本稿も、ショートメモです。今年の日韓GSOMIAの破棄通告期限が経過しましたが、韓国側では依然として、日本に対する瀬戸際外交の機運がくすぶっているようです。こうしたなか、私たち日本人が直視しなければならないのは、現在の韓国という国が、決して私たちの国と対等で未来志向の関係を結ぼうという意思を持っていないのではないか、という点ではないでしょうか。
輸出管理上の「不適切な事例」
当ウェブサイトの理解だと、日本政府が昨年7月1日に発表した対韓輸出管理適正化措置とは、韓国における輸出管理体制が甘く、不適切な事例が生じるなどしたために発動したものであり、経済制裁や報復のたぐいではありません。
当ウェブサイトの過去論考『対日WTO提訴が韓国経済の終焉を意味するとしたら…』と『日本産フッ化水素、韓国から世界にばら撒かれていた?』などでは、(確たる根拠はないものの)次のようなストーリーも成り立つのではないか、と報告しました。
当ウェブサイトが提示する「仮説」の例
- ①日本が韓国に輸出したフッ化水素が、韓国からイランに密輸出されていた。日本産のフッ化水素はイランからさらに北朝鮮に還流した可能性もある(このフッ化水素はウラン濃縮用であり、必ずしも半導体製造などに使われる高品質なものでなくても構わない)。
- ②韓国があえて日本産のフッ化水素をイランに密輸出した理由は、あたかも日本が直接、イランにフッ化水素を密輸出したかに装うため。自国産のフッ化水素だと米国にバレると、韓国自身が米国などから経済制裁を喰らうおそれがある。
- ③日本は米国から衛星写真などでイランの核施設に日本産のフッ化水素の容器が写っているのを見せられ、韓国から物資の横流しが発生した可能性を疑い、「書類不備」を理由に2018年10月に韓国向けフッ化水素輸出を一時中断した。
- ④安倍総理がイランを訪問したのは、日本産のフッ化水素など一部の戦略物資が韓国からイランに再輸出されていた事実を確認するという目的もあった。
この「仮説」を巡っては、以前から報告しているとおり、議論が飛躍している部分、根拠が薄弱な部分もあるため、若干陰謀論めいていますが、横流し品目が「フッ化水素」ではなく「通常兵器キャッチオール規制品」、横流し先がイランに限らず全世界だったと仮定すると、この「仮説」の信憑性が、にわかに上昇します。
韓国の輸出管理体制に関しては、「肥料用」と偽ってインドに輸出された硝酸アンモニウムが押収されたという事例(『やはり韓国の「キャッチオール規制」は機能不全?』等参照)に見るように、キャッチオール規制が事実上機能していないという疑念もあります。
このため、日本政府が輸出管理適正化措置を発動した最大の理由は、日本が輸出管理上、韓国を「(旧)ホワイト国」などの優遇対象国に設定し続けること自体、日本と世界の平和と安全に脅威を与えると日本政府が判断したからだ、と考えるのが自然なのです。
米国も日本の措置を支持している
それだけではありません。
昨日の『韓国メディア「WTO提訴で米国は韓国を支持しない」』でも紹介しましたが、米国務省は韓国メディア『東亜日報』の取材に対し、韓国が日本の「輸出『規制』」を巡ってWTOに提訴している問題を、米国としては「支持しない」と明言したそうです。
このことは、日本の措置が米国の了解のもとで行われているという有力な証拠であり、それだけ韓国が日米から信頼されていないという意味でもあります。
ただ、韓国の側では、この日本の措置を巡り、韓国政府はしつこいほど「輸出『規制』」だと偽っており、また、韓国メディアもこの「輸出『規制』」という誤った表現を使い続けています。
しかも、韓国政府の言い分は「韓国は順調に『脱日本化』を進めており、日本の輸出『規制』ではまったく困っていない」にも関わらず、「日本は今すぐこの不当な輸出『規制』を撤回すべきだ」とするものであり、支離滅裂にもほどがあります。
ただ、韓国政府がわざと「輸出『規制』」と呼称する理由は、おそらく、この問題では自国の側に過失があることを理解していて、それを全力で誤魔化さねばならないと考えているからだと思いますが、韓国メディアがこの「輸出『規制』」という誤った用語を踏襲するのは、理解に苦しみます。
とくに、昨今の日韓間の諸問題とは、結局のところ、「韓国が国際法を守るのか、守らないのか」という一点に集約できるのですが、どうもこの点について正しく認識している韓国メディアがほとんど見当たらないのを見ると、日韓関係を待つ未来が決して「友好関係」ではないことだけは間違いないと言わざるを得ません。
韓国で「脱日本ファンド」
そんなことを感じさせる記事が、韓国メディア『中央日報』(日本語版)に本日、いくつか相次いで掲載されています。まずはこちらの記事を紹介しましょう。
韓国京畿道、「脱日本」技術独立ファンド組成…「危機を機会に」
韓国京畿道(キョンギド)が「脱日本技術独立」を超え、世界を先導する技術強国へと跳躍するため1000億ウォン(約89億円)規模で「京畿技術独立ファンド(仮称)」を組成し、道内の素材・部品・装備分野企業に対する集中投資に出る。<<…続きを読む>>
―――2020.08.25 10:00付 中央日報日本語版より
これは、韓国の地方政府である京畿道(きょうきどう)の李在明(り・ざいめい)知事が「『脱日本技術独立』を超え、世界を先導する技術強国へと跳躍」(原文ママ)するための基金を創設する、という話題です。
記事を読んで真っ先に感じる疑問は、「そもそも韓国政府のこれまでの説明と矛盾していないか?」、です。韓国政府のこれまでの言い分だと、韓国では「脱日本」が順調に達成されていたはずです。それが事実なら、果たしてこんな基金がいまさら必要なのでしょうか。
それはさておき、リンク先記事によると、李在明氏は次のように述べたのだそうです。
「日本に対する韓国の素材・部品・装備分野の依存度が非常に高いために昨年日本から経済制裁を受けた。韓国が技術独立を経て世界的な技術強国へと進んでいけるようこの危機を機会にしなければならない」
くどいようですが、日本政府が昨年発動した措置は輸出「規制」でもなければ経済制裁でもありません。日本が本気で輸出規制や資本規制などの経済制裁を発動したら、やり方によっては、韓国経済は即、崩壊の危機に瀕していたはずです。
いずれにせよ、この程度の認識しか持っていない人物が京畿道知事という要職を務めている韓国という国は、ある意味では凄い国ですね。
中央日報「第3のカードを!」
ただ、政治家のレベルもそうですが、韓国メディアの日韓関係を巡る認識も非常に低レベルと思わざるを得ないという事例がありました。
【現場から】GSOMIA、終了でも延長でもなく…適当にやり過ごした韓国政府
日本の輸出規制に終了直前まで達していた韓日軍事情報包括保護協定(GSOMIA)が24日、事実上延長された。<<…続きを読む>>
―――2020.08.25 07:52付 中央日報日本語版より
記事タイトルにある「GSOMIA」(正式名称は『秘密軍事情報の保護に関する日本国政府と大韓民国政府との間の協定』)については、当ウェブサイトの『歳時記?今年も日韓GSOMIA破棄の時期ですね』などでも予想したとおり、結局、韓国側からは破棄されませんでした。
ただ、中央日報の記事で看過できないのは、次のくだりです。
「政府が今講じるべきなのは、世論から支持を得ると同時に米国も意識するGSOMIA外交術でなく、日本の経済報復に実効的に対応できる第3のカードを探ることだ。」
まったく意味がわかりません。
自称元徴用工判決問題が日韓関係を破壊しようとしていることは事実ですが、その理由は韓国が国際法を破ろうとしているからであり、少し厳しい言い方をすれば、日韓関係だけでなく、戦後国際秩序そのものを破壊しようとしているからです。
そうであるならば、本来、韓国がやるべきことは、「GSOMIA破棄カード以外に外交カードを見つけて瀬戸際外交を続けること」ではありません。「日韓関係の破壊を回避するために、韓国自身が国際法を守る方向に舵を切ること」でしょう。
もちろん、韓国の国内事情を考えると、国際法を守るのが難しいという事情はありますが、それは韓国政府や中央日報自身を含めた韓国メディアがこれまでにさんざん反日を煽ってきたためであり、ある意味では自業自得です。
いずれにせよ、私たち日本人は、彼らが決して「国際法を守り、日本と未来志向でともに手を携えて発展していく」という意思を持つ国ではないということを、改めて認識しなければならないことだけは間違いないでしょう。
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>韓国がやるべきことは(中略)「日韓関係の破壊を回避するために、韓国自身が国際法を守る方向に舵を切ること」
韓国がまずやらなくてはならないことは「自分たちが間違っているかもしれない」と懐疑することです。デカルトの方法的懐疑から出直して「懐疑」→「自己認識」→「客観視」→「省察」→「他との協調」という段階を踏まなくては国際法を守るなどという(韓国にとっては)高次の段階まで進めるわけがありません。しかしながら夜郎自大と被害者意識と感情論の極まった彼らにはそれは不可能です。つまりスタート時点で詰みです。
「我思う、バカに救いなし」
デカルトで卒論を書いた私としては少々思うところがないでもないですが(苦笑)、韓国人に最も欠如した心の作用が「省察(reflection)」であるという観察には同意します。
「彼を知り己を知れば百戦殆からず」とは孫子にある言葉ですが、韓国の場合、「彼(敵)」を知らず、「己」をも知らないので、一戦に及ぶまでもなく常に危ういのだということに思い至る日は決して来ないんでしょうね。
龍様
>デカルトで卒論を書いた私としては
これはお目汚しを…
韓国に孫子など勿体ないです。
韓国は、特に文政権は、ヘタクソなドライバーのように感じています。他車が停まる「だろう」、他車が譲ってくれる「だろう」、他車の過失となる「だろう」。信号なんて無視!アクセルを踏み込め!そんなんだから事故ばっかり起こしているんだよ。
誰かあの暴走車を免取にしてもらえないものでしょうか。日本は110年ほど前にやってみて失敗したので遠慮しますが。
韓国脳の「己を疑う事が出来ない事」と、「根拠の無い思い込みに整合しない現状を認識出来ない事」、更に「嘘を吐くのは正当な戦術であるとの認識」、「約束を破る事に良心の痛痒を感じない事」を総合すると、集団としての韓国民は「文明国とは同席出来ない醜悪な価値観を持っている」以前に、「文明人には明白である現実を認識出来ない」と言う根本的な思考様式の欠陥があると思います。
「親日積弊清算」の現状を見ていると、韓国は「歴史を直視」どころか「都合の悪い歴史を無かった事にする」事を現在進行形で行っているし、この「韓国版の文化大革命」が過去において数えきれない程行われた可能性を考慮に入れると(何しろ記録が「清算」されてしまっているのでね…)、韓国に碌な歴史的文化遺産が無い事の説明が付きます。
このような盲目的・感情的に行動する民族には軍事力は勿論、経済力も持って欲しくないです。
>「自分たちが間違っているかもしれない」
「かもしれないを意識するのは下々のすることで、上であるウリは常に正しく、あるいは敢えて間違えた時にでも、下々はウリの間違いにひきずられ、ウリのしりぬぐいをするのが天下の定め」と思っているのかも知れませんね。
何もかもが「勝負」であり、ハッタリで言い勝つのが賢いやり方。「借金千両を啖呵一つ(ケムに巻いて詭弁で言い逃れる)で返す」のが粋な朝鮮人のスタイルなのだという理想像があるらしい。
名無しさん(様)
引用
ハッタリで言い勝つのが賢いやり方
引用終了
まじめに努力するよりパクったり、嘘をついて楽にやっていくのが正しいという価値観を持っている人たちとは距離を置くのが当然ですよね。
お隣が反日しながらもなぜ日本にすり寄るのかの答えの一つが、パクるため、騙すためと気づいたとき、反論するとかよりまず距離を置くこと、制裁するなら徹底的にという結論に自分の中で至りました。
ちなみに、政府主導で輸出制限したらWTO違反かもしれませんが、民間企業が自分の判断で取引しないのはなんら問題ないと思います。
そういう企業が増えることを祈っています。
名無しさん様
それって「千両の借金も一言で返す」という韓国の諺、と同じですか?
よくアチラの政治家や官僚が引用して使うんですが、意味不明な諺です。
日本人的理解では、言いくるめて借金を返さないでチャラにするっていうこと、だと思いますが。とてもアチラらしい態度というか、それが賢い理想像?
巧言令色鮮し仁、っていう感じですけどね。
「第3のカード」というけど第2のカードが何なのかわかりませんでしたので、リンク先の中央日報の記事を読むと、自称本徴用工判決による財産差し押さえが第2のカードだそうで...
自国の立場を危うくしている元凶を切り札と認識する...
「GSOMIAカード」は触れなければ無害だけど、「徴用工カード」はさっさと処理しないと自分の身を危険に晒す時限爆弾なんですけどねえ。
ケロお様
韓国にとって使えるカードというのは、脅しのカード、つまり日本にデメリットがあって韓国にメリットがある対策ですが、そんなものが簡単に見つかるならGSOMIAなんて地雷カードに手を出すわけがないです。「失業者を難民として日本海に放つぞ!」とかかな?確かに困りますが、そんな棄民を政府としてできますか?
逆に餌のカード、つまり韓国にとってのデメリット・日本にとってのメリットを差し出すというのは、文政権にとって第二次ローソク革命に直結するので使えません。「竹島から撤退する」なんてアナウンスした途端に韓国輿論がどうなるか、想像に難くないです。
韓国のお好きなウィンーウィンな取引なら可能性があるかもしれません。例えば在日韓国人の帰国キャンペーン及び帰国税徴収なんてどうでしょうか?
我々日本人と韓国の御仁では、「外交カード」の定義が違うのではないかと思うのです。
韓国の「カード」は、韓国がどれだけダメージを喰らおうがとにかく日本に対して嫌がらせになれば良いというものでした(日本から見てダメージにならなくてもOK)。
だとすると、次のカードはむしろ逆に在日韓国人を親日派として韓国入国を拒否とか、在日韓国人のパスポート無効化とか、国籍剥奪とか...
自分で書いてて意味わからないです。
この場合第3のカードとは中国の威光を借りるとかそんなもんじゃないですかね
GSOMIAはアメリカの威光を借りて日本を叱ってもらおうと思ったのに逆に自分が叱られたってやつですし
韓国は自分の力でカードを作ろうなどとは思ってないと思います
独断と偏見ですが
カートいっぱいの商品を売場に戻した日がありました。
カップルでご来店のお客様。
繰り出された4枚のカードがもれなく使い物にならなくて・・。
使いたくても使えないカードには、「持ってるんだよ!」と誇示(見栄)するくらいの使い道しかないんですよね。
カードが使えなかったときの彼女(自国民)の落胆ぶりは想像に難くありません。
そしてメンツを保つための責任転嫁と言い訳の数々も・・。
日本人が、困るカード。
「文大統領が、辞任する」
今日は、なんだか面倒くさい。
第一のカードって、GSOMIA破棄だったんだ(爆)
良くまあ、同じテーブルに座ろうとするよね。
だんな 様
テーブルなんてありません、お白州の上です。
天然資源や技術蓄積、軍事力など、自国に元々ある様々な強みであったり、過去の貸しが結果として外交カードになったりするものだと思いますが。外交カードって、今持っていないのに後から慌てて探して「あった!コレやで!」なんてなるもんですかね…?
あったとしたら、それは単に身銭を切っているだけだと思いますが。GSOMIA破棄がまさにそれで。
更新ありがとうございます。
韓国京畿道が技術強国へと跳躍するため1000億ウォン規模で「京畿技術独立ファンド」を組成する、、(失笑)。たった90億円程度で脱日本が出来るの?
バカにしちゃいけないヨ。日本の高度技術がたったのそれっぽっちの価格相応(爆笑)?
ところで、日本へのGSOMIA破棄が一つ目のカードとして、2つ目が何か分からず、イキナリ「日本の経済報復に実効的に対応できる第3のカードを探ること」だって(笑)。
ホンマに同じ人間とは思えません。
> たった90億円程度で脱日本が出来るの?
どれほど少なく見積もっても、桁が2つか3つ足りませんな。
でもまあ、1000億ウォンもあれば、凧くらいは揚げられるようになるんじゃないですか?
めがねのおやじ さま
できっこないでしょ。
詐欺ですよ。
ポッケナイナイするんです。
その程度の金額でいいなら
サムスンが自社で研究開発してそう。
(数十億の半導体製造装置を買える企業なんだし)
日本に対してカードになりうるのは、それを提示したら慌てて対応せざるを得ないといったものです。
いま、日本は韓国に何をされても怖くありませんから、本当はカードなどないはずです。
一応GSOMIAはアメリカが自分の運営上困るので、日本も動かざるを得ないので、その動きをもって韓国が(カードになってる」と誤認しちゃってます。
北朝鮮はミサイルをぶっぱなすことでカードを無理に作りました。無茶とはいえ、日本やアメリカに対してカードになったのは事実です。実際トランプ大統領とつながりもできました。
GSOMIAが効かないとなると、もっと過激なカードを繰り出すかもしれませんね。北朝鮮と同じ民族だから油断しちやいけません。
G様
>本当はカードなどないはずです。
イヤイヤ、馬鹿にしちゃいけません。
確かに資源小国ゆえ、モノと言ったら、大して欲しいものはありませんが、
なんと言ってもアチラは人的資源の宝庫。
・半万年の歴史の中で培われた妓生文化の流れを汲む房中術伝統継承者
・半万年の歴史の中で受け継がれた世界に冠たる芸能の果実、(整形)美少女集団
・半万年の歴史の中で研ぎ澄まされた神業、懐中抜取術技能マイスター
こんなのみんな止めてやったら、日本はパニックのはずニダ。
(いろいろ考えたけど、こんなのしか思いつかねぇ。笑)
確かに笑
我々も油断しちゃいけませんね。朝日新聞のアシストまでつければ不可能はないのかも。
協定上は「廃棄通告の効力停止」なんてありません。
廃棄「する」か「しない」かの2択です。
昨年の8月に通告したから、11月で廃棄になってます。
残念でした。