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二階幹事長、中国と「仲良くがっちり手を組むべき」

「あの人物」には、困ったものです。以前の『茂木外相「習近平氏訪日日程、具体的調整段階にない」』でも取り上げたとおり、武漢コロナ禍の蔓延により延期されたままになっている習近平・中国国家主席の国賓訪日を巡っては、現在、日本政府としては「日程を具体的に調整する段階にない」と明言しているのですが、自民党の二階俊博幹事長が余計な発言をしたようです。

二階氏、習近平氏の訪日を「穏やかな雰囲気の中で」

本稿は、ちょっとしたメモです。

いつも当ウェブサイトで申し上げていることですが、人間関係と同様、外交には常に「相手国と基本的価値を共有しているかどうか」という観点と、「その国との国交が戦略的な利害関係に合致しているか」という2つの視点が必要です。

こうしたなか、「あの人物」が、習近平(しゅう・きんぺい)中国国家主席の国賓訪日に言及したようです。

習主席の国賓来日「穏やかな雰囲気の中で」 自民・二階幹事長

―――2020.9.17 14:49付 産経ニュースより

産経ニュースによると、石破派が本日、都内のホテルで開いた政治資金パーティで、自民党の二階俊博幹事長は習近平氏の訪日について、次のように述べたのだそうです。

穏やかな雰囲気の中で、実現できることを心から願っている。中国は引っ越しのできない隣人だ。仲良くがっちり手を組んで、お互いに共通のことを考える国柄となるように切磋琢磨すべき

もちろん、これが二階氏の発言のすべてではないとは思いますが、これが事実だとしたら、非常に不安になる発言ですね。

この点、以前の『茂木外相「習近平氏訪日日程、具体的調整段階にない」』でも報告しましたが、習近平氏の来日については、茂木敏充外相が「具体的な調整段階にないことは間違いない」と断言しているため、少なくとも外務省が実現に向けて公然と動くということはないでしょう。

中国?基本的価値を共有しません

しかし、二階氏の発言のなかで、個人的に看過できないのは、「中国とがっちり手を組んで、お互いに共通のことを考える国柄」です。これが正確に何を意味するのかはわかりませんが、それが「基本的価値を共有」ということを意味しているのだとしたら、本当にとんでもない話だとしか言い様がありません。

そもそも論ですが、日本と中国は、基本的価値を共有する国ではありません(図表)。

図表 日本と中国の基本的な価値
区分 日本 中国
政治体制 議会制民主主義 共産党一党独裁
経済体制 自由主義 社会主義計画経済
法の考え 法治主義 人治主義
人権 基本的人権尊重 人権軽視
戦争 積極的平和主義 軍国主義

(【出所】著者作成)

…。

いかがですか?見事にまったく異なる体制の国であることが明らかでしょう。とくに、憲法第9条を後生大事にしている日本と、台湾などへの武力侵攻の可能性を公言している中国では、戦争に対する考え方が180度異なります。

そんな国と「お互いに共通のことを考える」のだとしたら、日本が中国に合わせて議会制民主主義や自由主義、法治主義などを捨てるか、中国が共産党一党独裁を放棄して民主化するか、そのどちらかしかあり得ません。

当ウェブサイトの勝手な想像ですが、二階氏の念頭には「利害関係」しか存在しないようにしか思えませんし、だからこそ、こういう原理原則を著しく逸脱した発言が出て来るのでしょう。

菅総理は二階氏を「切れる」かどうか

さて、二階俊博氏は安倍総理の辞任発表直後、いちはやく菅氏を支持すると表明しました。だからこそ、一部メディアから「この二階氏の行動が菅政権誕生の方向性を決定づけたものであり、したがって菅氏は二階氏を切ることはできない」、などとする分析が出て来ていることもまた事実でしょう。

ただ、現実には安倍総理の出身派閥である細田派、麻生総理が率いる麻生派、平成研こと竹下派などの主力派閥がこぞって菅氏の支持に回ったことを踏まえると、正直、菅氏が二階氏を「切ろうとしても切れない」というものではないと思います。

菅総理が党役員人事で二階氏の留任を決めたのも、個人的には「現段階で無用の混乱を生じさせない」という配慮が働いたためだと見るべきであり、二階氏の動き次第では、時期が来れば二階氏が幹事長職から外されることもあり得るとは考えている次第です。

いずれにせよ、安倍総理が辞任したいま、私たち国民・有権者は、今まで以上に政権与党の動きに気を配るべきでしょう。

新宿会計士:

View Comments (32)

  • 二階氏がこれ以上増長するようなら、既に彼を支那のスパイとして名指ししている米国から日本政府に圧力がかかると思います。

    それを受けて、もし自民党が「二階潰し」を仕掛けるとしたら、それは管さん発では党内の軋轢が大きいので、安倍・麻生ラインの暗躍ではないでしょうか。

    • 2階は去勢だけ張って生きてきた猿にしか見えません。年齢的にも立場的にも仕事するとは思えません。日本の為に経済的な事、人道的な事。どちらを優先するのか。奴の派閥にいる奴らも弱い奴らばっかりなんですよ。

  • 菅首相が、最初に二階氏に支援を要請した時から分かっていた懸念材料です。
    当面、中国も日本に擦り寄って来るでしょうが、尖閣への領海侵犯が無くならない限りは、国賓訪問は、現実的では有りません。
    私は、二階氏の観測気球で、そうでなければ、リップサービスに終わると思います。
    韓国にしてみれば、日本より先に習近平主席を来館させて、後から日本に訪問する形が、ベストです。
    こんな事も有るから、韓国内で期待されるんでしょう。

  • 少なくとも国民が不安になるようなことは言わないでもらいたいものだ。
    とはいえ安倍政権の時から気にはなってた。
    なんで中国に対して強く出ないのか。
    それは多分、日中対立が鮮明化すると米国にいいように利用されて、梯子すら外される可能性があるから。
    とはいえ、尖閣、香港やウイグルの件など言うべきことは言うべきじゃないのかね。
    杭をしっかり打った上で友好を唱えるならまだしも、批判無しじゃ媚びてると言われても無理もない。
    是非心の中を覗いてみたいものだ。

  • 「穏やかな雰囲気」とは中国側の発言をそのまま口にしたとしか思えません。羽田空港のタラップで墨汁を掛けられるような恥をかかせてくれるなとそう言ってます。それこそが彼らの真に恐れている未来なのでしょう。
    二階議員は伝声菅の役目をこれからも務める意欲満々のようです。彼の「パフォーマンス」を海の向こうでじっと見守っているひとたちがいることを、われわれ日本国民はかたときも忘れてはならないと当方は自戒を込めてそのように考えます。

  • 二階切りはいいですが、中国に強硬姿勢を取るとアメリカに梯子を外されて、いつか来た道を辿ることになる。

  • サラっとした発言が続いてるんですけど、どれも前提条件のハードルが高くて、暗に”実現しないよ”と言ってるようなものなのかもです。

    二階氏(習氏の訪日)
    「穏やかな雰囲気の中で」とは実現の可能性の極めて低い前提条件だと思います。
    *懸念事項がすべて解消した暁には・・とのことかと。

    菅総理(消費増税)
    『行政改革を徹底したうえで』
    *前提条件が達成されれば消費増税は不要になってるのでは・・。

    • あの手の老獪な政治家っていうのは、本音か建て前か、ブラフか正直か、全くわかりません。
      特に、ややこしいことに対しては、はっきりと意思表示せず、あいまいな表現をしますし、さらにリップサービスをします。なので、一言一句に過剰に反応しても無駄な気もしています。

      「穏やかな雰囲気ではないので、来日は無理ですね」とも聞こえてしまう言い方です。
      「穏やかでないこの状況下でこそお招きして、平和的な関係を構築していくべきだ」とかの発言ならばアウトでしょう。

      • とくに二階氏は昨年9月の対韓発言の中にも「まず日本が手を差し伸べ、譲歩できることは譲歩すべきだ」との言及があったと思うのですが、これだって単に建前を述べたに過ぎず実質的には「(譲歩できるところは残されて無いから)原理原則を曲げてまで何一つ譲歩してない」のですしね。

        老獪というかなんと言うか、「日本ではベタ記事、韓国紙は1面トップの大騒ぎ」だった事実が、両国の温度差の現れなのだと思いました。
        あまりヒヤヒヤとさせられたくも無いのですが、「閣外の実力者からのもの言い」は観測気球としては使えなくもないのかもですね。

  • やってくれるわ、二階俊博幹事長…(呆)
    米戦略国際問題研究所(CSIS)からの警告もどこ吹く風…
    もはや、山口二郎教授と同格の炎上芸人を目指すおつもりか…
    しかし、菅新政権の本音は明確な台湾防衛、対中シフトの方でしょう。

    「岸信夫防衛相」に中国が慌てふためく理由
    https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/62154

    二階俊博幹事長はあえて叩かれることを承知の上で、世論を台湾防衛に持っていく役回りを引き受けたのかもしれませんね…(あくまで、そう願いたいところです…)

  • 更新ありがとうございます。

    早速出てきましたね。二階氏の媚中パフォーマンス。今どき、本気で習近平を国賓待遇で招へいを考えているのは、韓国ぐらいでしょう(まともに取り合ってもらっているかどうかは知りませんが)。

    スタートしたばかりの菅内閣ですが、これ以上勝手なリップサービスをすると、幹事長から降ろされる可能性はあります。多分「首相にさせてやったのは、俺だ!」という気持ちでしょう。

    でも、影の首相と言われようが、キングメーカーと言われようが、派閥の領袖だろうが、表の顔は菅義偉氏です。80歳超えの「後期高齢者」の出る幕はありません。

    それに細田派、麻生派、竹下派が先行して菅支持を明らかにしていたのに、「干される」と危険を感じた二階氏がマスコミに先回りしてリークしただけ。

    お陰で、翌日の3派による菅氏を応援する会見に二階派は呼んで貰えませんでした。麻生副総理は前日の二階氏の行動に激怒したと言われてます。

    麻生氏と二階氏は合わないでしょう。歳も近いが純正のサラブレッドと、和歌山県だけで有名な地方議員一族ですから、「格が違う」と麻生副総理は下に見ているのでは?

    80歳ぐらいになると、判断を誤る政治家(一般人も)は多いです。次期選挙には後進に譲ることを熱望しますよ。

  • 敢えて不謹慎な発言を許していただけるなら、日台接近は「台湾島の不沈空母化」という大きなストーリーの第何番目かのステップに過ぎないと当方は確信しています。

  • すっごく深読みというか、希望的観測だけで読むと、

    >穏やかな雰囲気の中で、実現できることを心から願っている。
    →今はそんな雰囲気にない♪南シナ海での侵略行為とかを中国がやめる事を望んでいる

    >お互いに共通のことを考える国柄となるように切磋琢磨すべき
    →中国は、一党独裁とか人治主義をやめて、普通の民主主義国家になるべき♪そのための協力は惜しまない

    ってことじゃないのでしょうか??

    ・・・・・・まぁ、違いますよね
    (っω<`。)

    • 七味 様
       ご賢察の通り、二階さんはどちらに転んでも良い様に観測気球を上げたのだと思います。
      歩く姿はヨボヨボでも、利権を確保する執念は大したものです。ただ、菅さんがこれを上手く否定できないのであれば、岸田さんの方がましだったかも。

    • 七味 様
      この可能性 1%。
      中共と媚中派がそこまで追い詰められている可能性 90%。
      残り 9% は察しがたい深い闇。

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