上していつかは撤退しないといけなくなる。結局は機械化を進めるしか無い』的な事を述べたと聞きますが、その通りだなぁと。。。
機械化が進むと雇用が減り、雇用されるのも機械のメンテナンスが出来る人になり、機械に税金を掛けてそのお金でベーシックインカムへ移行する提言がアメリカでなされてたような。。。
機械化が進み難いのはスーパーマーケットのような小売業で、機械化が進んで製造業からあぶれた人達が小売業に向かえば最低賃金でも働かざるを得ない人の数が増えると思います。
小売業界では売上高に応じて人時つまり人件費を決めるのが一般的だと思われ、経費を抑える為に人時を絞るにしても、絞り過ぎると(全体的な仕事量自体を減らさない限り)一人当たりの仕事量が増えてが厳しくなります。
結果、サービス残業やサービス休日出勤をせざるを得ない人達は、より人時の多い会社や別業界への転職などを考えたりし始めると思います。
今はドラッグストア業界が成長しており、成長産業の競争の過程でその手のブラック企業がホワイト化するのが望ましいですが、ホワイト化しなければ倒産する事で業界の健全化が進んで欲しいものです。
クロワッサン様
>中国からの撤退方法を指南するコンサルタントが居る
中国撤退方法の指南が専門ではありませんが、中国で活躍するコンサルタントの腕の見せ処の一つに「中国撤退方法」があげられることは事実です。
中国に会社を設立することは比較的容易ですが、都市をまたぐ企業の移転と現地法人の解散・清算(撤退)は会社設立の数倍、いや数十倍の根気と忍耐と資金が必要となります。
私が勤める会社の台湾子会社が江蘇省のある都市に生産会社を設立していましたが、事業拡大のために同一都市内での企業移転(例:名古屋市東区⇒名古屋市西区)をするために、足掛け3年の月日がかかりました。
台湾人の経営者をもってしてもこの有様です。
中国で活躍している日系コンサルタントの方に言わせれば、解散・清算は早くても1年、手続き完了までに丸2年はかかることは想定の範囲内です。
企業が主にソフトウェア開発や電子的な手段でなされている企業内事務をネットの力を最大限に活用して海外に外注して舞うことをオフショア(化、展開)といいます。製造業の海外工場建設はずっと時代を先行してきましたが、「オフショアビジネスモデル」はインターネット普及後に生まれたことばです。コスト削減の切り札として流行りです、というか流行りでした。中国にソフトウェア開発拠点を作らなかったニッポン企業を探したほうが簡単なくらいです。ソフトウエア会社の社長さんがあるときこんなことを言ってました。ITという言葉が存在していなかったころに創業して発展を続けている老舗級の会社さんで、語ってくれた社長氏は当方と同い年です。彼が言うには「中国の賃金上昇があまりに急激なので困っている、高騰し続ける事務所代も悩みの種だ。固定費節約のために内陸寄りの町へオフィスを移したがそれでも間に合わない」発言は数年前のことです。そのあとソフトウェア会社社長氏はこう言いました。「こんなことだったら中国の(国内で使われる)ソフト開発を日本でやったほうが儲かるんじゃないか」気心のしれた相手を和ませるため冗談口を利いたのだと自分は思っていますが、事態は笑ってすまされる状況ではないのです。中国オフショアを煽った日経新聞記事は罪作りですな。
製造業の海外進出は焼き畑農法だと知り合いは喝破していましたが、オフショアビジネスモデルの根幹は、安い地面・安い人件費の飽くことなき追及です。オフショア拠点は西進しており、成都や昆明が重点都市とみなされています。中国奥地は海洋勢力たる日本にはリーチの遠い感ががありますが、ベトナムオフショアやミヤンマーオフショアは争奪戦の状態にあり、2000年ごろに第一次ブームが起きた南インドはもちろんのこと、スリランカも対日市場へ自らの優位性を売り込むの邁進しています。
海外拠点設置、海外リソース活用を考えるにあたり、単純に人件費水準だけでは決められないというケースもあります。例えば、解りやすい例としては、ソフトウェア開発です。
おそらくかなり知られてると思いますが、日本ではソフトウェア技術者の数が絶対的に不足しています。業界では開発作業の効率化、自動化を懸命に進めてはいますが、依然として圧倒的に足りません。実は、西ヨーロッパでも同様にソフトウェア技術者が酷く不足しており、良いソフトウェア技術者を雇おうとすると、かなり高い給料を提示しなければなりません(日本のソフト技術者の給料は相変わらず安いままですが...(-.-;)。
日欧企業がインドに拠点を構えたり、アウトソースしたりするのは、まさにこのリソース確保という点が大きいのです。実はインドでの人件費は上がり続けており、体感的には10年前の倍近いという印象がありますが、それでも各企業が使い続けるのは、必要リソースの確保にあまり困らないという点にあります。
一方で、中国にソフト開発拠点を構える例はそう多くはありません。人件費もインドよりは高いとはいえ、日本やヨーロッパに較べればまだまだ安いですし、リソースだって潤沢です。それでも企業が中国よりインドを選ぶ理由は、そう、皆さんが想像されたであろう通り、著作権保護の問題が大きいのです。中国では著作権法も契約もしばしばぶっちぎられますが、一般にインド人は契約はきちんと守るので、契約書で縛っておけばあまり問題は起きません。
人件費が大きなファクターであることは間違いありませんが、リソース確保、さらには著作権保護の方が、ソフト開発ではより重要なファクターとなるのです。
龍様
そうなんですか。
そういえば昔、テレビのCMで「インド人、嘘つかない」ってありました。
インド人は契約はきっちり守ります。その代わりと言っては何ですが、本当に契約書に明記したことしかやってくれませんし、契約書で明示的に禁じてないことは好き勝手にされます。日本企業同士で見られるような、「行間を読む」とか「阿吽の呼吸」とか「融通を利かす」なんてものは一切ありません。ですので、インド企業との間で交わされる契約書とか、契約書に基づいて支給する仕様書には細心の注意が必要です。
あまり報じられてませんが、実は少なくない日本企業がインドにソフト開発を発注して失敗しています。私の知っている範囲だと、そのほとんどは契約書の不備、または仕様書の曖昧さに起因しています。特に仕様書の問題が一番深刻です。
酷いケースになると、かなり規模の大きなソフトなのに、A4 1~2枚の概要レベルのものを仕様書と称して支給し、「んじゃ、よろしく」と丸投げするなんてのもありますし、頻繁な仕様変更で現場が混乱したり、対応を拒否されたりなど(普通ならば、無償で仕様変更に応じる限度が契約書に明記されています)、結果的に思ったようなものができてこなかったという実例が結構あります。
日本企業相手ならばそんなやり方でも通用したのかもしれませんが、インド企業相手では全く通用しないのです。要は、日本企業側の発注スキル、管理スキルがまるでなってないからだという話なんですが、失敗した会社は大抵インド人のせいにしてますね。違うってば!
皆様の中で、これからインドの会社にソフト開発を発注しようかとお考えの方がもしおられるようであれば、十分その点を考慮されることをお勧めします。
もろインドは英米法の国ですね。契約書の細部にまで徹底して拘らなければならないところなど、アメリカでのビジネスそっくりです。だから、アメリカでは通常の企業間の取引にも、辞書くらいの分厚さの契約書が必要で、それをチェックするために弁護士が繁盛するという仕組みがあります(政府機関に弁護士が多数在籍するのも、公的機関と企業の取引に同じ問題があるからです)。
私も仕事で契約書に関わったことはありますが、こんなんでいいのか? と思うほどあっさりした内容でした。
>「インド人、嘘つかない」
「インド人に道を尋ねる」でググってみてください。山のように嘘を教えられた事例がでてきます。
その理由は、
> 「デタラメ」を教える人に、ぜんぜん悪気はないのだ。心があまりにホットなので、クタビれた外国人の若者に向かって「知らないヨ」と冷たく言い捨てることができないだけの話。だから、知っている限りの話をして、すごく遠いところでも、「ほんの2~3分」とか言って、キミを励ましてくれているのだ、と善意に解釈しよう。
だそうです。
インド人に道を尋ねる逸話ですが、MapMyIndia という現地企業が以前流してた広告はこんなものでした。
https://www.youtube.com/watch?v=HCp8AQ0q72E
MapMyIndia社は昭文社が手助けしたと記憶しています。日本人がリーダーを務めてました。そのかたは事業成功を見届けて今は別企業のインド法人に勤務しています。
進出先・赴任先を深く知るのに地図は不可欠ですが、昭文社が指南したというインド地図帳集、一冊だけ現物を見せてもらいましたが、日本人好みでほんとうに欲しくなりました。
「地図の読めないインド人」ご興味あるなら。
インド関連の皆様
正直言ってインドは本当に大丈夫ですか?
カースト制度のある所ですよ。
公共交通機関の中で女性が輪姦されて殺されてしまうような所ですよ。
被害を訴えた女性を警察がニヤニヤして取り上げないという話もあります。
反ナチスでソビエトと英米は反中国で連合できましたが、戦後は鉄のカーテンと言われる対立から冷戦へ移行しました。
いずれインドと英米は人権問題で対立するように思います。日本はその時どうします?
その前に会社の女性社員や男性社員の家族がレイプされたり殺されたりする国と本格的に仕事ができるのでしょうか?
やはりすべてを国内で何とかする方向で考えないといけないような気がするのですが。
賃金の安い所安い所と地球の果てまで進んでいったら自分の国の背中にぶつかるのではありませんか?
間違えました。
「反ナチスでソビエトと英米は反中国で連合できましたが、戦後は鉄のカーテンと言われる対立から冷戦へ移行しました。」
反ナチスでソビエトと英米は連合できましたが、戦後は鉄のカーテンと言われる対立から冷戦並行しました。
反中国で、インドと英米は連合できましたが、中国との対立解決後には人権問題で対立するように思います。日本はその時どうします?
私が大ファンであるマルチジャンルの作家、ダン・シモンズのデビュー作であり、世界幻想文学大賞を受賞した『カーリーの歌』といホラー小説があります。
https://www.amazon.co.jp/dp/4150404771/
カルカッタ(現コルカタ)を舞台に、インド社会の理不尽さ、不気味さ、不潔さを、これでもかと詰め込んだ不気味な小説です。インドのダークサイドの空気感を味わうには面白いと思います。
ポプラン様が仰るようなカースト制度の問題は、かつて日経ビジネスなどがよく取り上げていました。曰く…
インド政府は多年にわたりカースト制度の撲滅に努力しており、公的にはカースト制度は存在しないことになっています。インドに進出した日本企業が現地従業員を雇用する際、公的には存在しない個々人のカーストを把握できませんので、様々な階層の人々が採用されます。階層が下の人々ほど切実に向上機会を欲しており、熱心に学び熱心に働きます。そこで日本から派遣された指導員や管理職は、その熱意に答えるべく技術指導するのですが、不可触賎民が触った工具や機械には誰も触れようとしません。そこで漸く日本人が隠然たるカーストを把握するのです。面倒くさいことこの上ありません。
ところが、最近はカーストの問題は軽減されているという話も聞きます。例えば、インドのマクドナルドの店員がどのカーストに属しているかをインド人は気にしないそうです。不可触賎民が作ったかもしれないベジタリアン・バーガーを手で持って食べることのリスクは恐れられていないそうです。一般の工場でも、上述のような問題は少なくなっているとか。
ここからは私の陰謀論です。もしかしたら日経グループは、中国の肩を持ちたくて、過度にインド社会の問題をあげつらっていたのかもしれません。
とはいっても、官僚の汚職、非効率、不衛生、貧困、女性の地位、強姦など、まだまだインド社会の闇は深く、ナイーブな日本人にとっては、これならインドより中国の方がまだマシだ、と感じるのは避けられないかもしれません。
日本人がインドに行くと、すっかり魅せられてしまう人と、「二度と行くものか」と嫌悪する人の両極端に分かれると言います。私は多分後者だろうと思い、行こうと思ったことがありません。
ポプランさま
安い地面と安い労働力を追い求めてどんどん兵站補給線を伸ばしてしまう今の日本のやりかたは、製造業に限らず、当方はまるで賛成できません。国を細らせているだけです。
インドにおいてこれからより社会的に険悪化しそうなのは反ムスリム化だろうと自分は心配してます。
更新ありがとうございます。
しかし、中国の賃金カーブはハイパーインフレ並みですネ(笑)。僅か8年で2倍近い。そら、都市部の人は何でも買えて、贅沢になり、ひいては日本を見下す、或いは海外旅行に行きたいと思うでしょう。
地域 月額最低賃金の変化 上昇率
北京市1,160元(2011年)→2,200元(2019年89.7%
上海市1,280元(2011年)→2,480元(2019年93.8%
日系非製造業スタッフの月額基本給
国 中央値 平均値
中国 963 1,029
これだけ賃金上がって、日本が何か価値、トクするものがあるのでしょうか?パクられまくって、利益は半々(笑)。
本当にバングラディシュ、ミャンマー、スリランカ、ラオス、パキスタン、インドネシアらに拠点を移した方が遥かに良いでしょう。あと、国内帰還も。中国からは急いで退出、どうしても、のモノは少しずつ距離を置く(妄想ですが)。
日本の小売業について、利益が出にくい体質、人時の話が出てましたが、例えばコンビニなら外国人労働者をパートで雇い、「ベントーアタタメマスカ?」とタバコの番号、チケット発行、公的請求書・領収書発行を間違えなければOKです。単純作業です。
しかし、スーパーや専門店、カテゴリーキラーと呼ばれる◯トリ、◯ンキホ◯テ、カ◯ンズ、コー◯ンなどでは接客知識も求められます。安い時給でそこまで求められたら、またクレーム処理もある、電話はしょっちゅうかかる、、、普通の人は、辞めますわ。馬鹿らしくて(笑)心を病みます。
最低の人時で回そうとするから、何時も従業員が居ないとお客様に叱られる。利益が出にくい体質は分かります。でも、いわゆる総合大手スーパーの凋落、派遣をタダで呼べなくなった百貨店、田舎の大型SCに未来は無いと思う。良い学生さんは、間違っても川下、小売業には来ません。自業自得です。
独断と偏見かもしれないと、お断りしてコメントさせていただきます。
(なのしろ、素人考えなので)
(中国だけとは限りませんが)人件費の安さはひと目でわかるように数値できますが、個々人の生産性はひと目でわかるように数値化できません。もしかしたら、ゲームのように個々人の能力が数値で表示されることを願っているのかもしれません。(もちろん、数値化できないからといって、価値があるとは限りません)
蛇足ですが、どの国でも一定の比率(?)で、天才になる可能性をもった人間が存在します。(もちろん、その才能が開花するかは別の問題です)
ということは人口の多い国は、それだけで天才の卵の人数が多いことになります。そのため、日本の経営者は(才能に比べれば安い賃金で働く)人が、自分の会社に集まってくれると期待しているのでしょう。
駄文にて失礼しました。
給料上昇で購買力が上がれば、消費国になり輸出先としての魅力が上がるんだけど
政府が保護貿易してるから自由な貿易ができない。
ここらへんが昨今の米中関係悪化の根っこでしょう。
(トランプ大統領も序盤は農産物輸入(牛肉・小麦)を要求していた)
これってアヘン戦争の根っこ(お茶は輸出はしても何も輸入しない)と一緒。
歴史は繰り返すんでしょうかね。
図表1.の【年平均上昇率】の数値は該当期間においての均等値ではなくて均率値?の方がしっくりくるような気がしました。
例えば、
北京市の年平均は11.2%→8.35%の上昇率
天津市の年平均は12.8%→9.95%の上昇率
になります。
*論考の趣旨には影響しないのかもですが、経済成長率の推移と対比するのならば、こちらの数値の方が実態に近くなるのでは?と、思いました。
中国の統計はあてにならない部分が大きいですが、こうして賃金の数字を見ると、恐るべき経済成長の速度を実感します。
ただこの数字は都市部に限定される筈で、高収入の恩恵を受けているのは13億の人口でも数億程度という話もあります。
残りの10億人の低収入層は中国の弱点でもあれば武器にもなり得ます。
低収入層が安価な労働者層としてまだ使える様なら、まだ中国の成長はありえたかもしれないです。
ただ、世界の資源や環境に対する負荷は今まで以上に凄まじい事になるでしょう。
諸々の矛盾が今回のコロナ禍で浮き彫りになったとも言えます。