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関係破壊の自覚ない李在明氏が「相互尊重」を騙る

今朝の『菅外交は米豪印・アジアを重視、中国軽視、韓国無視?』の補足です。加藤勝信官房長官は昨日の記者会見で、菅義偉総理大臣の外国訪問を巡って、「現時点で決まったことはない」としつつも、「自由で開かれたインド太平洋」構想については「賛同する国と連携したい」とする考えを示しました。ただ、その一方で菅総理が自称元徴用工問題を訪韓の条件にしているとする共同通信の報道に対しては、韓国の京畿道の李在明知事が舌鋒鋭く菅総理を批判したようです。

良い意味で狡猾な加藤官房長官

今朝の『菅外交は米豪印・アジアを重視、中国軽視、韓国無視?』では、一部メディアの報道をもとに、菅義偉総理が就任後初の海外出張先として、ベトナムとインドネシアを検討している、といった話題を紹介しました。

これについて加藤勝信官房長官は9月30日午前の記者会見で、「現時点で何も決まったものはない」としつつ、「自由で開かれたインド太平洋」構想の実現に向けて、その理念に共感する国と連携を強化していきたいとする考え方を示しました。

要するに、「中国を封じ込める意図がある」ものではなく、あくまでも「自由で開かれたインド太平洋」構想に賛同する国と連携するという趣旨だ、ということです。

まさに、「モノは言い様」ですね。

加藤官房長官、飄々としていますが、意外と(良い意味で)狡猾な人物なのかもしれません。

ただし、菅総理の外訪については未定ではありますが、外相の外交はすでに始動し始めています。

たとえば茂木敏充外相自身はすでにフランス、ポルトガル、サウジアラビアへの訪問を開始していますし、これに加え、来週6日以降、東京で日米豪印外相会談が実施されることが確定しています。

いずれにせよ、安倍政権から引き継いだ「価値観外交」や「自由で開かれたインド太平洋構想」は、菅政権下においても引き続き、日本外交の中核にしっかりと据えられていると考えて間違いないでしょう。

もっとも、武漢コロナ禍のさなかであることに加え、衆院の残り任期が1年少々と迫ってきたことを受け、菅総理自身、今後は解散総選挙を常に意識しなければならない状況にあることを思うならば、やはり菅総理は安倍政権発足直後の安倍総理なみに各国を訪問するということは難しいでしょう。

だからこそ、なおさら、菅総理の初外訪先には非常に大きな意味がありますし、その意味ではこの論点について、引き続き関連する続報を待ちたいと思う次第です。

中央日報「李在明氏、菅首相の訪韓はない」

さて、今朝紹介した話題のなかで、興味深いものがもうひとつあります。

それが、今年実施が予定されている日中韓3ヵ国首脳会談を巡り、「日本企業の資産売却がないと確約しない限り、菅総理が(今年の議長国である)韓国を訪問することはあり得ないと外務省幹部が述べた」、とする共同通信の報道を紹介しました。

この報道自体、正しいのかどうかはよくわかりません。

ただし、元記事を読めば、「菅総理の訪韓があり得ない」と発言したのは菅総理自身ではなく、「外務省幹部」とされています。また、調べた限り、菅総理の訪韓予定に関し、この共同通信の配信記事以外の情報源は見当たりません。

これについては今朝方報告したとおり、現時点ではこの報道を鵜呑みに信じるのは尚早でしょうし、あくまでも「可能性のひとつ」くらいに位置付けるのが良いのではないかと思う次第です。

ところが、これについて韓国側から強い反応がありました。

李在明京畿道知事、日本の資産売却発言に「菅首相の訪韓はないだろう」

李在明(イ・ジェミョン)京畿道(キョンギド)知事が1日、菅義偉日本首相に対する失望感を示し、「訪韓することはないだろう」と予測した。<<…続きを読む>>
―――2020.10.01 14:23付 中央日報日本語版より

韓国メディア『中央日報』(日本語版)の記事によると、韓国・京畿道(きょうきどう)の李在明(り・ざいめい)知事は1日、この報道に関連し、自身のフェイスブックに「菅首相が訪韓することはないだろう」というタイトルで、次のように述べたのだそうです。

法的にも国民感情としても受け入れがたい条件を出したところを見ると、菅首相が訪韓することはなさそうだ。

逆ギレもはなはだしい!

国際条約をちゃんと守ることが、なぜ「法的にも国民感情としても受け入れがたい」ことなのか、理解に苦しむ点ではありますが、それ以上に興味深いのは、菅総理自身の発言でもないただの報道記事に対し、ここまで強く反応しているという点です。

中央日報によると、李在明氏はまた、「日本がいくら否定しても、侵略と残酷な人権侵害の歴史は大韓民国にとって歴史的真実かつ現実的だ」としたうえで、次のように主張したのだとか。

日本と韓国は、複雑で微妙な歴史的、国際政治学的、外交軍事的、経済社会的問題を解決するために、政治外交と経済社会の分離、相互尊重と理解という大きな原則を守らなければならない」。

ものすごいブーメランですね。

自称元徴用工問題にせよ、火器管制レーダー照射事件にせよ、天皇陛下侮辱事件にせよ、政経分離・相互尊重の大原則を踏みにじり、歴史的、国際政治学的、外交軍事的、経済社会的な問題を作り出しているのは、一方的に韓国の側だからです。

そのうえで、李在明氏は、こうも述べたそうです。

明確な三権分立で政治の司法介入が禁止された大韓民国は、政治の司法判決介入は違法で、常識的にありえないことだから、日本の『徴用判決に対する政治介入』の要求を理解することも、受け入れることもできない」。

「常識的にあり得ない」のは自称元徴用工判決の方でしょう。なぜなら、その大きな問題点は、同国の司法が国際法に反した状態を作り出したこと自体にあるからです。

当たり前の話ですが、国際法は相手国の裁判所自身を拘束します。裁判所がその国際法を蹂躙するような判決を下したのであれば、その国は責任を持って、その事態を収拾しなければなりません。

その際のアプローチとしては、韓国が好きにすれば良いと思います。

「判決自体は国内的には有効」としつつも、「韓国が国として国際法違反状態を発生させないよう、自称元徴用工を救済するための立法措置を講じる」、といった文明国なりの解決を図っても良いでしょうし、お得意の事後法を制定したり、判決に関与した裁判官を逮捕・投獄したりしても良いかもしれません。

正直、私たちの国・日本にとって重要なことは、日本企業に対し不当な不利益を発生させないことであり、そのために韓国がどういう手続を講じようが、興味も関心もありません。そして、日本企業に不当な不利益が生じれば、その瞬間、日本は韓国に対し、適切な対応を講じる、というだけの話です。

(※もっとも、日本企業の資産売却が実現していない現時点においても、日本企業は訴訟費用などで多額の損害を被っています。「不当な不利益」という意味では、すでに発生しているという見方もできると思うのですが、いかでしょうか?)

いずれにせよ、国際法と三権分立の概念をまともに理解もしていないくせに、こうやって偉そうに日本に対してご高説を垂れるというセンスも、なかなかのものだと思うのです。

日韓関係、多大なコストを投じて維持すべきなのか?

ただ、以上を踏まえたうえで、あらためて記事全体を読んでみると、果たしてわが国が多大なコストをかけてまで、同国との関係を維持・発展させなければならないものなのか、疑問に感じます。

日本はかつて、1965年の日韓国交正常化以降、韓国のいう「歴史問題」にそれなりの配慮を示してきました。もちろん、わが国がいう「韓国への配慮」が、韓国から見て十分だったのかどうかという問題はあるにせよ、少なくとも韓国国内の歴史教育を、日本政府が正面から批判したという事実はありません。

それどころか、サハリン在留朝鮮人問題や従軍慰安婦問題などを巡っても、日本政府はそれなりに対応して来ました。賠償問題はすべて日韓請求権協定で片付いたはずであるにも関わらず、です。

また、歴史的事実に反することを堂々と主張して日本を貶めるのも彼らの得意技であり、日韓問題がひとつ片付いても、またすぐにほかの問題が持ち上がります。日本が韓国と付き合い続ける限り、「謝罪と賠償」を延々繰り返さなければならないのだとしたら、本当に不毛な話です。

いちおう、誤解を恐れずに申し上げるならば、当ウェブサイトとしては、近隣国とはお互いを尊重し合い、末永く友好関係を継続し、ともに手を取り合って未来に向けて発展して行ける関係を構築するのが最も理想的だと考えています。

しかし、少なくとも李在明氏の発言からは、わが国が彼らとこうした関係を構築することは不可能だと落胆せざるを得ません。たとえば、中央日報が報じた李在明氏の発言としては、ほかにも、

慰安婦、強制労働問題は、誰が何と言っても加害者の日本が作った問題だ。真の和解のための謝罪とは、被害者が許し、もう十分だと言うまで心からするものであって、『ほら、謝罪だ』と簡単に終わらせることができるものではない

というものがありますが、これにしても、日韓両国政府での公式な和解を認めず、ひたすら過去に拘泥するような態度は、とうてい未来志向のものとは言えません。

中央日報によると、李在明氏は該当するフェイスブックの記事を

両国の真の国益に合致する未来志向的かつ合理的な韓日関係の新章が開かれることを期待していた者として残念に思い、がっかりしている

と締めくくったのだそうです。

未来志向かつ合理的な日韓関係を全力で否定しているのは、李在明氏自身のほうであると指摘しておきたいと思う次第です。

新宿会計士:

View Comments (49)

  • 日本の外交は、茂木外相を中心として、しっかりやってくれると思っています。
    韓国の反日派が言うことに、いちいち目くじらを立てても、仕方有りません。
    韓国が考える未来志向は「永遠の贖罪」ですから、妥協点などありません。李在明氏の様な発言で日本政府の対応が変わる訳でも無いので、「ふ〜ん」と聞き流せばお終いです。
    韓国は、反日で序列が付く様になるでしょうから、韓国政治家の発言は、今後より一層悪化して来るでしょうが、擦り寄って来られる方が、よっぽど嫌だと思います。

  • 国際協定は否定はしないけど蔑ろにはします。という態度を認めた事になりますよね。安倍前総理も徴用工判決以降、訪韓はおろか、会談すらしていません。路線継承の菅総理の訪韓があろうはずがありません。丁寧な無視による断交状態で構わないはずです。放っておきましょう。

    • ご存じの上議論されているのだとは思いますが、世界には国際条約と国内法を同列に扱う国があり、隣国もそうだそうです。http://www.jicl.jp/hitokoto/backnumber/20191014.html
      はぁ?

      • 国連国際法委員会起草による「条約法に関するウィーン条約」(略称: 条約法条約)には以下の規定があります。

        第二十六条 「合意は守られなければならない」
         効力を有するすべての条約は、当事国を拘束し、当事国は、これらの条約を誠実に履行しなければならない。
        第二十七条 国内法と条約の遵守
         当事国は、条約の不履行を正当化する根拠として自国の国内法を援用することができない。

        従って、大韓民国が国際法秩序と各国の国内法秩序とが独立した関係にあるとする二元論の立場を取っていたとしても、国家としての大韓民国は条約を遵守する義務があります。ゆえに、大韓民国大法院が条約に反する判決を下した場合、大韓民国は条約法条約第26条に違反した状態ということになり、国家としての大韓民国はそれを正す義務があります。つまり、司法判断に行政府は介入できないと嘯く文在寅政権は、国家としての責任を放棄しているのだということになるわけです。それは主権国家たる地位を自ら毀損することであり、国家間条約の当事国である資格を自ら放棄することに違いありません。

        なお、条約法条約第3条には以下の規定があるので、文書によらない国家間合意にも準用されます。
        第三条 この条約の適用範囲外の国際的な合意
         この条約が国と国以外の国際法上の主体との間において又は国以外の国際法上の主体の間において締結される国際的な合意及び文書の形式によらない国際的な合意については適用されないということは、次の事項に影響を及ぼすものではない。
        (a) これらの合意の法的効力
        (b) この条約に規定されている規則のうちこの条約との関係を離れ国際法に基づきこれらの合意を規律するような規則のこれらの合意についての適用
        (c) 国及び国以外の国際法上の主体が当事者となつている国際的な合意により規律されている国の間の関係へのこの条約の適用

        参考: https://worldjpn.grips.ac.jp/documents/texts/mt/19690523.T1J.html

        • 龍 様へ
          ウイ-ン条約順守と言う事なら、財団など設立して有耶無耶にするのではなく、明確に法的に解決しなければならないと思うのですが?
          或いは財団案で両国が手を打てば、判決は有効のまま残っても良いのでしょうか?

          • 法的に解決することが望ましいのは確かです。しかし、韓国大法院判決が有効であろうとあるまいと、日本はそんなものには一切拘束されません。それはあくまでも韓国国内の問題です。
            日本としては「条約を遵守しろ。合意を履行しろ」と言い続けるだけで問題ありませんし、場合によっては力づくで遵守させるというオプションもあります。

          • 龍 様へ
            要するに確約など必要ないし、韓国の確約などあっても無くても良い、という事ですね。

    • 日本の最高裁もサンフランシスコ講和条約無効の判決を出して、受け入れたポツダム宣言も国民の理解が得られないとして反故にしてやりましょう。日本だって三権分立なので誰にも文句は言わせませんよ。

      そんな判決をほんとに連合国が是認したら楽しいでしょうね。その瞬間に大韓民国も自動的に消滅です。特大ブーメラン。

      • 法治国家たる日本がそんなマネできるはずがない。やったら韓国と同様の人治国家・放置国家・無法国家と同程度ということになる。なぜあんな国と同じような真似をして日本に品位を貶める必要があるのか理解不能。ブーメランが刺さるのは日本になってしまう。あまりバカなことを書かないようにしたほうが良いと思います。

  • 今迄の日本はナイーブでした。
    半島人を日本人と同じ様に認識して一歩引く事で、交渉をお互いの中間点に持って行こうとしました。
    日韓基本条約は、米国からの要請(日本の金で防共の盾を半島に築こうとした。)ですが、それ以降の交渉も、全て日本から一歩引いてます。
    反日マスコミという足枷もありました。
    それでも、国益を護ろうという気迫は稀薄でした。
    安倍総理の外交力は、歴代総理の中でも頭抜けていました。他国の本質を知り、日本の国益の為に勢力的に行動しました。
    そんな安倍総理からすると、韓国の外交は赤子の手をひねる様にお見通しで、もう韓国は手詰まりですね。
    恐らく、文大統領が革命で消えて保守派大統領が用日外交をしても、もう日本人は騙されないと思います。
    韓国の手の内は、お猪口の裏よりも浅いので、韓国に対し優しさを失った日本は嘘の口車に乗ることは二度とないでしょう。

  • 李在明と言えば、これまでも数々の香ばしい発言で知られる妄言製造機なので、今更何も驚くことはありません。
    また、李在明に限らず、韓国人が三権分立の核心が三権の相互監視にあるということを全く理解してないという点についても、法治国家の住民でない彼らに期待する方が間違っていると思うので、これまた驚くべきことではありません。

    • 龍様

      >韓国人が三権分立の核心が三権の相互監視にあるということを全く理解してない

      最近になって「彼らに何かを期待すること自体が間違い」なのだと考えるに至りました。

      日本で「朝鮮半島における資本主義の萌芽論」なんてのが早々に否定されたのも然るべきなのだと思います。
      遵法の種も土壌もないところに秩序の萌芽なんてあり得ないんですものね。
      *良芽は搾取されるのみです・・。

    • いまのところ「関係者」情報でしかない報道に、無思慮に噛みついて慨嘆して独り芝居してくれる李在明氏の反応は、日本国内において既に苦境にある親韓派の勢力を更に減退させる効果があります。ありがたい話です。李氏、これからも日本のために頑張ってください。

  • 日本政府は淡々と、冷厳に、粛々と、『韓国政府が国際法違反の状態を是正せよ。日本企業、日本国民に不当な損害を与えれば、必ず報復措置を講じる。』と言い続ければよいかと。

  • 更新、ありがとうございます。
    さて、韓国と何を約束しよう言うのでしょう?
    どうせ違う事でまた日本に仕掛けて来るのです。
    文在寅が三権分立を宣う以上は、質に取られている“日本企業資産”の処遇を解除する訳にも行かないでしょうから話が進む事は無いと考えますが…

  • 読売新聞です
    日韓世論調査 文政権が相互不信を広げた
    https://www.yomiuri.co.jp/editorial/20200611-OYT1T50135/
    以下一番大事な所だけ引用します。

    現在の両国関係が「悪い」との回答は、日本で84%、韓国で91%に達した。1995年の調査開始以降、日本は3番目に高く、韓国は過去最悪だった。

    引用ここまで。
    両国国民とも、日韓関係は、悪いという世論のようです
    私は、良いと回答しそうですね。

    また、日韓両国とも中国が信用出来ないが、8割以上だったとの事。
    韓国人は、これから中国様を宗主国と仰ぐ覚悟が、出来ていないようです。
    中国が信用出来ないけど、文大統領の支持率は半分。
    どう理解したら良いんかな。

  •  李在明の国内向け愛国アピールってだけで深い意味はなさそうですね。朴元淳も居なくなったし、後の大統領を目指す地方首長は我ぞ、程度の。
     政治家が「我こそが一番の反日闘士!」ってやってる姿と、それを支持している多くの韓国民が、今の時代では日本人にも丸見えなのをそろそろ意識した方が良いと思うんですけどね。
     安倍外交の方針はだいぶ先まで維持で良さそうだなぁ……

    • あの国の政治活動は全て「国内(支持者)向けのアピール」
      だと思えばスッキリする。
      だから外交関係がいくら悪化しても(支持者が喜べば)気にしない

  • 日本も軍事力をつけて、朝鮮半島に関しては、サンフランシスコ講和条約は、破棄する宣言と同時に、宣戦布告して、南恨逃を焦土化しましょう。妄想劇場(*^o^*)

  • >日本にとって重要なことは、日本企業に対し不当な不利益を発生させないこと

    私もこの件に関してはこのように思ってましたが、待てよ?と考えるに至りました。
    例えば韓国政府が肩代わりするとか、韓国内有志が財団を作るとか、日本企業に実害を掛けない形での解決策なら良いのでしょうか?
    こういう弥縫策では結局「大法院判決は生きている」のです。
    従って、「併合は無効」を理由に際限なく訴訟を、しかも韓国側の都合の良いタイミングで出せるという事になります。
    これは不味いですわね。
    根本的な解決策としては、「大法院判決は無効」という宣言をしてもらう必要があると思うのですが。

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